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高崎勉のネットショップのための商品撮影講座~ 第4回 プロダクトカットとは( 後編 )


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TOPIX

お待たせをいたしました。今回の「 高崎勉のネットショップのための商品撮影講座 」は前回に引き続きましてプロダクトカットの解説をいたします。右肩上がりのネット通販ですが、売上を伸ばしていくためには魅力的なプロダクトカットを掲載することが重要です。プロダクトカットの技術はぜひ磨きたいものですね。by 編集部

みなさんこんにちは。フォトグラファーの高崎勉です。
今回も前回に続きましてプロダクトカットの解説をいたします。プロダクトカットの前篇はコチラを参照してください。今回はプロダクトカットをより魅力的に見せるテクニックを解説いたします。

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■ ハイライトの入れ方で質感を伝える

ここでご紹介した「生姜みつ」のプロダクトカットにもあるように、商品写真にはボトルに向かって左側にはいっているような明るい光の帯や面や点が写っていることがあります。これを「ハイライト」と呼びます。

▼写真1
名称未設定

ハイライトはただ、ライトが映り込んでいるというわけではなく、「 物の立体感と素材感を表現する手段 」なのです。

このハイライトがあることで艶のある商品の場合はハイライトの線がくっきりと出ます。ですが、スリガラスのように表面がマットな仕上げのガラス製品だとハイライトが曇って光の強さも抑えられたように写ります。写真を見た人は無意識のうちにそこから商品の質感を感じ取るのです。

特に化粧品に多いのですが、同じブランドのシリーズの中で、その種類によって容器の表面の素材を変えることがあります。そういった場合には特に留意し、商品の質感の差を正確に伝えなければなりません。

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■ 商品の世界観を伝えるイメージカット

さて、今回はプロダクトカットのお話ですが、イメージカットの記事解説から時間も経ちましたので復習の意味も込め、同じ商品でイメージカットも撮ってみました。( イメージカットの詳細解説は「 第2回 商品撮影の基礎 ~ イメージカットとは 」を参照ください。)「 角版カット 」には背景にイメージに合う素材や色を用いることもあります。
さらに小道具なども配置したりして「 商品の見た目の情報 」よりも「 商品の世界観を伝える 」ことで購入意欲を煽る目的の写真を「 イメージカット 」といいます。

▼写真2
写真10

この写真( ▼写真2)は遠くの緑を背景にして望遠レンズで撮りました。窓辺の自然光のみで、逆光になるため銀レフを使用して手前が暗くなりすぎないように光を起こしました。

▼写真3

窓辺での撮影風景

窓辺での撮影風景

「 イメージカット 」は、商品の正確な表現を求められる「 プロダクトカット 」に対して、多少デフォルメ( 変形・歪曲 )してでも世界観や使用感を想起させるための写真です。認知度の低い商品がイメージカットでデフォルメされたり、一部だけをクローズアップされたりする場合は、その広告媒体のどこかに「 プロダクトカット 」を添えて正しく商品の情報を伝えることが慣例です。

「 ▼写真2 」のイメージカットも背景のカップや風景のピントを甘くなるように絞りは開放近辺で撮っています。そのため商品のエッジが甘くなっていますが、ここではイメージを伝えることがこの写真の目的ですから問題ではありません。

▼写真4

プロダクトカット作例

プロダクトカット作例


広告でモデルやタレントを起用して製品の世界観を伝えるための写真のも「 イメージカット 」のうちです。
ここ数年で商品を用いたイメージカットの事を広告業界では「 シズルカット 」とも呼ぶようになりました。「 シズル 」というのは主に料理や飲料品の写真で使われる言葉だったのですが、「 生き生きとした 」、「 水々しい 」という表現がそのまま化粧品やその他の商品写真の「 イメージカット 」に代わる言葉として使われるようになりました。
みなさんが「 ネットやカタログで製品を売りたい。」とお考えになった時には、まず、「 イメージカットが欲しいのか 」、「 プロダクトカットが欲しいのか 」どちらの写真が必要なのかを考える必要があります。

ご自身で撮らずにプロカメラマンに依頼するときも「 商品カットを撮ってください。」だけではカメラマンも困ってしまいます。
例えば、
『 サイト内で製品をクリックする箇所にアイコン的な写真が欲しいから「 正面から見た切り抜きカット 」が欲しい。』といったように具体的に要求を伝えます。
さらに、「 サイトのトップページにはイメージカットが欲しい 」となったら、では「 どんなイメージカットが必要なのか 」を考えて撮る人に伝えなくてはなりません。
それを無条件にカメラマンに任せてしまうと、横長のイメージ写真が欲しかったのに、商品が縦長だからといって縦構図の写真が仕上がったりします。どんな場面でどのような写真が必要なのかを検討するが撮影の第一歩です。

他人に依頼するときはもちろん、ご自身で撮影なさる時もどんな写真が必要かを整理し、「 撮りたいイメージ 」を固めて撮影に臨むことが肝心です。

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■ 今回の1枚

2015.10

株式会社パシフィックプロダクツ「LaCASTA広告用」イメージ写真です。撮影現場で商品に配合されたハーブの説明を受けながら僕が自分でリースを作成しました。もちろん商品も一緒に1ショットで撮影しています。

■ 次回予告

次回は撮るのが難しいとされる「 白い商品 」の撮影方法です。お楽しみに!

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著者について
■ 高崎 勉 - Tsutomu Takasaki - 1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1999年高崎写真事務所設立。静物写真にこだわり続け、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動する。「毎日広告デザイン賞 発言広告の部 最高賞」はじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広く雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。2017年に開講した Abox Photo Academy 塾長。商品撮影講座&アートフォト講座の講師を務める。