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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内 第21回 中部編 ~ 09 

Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

初夏の日差しがまぶしい季節になりました。夜も比較的過ごしやすくなり、星景撮影に出かけやすくなってまいりました。
今回の日本全国の星空名所第 21 回目は静岡県伊豆市にある 田牛サンドスキー場 を取り上げました。ぜひ、ご覧ください。 by 編集部

<本記事は 2024 年 5 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。春になり気候も穏やかになってきましたので、そろそろ星の撮影を再開しようと思っている方も多いのではないでしょうか。地上の被写体は桜から新緑へと移り変わっていきますが、星空も冬の星座から春・夏の星座がメインとなり、天の川撮影も思う存分楽しめるようになりました。
さて、今回は前回に引き続き中部編ということで、伊豆半島にあるおすすめスポットをご紹介したいと思います。人気の被写体である天の川撮影にも最適な場所ですので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

Index

1.静岡県の撮影スポット

今回ご紹介するのは、静岡県下田市にある「田牛サンドスキー場」です。「たぎゅう」と読んでしまいそうですが、正しくは「とうじ」と読みます。サンドスキーという名の通り、海岸には砂でできた急斜面があり(写真1)、ソリなどを持参すれば滑って遊ぶことができます。なぜこのような斜面が出来上がったかというと、海流によって運ばれた石や砂が海から吹き付ける強い風によって陸地へと舞い上がることが原因とのことです。間近で見るとその急斜面に圧倒されますが、自然の力の凄さをひしひしと感じることができるでしょう。

写真1

田牛サンドスキー場へは階段を下っておよそ3分ほどで到着します(写真2)。斜面は砂地で裸足で歩くこともできますが、海岸は石や岩が多数あるため、スニーカーなどしっかりした靴で行かれるのがおすすめです。海岸近くには、ゆうに10m以上ありそうな奇岩が聳え立っており、迫力ある光景を見ることができます(写真3)。

写真2
写真3
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2.田牛サンドスキー場で撮る星景写真

田牛サンドスキー場で星景写真を撮影する際は、北から西に急斜面があり視界が遮られていることもあり、基本的に北東から東南方向を撮影することになるでしょう(写真4)。秋から冬にかけては、東から昇る冬の星座などを題材に撮影すると良いですが、やはり春から夏の時期に撮影できる水平線から昇る天の川をテーマに撮影するのがおすすめです(写真5)。特に2月〜3月に撮影すると夜明け前の薄明の時間に天の川が昇ってきますので、一際美しい光景を撮影することができます(写真6)。

暗い場所で天の川を撮影することになりますので、ポータブル赤道儀など星を追尾できる機材を使いたいところですが、あいにく北側の斜面が邪魔をして北極星を視認することができません(写真7)。そのため、極軸を合わせる際はおおよそ北の方向に向ける簡易的なセッティングで諦めるか、ビクセンのポーラメーターなどの極軸合わせ支援機材を使うのがいいでしょう。

海岸には打ち上げられた巨岩があり、積極的におすすめはしませんが登ることもできます。例えばご自身も被写体になりながら星と一緒に撮影すると、単調な風景でもアクセントの効いた星景写真を撮影することもできます(写真8,9)。もし撮影される際はくれぐれも注意してくださいね。

写真4

カメラ: OM SYSTEM E-M5MarkII レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
シャッター速度:30秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)
6枚をパノラマ合成

写真5

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE20mm F1.8G
シャッター速度:15秒 ISO感度4000 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

写真6

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE20mm F1.8G
シャッター速度:15秒 ISO感度4000 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

写真7

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: SAMYANG AF 24mm F1.8
シャッター速度:5秒 ISO感度12800 絞り:f2.5 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

写真8

カメラ: OM SYSTEM E-M5MarkII レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
シャッター速度:30秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

写真9

カメラ: OM SYSTEM E-M5MarkII レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
シャッター速度:30秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

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3.田牛サンドスキー場周辺で撮る星景写真

田牛サンドスキー場の近くには、JRのテレビCMやドラマのロケ地としても使われた「龍宮窟」という観光地もあります(写真10)。入口を過ぎると暗闇へと続く急な階段がありますが、その階段を降りきると周囲が岩壁に囲まれ一部分に穴があき海水が流れ込んでいる不思議な空間に行くことができます。ここは海蝕という自然現象で作られた空間で、長い年月をかけて波が徐々に岩壁をえぐり取り、穴を開けたことで出来上がりました(写真11)。天井は崩落し、空も見ることができます。掲載した写真は2017年に撮影したもので、この頃は空間を自由に歩くことができましたが、2024年現在は崩落の危険性があるということで規制のロープが張られています。そのため、同じような角度で写真を撮ることはできませんが、ロープの内側から外側であれば撮影できますので、田牛サンドスキー場で撮影をされた際は寄ってみるのもいいでしょう。

また、近くには田牛海水浴場というレジャーを楽しめる海水浴場もあります。この周辺には民宿などの宿泊施設もいくつかあるため、泊まってゆっくりと星空を楽しみたいという方は利用してみるのもいいでしょう。ただし、海水浴場周辺は街灯の灯りが強いため、星空の撮影には不向きです(写真12)。

写真10
写真11

カメラ: Canon EOS 6D レンズ: SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
シャッター速度:30秒 ISO感度6400 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

写真12

カメラ: Canon EOS 6D レンズ: SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
シャッター速度:30秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

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4.田牛サンドスキー場へのアクセス

田牛サンドスキー場へは自家用車、もしくは公共交通機関を使って行くことができます。自家用車の場合は伊豆縦貫自動車道の月ヶ瀬ICで降りたあと、一般道を走りおおよそ1時間ほどで最寄りの駐車場に到着します(写真13)。なお、駐車場の停められる台数はわずかですので、新月期の休日など混み合うタイミングには早めに到着するよう行動するのがおすすめです。

公共交通機関を使う場合は、JR伊豆急下田駅で下車後、田牛方面行きの路線バスに乗車し、およそ20分ほどで到着します。夜間は運行しておりませんので、時刻表を事前によくご確認ください

写真13
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5.まとめ

中部編Vol21、いかがでしたでしょうか?今回は静岡県下田にある田牛サンドスキー場とその周辺の観光地をご紹介しました。自然の力を間近で感じることができる魅力的な場所で、かつこれからの時期の天の川撮影に最適な場所ですので、ぜひ一度訪れてみてくださいね!それでは次回の更新もお楽しみに!星景写真家の北山輝泰でした。

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。