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デジカメの「しくみ」
第2回 : 手ぶれ補正 〜しくみ編〜
 
代表的な3つの手ぶれ補正機構のしくみを探る
デジタルならではの特性を活かした「電子式手ぶれ補正」
細かな手ぶれにも対応する「光学式手ぶれ補正」
小型で高精度な補正が可能な「センサーシフト式手ぶれ補正」
2004/10/13
スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ第2版 スタジオグラフィックス、デジカメのしくみ講座の著者、西井と神崎が執筆したデジカメの歴史、カタログの読み方、レンズや撮像素子のしくみなどをやさしく解説した書籍。待望の第二版
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■代表的な3つの手ぶれ補正機構のしくみを探る
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●手ぶれは「手ぶれ補正機構」で解消する
    昨今のデジタルカメラは高倍率化が進み、手ぶれが目立ってしまうシチュエーションが多くなりがちだということは、前回の「手ぶれ補正 〜手ぶれってなに?編〜」で述べました。このために、一般的なユーザーには「デジタルカメラは手ぶれが多い」という認識が広がりつつあるのも、すでに書いたとおりです。そこで、デジタルカメラ・メーカー各社では、この「デジタルカメラは手ぶれが多い」というイメージをなくすために、最近のデジタルカメラには「手ぶれ補正」という機構を装備するようになっています。では、どのようにして撮影の際に手ぶれを解消して、ぶれやボケのない映像の撮影ができるようにしているのでしょうか。今回は、この手ぶれ補正機構のしくみに迫ります。
   
●手ぶれ補正を実現する方法は1つではない
 

 さまざまなデジタルカメラに「手ぶれ補正」が搭載されるようになっているのですが、実は、これらの手ぶれ補正機構は、一定の方法で手ぶれに対する補正が行われているわけではありません。さまざまな考え方と手法で手ぶれを補正しているのです。その証拠に、手ぶれ補正機構を搭載しているデジタルカメラの詳細な商品説明をよく読んでみてください。すると、単に「手ぶれ補正機構搭載」と書いているのではなく、「××式手ぶれ補正機能搭載」と書かれているはずです。しかも、メーカーや機種によってこの「××式」が異なっていることにも気がつくはずです。現在は、このようにざまざまな手ぶれ補正機構が乱立しているというのが現状です。では、なぜ1つの方法ではなく、いくつもの方法が採用されているかというと、手ぶれ補正機構の方式が異なると、メリットやデメリットも違ってくるからなのです。
 ここでは、デジタルカメラに搭載されている代表的な手ぶれ補正機能である

・電子式手ぶれ補正
・光学式手ぶれ補正
・撮像素子シフト式手ぶれ補正

という3つの手ぶれ補正機構にスポットをあてて解説していくことにしましょう。

※このページの冒頭の写真、パナソニックのデジタルカメラ『DMC-FX2』にも、手ぶれ補正機能が搭載されていますが、単に「手ぶれ補正機構搭載」という表記ではなく、「光学式手ぶれ補正機能搭載」と書かれています。

   
■デジタルならではの特性を活かした「電子式手ぶれ補正」
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●数枚のデジタル画像データを比較して手ぶれを補正
   デジタルカメラでは、CCDやCMOSといった撮像素子を使って撮影します。この撮像素子を使って撮影した画像は、デジタルデータとして扱うことが可能になります。デジタルデータは、2つのデータ比較を簡単に行うことができます。この特徴を利用して手ぶれ補正を行うのが「電子式手ぶれ補正」という方法です。
 電子式手ぶれ補正では、その撮像素子を使って撮影できる最大の画素領域よりも、かなり小さめの有効画素領域にしておきます。そして、電子式手ぶれ補正機能を搭載したデジタルカメラで撮影を行うと、撮像素子が撮影した画像をすぐにメモリカードに記録するのではなく、まず一時的にバッファメモリに読み込みます。

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1枚目の撮影画像。
撮影可能画素領域よりも、画像データを作成するための有効画素領域を小さめに設定しておく。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』(神崎洋治・西井美鷹:著/日経BPソフトプレス刊)より引用))
 
 続いて、デジタルカメラは、すぐに次の画像を撮影します。この2番目に撮影された画像もメモリカードに記録せずに、バッファメモリに読み込みます。このとき、被写体が最初に撮影した画像からずれてしまったとしましょう。すると、デジタルカメラは、1枚目と2枚目の画像を比較し、被写体が同じように画面の中に納まるように、2番目の画像で使うデータの領域をずらした場所を有効画素領域をしてしまうのです。こうすることによって、ぶれがないようにデータを記録することができるようになるのです。

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2枚目の撮影画像。手ぶれによって、被写体が当初設定した有効画素領域からはみ出してしまった。
 

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電子式手ぶれ補正作動。1枚目と2枚目を比較し、被写体が同じように画面の中に納まるように、ずらした場所を有効画素領域としてデータを記録する。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より引用)
   
●イメージセンサの面積を有効に使えない
   電子式手ぶれ補正は、撮像素子の有効画素領域を調整することによって補正するので、特別な部品を必要としません。そのため、小型化と低消費力で運用できるというメリットがあります。しかし一方で、イメージセンサの受光面積を有効に使えないという最大のデメリットがあります。通常のデジタルカメラで使っている有効画素領域は、撮像素子の90%程度ですが、電子式手ぶれ補正を使う場合は60〜50%を有効画素領域としていることが多いようです。つまり、撮影できる画素数も60〜50%になってしまいますから、これではせっかく高画素化したCCDやCMOSを採用しても、その恩恵が得られないということになってしまいます。
   
●実は静止画には無力
   電子式手ぶれ補正は、複数の画像データを連続して観たときにぶれないようにすることができる機能です。このとき、1枚ごとの画像をみるとぶれが発生してしまいます。したがって、電子式手ぶれ補正は、この複数の画像を計算でぶれないように見せる合成機能が搭載していれば別ですが、通常は静止画には効力がないのです。そこで現在では、静止画を撮影するデジタルカメラにはあまり採用されていません。デジタルカメラに採用されていても、動画を撮影するときにだけ使われて、実は静止画撮影時には使えないという機種が多いので、購入の際にはよく確認しておきましょう。
>> 関連記事
  手プレ(手ぶれ)については、スタジオグラフィックス特別企画
  「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!」の「手ぶれ補正のしくみと特長」も
  ご覧ください。
■ 細かな手ぶれにも対応する「光学式手ぶれ補正」
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●光の屈折を利用して手ぶれを補正する
   手ぶれを光学的な観点からみると、シャッターが開いて最初に撮像素子に届いた光の位置と、閉じる寸前の状態に撮像素子に届いた光の位置がずれてしまうことによって生じるものだといえます。つまり、この間に光が届く位置がずれなければ手ぶれも発生しないというわけです。そこで、光の屈折を利用して、この光が届く位置をずれないようにする方法が考え出されました。それが「光学式手ぶれ補正」という方法です。
 「光の屈折を利用する」というのは、デジタルカメラのレンズで起こる光の屈折を通常とは違うように変化させます。ところで、皆さんは、デジタルカメラのレンズは、実は1枚のレンズではできていないのはご存じでしょうか。つまり、我々が「レンズ」と呼んでいる部分は、正確にいうと何枚かのレンズを組み合わせた「レンズ部」と云えるわけです。このレンズ部の中の一部のレンズを動かすと、光の屈折は通常とは変わります。光学式手ぶれ補正では、この性質を利用します。
 実際の光学式手ぶれ補正機能では、手ぶれによってカメラがどれくらい動いたかということが分かるような、振動ジャイロと呼ばれているセンサーが組み込まれています。この振動ジャイロがカメラの移動を関知すると、光が届く位置のずれを打ち消す方向にレンズの一部を動かします。これによって、手ぶれによってカメラが動いても、シャッターが開いて最初に撮像素子に届いた光の位置と、閉じる寸前の状態に撮像素子に届いた光の位置を同じ位置にすることが可能になるのです。


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手ぶれのない状態。
 
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手ぶれ発生。本来の到達点とは違う位置に光が届いてしまう。このずれが手ぶれとなって画像に現れてしまう。
 
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光学式手ぶれ補正作動。レンズの一部を動かして光の屈折を変え、光を本来の到達点に届くように調整する。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より引用)
   
●設計がとても難しく高価で大型になりがち
   光学式手ぶれ補正のデメリットは、設計がとても難しいということです。なにしろ、すべてのレンズが固定している状態でのレンズ部分の設計ですら高度な技術や知識を要するのに、カメラが動いていない状態とカメラが動いてしまった状態とで、同じような位置に光が届くようにレンズを設計するのは至難の業と云えます。また、手ぶれは補正されるというものの、厳密に光学部分だけに着目すると、色収差が大きくなるなど細かい部分で光学性能が劣化してしまうという点もマイナス要因です。また、振動ジャイロやレンズを動かす機構を組み込まなければいけませんから、手ぶれ補正機構が大きくなってしまい、デジタルカメラ本体の小型化に対してのデメリットもあります。
 しかし、ようやく最近になって振動ジャイロやレンズを動かす機構に小さなものが開発され、ごく一部ですが手のひらサイズのコンパクトなデジタルカメラにも光学式手ぶれ補正が搭載されるようになってきました。
   
■小型で高精度な補正が可能な「センサーシフト式手ぶれ補正」
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●光学式手ぶれ補正の弱点を解消
   光学式手ぶれ補正は、設計が難しいだけでなく、光学性能が通常よりも劣ってしまうというデメリットがありました。そこで、光の屈折を変えて本来の到達点に光を届けるようにするのではなく、本来の到達点に撮像素子を移動させてしまおうという考え方が出てきました。これが「センサーシフト式手ぶれ補正」です。これは、使用している撮像素子によって「CCDシフト式手ぶれ補正」と呼ばれたり、センサースイング式手ぶれ補正と呼ばれることもあります。
 補正の動作原理は、光学式手ぶれ補正に良く似ていて、振動ジャイロがカメラの移動を関知すると、光が届く位置のずれ分だけ撮像素子を動かしてしまうというものです。


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手ぶれのない状態。
 
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手ぶれ発生。
本来の到達点とは違う位置に光が届いてしまう。このずれが手ぶれとなって画像に現れてしまう。
 
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センサーシフト式手ぶれ補正作動。
撮像素子を動かして光を本来の到達点に届くように調整する。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より引用)
 
 
 レンズの一部が動くようなことがないため、基本的な画質の劣化を伴わずに手ぶれ補正が可能となります。また、レンズ部が納まっている銅鏡部分にレンズを動かす機構を組み込まなくても良いので、ボディのサイズをさほど大きくしなくても手ぶれ補正ができます。そして、レンズ交換式のデジタルカメラの場合、光学式手ぶれ補正を行うには、その機構を持ったレンズを装着したときしか手ぶれ補正を行えませんでしたが、センサーシフト式手ぶれ補正なら、原則的には今まで販売されていたレンズがすべて手ぶれ補正の対象となるというメリットもあります。
   
●撮像素子が大きくなると設計が難しい
   今のところ、目立った弱点がほとんど挙げられていないセンサーシフト式手ぶれ補正ですが、撮像素子が大きくなったときに、問題が発生するかもしれないと云われています。それは、撮像素子が大きくなると、移動する量が増えるためです。またこのとき、撮像素子は光の進入に対して垂直な平面上でのみ移動することが重要になるのですが、実際にはガタが発生して撮像素子が光の進入方向に傾いてしまったり、平面上で回転するように動いてしまうことが考えられます。これが、1/2インチや2/3インチという小さめな撮像素子なら問題がない場合でも、APS-Cサイズの撮像素子になると画質に影響を及ぼしてしまうかもしれません。また、製品の寿命も撮像素子が固定されているものに比べて短くなってしまうのでは、という懸念もあります。
 このようにサイズの大きな撮像素子の製品が市場に登場するときには、万全を期してリリースされると思いますが、まだまだ未知の製品ですから、さまざまなレビューなどにじっくりと目を通してから購入を決めた方が良いかもしれませんね。
   
●効果的な機能なので購入の際にはぜひ検討を
   手ぶれ補正機能を搭載したデジタルカメラの多くは、その性能をいかんなく発揮していて、多くのユーザがその恩恵をあずかってボケの少ない写真を撮っています。手ぶれ写真が多かったり、このピンボケはもしかしたら手ぶれの方のボケなのでは…、と思った方は、次のデジタルカメラを購入するときには、手ぶれ補正機能を搭載されている機種の検討をしてみては如何でしょうか。

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Text by 西井美鷹(デジカメWEB)
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