夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第19回:夜景撮影旅の魅力
Photo : Takuya Iwasaki
TOPIX
2016年2月にナショナル ジオグラフィック社より発売された「 プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック 」( アマゾンにリンクしています。<PR>)。執筆のため岩崎氏は昨年10月から11月にかけて、北海道から九州まで約10,000kmに渡る夜景撮影の旅に出ました。夏休み直前にそんな夜景旅の楽しみ方を執筆頂きました。 by 編集部 |
夜景撮影が写真撮影のジャンルの1つとして認知されるようになり、夜景撮影人口も大幅に増えました。普段は身近な場所で夜景撮影を楽しむのも良いですが、北海道から沖縄まで全国各地に素晴らしい夜景スポットがあるため、週末や連休などを活用して夜景撮影の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。今回は13年間の夜景撮影旅キャリアを持つ著者が旅の魅力や楽しみ方を解説したいと思います。
写真1 期間限定ライトアップを求めて
■夜景撮影旅とは?
夜景撮影旅はその名の通り、夜景撮影のために旅をすることを意味します。旅と言っても気軽な日帰り旅から、宿泊を伴う本格的な旅まで様々。例えば日帰り旅なら東京圏を出発して山梨や静岡、北関東あたりで夜景撮影を楽しみ、夜遅くに帰路につくようなイメージです。宿泊を伴う場合は、車中泊であったり新幹線や飛行機で移動して撮影後に宿に泊まるようなイメージとなります。近場で夜景撮影を楽しむのも良いですが、地方都市でしか撮影できないような夜景を楽しんだり、普段の旅のスケジュールに1ヶ所でも夜景スポットを入れて見るのもおすすめ。
写真2 旅の途中にSAから夜景を楽しむ
■夜景撮影旅に適した時期
これから夜景撮影旅を始める場合、旅に出掛ける時期を見極めることが最も重要だと言えます。移動手段や移動先によって、撮影旅に適した時期が変わってきますが、大まかには1年を通して10~11月がベストシーズンと言えます。
写真3 撮影旅マップ(全国地図)
(1)北海道・東北(青森)→ 9月~10月
11月以降は多くの市区町村で山間部の通行規制が始まる。
(2)東北(岩手以南)→ 10月~11月
12月以降は雪が積もる可能性が高く、スタッドレスタイヤが必須。
(3)北陸~新潟~山陰 → 10月~11月
日本海側は冬になると降水量が増える傾向あり。
(4)その他本州・九州 → 11月~2月
年明けに大雪が降る可能性があるので注意。
(5)沖縄 → 12月~2月
11月はまだまだ気温が高い。年明けのシーズンオフが狙い目。
■夜景撮影旅の移動手段
夜景撮影旅は訪問先や日程によって移動手段が大きく変わってくる。機材を自宅から積み込める自家用車が最も使い勝手が良いが、移動距離が長いと運転による疲労も気になるところ。自家用車にカーフェリーを組み合わせたり、旅先まで新幹線や飛行機で移動してレンタカーを借りるのも1つ。
写真4 カーフェリーの乗船待ち
(1)自家用車
自宅から撮影機材を持って出発できるのが最大の強み。車種によっては車中泊ができる。
カーフェリーを併用すれば体力を温存でき、長距離の移動がよりスムーズに。
(2)レンタカー
自家用車より低コストで、新幹線や飛行機で撮影地のエリアまで移動して借りるのも1つ。夜景撮影地は場所によっては道のりが悪路になるため、車両への傷に気をつける必要がある。
(3)新幹線
飛行機と違って手荷物検査もなく、飛行機ほど重量の制限もないので夜景撮影旅に適している。
(4)飛行機
北海道や沖縄など遠方に出向くには最もおすすめ。三脚など荷物が重たくなりがちなので荷物の重量には注意したい。
■夜景撮影旅を楽しむポイント
夜景撮影旅と言っても、夜景を撮影するばかりでなく、昼間の時間も有効に使って、観光などを楽しんだ方がその土地の風土や歴史を知ることができ、写真を撮る時にも視野が広がるはずだ。ただし、夜景撮影がメインの旅になると撮影に夢中になって、夜にご当地グルメを頂くことが困難になるので、昼間のうちにグルメを楽しむようにしたい。
(1)ご当地グルメは朝食・昼食で楽しむ
旅の楽しみと言えば誰もが真っ先に思い浮かぶのがグルメだろう。その土地でしか食べられない郷土料理やご当地グルメを楽しみたい。夜は間違い無く撮影に夢中になるので、朝ご飯やお昼ご飯でグルメを楽しもう。
写真5 小樽と言えば海鮮丼
(2)撮影スポットのロケハンを念入りに
旅先ほどロケハンは入念に行っておきたい。有名観光地ならまだしも、マイナーな場所に行く場合は昼間に「現地にたどり着けるか」「視界は確保されているか」など重要なポイントをしっかり押さえておきたい。逆に有名観光地は夕暮れから混雑することが多いので、余裕を持って早めに到着し、場所の確保と機材のセッティングを進めると良いだろう。
写真6 室蘭市・みゆき町の高台をロケハン
(3)合間に観光を楽しむ
撮影地のロケハンついでに近くの観光名所を回るのもおすすめ。観光名所を回っていると偶然にも夜景撮影地が見つかることも。
写真7 登別地獄谷を観光
■夜景撮影旅での車中泊方法
自家用車で車中泊をする場合、車中泊に適した場所を選びたい。一般的には高速道路のSA/PAや道の駅が適しているが、SA/PAに車中泊することでETC料金が深夜割引になるケースがあり、宿代を押さえながら高速道路料金を抑えられる。ただし、アイドリング状態の大型トラックが多いと、音が気になって眠りにくいことも。SAよりも小規模なPAの方が静かなことが多い。地方都市では道の駅が非常に便利だが、場所によっては全く人気がなかったり、標高が高くて寒い場所も多いので要注意。また、車中泊は真夏は室温調整ができず不向きで、真冬も同じ観点から避けた方が良いだろう。
写真8 便利な車中泊マット
■今月のお勧め夜景スポット「米の山展望台」
九州で新日本三大夜景の皿倉山と並ぶトップクラスの美しい夜景が見渡せる展望台。福岡市内からでも1時間程度かかるが、光量ある大パノラマが見渡せる。夜景撮影にもおすすめだが、車窓からも絶景が楽しめるため、カップルの訪問も多い。撮影場所の確保のためにも夕暮れには訪問したい。
写真9 九州最大級の大パノラマ夜景を写す
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