高桑正義の SMDVライティングアクセサリーレビュー
TOPIX
今回の企画では、「Flipシリーズ」から”FlipBeauty 24 ビューティディッシュ(60cm)”, “Flip44pro Softbox(110cm)” , “FlipNemo 90×120 と 60×90” , “Flip Bounce 44(110cm)”, Flip 24 G の種類のソフトボックスそれぞれにライティングアクセサリーを使用して、ライティングにどのような効果が得られるかを検証しました。また、2024 年の2月に発売された H&Y Filters Japanによる「 Magnetic MRC Slim Cinematic CPLフィルター Kit 」の効果検証も実施しました。
CPLフィルターとミストフィルターを一体化した製品であり、反射の除去および色の強調を行いつつ、ホワイトミストの効果も同時に得られる優れものの効果をぜひご覧ください。by 編集部
※本記事はPRを含みます
Index
1.はじめに
こんにちは。フォトグラファーの高桑正義です。今回は様々な商品が流通しているライティングアクセサリーに焦点をあてレビューしてみました。「 ライティングアクセサリーの違いにより得られる効果はどのようなものになるのか?」写真の違いをご覧いただき、ライティングアクセサリー選びの参考にしていただけると嬉しいです。今回は SMDV 社の製品を使用し、撮影を実施しました。
最初に SMDV 社に触れておこう。SMDV 社は 2003 年創業の韓国のライティング機材メーカーで、軽量で持ち運びやすく瞬間的なセッティングが可能な画期的な「 flipシリーズ 」が有名だ。ソフトボックスマウント部にワンタッチセットアップの Flip 機構(特許取得)を搭載することでワンタッチでソフトボックスを組み立てることができる。組み立て、分解のしやすさは撮影の時短に役立ち、様々なアクセサリーを試すことができるので質感調整やライトバリエーションを試すことが容易になるのが大きな特徴だ。
ほとんどのメーカーのストロボ(ジェネタイプ、モノブロックタイプ)や定常光に対応できるマウントアダプターがラインナップされている。SMDV Speedbox-Flip専用アダプターを使えば、クリップオンストロボや小型ストロボにも Flip シリーズや Flip nemo シリーズに対応が可能だ。マウントアダプターの取り付け、付け替えもドライバーや六角などを使わずに容易に可能になっている。昨今では写真と動画の両方を求められることが多いので取り付けが簡単で時短ができるのは効率化を図れるのでありがたい。
今回使用したライトアクセサリーは
[SMDV] FlipBeauty24ビューティーディッシュ Softbox (60cm )
https://hy-filter-japan.com/items/643af5da4d1d1d006bbffdfa
[SMDV] Flip44Pro Softbox (110cm)
https://hy-filter-japan.com/items/643aff59fddd800066be6fa5
[SMDV] Flip Nemo 90×120
https://hy-filter-japan.com/items/65eafe87b7ac3317b5271319
[SMDV] Flip Nemo 60×90
https://hy-filter-japan.com/items/65eafcf980c8d81cb929e03c
[SMDV] Flip Bounce 44 (110cm)ソフトボックス
https://hy-filter-japan.com/items/65eb107c2d3496238ccc972e
[SMDV] Flip Bounce 44 カーテン
https://hy-filter-japan.com/items/65eb1421b7ac331b4a271411
[SMDV] Speedbox-Flip24G Softbox (60cm)
https://hy-filter-japan.com/items/643aed76fddd800069be7b70
Magnetic MRC Slim Cinematic CPLフィルター Kit
https://hy-filter-japan.com/items/6558d27e5b90ec0037661ccc
使用した効果比較写真を見せながら、どういう場面で使うと効果的かを私見をお話ししていく。
2.リフレクターの必要性
なぜライトリフレクターは必要なのか。まずはリフレクターの付いていない状態のベアバルブで撮った写真を見ていただこう。
屋外の自然光をシミュレートしたような効果が得られ、シャープな影と適度なコントラストのある写りになっている。
ベアバルブとはストロボにリフレクターをつけず、発光部を剥き出しで光を照射する手法のことをいう。室内で使う場合、光源が剥き出しのため、被写体に直接の光だけではなく、壁、天井、床などに反射した拡散した光も回っているため陰が少し起きているのがわかると思う。そして、環境によっては色カブリが発生する。
ベアバルブやハードリフレクターのような点光源のシャープでコントラストのある光を調整するためにソフトボックスなどのライトアクセサリーが必要不可欠になってくる。
3.各アクセサリーの比較
各アクセサリーの特徴を押さえつつグリッドの有無の比較写真を見ていこう。ここからの比較写真は撮影条件を以下で固定した。
- メインライトの位置
- 顎下の測り目がF5.6になるように設定
- モデルと背景の距離
3ー1.FlipBeauty24ビューティーディッシュ Softbox (60cm )
FlipBeauty24ビューティーディッシュの特徴は発光部の前に反射板を置き、リフレクター内で乱反射をさせ、ビューティーディッシュ独特の光質を作り出す。筆者はビューティーディッシュをよく使うのだが、納得いく光質を得ることができた。
SEKONICのスペクトロマスター C-800 で測定したところ、一般的にはCRI(演色評価数)が90で優れていると見なされる値がCRI98.8 という値を示し、演色性もすごく高い。直径が 60cm とコンパクトで軽量なのでスタジオはもちろん、ハウススタジオやロケなど、様々なシチュエーションで使うことができる。
<FlipBeauty24ビューティーディッシュ高桑正義のおすすめジャンル>
- ロケーションでの日中シンクロ撮影
- スタジオでの印象的なポートレート(カラー、モノクロ)
- 肌を美しい質感で表現できるためビューティーポートレート
FlipBeauty24では
- 前布(ディフューザー)なし
- 前布(ディフューザー)なし+グリッド
- 前布(ディフューザー)あり
- 前布(ディフューザー)あり+グリッド
と4パターンを選択可能だ。
下記はディフューザーをつけた状態でグリッドの有り無しの比較している。
※ グリッドとは光を収束することで写真全体の仕上がりにコントラストを与えるシンプルなアクセサリー
向かって左がグリッドがない状態で撮影している。ビューティーディッシュならではの立体感がありつつ、肌が美しく、そして、適度なコントラストが得れている。直径が 60cm なのでウエストアップでの撮影では全体的に光がフラットになるのでなく、右上からグラデーションを作ることができる。
向かって右のグリッドありで撮影をしている。グリッドによって光が収束させることで背景に届く光も少なくなるので背景が暗くなる。そして、人物の顔や服などの影の部分が暗くなり、グリッドなしの写真より締まった印象に仕上がっている。
3ー2.Flip44Pro Softbox (110cm)
Flip44Pro は前布と中間布の2枚のディフューザーをつけることができる直径 110cm で約 1.06kg の軽量設計のオクタソフトボックスだ。シルバーの中面は無蛍光生地で色の歪みを防ぎ、演色性もよく CRI97 以上だ。110cm の広い面光源で、深さが 52cm あるので光の指向性を調整がしやすい。広い面光源を作ることができるのでフラットな光を簡単に作ることができる。角度の調整でドラマチックにもできる。
<Flip44Pro Softbox 高桑正義のおすすめジャンル>
- スタジオでの広めの画角のポートレート
- マタニティや家族の記念写真
- ファッションフォト
Flip44Proでは
- 前布(ディフューザー)なし+中間布(ディフューザー)あり
- 前布(ディフューザー)なし+中間布(ディフューザー)あり+グリッド
- 前布(ディフューザー)あり+中間布(ディフューザー)あり
- 前布(ディフューザー)あり+中間布(ディフューザー)あり+グリッド
の4パターンがある。
下記は前布(ディフューザー)をつけた状態でグリッドの有り無しの比較した。
向かって左がグリッドがない状態で撮影している。ウエストアップでの画角では全体を網羅しているため、写真上部から下部までムラなく光が当たっている。そして光の回り込みも多いので白シャツの影が薄くなり、柔らかくなっているのがわかるだろう。そして、全体的に艶感も落ち着いた印象に仕上がり、背景も明るくなっている。
向かって右のグリッドありで撮影をしている。グリッドをつけ光を収束することで背景が暗くなる。回り込む光も減るため衣装の影が濃くなり、質感の出方が変わったのがわかるだろう。
3ー3.Flip Nemo 60×90 と 90×120
Flip Nemo シリーズの四角いソフトボックスで前布と中間布の標準的な組み合わせのソフトボックスだ。そして、こちらも Flip 機構を採用している。長方形と正方形、スリット(長細い)のタイプがあり、サイズもコンパクトなものから大きなサイズまで撮りたい被写体、画角によって使い分けのできるラインナップになっている。演色性も高く、色を正確に再現できる素材でできている。面光源の面が四角いのでグラデーションの調整がしやすい。
<Flip Nemo 60×90 高桑正義のおすすめジャンル>
- ロケーションでの日中シンクロ撮影
- スタジオでの印象的なポートレート(カラー、モノクロ)
<Flip Nemo 90×120 高桑正義のおすすめジャンル>
- スタジオでのメモリアルフォトなどの単体
- スタジオでの複数人のポートレート
- 簡易的な商品撮影
- 前布(ディフューザー)なし+中間布(ディフューザー)あり
- 前布(ディフューザー)なし+中間布(ディフューザー)あり+グリッド
- 前布(ディフューザー)あり+中間布(ディフューザー)あり
- 前布(ディフューザー)あり+中間布(ディフューザー)あり+グリッド
の4パターンがある。
下記は前布(ディフューザー)をつけた状態でグリッドの有り無しの比較した。
グリッドの有無での比較見てもらうとわかる通り、グリッドをつけることで光の拡がりを調整することができるので、空間の状況によってつけたり、外したりして回り込みを調整して背景の明るさも制御をしやすくなるので、グリッドはライティングの上ですごく重宝するアイテムだ。
面の大きさの違う60×90と90×120を比較すると被写体に当たる光が面光源が小さければハイライトが際立ち、艶のあるイメージにすることができる。面が大きければ、全体的に光が当たるため、自然なコントラストのイメージにすることができる。双方とも撮りたいイメージによって使い分けをしていくといいだろう。
3-4.Flip Bounce 44 (110cm)ソフトボックス
Flip Bounce 44 は軽量で持ち運びがしやすく、どんな状況でも綺麗なトップライトを作ることができるアイテムだ。形状はオクタソフトボックスのボディと前布がテレコになっている画期的な仕組みだ。光の質はバウンズとディフューズなので柔らかな印象かつ自然な立体感を作り出すコントラストを得ることができる。バウンズディフューズをしているので、演色性が気になるところではあるが、演色性は CRI97.87 と非常に高く色再現に優れている。天井の状況を受けることなく、どこでもいつでも美しいトップライト作ることができるのがありがたい。別売りにはなるが遮光とバウンスができるカーテンもある。広がる光の調整も可能だ。
<Flip Bounce 44 高桑正義のおすすめジャンル>
-
- オールジャンルに必須
メインにもアクセントにもなる万能なアイテムなので、どのジャンルにも欲しいアイテムだ。
1、 Flip Bounce 44
2、 Flip Bounce 44+遮光カーテン(別売り)
の2パターンがある
写真6が Flip Bounce 44 をそのまま使った場合、バウンズ、ディフューズした柔らかな光が全体的に拡がる面光源を得れるので、奥深い形状の面光源は被写体の奥行きに合い、立体感のある表現ができる。そして、背景にもしっかり光が届くので背景も適度なグレーになっている。
写真7は遮光カーテン(別売り)を状況写真のように設置することで被写体にすこし反射が増え、背景にいく光を抑えることができる。演色性が高く、肌色も綺麗に再現ができている。
4.ライティングアクセサリーを使用した作品例
5種類のソフトボックスを試した。Flip 機構のおかげでワンオペでもサクサクと組み立て、設置、解体がすごく効率的にできた。そして、アクセサリーのどれをとっても光を正確にコントロールしやすかった。
SEKONIC のスペクトロマスターC800 を使用して、確認したが演色性もすべてが CRI96 以上という良い結果を得れた。撮りたいイメージによって、アクセサリーを選択することでクオリティをあげていこう。
今回のアクセサリーを使った作品をご覧ください。
ライティングセットは
メインライト SMDV Flip Nemo 90×120
アクセントライト SMDV Filp 24 G Speedbox + SMDV LightフィルターKIT (Speedbox-Flip Mount専用) Background Filter
白背景紙で撮ったウエストアップのポートレート作品だ。メインは Flip Nemo 90×120 の大きな面光源を使い、立体感を出しながら、肌も衣装も綺麗に明るく見せている。大きな面光源のよさは写真上部下部での変なムラが生まれにくく安定したライティングが組めることだ。そして白背景紙にクリップオンストロボを SMDV Speedbox-Flip 専用アダプターを介し、SMDV Filp 24 G Speedbox + SMDV LightフィルターKIT (Speedbox-Flip Mount専用) Background Filter の緑を使用して背景に当てている。そういうすることで爽やかな緑の背景に仕上がり、衣装の白との差も表現ができている。
ライティングセットは
メインライト SMDV Flip44Pro Softbox (110cm)
フィルインライト SMDV Flip Nemo 90×120
アクセントライト SMDV Filp 24 G Speedbox
これぞ、ビューティーポートレートといったシンプルに美しさを出すライティングだ。メインに SMDV Flip44Pro Softbox (110cm) を使い、柔らかくも立体感のある影を作り、フィルインライトに SMDV Flip Nemo 90×120 を使い、メインラインとで柔らかく作った陰影を適度に起こしている。アクセントライトは SMDV Filp 24 G Speedbox を使いバック飛ばしをしている。メイクの色、アクセサリーのハイライト、肌の調子、服の見え方、髪の流れ、背景の明るさなど調和がとれたいることで二次元の写真に奥行きを感じさせ立体感のある美しさが際立ってくる。
5.シネマチックCPLフィルター
シネマチックCPL を使ったポートレートを紹介していこう。
Magnetic MRC Slim Cinematic CPLフィルター Kit
https://hy-filter-japan.com/items/6558d27e5b90ec0037661ccc
を使用して効果を検証してみた。
Magnetic MRC Slim Cinematic CPLフィルターは CPLフィルターと White Promistフィルターの両方の機能を併せ持つフィルターだ。White Promistは 1/4 と 1/8 の2種類がある。今回は 1/8 の方を使っている。
Cinematic CPLの効果はお分かりになっただろうか?
CPLフィルターの効果で反射をコントロールして、被写体本来の色を引き出すことができるフィルターで White Promistフィルターのソフト効果でシネマチックな仕上がりになる。
フィルターワークはポートレートにおいて面倒な面が多かったが、H&Y REVORINGで 径の違うレンズごとにフィルターを買う必要もなくなり、瞬時に使いたいレンズに取り付けて撮影ができる。さらにマグネット式アダプターリングをつけ、CPL、ND、Nightフィルター等も瞬間的に着脱可能だ。なので、ポートレートの現場でも容易に取り入れていけるセットだと言える。
さて、使い方の説明をしていこう。
上記の写真のように、顔の照り具合の調整ができる。
今回の仕上げの順序を書いていく。
- Cinematic CPL をつけない状態で撮る。気になる照りがある場合に Cinematic CPL をつけよう。
- Cinematic CPL をつけ、CPLフィルターを回転させながら照りを調整をしていく。今回は一番右の照りを抑え切った状態を採用した。
- Cinematic CPLの効果により照りが抑えらると暗い印象になるので全体的な明るさを整えるために ISO100 からISO160 に上げて仕上げた。
仕上げ写真は以下になる。
今回はショートレンブラントの位置に SMDV Filp 24 G Speedbox を使ってライティングをしている。
Cinematic CPLフィルター(1/8)をつけ、顔の照りを調整することで肌の凹凸を落ち着かせ、White Promist の効果で肌質がさらに綺麗に見えるようになる。
その後、ISO を上げ全体的な明るさを整えると撮って出しで綺麗な写真に仕上げることができる。
6.まとめ
H&Yの商品はユーザーの使いやすさやワークフローへの取り入れやすさなどを徹底的に考えられた商品が多いと感じた。
写真、動画共にフィルターワークやライティングなど、効率化を図るために取り回しの良さは必要不可欠だと言える。
ワンオペでも SMDV のワンタッチセットアップの Flip機構、多様なレンズに対応ができる H&Y REVORING、マグネット式で即座に着脱可能なシステムなどがあれば様々な表現に挑戦をしやすくなるだろう。
SMDV ソフトボックス製品一覧
https://hy-filter-japan.com/?category_id=643bc51aaad66f003f4c5d66
Magnetic MRC Slim Cinematic CPLフィルター Kit
https://hy-filter-japan.com/items/6558d27e5b90ec0037661ccc
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
高桑正義