武石修のレンズレビュー
タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD
ポートレート編
Model:川口紗弥加 Photo : Osamu Takeishi
TOPIX
今回の武石修のレンズレビューは タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD をポートレートでレビューいたします。本モデルは 2021 年 10 月より日本国内で販売が開始されたモデルです。今回はモデルを川口紗弥加さんに依頼いたしました。ポートレートでその描写をご覧ください。 by 編集部 |
Index
1.明るいF値のポートレート向けレンズ
今回は 2021 年 10 月に発売されたタムロンの大口径ズームレンズ「 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD 」を採り上げる。35mm フルサイズセンサー対応で、ソニーEマウント用だ。実勢価格は税込 20 万円前後( 2021年 12 月現在、当社調べ )。
広角の 35mm から超望遠の 150mm をカバーしながら、F2-2.8 という明るさを実現したこれまでに無いズームレンズだ。広角側が単焦点レンズ並に明るいほか、望遠側が F2.8 ということで、定番の大口径望遠ズームレンズ 70-200mm F2.8 に近い焦点距離まで同じ明るさでカバーできるのが特徴だ。
重さは 1,165g とそれなりに重いが、単焦点レンズのイメージにすると 35/50/85/100/135/150mm の6本分といったところだろうか。ポートレートで使いやすい領域が1本でカバーできるので、荷物が減るだけで無く現場でもレンズ交換不要で使いやすい。
2.ボディのビルドクオリティも高い
持った感覚は 70-200mm F2.8 クラスのレンズを少し小型化した感覚で、重さを感じるが安定して構えることはできる。レンズ構成は 15 群 21 枚とハイスペックレンズらしく物量が投入されている。フィルター径は 82mm と大きめだ。
最短撮影距離は広角端が 0.33m、望遠端が 0.85m。絞り羽根は9枚で、円形絞りとなっている。もちろんボディ内の手ブレ補正も問題無く動作する。
PCと通信してスイッチやボタンに機能を割り当てられる「コネクターポート」を搭載しているのも新しい。動画撮影時の自動フォーカス送りといった機能も割り当てられる。
AF は「クラス最高レベルの速度と精度」とのことだが、軽快に合焦していて遅い印象は無かった。今回はポートレートなので α7 III の瞳 AF を使ったが、合焦精度も問題無かった。
大口径レンズのせいか、周辺減光はやや目立つようだ。しかしポートレートでは周辺部の明るさを少々落とした方が人物が目立つメリットもある。そのため、今回は周辺減光の補正はせずに現像しているが、とても自然なロールオフで好ましいと感じている。
3.作品による評価
今回はソニーα7 IIIに装着して試用した。作品は Adobe Lightroom Classic で現像している。現像時には本レンズのプロファイルを適用して、歪曲収差のみ補正している。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
広角端で周りの状況も写し込みながらのカット。広角らしい広がりのある構図になった。逆行気味だが画面はクリアだ。
次は望遠端を試して見た。背景のボケも大きく、圧縮効果で 70-200mm レンズを使ったような描写を実現できた。
これも望遠側での一枚。前ボケもうるさくならず使いやすい。合焦部分の解像力も問題無い。
135mm での寄りのカット。F2.8だ けあって背景を大きくぼかすことができる。近接撮影でも髪の毛の分離など明瞭な描写だ。
70mm 付近も使いやすい焦点距離だ。絞り開放なら自然な前ボケを入れられる。それでいて背景もボケすぎず被写体と自然に馴染む。
絞り開放付近は周辺減光が見られるが、このように滑らかなロールオフなので不自然さが無いのが良い。ポートレートではむしろ活用したいところ。
ズーム中間の100mm域でアップを狙う。α7 III の瞳 AF との相性も良く、前に植物があっても迷うこと無く合焦していた。
AF はスピードも十分速い。これはモデルに動いてもらいながら撮影したものだが、横顔でもしっかり瞳を捉えていた。
コントラストを見るためにモノクロにしたが、よく見るとシルエットの中の服の微妙な濃淡が描き出されていた。コントラストの再現も申し分ないようだ。
やはり35mmはスナップ的に使いやすい焦点距離。明るいのでズームレンズで撮ったとは思えないほど自然で豊かなぼけが得られる。
特徴ある建物も見せようと F8 まで絞り込んだもの。ここまで絞ると周辺減光はほぼ見られなくなる。
夕方の逆光気味のショットだが、この状況では目立ったゴーストやフレアは無かった。
等倍にして玉ボケを確認すると、わずかに年輪状の模様が見られる部分もあるが、実用上はあまり目立たないレベル。夜景ポートレートでも安心して使えそうだ
4.総評
レンズ交換無しで多くの画角が使えるのはやはり便利。カメラを構えてから、簡単に焦点距離を変えられるのは短い時間で多くのバリエーションを撮る必要がある場合には特にメリットが大きい。
また 150mm まであれば 70-200mm が無くても、それに近い作画が可能なこともわかった。すると、本レンズに 16-35mm クラスの広角ズームレンズを組み合わせると2本で非常に広いレンジをカバーできることになる。
今回いろいろなシーンで撮影したが、全体的に欠点のほとんど無いレンズでオススメできる。24-70mm( 24-105mm )と70-200mm という、大口径ズームレンズ定番の組み合わせを見直す時が来たのではないかと思わせる1本の登場と言えるだろう。
(以上)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石修
川口紗弥加