夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第25回夜景写真のRAW現像・夜空編
TOPIX
朝晩の冷え込みが厳しい季節になってまいりました。6回に渡り解説してまいりました ” 夜景写真のRAW現像 ” ですが今回で一端区切りを迎えます。甲府盆地で撮影した美しい夜空を素材として解説してまいります。次回からは撮影編に戻ります。 by 編集部 |
12月に入って一段と空気が澄んできて、夜景撮影日和が続いています。今回の「夜空編」はこれまで5回に渡って取り上げてきたRAW現像の連載編としては最終回となります。冬の夜景らしく、街の明かりと夜空を綺麗に見せるためのRAW現像テクニックを解説したいと思います。
■夜空と街明かりを綺麗に撮るポイント
完全に日が落ちた夜の撮影は人工の街明かりを写す「夜景」と、夜空を写す「星景」に別れており、写真家の世界でも「夜景写真家」と「星景写真家」と明確に区別されています。夜景写真家は街明かりの多い都心に出向くことが多く、反対に星景写真家は夜空が綺麗に見える地方へ出向くことが多いため、同じ夜の撮影でも接点がほとんどありません。三脚を立てて長時間露光で撮影するという点では共通しますが、被写体が全く違うため、適切なシャッタースピードやISO感度も変わってきます。私自身は星景を撮ることは滅多にありませんが、時々人工の街明かりと組み合わせて撮ることがあります。街明かりと夜空を一緒に写す時、私は以下のような点に気をつけています。
写真3 甲府盆地から離れた八ヶ岳周辺からの夜景
(1)撮影モードは「バルブ(マニュアル)」が望ましい
通常のマニュアル露出だとシャッター速度の上限が30秒(機種による)となるので、30秒以上空ける場合はバルブモードを使います。そのため、普段からレリーズを活用しています。
(2)ISO感度は400~1600前後を目安
ISO感度を下げて、長時間露光が望ましいですが、シャッターを長く開けすぎると(数分以上)星空の光が動いてしまうため、星の動きを止める場合はISO感度を普段より気持ち高めに設定します。
(3)都心より地方都市へ出向く
都心は明かりが多く、1枚の写真で露出が大きく異なる街明かりと夜空を撮ることは非常に困難です。そのため、明かりの少ない地方都市での撮影がおすすめです。ただし、真っ暗な場所だと街明かりが写せないため、光量が控えめな夜景スポットが良いでしょう。
(4)広角(魚眼)レンズを使う
街明かりは小さく、夜空を画面いっぱいに大きく写すため、35mm換算で16~17mm相当~の(超)広角レンズや魚眼レンズが撮影に適している。
写真4 雲台を180度逆さにしてカメラを固定
写真5 魚眼レンズで夜空と工場を写す
■RAW現像のBefore/After
カバー画像で使っている埼玉県・登谷山から撮影した夜景写真をRAW現像してみた。街明かりは現像前の写真も綺麗に写せているが、空の色味がとても地味で、ありきたりな夜景写真に見えてしまっている。
写真6 RAW現像前(Before)
写真7 RAW現像後(After)
■RAW現像テクニック
それでは具体的なRAW現像テクニックに入っていきたい。これまでのRAW現像テクニックと比べてもさほど難しくなく、押さえておくポイントとしては街明かりの露出は変えずに空の露出をメインで調整するため「段階フィルター」を活用することぐらいだ。
写真8 全体の調整
写真9 段階フィルター
■今月のお勧め夜景スポット「登谷山」
関東平野を一望できる埼玉県下トップクラスの夜景スポット。駐車場から真っ暗で急な坂道を歩くが、遠方からでも足を運ぶ価値が十分にある美しい景色が楽しめる。夜景も美しいが光が遠いため、空気が澄んでいたら夜空も美しい。冬期の訪問は道路の凍結に注意したい。懐中電灯の持参も忘れずに。
観賞時間:終日
所在地:埼玉県皆野町三沢
アクセス:関越自動車道「花園IC」から車で約40分(駐車場から徒歩約7分)
料金:無料
URL:http://www.nightview.info/yakei/detail/toyasan/
写真10 関東平野の夜景を一望する