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高崎勉のネットショップのための商品撮影講座
~ 第3回 プロダクトカットとは


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大変お待たせをいたしました。第3回の公開をリクエストメールいただいた読者の皆様にはこの場をお借りしてお詫び申し上げます。前回はイメージカットの解説でしたが、第3回は「 プロダクトカット 」の解説です。 by 編集部

みなさんこんにちは。フォトグラファーの高崎勉です。
僕は写真講座「Takasaki Seminar」を主催していますが、受講者は初心者からプロ向けまで幅広く、テーマも商品撮影からアートまで様々です。
先日、ネットショップを運営している受講者から「 高崎先生に教わった通り撮影してアップした商品の売れ行きが著しく伸びている。 」と嬉しい報告をいただきました。
僕のおかげではなく、その方の努力の賜物なのですが、やはり商品写真の質は売り上げに大きく関わるのだということは間違い無いようです。

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■ 2種類あるプロダクトカット

商品が持つ世界観を表現するのが「 イメージカット 」であり、「 色、形、質感 」を正確に伝えるのが「 プロダクトカット 」ということに触れました。
今回は「 生姜みつ 」というボトルの商品を例にプロダクトカットについて掘り下げてみましょう。

プロダクトカットは「 切り抜きカット 」と「 角版カット 」に分けられます。

この2つの違いは後に解説しますが、ボトルなど自立する商品撮影の場合、まず用意していただきたいのは白い背景の舞台です。(図1)

▼写真1
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まずはテーブルの上にB1サイズ程度の白い紙を置き、手前の辺が動かないようにテーブルの端に止め、カメラから遠い辺をアール状に立ち上げます。いらない箱などにもたれ掛けさせることで大丈夫です。
テレビ局や撮影専用のスタジオでは「 白ホリゾント 」といって白い床と壁の境が柔らかい曲面になっているのですが、それの縮小版とお考えください。

これで全てが撮れるというわけではありませんが、今回撮影する商品の「 切り抜きカット 」と「 角版カット 」はこれを舞台に、そして照明はどなたも入手しやすい、一般家庭でもお使いのLED照明を使って撮影を進めます。
( ただし、今回はカットの違いを重点に解説しますので照明の方法は後日詳しく解説いたします。 )

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■ 切り抜きカットについて。

▼写真1

「 生姜みつ 」の「 切り抜きカット 」

「 生姜みつ 」の「 切り抜きカット 」

これは切り抜き用の写真です。
文字通り「 切り抜きカット 」は製品の輪郭で切り取って使われます。下のセッティングの様子をご覧ください。ボトルの両脇に黒い板がありますね。これは商品の輪郭を際立たせて切り抜き作業ができるように実際に商品の両脇に黒い板を置いて撮っています。
また、商品は床の白い紙の反射を過度に影響しないよう、透明のアクリルキューブの上に置いて浮かせています。

▼写真2

商品の輪郭を出すために黒ボードを置いたセット

商品の輪郭を出すために黒ボードを置いたセット

切り抜き写真は小さく使われ、アイコン的な役割を担うことが多いですが、大きくポスターの中央に堂々と扱われるケースもあります。

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■ 角版カットについて

「 切り抜きカット 」対して「角版カット」は商品の周囲の余白ごと使用する写真です。

▼写真4

「 生姜みつ 」の角版写真1

「 生姜みつ 」の角版写真1

▼写真5

「 生姜みつ 」の角版写真2

「 生姜みつ 」の角版写真2



背景も足元の影もそのまま使われます。必要に応じて余白に商品の説明やキャッチコピーなどの文字要素がレイアウトされることがあります。

▼写真6

角版カットの撮影セット

角版カットの撮影セット

『 だったらこの「 角版カット 」があれば、そこから商品だけを切り抜いてしまえばいいじゃないか? 』とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。ですが「 角版カット」は「 商品以外の画面の余白にも気を配った写真 」であり、切り抜くことに適さない場合がほとんどです。

「 切り抜きカット 」は「 切り抜けること 」、そして画面の商品以外の余白には何が写っていても構わないので「 切り抜いた時に商品が正しく再現されていること 」。一方、「 角版カット 」は前述のように「 商品以外の画面の余白にも気を配った写真 」ですので、写真の使用用途が違うのです。

写真によっては角版カットで「 切り抜き 」にも耐えうる写真が撮れることもあります。紙で出来たパッケージなどは周囲の反射も少なく、角版カットから切り抜けることが多いです。

下の画像をご覧ください。

▼写真7

切り抜きカットの商品のエッジ

切り抜きカットの商品のエッジ

▼写真8

角版カットの商品のエッジ( 拡大写真 )

角版カットの商品のエッジ( 拡大写真 )



[ ▼ 写真7 ] 切り抜きカットの写真ではエッジの輪郭がしっかりしていて、はるかに切り抜きやすい。写真を何かの背景に挿入した際に商品が際立って存在するのです。
このように商品を正確に伝えるための「 プロダクトカッ ト」には「 切り抜きカット 」と「角版カット」の2種類があることをお分かりいただけたでしょうか。

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■ 今回の1枚

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ファッションブランド「junhashimoto」のシーズンイメージビジュアルです。
ファッションデザイナーの橋本淳氏に僕の作品を気に入って頂き、Art Didector太田弘之さんのディレクションのもと撮影しました。
よく「合成ですよね。」と言われますが、、、いえいえ、一発で撮影しています。

■ 次回予告

次回はさらにプロダクトカットについて掘り下げます。お楽しみに!

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著者について
■ 高崎 勉 - Tsutomu Takasaki - 1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1999年高崎写真事務所設立。静物写真にこだわり続け、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動する。「毎日広告デザイン賞 発言広告の部 最高賞」はじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広く雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。2017年に開講した Abox Photo Academy 塾長。商品撮影講座&アートフォト講座の講師を務める。