夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第29回 光跡夜景の撮り方・多重露光編
Photo : Takuya Iwasaki
TOPIX
今回の夜景講座は人気の高い 「 光跡夜景の撮り方 」の 「 応用編 」です。隅田川を被写体にした光跡夜景の撮り方です。近隣にお住まいの方でしたらすぐにでも実践が可能ですね。NDフィルターの活用。初心者でも難しくない、レタッチソフトを使用した比較明合成の操作も解説しています。by 編集部 |
4月半ばに入り、気候もずいぶんと暖かくなってきました。今回は「第8回:光跡夜景の撮り方」に続く応用編として光跡の多重露光を取り上げたいと思います。隅田川大橋の歩道から屋形船の光跡を綺麗に撮るコツからレタッチまでたっぷり解説します。
■光跡の撮影に適した露出時間を計る
大前提として光跡を撮る場合、光跡が画面全体で繋がるために露出時間を見極める必要がある。マニュアル露出だと30秒が最大となるため、光跡を画面全体に入れるのに30秒を超える場合は、「バルブ(B)」での撮影が必須となる。隅田川大橋で船の往来時間を確認したところ、永代橋~隅田川大橋まで60~120秒ぐらいの時間がかかっていた。
写真2 まずは船の運航速度をチェック
■露出時間によってはNDフィルターを活用する
シャッター速度が30秒を超える場合、露出がオーバーになってしまう可能性が高い。一般的に夜景を撮る時は絞りはF11前後でISO感度を100に設定することが多いが、仮に60~120秒シャッターを開けて露出を±0に保つとするとF22~F29ぐらいまで絞る必要があり、回折現象(小絞りボケ)により画質が低下する可能性がある。そのため、NDフィルターを活用することで、絞り込み過ぎずに適正な露出で撮影できる。今回はケンコー製のND4のフィルター(77mm)を活用した。
写真3 NDフィルター
■カメラ側の多重露出設定はOFFに!?
最近のデジタル一眼レフ・ミラーレス一眼はカメラ本体側で多重露出ができるが、基本的にカメラ側の多重露光は使わない方がいい。その場で合成できる手軽さがある反面、合成処理に時間がかかって撮影タイミングを逃してしまう可能性があり、後からレタッチソフトで合成する写真を自由に組み合わせられなくなるからだ。画像の合成はPhotoshopのような有料の専用ソフトを使わずに、本体付属の無料ソフトでも合成できる場合も。
写真5 多重露出設定画面
■長時間露光時のノイズリダクションもOFFに
ノイズリダクションを有効すると、露出時間と同じだけのノイズ低減処理時間が発生し、タイミングが重要視される光跡撮影においては致命的。ノイズはできるだけ目立たせたくないが、RAWで撮影しておいて、後からレタッチソフトでノイズを除去する方が良いだろう。
写真6 ノイズリダクションの設定画面
■タイマーレリーズが無い時のスマホ活用法
30秒を超える場合、タイマー内蔵のレリーズを使っての撮影がおすすめ。通常のレリーズを使う場合、スマホの時計アプリやストップウォッチを使って、露出時間を計ると良いだろう。この方法ではどうしても写真ごとにわずかな露出時間のずれが生じるが、比較明合成であれば少々のズレは気にならないはず。
写真7 スマホの時計アプリを活用
■バルブモードで複数枚撮影
事前準備が整ったところで、実際の撮影に入っていきたい。今回はF13/ISO 100に固定し、バルブモードで80秒程度シャッターを開けた。同じカメラ設定・位置で4枚の写真を撮影。撮影日が平日の夜だったため、休日に比べて船の運航が少なく、かなりの待ち時間が発生した。
写真8 合成写真1枚目(19:51)
写真9 合成写真2枚目(20:07)
写真10 合成写真3枚目(20:24)
写真11 合成写真4枚目(20:35)
■レタッチソフトで比較明合成
撮影後の画像データを開き、CANONのDigital Photo Professionalで比較明合成した。操作方法はいたって簡単で、画像を選択して合成していくだけなので、初心者でも難しくない。
写真12 DPPの多重合成ツール
写真13 レタッチ完成後の写真
■今月のお勧め夜景スポット「隅田川大橋」
今回は光跡を撮影した隅田川大橋を紹介したい。車道の両側(南北)に歩道があり、永代橋と一緒に光跡を撮るなら南側、清洲橋と東京スカイツリーを写すなら北側がおすすめ。公共交通機関でもアクセスしやすく、橋の西側には車とバイクが停められるコインパーキングもあり、アクセスの良さもポイントが高い。
訪問時間:終日(ライトアップは21時まで)
所在地:東京都江東区佐賀1丁目
アクセス:東京メトロ半蔵門線「水天宮前駅」徒歩約8分
料金:無料
URL:https://www.nightview.info/yakei/detail/sumida_bridge/
写真14 隅田川大橋の雰囲気