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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第14回:展望室で夜景を綺麗に撮るコツ

Posted On 2016 1月 20
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TOPIX

暖冬傾向が一転して例年通りの寒さがやってまいりました。今回の「 夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座 」はそんなもっとも寒い時期にお勧めする撮影スポットでの撮影方法の解説です。比較的あたたかな” 展望室で夜景を綺麗に撮るコツ ”を解説いたします。
by 編集部

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今期の夜景シーズンは暖冬の影響で雪がほとんど降らず、日中も暖かい日が多いようです。ただ、都心でも1月18日の降雪のように、突然大雪が降ることもあるので油断は大敵です。そこで今回は寒い時期こそおすすめしたい” 展望室からの夜景撮影テクニック ”を詳しく解説します。

写真1 大阪府咲洲庁舎展望台からの作例

「大阪府咲洲庁舎展望台」からの夜景

ガラス張りの屋内型展望室から撮影。ガラスが斜めになっていて映り込みを軽減する工夫がされているが、三脚も斜めにセッティングする必要があり、固定に苦労した。焦点距離は16mmの超広角域で、眼下から遠くまで広範囲に写している。

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■展望室撮影の”メリット”

夜景を撮影できる展望室は全国に数多くあるが、展望室ならではのメリットや特徴が見られる。多くの展望室は360度の眺望が広がり、屋内なので季節を問わず夜景を楽しめるのもポイント。治安の心配も無く、女性一人での訪問も心配無いだろう。

写真2 一般的な屋内展望室

屋内展望室の雰囲気

ガラス張りの屋内展望室の様子。観賞者向けにベンチ・自販機などが設けられている施設が多い。真冬でも寒さを気にせずに夜景を楽しめるのは嬉しい。

(1)視界が広く、足元まで景色が広がる

多くの展望室は市街地の中心にあり、眼下まで街の光が広がる。特に有料の展望室は眺望を売りにしていることから、360度の夜景が見渡せる施設が多い。

(2)室内のため室温が一定

屋外の撮影地は真夏なら暑さ、真冬なら寒さが気になるもの。室内の展望室は基本的に冷暖房完備のため、季節を問わずゆったりと撮影が楽しめる。

(3)屋外より安全で治安の心配も少ない

屋外の撮影地で人気の無い真っ暗な場所だと不安を感じることもある。展望室の多くは有人のため、治安面の心配も無いだろう。そのため、カメラ初心者や女性でも安心して訪問できるはずだ。

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■展望室撮影の”デメリット”

展望室は夜景観賞を楽しむ分にはメリットばかりだが、撮影となると屋外に比べてハードルが高くなる。窓ガラスに反射する照明の映り込み対策や固定テクニックが必要になり、施設によっては営業時間など様々な制約が伴う。

写真3 東京都庁展望室の案内表示(一例)

都庁の案内

東京都庁展望室の案内。撮影自体は自由だが、三脚や暗幕類が禁止されている。カメラを固定しての撮影も禁止されていて、撮影のハードルの高さは日本一かもしれない( 2014年6月時点 )。

写真4 映り込みのイメージ

映り込み例

(1)映り込み対策が必要

窓ガラスに室内の照明が反射し、対策をしないとほぼ100%写り込んでしまう。ガラスの向きや室内照明の強さによって映り込み対策の難易度が変わってくる。

(2)固定のハードルが高い

三脚が使えればいいが、三脚の利用が禁止されていたり、ガラスぎりぎりまでカメラを近づけられない施設もある。

(3)営業時間など制約がある

24時間営業の展望室はほぼ皆無。営業時間に決まりがあり、季節によっては営業終了時間の関係で夜景撮影自体ができないことも。また、一部の公共の展望フロアは住民プライバシーの観点から撮影自体が禁止されている施設もある。

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■カメラを固定する3つのテクニック

それでは撮影テクニックを詳しく解説していきたい。まずはカメラの固定方法を考える必要があり、最もベストな方法は屋外と同様に三脚を使うことだが、三脚がNGの施設が多い。その場合、固定自体を禁止されていなければ別の方法で固定したい。やむを得ず手持ちで撮影する場合はISO感度を高めに設定し、絞りを開放寄りにすると良いだろう。なお、カメラの設定は「 マニュアル露出 」または「 絞り優先 」とし、ISO感度を下げて長時間露光が基本。設定自体は屋外での撮影と大差が無い。

写真5 三脚のセッティング風景

三脚をセッティング

(1)三脚にカメラを固定

三脚の利用が禁止されていなければ、最も確実な固定方法となる。屋外と違って、手すりのある施設が多いので、三脚の脚の長さを撮影場所によって臨機応変に変える必要があるため、安価な補強ステーのついたファミリー用三脚は不向き。窓ガラスにレンズが当たらない範囲でギリギリまでレンズを近づけるのもポイント。

写真6 雲台+展示プレート(販売終了)

雲台+展示プレートで固定

(2)固定専用器具を使う


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三脚が禁止されているからと言って、カメラの固定を諦めるにはまだ早い。固定自体が禁止されていない限り、手すりにカメラを置いたり、「 GREEN POD 」などのクッションを間に挟むのも効果的。三脚用の雲台にプレートを取り付ける方法もある。

写真7 カメラバッグにカメラを置く

カメラバッグにカメラを固定

(3)カメラバッグなどを使う

固定器具全般が禁止されている施設での最終手段。手持ちのカバンにカメラを置いて取るのも1つ。ただし、水平を出すのに少し時間がかかるのと固定器具に比べて安定感が無いのが欠点。カメラバッグに置いて撮影するのも禁止されている場合は素直に固定を諦め、高感度で手持ち撮影に挑もう。

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■映り込みを防ぐ3つのテクニック

固定に次に重要となるのが映り込みを防ぐこと。室内の展望室は映り込み対策をせずに綺麗に撮れることはほぼ100%無い。理想は忍者レフや暗幕など専用の機材を使うことだが、特に暗幕類は禁止されている施設も多いので、最も身近な方法としてはコートや上着でカメラを覆う方法が挙げられる。

写真8 忍者レフをレンズに装着

忍者レフ

(1)忍者レフ・暗幕類を使う


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映り込み対策の専用アイテムを使う方法もある。大きな暗幕でカメラの周りを覆うのが最も確実だが、その分周囲への配慮も必要。よしみカメラが発売している「忍者レフ」はレンズに取り付けるだけで映り込みを手軽に防止でき、両手が空くので撮影もスムーズにできる。そのため、夜景写真家の間でも定評がある。

写真9 上着をかぶせる

上着で覆う

(2)上着やコートをかぶせる

忍者レフや暗幕など専用器具が無くても、上着やコートをカメラにかぶせることで、映り込みを低減できる。機材をコンパクトにしたい時に手軽に使えるテクニックだ。できれば、上着やコートは黒系がいいだろう。

写真10 手袋で映り込みを軽減

手袋でレンズ周りを覆う

(3)手袋でレンズの周りを覆う

混雑している場所や暗幕類が禁止されている施設で手軽に映り込みを防げる。黒系の手袋をはめて、レンズの近くを覆うだけで一定の効果が得られる。ただし、レンズを斜めに向けたり、超広角レンズを使った撮影では映り込みを防ぐのが難しくなる。

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■作例紹介

カメラをしっかり固定し、映り込み対策をすると作例のような写真が撮れる。眼下まで街明かりが広がる展望室からの夜景はまさに圧巻。正しい撮影テクニックをマスターして、撮影を楽しんで欲しい。

写真11 作例紹介( 横浜ランドマークタワー スカイガーデン )

横浜ランドマークタワー スカイガーデン

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:16mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

トワイライトタイムに定番の東北東方向を撮影。横浜みなとみらい地区を眼下に見下ろす景観はまさに絶景。超広角レンズが最も活かせる撮影地の1つだ。三脚は禁止されていないが、人気スポットなので周りへ迷惑にならない様、撮影時には十分配慮したい。

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■今月のお勧め夜景スポット「神戸ポートタワー」

神戸市街地・ベイエリアの夜景が360度広がる神戸を代表する展望タワー。市街地の街明かりから、神戸ハーバーランド・メリケンパークまで神戸中心地を一望できるのが魅力。室内の照明が控えめでガラスが斜めになっており、夜景撮影のハードルも低い。

神戸ポートタワー
営業時間:3月~11月【9:00~21:00(最終入場 20:30)】、12月~2月【9:00~19:00(最終入場 18:30)】
所在地:神戸市中央区波止場町5-5
アクセス:JR・阪神「元町駅」徒歩約15分・付近に有料駐車場あり
料金:大人1名700円
URL:神戸ポートタワー・公式サイト

写真12 神戸ベイエリアを超広角レンズで

神戸ポートタワー

最上階(5階)の展望室から撮影。16-35mm(16mm)の超広角レンズで足元から神戸市街地の街明かりまで広範囲に写し込んだ。

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。