荻窪圭の三脚レビュー
ベルボン・カーボン三脚 UTC-63
TOPIX
革新的で使いやすい三脚関連製品を提供するベルボン社から、剛性・軽量性・収納性の三拍子そろったコンパクトカーボン三脚、ウルトレックシリーズ「 UTC-63 」が今春に登場した。一時は店頭から姿を消した程の人気を博した同製品。今回は本誌5年ぶりの登場となる、荻窪圭氏のレビューをお楽しみください。by 編集部 |
世の中、同時に成り立たせるのが非常に困難なものというのがあるわけで、たとえば、軽くて小さくてF2.8通しの10倍ズームレンズが欲しい……といわれても困るのである。安くてコンパクトで高画質でズームも使えるコンデジが欲しい、くらいはよく言われるけど、そんなおいしいカメラがあったらわたしが真っ先に買います。
で、三脚の話。
クルマに積んで現地まで行くから多少重くても頑丈なのがいいとか、スタジオで使うから携帯性は不要、という人はともかく、
・普通の人は公共交通機関を使ったり歩いたりするわけで、「携帯性」は欲しい。
・望遠レンズをつけてもOkな、剛性が高い「頑丈な」三脚が欲しい。
・立ったときの目の高さで普通に撮れる高さにまで伸びて欲しい。
この3つを同時に満たすのはムチャクチャ難しいのである。考えてみよう。
携帯性が高いってことは、持ち歩くときは短く軽くしたいということである。軽くてコンパクトになれば持ち歩くときの負担は格段に減る。でも携帯時に「 短い 」ってことは、撮影時も短いってことなのだ。全高( 三脚を一番高くしたとき )がどうしても低くなる。携帯時に短く、撮るときは長くしようと思うと、伸縮率を上げなきゃ行けない。そうするとどうしても「 脚が細くなる 」ため強度が落ちる。軽量のミラーレス一眼ならいいが大望遠レンズをつけての撮影やミドルクラス以上の一眼レフだと心許ないし、花火撮影など長秒時露光時は安定性が高い三脚が欲しい。
かくして多くのカメラユーザーは用途や優先順位に応じて複数の三脚を持ち、使い分けているのである。
でもほんとはひとつで済ませたい。少なくとも、ちょっと遠くへ撮影に行くとき用に「 困ったらこれを持っていけばOk 」な三脚が欲しい。ああ。
そんなとき、目の前にベルボンのUTC-63が現れたのである。
どうも「困ったらこれを持ってけ」的な製品らしい。ほんとにそうなのか、使ってみたので、3つのポイントに沿って語ってみたい。
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Velbon UTC-63
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■ ポイント1:携帯性はトラベル三脚の名にはじないコンパクトさ
3つのポイントに沿ってチェックする。ひとつめは「 携帯性 」、ふたつめは「 高さ 」、みっつめは「 頑丈さ 」だ。まず携帯性。
UTC-63の縮長は36cm。一眼レフやミドルクラス以上のミラーレス一眼をしっかり支えてくれるトラベル三脚としては非常に短い。長さはケースに入れた状態でこのくらい。カメラリュックからはみでない大きさだ。
写真1
ケースから取り出してみる。3本の脚を180度反転させて収納するため縮長は非常に短いがちょっと太め。
この長さならカメラバッグの三脚用ポケットやベルトにくくりつけてもはみでない。バッグの三脚用ベルトにつけて電車に乗ると、ぶつけないよう気を使うのだけどこの長さならバッグからはみでないので安心である。
写真2
写真3
このたたみ方がUTシリーズの特徴。使うときはこんな風に脚をくるっと回転させる。写真では3本いっぺんに開いてるけど、実際には1本ずつやりましょう。
写真4
写真5
脚を開いたら角度を固定。中央のロータリーハブを持ち上げて60度回すと脚が開きすぎないよう固定される。
写真6
写真7
これでOk。
次の作業は脚の伸張だ。この脚の伸縮方法がウルトラシリーズの面白さ。これで5段である。パイプを持ち、右手を左に捻るとロックがはずれるので一気に伸ばす。伸ばしたら右に捻るとロックされる。作業としてはめちゃくちゃ簡単でクイックだ。
写真8
石突を握って回すと5段分一気に行く。素早く高い位置に持っていきたいときにいい。途中を持って回すとそれより根元分だけが伸びる。大事なのは「 ギュッ 」と締めること。締め方が甘いとカメラを載せたとき重みで脚が縮んじゃうことがあるのだ。UTC-63はカーボン製のため、他のウルトラロック製品に比べると、締めたときのギュッという感触がちょっと違う。剛性が高いので、きちんと締めれば緩むことはないって感じ。思ったよりしっかりしていた。
写真9
最後はエレベーターで調整。従来のUTシリーズはエレベーターを短くすることができなかったが、UTC-63はできるようになった。これは素晴らしい。
■ ポイント2:高さ
ではこれでどのくらいの高さになったか。カタログ上は155cm。155cmってどのくらいなのか数字だとピンとこないと思うので、実際にカメラを装着して覗いてみた。わたしの身長が172cmくらい。それでファインダーを覗いて「 ちょっとファインダーの位置が高いかな 」というくらいだ。
写真10
縦位置グリップを着けていたり大きめの一眼レフだともうちょっとファインダーの位置があがるので、身長180cmくらいまでならもう普通に立った高さでいけそうだ。トラベル三脚は携帯性を重視するため、全長が短めのものが多く、撮影時に腰をかがめなきゃいけなかったり、フェンスなどに邪魔されて高さが足りない事がけっこうあるのだ。この長さなら問題なし。すばらしい。
写真11
逆に低くしたいときはどうか。開脚角度は3段階。2番目の開脚角度にするとこのくらい。かなり安定する。地面にしゃがんで撮りたいときなんかにいい。
写真12
写真13
最も低くすると、脚は180度に近い角度まで開脚するが、センターポールを少し上げなきゃいけなくなる。だからこんな感じになる。
写真14
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Velbon UTC-63 ■ メーカーサイト ■ Velbon UTC-63 |
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荻窪圭