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高崎勉のネットショップのための商品撮影講座
~ 第2回 商品撮影の基礎 ~ イメージカットとは

Posted On 2015 6月 26
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TOPIX

第1回に大きな反響をいただきましてありがとうございます。SNSで多くのシェアをいただきましてこの場をお借りして御礼申し上げます。さて、今回より商品撮影の実践編です。最初は特別なライティング機材は使用せず、自然光での撮影を解説いたします。お楽しみに! by 編集部

第1回の「 商品撮影の基礎 ~ 必要な機材編 」はいかがでしたか。スタジオグラフィックス on the Web の編集部より、記事が好評であったことを聞き、僕もますます撮影・執筆への意欲がわいてきました。今回より具体的な撮影方法について解説してまいりますが、撮影方法の解説に入る前に大変重要な『 イメージカットとプロダクトカットの違い 』について冒頭にてご説明したいと思います。

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■ イメージカットとプロダクトカット

商品カットは「 イメージカット 」と「 プロダクトカット 」に大別されます。
「 イメージカット 」は商品の世界観を表現し、写真を見た方の購買意欲をそそるのが目的です。イメージカットでは、伝えたい世界観が表現されていれば「 形、色、質感 」が多少デフォルメ( 歪曲 )されても構わないというケースが多いです。
「 プロダクトカット 」はそれに対して商品の「 形、色、質感 」を正しく伝えるための写真です。 撮影に入る前に、「 イメージカットを撮る 」のか「 プロダクトカットを撮る 」のかを、しっかり決めてから撮影に入ることが重要です。

▼写真1 プロダクトカットの作例

はちみつのフォルム・ラベルの文字をしっかり識別でき、色・形・質感が伝わる。 製品提供:株式会社みつばちの詩工房

はちみつのフォルム・ラベルの文字をしっかり識別でき、色・形・質感が伝わる。
製品提供:株式会社みつばちの詩工房

▼写真2 イメージカットの作例

手前のはちみつのラベルは前ボケして読み取ることができないが、はちみつの持つ、透明感・さわやかなイメージが写真を見る人に伝わるよう撮影。 製品提供:株式会社みつばちの詩工房

手前のはちみつのラベルは前ボケして読み取ることができないが、はちみつの持つ、透明感・さわやかなイメージが写真を見る人に伝わるよう撮影。
製品提供:株式会社みつばちの詩工房

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■イメージカットを撮影しよう

イメージカットとプロダクトカットの違いはご理解いただけたでしょうか。それでは、第1回で揃えていただいた、カメラ、三脚、銀レフを使って早速イメージカットを撮ってみましょう。
今回被写体としたのは「 3種類のはちみつ 」です。
「 いきなり、イメージカットから撮るのですか? 」と驚かれるかもしれませんが、意外とイメージカットの方が初心者にも撮りやすいのです。
「 プロダクトカット 」が商品を正しく描くデッサンだとすると、イメージカットは油絵具で描く抽象画と言ってもいいかもしれません。もちろんどちらも技術は要しますが、鉛筆1本で商品の絵を正確に描くより、抽象画の方が上手く見えることもあります。( 第3回に「 プロダクトカットの撮り方 」を解説します。 )

▼写真3窓辺でのセッティング

室内のライトを全て消し、外からの自然光が射している。はちみつ瓶の影が手前に落ちているのが確認できる。

室内のライトを全て消し、外からの自然光が射している。はちみつ瓶の影が手前に落ちているのが確認できる。

いきなりライティング機材を使用して撮影するのは難しいので今回は自然光で撮ってみましょう。「 朝のイメージで爽やかな仕上がりにする 」ためにツヤのある白い台を用意しました。

「 窓 」といっても、大きな窓から小さい窓まで、そして直射日光が入ったり、隣のビルの壁の反射光が入ったりと撮影環境は様々でしょう。
ですが少しでも光が入るのでしたら、まずは気にせず撮ってみましょう。
僕のアトリエでは午後は直射日光が入らないので周囲の建物に跳ね返った光で窓辺が柔らかく照らされます。撮影をする時は基本的に室内の電気は全て消してください。


自然光をメインにすると決めたら、室内の他の光は邪魔になります。時折、室内の電球などが影響して偶然いい感じに撮れることもありますが最初から付いていると迷うばかりです。

室内の灯りを全て消すと窓辺に置いた時点で商品は部屋の中を向くので「 逆光 」になります。

▼写真4 「 写真3 」のセッティングで撮影

ラベルが暗く、キャップのメタリックも黒くなっている。

ラベルが暗く、キャップのメタリックも黒くなっている。

「 朝のイメージで爽やかな仕上がりにする 」イメージカット撮影を目的としていたのにこれでは目的を果たせていません。そこで、用意していただいた銀レフの出番です。外光を銀レフで反射させ商品に向けると、商品の顔を明るく照らします。銀レフを調整して適正な明るさを操作します。

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■銀レフ板で光を補う

▼写真5左サイドのみレフをセットし光を商品に反射させるセッティング

窓からの外光を反射させ「 商品の顔 」に光を補う。

窓からの外光を反射させ「 商品の顔 」に光を補う。

▼写真6 「 写真5 」のセッティングで撮影

写真4 と比較すると左側からレフ板により光が補われ、商品のラベルが見やすくなっている。

写真4 と比較すると左側からレフ板により光が補われ、商品のラベルが見やすくなっている。

▼写真7 両サイドにレフをセッティング

両サイドから光を補う

両サイドから光を補う

▼写真8 「 写真7 」右側の手作りレフ板

ブックスタンドにクリップで銀紙を挟む

ブックスタンドにクリップで銀紙を挟む

▼写真9 「 写真7 」のセッティングで撮影

両側からのレフ板により光が補われ、片側レフ板よりさらに商品ラベルが明るくなっている。

両側からのレフ板により光が補われ、片側レフ板よりさらに商品ラベルが明るくなっている。

部屋の反対側にも窓があってちょうどレフの代わりになるようであればレフは要らないで
しょう。 また、反対側の窓からの光が強すぎてしまうようでしたら、窓をカーテンで光を遮るなどをして光の調整をします。
また、商品撮影は商品の近くに寄って撮影することが多いので、ご自身が着ている洋服の色が商品に映りこむ場合があります。映りこみが撮影した写真の仕上がりを左右することがあるので注意してください。

「 写真4、6.9 」はどれが良くてどれが悪いという話ではありません。今回は 「 朝のイメージで爽やかな仕上がりにする 」ことを目的としたので 、「 写真4 」はやや適さないと考えられます。
大切なのは、ご自身がどんな写真で「 どのように表現したいか 」ということにより、レフ板の有無、レフ板の位置・角度などの要素を使い分けることです。
今回は、「 レフがあることでこれだけ表現の幅が広がる 」ということをお判りいただければいいと思います。

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■今回使用した機材

▼写真10

タムロン製28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)

タムロン製28-300mm F/3.5-6.3
Di VC PZD (Model A010)

▼写真11

ベルボン製 Geo Carmagne N740 セット

ベルボン製 Geo Carmagne N740 セット

▼写真12

レフを立てる時に利用したブックスタンドとクリップ

レフを立てる時に利用したブックスタンドとクリップ

今回紹介した商品をアマゾンで価格を見る

タムロン製28-300mm

ベルボン製 Geo Carmagne N740セット

ブックスタンド

クリップ

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■ 今回の1枚

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昨年( 2014年 )2月に発刊されました12冊からなるJPCOシリーズ写真集のVOl.3に僕の作品「 Silhouette( 影絵 ) 」が選出されました。
「 スタジオで撮ったのですか? 」とよく尋ねられますが、これは屋外で撮っています。特別な技法というよりは普段誰もが目にしている光景がヒントになった作品です。その種明かしは、またの機会に(笑)。



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■ 次回予告

さて、次回は「 プロダクトカット 」についての撮影のコツを解説していきます。でお楽しみに!

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著者について
■ 高崎 勉 - Tsutomu Takasaki - 1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1999年高崎写真事務所設立。静物写真にこだわり続け、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動する。「毎日広告デザイン賞 発言広告の部 最高賞」はじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広く雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。2017年に開講した Abox Photo Academy 塾長。商品撮影講座&アートフォト講座の講師を務める。