<特集>カメラマン・木村智哉( Toshiya Kimura )が撮るポートレート
~ KIPON製Eマウント用レンズ編
Photo : Toshiya Kimura
model : Nozomi Inoue
TOPIX
前月更新した前回の特集記事はいかがでしたか?今回の特集はKIPON 製 Eマウント用レンズ2製品 KIPON IBRIT 35㎜ と KIPON IBRIT 75㎜ をス前回に引き続き木村智哉( きむらとしや )氏に試写していただいた。今回は惜しまれつつ 2021 年3月に閉館した目黒ハウスを中心に構成いたしました。モデルは前回に引き続き いのうえのぞみ さんです。ぜひご覧ください。 by 編集部 |
Index
1.まえがき
「 カメラマン・木村智哉( Toshiya Kimura )が撮るポートレート~ タムロンEマウント用レンズ編 」はいかがでしたか?
思えば 13 ~ 14 年ぐらい前はフィルム時代の <フォトテクニック(玄光社)>の表紙巻頭を2年間撮らせてもらったり、その前には< CAPA(学研)>で毎月違うデジカメを使って水着のグラドルを撮るキムラ写真館D を2年担当させてもらったり、
都合 70 ~ 80 回はカメラ・機材記事に関わってきた。ただ、しばらくメディアに寄稿していなかったので、前回の記事についても「 この書き方でいいのかな?」の思いは残っている。ただ圧倒的実戦に基づいた経験値で撮影・執筆したので、少しは他の人と違う感じに仕上がったのではないであろうか。
さて、前書きはこの辺にして本題に入ろう。
2.KIPONレンズでの撮影にあたり
KIPONレンズの何よりの特徴はレンズを直に触っての手動での絞り調節(しかも半段づつ)である点とピントが AF ではなくマニュアル合わせである点だ。
これは全てを自動任せでしか撮ってこなかったような人や初心者には少々荷が重いかもしれないが、逆にカメラを好きになってきた人や愛好家にはカメラ本来の操作(絞りいじりやピント合わせ)を楽しめる味わい深いレンズだと思う。
前回のタムロンレンズ記事(28-75mm F/2.8 Di III RXD と 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD )で自分がここ 10 年、1台カメラに1本レンズで仕事をしてきて、3年前からはそれがソニーの α9と 24 ~ 70 mm 2.8( FE 24-70mm F2.8 GM )になっていると書いたが、重要なことが抜けていた。 α9以降、実は全てオートフォーカスで撮っていて自分ではピント合わせをしていないということだ。レンズつき1台しか使わない上にピントまで楽をしているわけであるが、逆に言えば α9まで実は1度もオートフォーカスで撮ったことがなく1,000 枚撮ったとしたら 1,000 回手前の睫毛に自力でピンを合わせていた。
カメラマンになってコンタクト( 今は優秀だろうが当時は… )をメガネにしたことと元来目も強かったこともあるが途中からは特注雲台でカメラ2台を同時に覗く※注1 立体写真(3D )を極めた時期もあり両目が使える( 同じ視力、色で見られる )両目使いになったことも人より楽に目を使えて来た理由でもある。
(※注1 この立体ものは35 ポジを特殊メガネで2枚同時に両目で見るもので始めて見た人は全員びっくりする。優香、乙葉、小倉優子、上戸彩などの写真集の付録やトレカで形にした。)
タムロンレンズの撮影では、久々のレンズ交換の高揚を感じられた。そして今回は3年ぶりでもあるそのピント合わせでハンターやスナイパーのような興奮を思い出すことが出来そうだ。
開放はともに f2.4 。2.8 からは半段刻みで 16 まで。最短撮影距離は 35mm レンズが 0.35M 、75mmレンズが最短 0.6M 。
3.作例解説
ドラマ「ごくせん」や「相棒」、岩井俊二のフィルムや多くの CM などでも使われてきた。自分的にもハウススタジオで一番お世話になった目黒ハウス。某雑誌にてセクシー系の子を 10 年近く毎月表紙巻頭で撮らせてもらったりもしたので、利用回数は優に 150 回を数えるがこの日が閉鎖2日前で最後の撮影となった。
庭から縁側に向かって撮る。奥が緑( 裏庭の緑 )に抜けるのがいい。都内で他にも和風スタジオはあるのだがこのように奥が綺麗に緑に抜けるスタジオはない。たいてい壁か棚か襖である。レフ使用。
庭の日陰ではあるが明るいところで逆光撮影。お借りしたレンズにはフードがなかったので若干フレアっぽくなったが、このにじみがいい味を出してくれている。
どこか懐かしさを感じる柔らかさがスタジオとの最後の思い出のいい写真になった。
ここはいずれ取り壊しと聞いて庭の葉っぱを撮っていても感慨深いものがある。
縁側に上がって撮る。
強い光が斜め横から来て直に当たると顔の陰や肌の質感がきつく、手前の引き戸の日陰に入ってもらう。そのままでは顔色が気になり、後ろの縁側のハイライトもうまく出ないのでレフを手前下から使用。右の庭側から軽くストロボも使用。
逆光 フットライトぎみにレフを使用。当て方を間違えるとお化けのようになるが基本的に童顔の子に使うと効果的。(ニュアンスが伝わるか)ハッとした表情になる。
14 時過ぎだが実は木が生い茂っていて(スタジオ閉鎖前で伐採してないのか)いつもよりかなり暗い、そのためモデルに合わせて明るくしたので空が飛んでいる空の色を出す手法もあるがこれはこれでいい。
寄ってる方は 殆ど効かないレフ(キャッチライト用)とストロボを弱く当てている。
別日の午前中、一転して外国街角風の一角とその裏庭的なところで。
主戦場でもある白ホリスタジオ(通称箱スタ)で私物の黒布を垂らしてストロボで試してみる。
フードがない影響か黒い服が黒より気持ち灰色に転んでくるが光は柔らかくなり顔(肌)には効果的に効いてくる。
4.KIPON レンズに関する感想
自分でレンズの絞りを廻して動かし、自分でファインダーを覗いてピントを合わせるというカメラ本来の醍醐味を味わえる。
またレンズの重さが 35mm 、75mm と順に 220 gと330gなのと、長さが 45mm と 75mm なのは常用レンズとして持ち歩くのにも優しいし、5万円台前半と3万円台後半という価格は魅力的である。
露出に関しては絞りを自分で設定さえすれば、シャッタースピードが計算して動いてくれ、絞り優先オートとプログラム撮影は使える。ちなみに自分は白ホリスタジオでストロボ数灯の白バック飛ばしを最初に設定する時のみ露出計を使うが以降及びハウスやオープンその他普段は一切露出を計らないのでキポンレンズを付けた時の基本、マニュアル露出というのは全然気にならない。デジタルで液晶ですぐ確認出来るわけだし、むしろ勉強になる成長させてくれるレンズだと思う。
5.あとがき
最後に撮影手法に関して書いておくことがある。
普段、カメラ1台1本レンズでレンズ交換もせず、露出も測らずピントもオートだけ( JPEG のみ、RAW は撮らない )と書くとスマホやチェキみたいに簡単にパッと撮っているように思われるかもしれないが、露出はほぼ分かる( 特に自然光、定常光 )のと1枚1枚をそのままパッと撮ることはなく
(1)晴れてようが殆どラィティングをすること
(2)背景をぼかさない(基本絞りが5.6~8、箱スタは11)ので構図・背景処理を考える
というこの2点に精力を使っていることを付け加えておきます。これは長年に渡り多数撮ってきた大判カレンダーの影響があるのだろう。
モデルはスタジオグラフィックスお馴染みの いのうえのぞみ さんだが、彼女とは以前も今回の目黒ハウスで時間をかけた写真(未発表)を撮っており、この日もちゃんと着付けをした上での浴衣撮影をしている。
いのうえのぞみ公式サイト https://www.inoue-nozomi.com/
前回、今回の特集記事はいかがでしたか?また、機会があればお目にかかりましょう!
東京生まれ。日大芸術学部写真学科在学中より広告会社に入社、その後写真家・小澤忠恭氏に師事して独立。女性写真中心に活動中。
木村智哉プロフィール http://yes-pr.jp/toshiyakimura
木村自分記録用ツィッター https://twitter.com/toshi62914973
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
木村智哉
いのうえのぞみ