夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第11回:トワイライトタイムの撮り方
TOPIX
夜景撮影の中でも、好天の日没時にごく短い時間にトワイライトタイム。その美しさで夜景撮影時には押さえておきたいポイントです。今回の夜景撮影講座はこのトワイライトタイムに絞って解説をいたします。 by 編集部 |
9月に入って真夏日のような猛暑も無くなり、台風シーズンもピークに近づいています。秋冬のように空気が澄んだ日も多く、いよいよ夜景撮影のベストシーズンが近づいてきました。そこで今回は夜景が最も美しいトワイライトタイムについて解説したいと思います。
■トワイライトタイムとは?
夜景愛好家や積極的に夜景を撮られてるカメラマン以外は「トワイライトタイム」と聞いてもピンと来ないかもしれません。トワイライトとは”日の出や日没の薄明かりの状態”を意味し、主に日没後の時間帯を示す言葉として使われています。トワイライトタイムは最も美しい夜景が撮れることで知られていますが、一般的な夜景撮影時間とどのように違うのでしょうか?大きなポイントは6つあります。
(1)自然と人工光源の調和
夜景撮影は街明かりや照明などの人工光源が中心になりますが、トワイライトタイムは山や水面のシルエットも写すことができ、自然を加えた夜景が撮影できます。
(2)光量が多い
夜景は時間が経つごとに街明かりが減少し、特に深夜になると躊躇に差が出ます。トワイライトタイムは街明かりも多く、光量ある夜景が撮影できます。
(3)地方都市ほど美しい
地方都市は街明かりが少ないため、人工光源だけを撮影すると寂しい写真になることも。
(4)露出時間を短くできる
空にわずかな明かりが残っているため、条件にもよりますが、真っ暗な時間帯に比べてシャッターを開ける時間は短くなる傾向があります。そのため、手持ち撮影のハードルも下がります。
(5)撮影時間が限られている
トワイライトタイムは日没後の数十分後に発生するわずかな時間。20分程度と短い時間のため、撮影時間が限られる。夜景写真家にとって最も忙しい時間でもあります。
(6)現地まで安全に移動しやすい
トワイライトタイムに間に合わせるために夕暮れから移動する必要があります。周囲が明るい時間帯から行き方や場所を確認できるので、夜間移動時の危険性が下がります。(帰りは真っ暗な場所もあるので、懐中電灯は持参しましょう)
写真2 トワイライトタイム(1)
写真3 トワイライトタイム(2)
写真4 一般的な夜景時間
■トワイライトタイムを綺麗に撮るポイント
トワイライトタイムだからと言って特別な撮影ノウハウがあるわけではありませんが、基本的には通常の夜景撮影とは変わらないものの、気象情報をこまめにチェックしたり、早めに現地に到着してセッティングをする必要があります。カメラの撮影モードは「マニュアルモード」「絞り優先」がおすすめで、絞りはF8.0~11.0ぐらいが良いでしょう。
(1)ホワイトバランス
ホワイトバランスは特に決まりが無いが、自然な青みを強調するなら「白色蛍光灯」、赤みを強くするなら「太陽光」がおすすめ。
写真5 ホワイトバランスの設定
(2)ISO感度
完全に日が沈んだ夜景時間よりも空が明るいため、露出時間も短くなる。ISO感度は低め(100~400程度)に下げての撮影が理想。
(3)撮影する方角を意識
太陽が西向きに沈むため、西向きの方が空のグラデーションがより綺麗に見える。例えば東京都内から撮影する場合は富士山の向きを狙うと良い。
写真6 西向きのトワイライトタイム
(4)早めに現地入りする
トワイライトタイムは時間との勝負。できれば日没の時間にはセッティングを終えて、万全の準備をして撮影に挑みたい。
写真7 日没後のセッティング風景
(5)曇り空は避ける
トワイライトタイムは空模様も重要になってくる。完全に空が雲で隠れているような場合は美しいトワイライトは期待できない。ただし、トワイライトがだめでも完全に真っ暗になると夜景自体は綺麗に撮れることも。
写真8 雲で空が隠れてしまった残念写真
■今月のお勧め夜景スポット「港公園展望塔」
最近、密かに注目されている茨城・鹿島臨海工業地帯で最も夜景の美しい展望タワー。屋上のデッキからは360度の工場夜景が見渡せるが、営業時間が17時までのため、冬場のごく一部の期間しか夜景が見えないが、素晴らしい眺望が期待できる。工場夜景ファンなら是非一度は見て頂きたい。
写真9 展望塔からのトワイライトタイム