スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

山添太の模型撮影のススメ ~ 第3回 模型撮影のための撮影環境を整えよう

Posted On 2022 4月 13
Comment: Off


Photo & Text:山添太


TOPIX

2022 年より新連載が開始されました「 山添太の模型撮影のススメ 」の第3回目です。読者の方より「 次の更新が楽しみです。」とのお言葉をいただきました。誠にありがとうございます。今回は前回の『セッティング編 』に引き続き環境構築である『 模型撮影のための撮影環境を整えよう 』をお届けします。 by 編集部

Go To Top

こんにちは、山添 太です。さまざまな事情でおうち時間が増えている中でも大手を振ってカメラ趣味を楽しめてしまう「模型撮影のススメ」。前回は模型撮影におけるカメラのセッティング方法を中心に解説しました。今回は被写体のセッティングについて。模型撮影を行なうにあたって、どういった撮影環境がベターなのかをご紹介。一般的な物撮り撮影と共通する内容がほとんどですが、模型撮影で陥りがちなシチュエーションについてもじっくり解説していきます。後半は、私が個人的にオススメする模型についてお届け。最後までぜひご覧ください!

Index

1.なるべく避けたほうが良い、模型撮影シチュエーション

模型に限らず一般的な物撮りにもいえることですが、基本的には被写体を邪魔する要素は限りなく省いたほうが良いです。特に模型は実物の縮尺モデルなので、身の回りの小物類はもちろん、普段の生活ではあまり気にならないレベルのゴミやホコリが映り込むだけでも見映えに多く影響してきます。ここで挙げる2つの例は模型写真でよく見かけるものですが、メインの被写体に影響を及ぼすシチュエーション。もちろんそれが意図して作り出したものであるならその限りではありません。

Go To Top

1-1.製作現場で撮る写真

写真1

製作中のライブ感や模型らしさを出すなら有りだけれど…?

以前は SNS などでもよく見られたカッターマットの上で撮影するというもの。完成直後であることを発信する写真としては良いと思いますが、模型をしっかり見せる写真としては微妙。使い込まれたカッティングマットは結構汚れていて見映えも良くないですし、実物の工具が一緒に映るとスケール感が引っ張られておもちゃっぽく見えてしまいます。

1-2.お部屋の壁紙で1枚

写真2

スッキリ見えるけど、壁紙や机の模様が少し気になる

無駄な要素は排除され、製作現場での写真に比べるとかなりスッキリした印象です。ただ、小さい被写体に寄った分、壁や机の模様が大きく写ってスケール感が少々ちぐはぐに見えます。寄った物撮りではなく少し引いたお部屋の状況写真にし、インテリアの一部として模型を写り込ませたものならカッコいい写真になりそうです。

2.背景紙を使って模型が際立つ撮影環境へ整えよう

被写体以外の余計なものを排除した撮影環境を作るには、背景紙を用意するのが手っ取り早いです。画角に収まるなら画用紙やコピー用紙などでも OK。ただし、色付きのものは被写体への色かぶりが懸念されるのでなるべくなら白、黒、グレーといった色味の無いものがオススメです。

写真3

使ったのはPVC製の背景紙。紙製よりもシワや折れに強く、汚れた場合もキレイにしやすく便利。サイズや色もさまざま。通販などでも手軽に購入できる

2-1.地明かり撮影なら露出に左右されにくいグレーを推奨

背景は敷くだけでなくキレイに写すことも重要。白であれば白く、黒であれば黒く写したいところですが、それにはそれ用のライティングやセットを組まないと、露出をグレーに合わせるカメラの特性上、被写体の露出にも影響が出てしまいます。グレーであれば、地明かりのみでも被写体・背景紙ともに適正露出を取りやすいです。ホワイトバランスの調整もしやすいという利点もあります。

写真4

グレーをバックに部屋の蛍光灯下でカメラ任せに撮影したもの。硬い光になってはいるが、被写体、背景紙ともに適正露出の写真が撮れた

写真5

コチラは白背景。被写体に露出を合わせると背景がグレーになってしまう

写真6

逆に白背景に合わせると被写体がオーバー気味になってしまった

写真7

黒背景がオーバーに映ると妙にチープで失敗写真である雰囲気が強まるので注意

写真8

アンダーにして黒背景を強調すれば渋い雰囲気にはなる。ただし暗く落ち込んだところが増えて情報量は減ってしまう

写真9

こちらは黒背景でライティング撮影したもの。黒背景では被写体が締まってみえるので模型が映えやすい。ライティングができる方は黒背景がオススメ。簡単な方法は次回以降お届け予定

Go To Top

3.実はとてもむずかしい屋外撮影

模型専門誌や SNS でも見かける屋外での模型写真はまるで実写のようで、非常に魅力的です。撮影環境を作る必要はなく、自然光のおかげで被写体もキレイに写ってくれるので、一見お手軽な感じもします。が、やってみるとかなりハードルが高いです。まず、雨の日には撮影ができないなど天候に左右されます。雨だけでなく風が強い日も難しいですね。模型はプラスチックなのであっという間に飛ばされてしまいます。電線、フェンス、民家、柵、自動車、人…注意深く観察すると邪魔なモノがかなり多いことにも気付かされます。でも、数ある悪条件をクリアできれば、屋内セッティングでは真似できないような模型写真が撮れるのも確か。幸いトライするハードルは低いので、トライ&エラーを重ねて、ベストな屋外撮影方法を模索してみてはいかがでしょうか。

写真10

車に似合うアスファルトも1/24スケールではガレた岩山。身近なものに頼ってしまうとおのずと俯瞰アングルばかりになってしまうのも屋外撮影あるある

写真 11

直日は真夏をイメージさせるカチッとした画作りには向いているが、表面のゴミなどが目立ちやすい。意外と屋外はゴミが乗りやすいので注意

写真 12

日陰や曇り空の時のほうが天然のディフューザー代わりになって被写体に光が回りやすい。ホワイトバランスの設定には注意したい

写真 13

たとえスケールエフェクトがあっても、シチュエーションにマッチした仕上げを施したりすれば、カメラのセッティング次第で違和感を軽減させた写真にすることもできる

Go To Top

4.オマケ:本日のオススメ模型「ハセガワ 1/24 いすゞ 117クーペ」

写真 14

製作期間は3日弱。多少塗装がよれてもクラシックカーであれば味になってくれる

ハセガワから 2021 年 12 月にリリースされたばかりのいすゞの名車「 117クーペ 」です。カメラファンの間でもおなじみのジョルジット・ジウジアーロが手掛けた車としてもおなじみ。完全新金型キットなのでパーツの合いは良く、実車再現が細かいので、組み上がった時の満足感は高いでしょう。ちなみに「 完全新金型 」というのは、新たに金型を作り起こした最新の模型ということ。一部のパーツがそうで、大部分は数十年前のキットという商品は多数存在するのでご注意ください。基本的には新しいキットのほうが作りやすいですよ。

写真 15

ボディは一体成型。緩やかなカーブを描いたリアのフォルムが特徴的、車模型はボディパーツを眺めるだけで充分楽しめる

写真 16

メーター周りの造形も細かい。デカールを貼ると実車らしい雰囲気にガラリと変わるので、組んでぜひ体験してほしい

写真 17

ちなみに接着剤は必要。塗布するタイプ(左)と流し込むタイプ(右)は最低限必ず用意しよう。瞬間接着剤があると何かと便利

Go To Top

5.次回予告

次回は模型撮影ライティングについてお届けしていきます!

Go To Top

Go To Top

 

著者について
山添 太(やまぞえ ふとし) 編集者、ライター 1983年生まれ。出版社に編集者として在籍中にカメラの面白さに魅了され、カメラやレンズの収集、撮影のみならず、自家現像や自家プリントにもトライ。カメラ関連の特集や単行本も多数手がけた。現在はフリーランスとして活動中。カメラ関連を始め、趣味にまつわるジャンルで多岐にわたって編集・執筆を行っている。