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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第25回夜景写真のRAW現像・夜空編

Posted On 2016 12月 16
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TOPIX

朝晩の冷え込みが厳しい季節になってまいりました。6回に渡り解説してまいりました ” 夜景写真のRAW現像 ” ですが今回で一端区切りを迎えます。甲府盆地で撮影した美しい夜空を素材として解説してまいります。次回からは撮影編に戻ります。 by 編集部

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12月に入って一段と空気が澄んできて、夜景撮影日和が続いています。今回の「夜空編」はこれまで5回に渡って取り上げてきたRAW現像の連載編としては最終回となります。冬の夜景らしく、街の明かりと夜空を綺麗に見せるためのRAW現像テクニックを解説したいと思います。

写真1 甲府盆地と夜空(After)

甲府盆地の街明かりと夜空

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:16.0mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:1600 / WB:白色蛍光灯 ]
甲府盆地と夜空を一緒に撮影。星系写真と異なり、街明かりも一緒に写し込むため、露出のバランスが非常に難しい。現像前の写真は暗めに撮影し、現像時に空の明るさや彩度を調整している。

写真2 甲府盆地と夜空(Before)

甲府盆地の街明かりと夜空(RAW現像前)

JPEGでレタッチをしていない状態の写真。街明かりは綺麗に写せているが、夜空の暗さと比べるとややバランスが悪く、白飛びしているように見えてしまう。

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■夜空と街明かりを綺麗に撮るポイント

完全に日が落ちた夜の撮影は人工の街明かりを写す「夜景」と、夜空を写す「星景」に別れており、写真家の世界でも「夜景写真家」と「星景写真家」と明確に区別されています。夜景写真家は街明かりの多い都心に出向くことが多く、反対に星景写真家は夜空が綺麗に見える地方へ出向くことが多いため、同じ夜の撮影でも接点がほとんどありません。三脚を立てて長時間露光で撮影するという点では共通しますが、被写体が全く違うため、適切なシャッタースピードやISO感度も変わってきます。私自身は星景を撮ることは滅多にありませんが、時々人工の街明かりと組み合わせて撮ることがあります。街明かりと夜空を一緒に写す時、私は以下のような点に気をつけています。

写真3 甲府盆地から離れた八ヶ岳周辺からの夜景

八ヶ岳周辺から望む夜空と甲府盆地

[ ボディ:CANON EOS M3 / レンズ:EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM / 焦点距離:11mm(17.6mm相当) / 撮影モード:マニュアル / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:640 ]
8月に八ヶ岳周辺を旅行していた時にミラーレス一眼で撮影。レリーズが使えないため、マニュアル露出で30秒めいいっぱい開けて撮影した。撮影場所は甲府盆地と距離があるため、夜空の星がくっきりと見えた。写真はRAW現像で夜空の部分を重点的に露出を上げている。

(1)撮影モードは「バルブ(マニュアル)」が望ましい

通常のマニュアル露出だとシャッター速度の上限が30秒(機種による)となるので、30秒以上空ける場合はバルブモードを使います。そのため、普段からレリーズを活用しています。

(2)ISO感度は400~1600前後を目安

ISO感度を下げて、長時間露光が望ましいですが、シャッターを長く開けすぎると(数分以上)星空の光が動いてしまうため、星の動きを止める場合はISO感度を普段より気持ち高めに設定します。

(3)都心より地方都市へ出向く

都心は明かりが多く、1枚の写真で露出が大きく異なる街明かりと夜空を撮ることは非常に困難です。そのため、明かりの少ない地方都市での撮影がおすすめです。ただし、真っ暗な場所だと街明かりが写せないため、光量が控えめな夜景スポットが良いでしょう。

(4)広角(魚眼)レンズを使う

街明かりは小さく、夜空を画面いっぱいに大きく写すため、35mm換算で16~17mm相当~の(超)広角レンズや魚眼レンズが撮影に適している。

写真4 雲台を180度逆さにしてカメラを固定

雲台を180度傾ける

雲台を180度逆向きに取り付けることで、カメラを真上に向けてもハンドルが三脚に当たる心配が無い。花火撮影でもよく使われるセッティング方法だ。

写真5 魚眼レンズで夜空と工場を写す

夜空と工場を魚眼レンズで写す

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:Tokina AT-X 107 DX Fisheye / 焦点距離:17.0mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:1000 / WB:色温度(2500K) ]
魚眼レンズを使って夜空を大きく見上げるように写した。手前に工場があるが、光量が少なかったため夜空と露出のバランスが取りやすかった。

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■RAW現像のBefore/After

カバー画像で使っている埼玉県・登谷山から撮影した夜景写真をRAW現像してみた。街明かりは現像前の写真も綺麗に写せているが、空の色味がとても地味で、ありきたりな夜景写真に見えてしまっている。

写真6 RAW現像前(Before)

登谷山(Before)

[ ボディ:CANON EOS 5D Mark2 / レンズ:EF17-40mm F4L USM / 焦点距離:17.0mm / 撮影モード:バルブ撮影 / シャッター速度:52秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
街明かりを主体とした夜景写真として見ればやや露出オーバー気味なぐらいでさほど違和感が無いが、夜空が綺麗とは言えない。画面の大半を占める夜空をもう少し綺麗に見せたいところだ。

写真7 RAW現像後(After)

登谷山(After)

段階フィルターを使って夜空の色温度を変えたり、ハイライトや白レベルを高めて星の光を強調した。

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■RAW現像テクニック

それでは具体的なRAW現像テクニックに入っていきたい。これまでのRAW現像テクニックと比べてもさほど難しくなく、押さえておくポイントとしては街明かりの露出は変えずに空の露出をメインで調整するため「段階フィルター」を活用することぐらいだ。

写真8 全体の調整

全体の補正

空だけ青みを強めてしまうと街明かりの色味と違和感が出てしまうため、全体の色味を補正している。自然な彩度を高めると青みだけを強めることができる。
[ 色温度:3800→3200 ][ 明瞭度:+30 ][ 自然な彩度:+30 ]

写真9 段階フィルター

段階フィルター

続いて、段階フィルターで夜空だけを選択。色温度をさらに下げて空の青みを増し、ハイライトや白レベルの調整で星明かりを強調させている。空全体の明るさは露光量で調整しているが、好みでもう少し高めの数値に設定しても良いだろう。
[ 色温度:-30 ][ 露光量:+0.10 ][ ハイライト:+100 ][ 白レベル:+50 ]

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■今月のお勧め夜景スポット「登谷山」

関東平野を一望できる埼玉県下トップクラスの夜景スポット。駐車場から真っ暗で急な坂道を歩くが、遠方からでも足を運ぶ価値が十分にある美しい景色が楽しめる。夜景も美しいが光が遠いため、空気が澄んでいたら夜空も美しい。冬期の訪問は道路の凍結に注意したい。懐中電灯の持参も忘れずに。

夜景スポット名
観賞時間:終日
所在地:埼玉県皆野町三沢
アクセス:関越自動車道「花園IC」から車で約40分(駐車場から徒歩約7分)
料金:無料
URL:http://www.nightview.info/yakei/detail/toyasan/

写真10 関東平野の夜景を一望する

登谷山

伊勢崎市・太田市方面の夜景。東京都心に比べると光量は少ないが、標準~望遠レンズを使えば画面全体にバランス良く光を写し込める(作例は焦点距離50mm)。

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。