コ・ボーグ36ED活用のススメ
第1回:コ・ボーグ36ED望遠レンズセットの実力
TOPIX
トミーテックの「コ・ボーグ36ED」は、一眼レフカメラ用の望遠レンズとしても、望遠鏡としても利用できる交換レンズです。その特徴は、さまざまなカメラに対応できる柔軟性だけでなく、同社が「望遠鏡クオリティー」として胸を張る優れた描画性があります。そこで、今回からフォトグラファーの大浦タケシ氏が「コ・ボーグ36ED」を使って、さまざまな撮影シーンで同製品の実力を探っていく連載をスタートします。その第1回目の今回は、コ・ボーグ36EDの基本構成となる「コ・ボーグ36ED望遠レンズセット」とその実力を見ていくことにしましょう。(編集部)
■はじめに
交換レンズが自由にカスタマイズできるなら……。たとえば、マウントが交換できればメーカーの異なるカメラで共有できるし、被写体などに応じてレンズのスタイルを変化させることもできるようになる。実は、そのような交換レンズがすでに存在する。それがトミーテックのBORGシリーズだ。
BORGシリーズは、鏡筒のサイズ(口径)の小さい順番から「ペンシルボーグ」、「コ・ボーグ」、「ミニボーグ」、「BORG」というラインナップ構成になっている。本連載でピックアップする「コ・ボーグ36ED」は口径36mmと、同社の製品では小さい方から2番目で、軽量コンパクトながら比較的明るいのが特徴である。
■コ・ボーグ36ED望遠レンズセット
コ・ボーグ36EDは、口径36mmの2群2枚のレンズ構成の対物レンズのことを指す。後玉はEDレンズを使用。カメラ用レンズとして用いる場合は、基本的に光学レンズはこの2群2枚のみとなる。しかし、コ・ボーグ36ED対物レンズだけではカメラ用レンズとして機能しないため、二重構造のチューブで構成され、押し引きでピントを合わせるものであるドロチューブや、鏡筒、ヘリコイド、絞り、延長筒、台座などのオプションパーツを用意。これらを組み合わせていくが、はじめてのBORGシリーズを利用しようというユーザーが、イチから構成を考えるのは難しい。 そこで、トミーテックでは、
36ED対物レンズ+M42ドロチューブ+M42回転台座+M42延長筒M
から構成される「コ・ボーグ36ED望遠レンズセット」を用意しており、あとは自分の使用するカメラにあったアダプタや、フランジバックを調整し、その長さによってミラーレスや一眼レフへの装着を可能とする延長筒などを揃えることで、200mm f5.6の望遠レンズとして利用できるようにしている。
カメラの機種ごとのシステム構成などについては、コ・ボーグ36ED望遠レンズセットのWebサイト(http://www.tomytec.co.jp/borg/products/detail/ summary/574/7)に詳しく説明が載っているので、興味がある方は参考にするとよいだろう。
今回、筆者は「コ・ボーグ36ED望遠レンズセット」を、ミラーレス一眼レフカメラのオリンパス OM-D E-M5と組み合わせることにした。
筆者の場合、今回使用したコ・ボーグ36ED望遠レンズセットでは、いくつかのオプションパーツによってカスタマイズを施している。具体的には、M42ヘリコイドを追加するなど、下記のような構成をとった。
ヘリコイドは回転操作によりピントを合わせるものだが、緻密な操作が可能。先に紹介したドロチューブでは大まかにピントを合わせ、このヘリコイドで微調整を行なうというような使い方をする。また、本レンズにはスリムフラットナー1.1×DGという補正レンズも鏡筒後端に装着している。これは周辺像がコマ収差などで乱れることを抑えるもので、このレンズを装着すると焦点距離は200mmから220mmに、開放値もf5.6からf6.1となる。マウントアダプターはマイクロフォーサーズ用を装着している。
■コ・ボーグ36ED望遠レンズセットの描写力
ここからは、コ・ボーグ36EDの操作性や描写をみていくことにしよう。鏡筒自体は細く、一般的な望遠レンズの概念を覆すものだ。全長は実測値で23.4cm(レンズ先端からマウント面まで)、質量も368gと軽量だ。見慣れた交換レンズと比べると、鏡筒はぐっとスレンダーに仕上がる。このレンズのスゴさを知らないと、心細く感じられるほどだ。さらに鏡筒は分解しても持ち運べるので、カメラバッグの収納にもさほど難儀することはないだろう。
M42ヘリコイドの操作感は想像以上に滑らかでスムーズ。思ったところにピタリと止まる。ピントあわせばマニュアルフォーカスのみとなることに不満を持つ人もいるかとは思うが、カメラのライブビュー拡大機能を使ってピントを合わせれば、オートフォーカスよりも正確に合わせられるので心配は不要だ。なお、ドロチューブに関してはあくまでもおおまかにピントを合わせることが役割であるため、操作感ついては言及しなくてよいだろう。
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気になる描写に関しては、いい意味で裏切られた。スリムフラットナーも含めシンプルなレンズ構成ながら、優れた描写特性を持つからだ。なかでもキレのよさ、コントラストの高さは圧倒的。今回はオプションの「絞り」を持たない構成をとったため、開放値での撮影としているが、ピントの甘さ解像感のユルさのようなものは微塵も感じさせない。画面周辺部の描写にしても、スリムフラットナーのおかげとフォーマットサイズの小さいマイクロフォーサーズ機で撮影していることもあるものの、像の流れはなく、周辺減光もわずか。カメラメーカーの純正望遠ズームとの比較では、コ・ボーグ36ED望遠のほうが総合的にわずかに秀でているように思える。オプションの「絞り」を追加して絞り込むことができたなら、描写の品質もあがりそうだ。
上の作例を見ても分かるとおり、純正レンズ(M.ZUIKO DIGITAL ED75-300mmF4.8-6.7 II)と描写の比較を行ってみると、その描写特性は伯仲しているが、コ・ボーグ36ED望遠のほうが単焦点レンズらしくわずかにコントラストは高く、ヌケがよいように思える。逆光での描写特性については、両者変わることがない。ディストーションに関しては、コ・ボーグ36ED望遠がわずかに糸巻き状の収差が発生していることが、作例4から見て取れる。
コ・ボーグ36ED望遠レンズは、アタッチメントの変更でフィールドスコープとしても、天体望遠鏡としても楽しめる(むしろ、こちらのほうが専門といえる)。また、アタッチメントの組み合わせは複雑だが、拡張性があり比較的リーズナブルなので、自分だけのコ・ボーグ36ED望遠レンズに仕立て上げることも容易だ。交換レンズの性能を追い求めると、どうしても高価なレンズに目が移りがちだ。しかし、本レンズはそのような概念を大きく覆すものといえる。
(Photo & text by 大浦タケシ)