イベントレポ「SG on the ROAD ポートレート撮影セミナー ハウススタジオ編
講師:高桑正義 supported by カールツァイス」
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去る 2020 年2月1日(土)に行われた「 SG on the ROAD ポートレートセミナー <ハウススタジオ編> 講師:高桑正義 」。当サイト連載記事「 大村祐里子のプロ写真家に聞くライティング術2 」の第8回にご登場頂いた写真家・高桑正義氏を講師に招き、ハウススタジオを貸し切ってのロケーションで行われた、テーマ別に3部開催となったセミナーの様子をダイジェストでお伝えします。当日のモデルは稲葉マリさんです。 by 編集部 |
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本セミナーのロケーションには、広告写真の撮影でも使われる STUDIO MOURIS が選ばれた。当日はカールツァイスとニッシンジャパンの協賛により、スタジオには両社の撮影機材が多数持ち込まれた。前者は、SONY E マウント用の ZEISS Batis レンズ、高画質カメラの性能を最大限に引き出す ZEISS Milvus レンズ、そしてフルサイズカメラで中判カメラにも匹敵する圧倒的な描写力を誇る ZEISS Otus レンズの貸出が行われた。
後者は、クオーツ放電管を2本搭載し、最大ガイドナンバー 80 を実現した大光量グリップ型ストロボ MG10 を筆頭に、ポートレート撮影には欠かせない高性能なストロボと周辺機器が用意された。
当日はカールツァイスの協賛により、SONY Eマウント用のZEISS Batisレンズ、高画質カメラの性能を最大限に引き出すZEISS Milvusレンズ、そしてフルサイズカメラで中判カメラにも匹敵する圧倒的な描写力を誇るZEISS Otusレンズの貸出が行われた。憧れのツァイスレンズが存分に試せるとあって、大勢の参加者がツァイスレンズを使っての撮影となった。
■ 第1部:撮影場所の光を見極め、イメージ構築していく
第1部は、撮り手が演出したい光を作る手順にフォーカスしたセミナーだ。セミナーの冒頭、高桑氏から紹介があったのはスマホ・アプリの「 サン·サーベイヤー 」。本アプリの特徴は太陽の位置( 方位、高度、時間 )を予測し、ビジュアル的に確認できる点にある。
「 撮影を行う前に光を読むことが大切 」との説明があり、スタジオ内に差し込む陽の光をどのように使えば被写体の魅力を引き出せるのかを念頭に置き、撮影場所を決めるプロセスの解説が行われた。撮影場所を決めた後は、焦点距離 40 mm 前後のレンズを使ってテスト撮影を実施。自然光での撮影、次いでディフューザーを用いた撮影を実演。ディフューザーの有無によって光の回り方、雰囲気、肌の質感と言った違いについて、テザー撮影を行った写真を確認しつつ解説が行われた。その後は参加者による撮影実習。高桑氏の説得力ある説明と作例が効いたのか、各々が思い思いにモデルの魅力を引き出そうと、積極的にポージングや場所の移動を依頼する場面が多く、開始早々にして活気ある現場となった。
モデルを寝かせて俯瞰で撮影する際も、「 モデルの顔に光を入れるのか、入れないのか。床の木目を垂直または水平に入れるのか、あるいは斜めに入れるのかによっても印象は異なる。幾つかパターンを変えて自分の好みを見つけながら撮影してみる 」と説明があり、ここでも繰り返しどのように光を使って被写体の魅力を引き出すのか、そして背景にも意識を配る大切さが語られた。
続いてはモデルを壁面に立たせての撮影。高桑氏は135 mm の中望遠レンズを選択し「 こういうのも面白いでしょう 」と、カメラの手前に花を活けた花瓶を置き、花を使った前ボケを入れた表現を提案。その後は「 背景を飛ばしてみましょう 」と、窓ガラスを背にしたモデルの左右と前からレフ板で囲んで光を作った状態で撮影が行われた。
■ 第2部:レンズによる表現 カールツァイスの引き出し方
第2部は、レンズワークによる表現の違いにフォーカスしたセミナーだ。撮影場所をテラスに移して、ニッシンの MG10 x 2灯を壁面にバウンスさせての日中シンクロ撮影からスタート。モデルとの撮影者の距離は1m 程度で、モデルとの距離を考慮して40 mm のレンズが選択された。フレーミングの間にもモデルとの距離感を意識し、モデルと周囲で撮影を補助するスタッフへ声をかけ続ける事でコミュニケーションを絶やさないようにとの指示があった。
当日は天候に恵まれて、スタジオ周辺は雲ひとつない晴天。必然ながら絞り込んでの撮影となるが、テザー撮影で取り込んだ画像を前にして「 開放だろうが絞ろうが、良いレンズはどちらでも撮れる。ツァイスのレンズはここまで( f/14 )絞り込んでも回折の影響が出ない 」と高桑氏。
続いてはレンズを85 mm と 135 mm に変更し、スタジオ内での撮影。高桑氏が数パターンほどテスト撮影を行い、焦点距離による画角の違いを解説。画角が異なれば当然ながら撮れる写真の印象も変わるため、その違いを考慮した被写体との距離の取り方について説明が行われた。スタジオ内には十分な陽の光が届いていたが「 ストロボを入れて撮ってみましょう 」と提案があり、弱く焚いたストロボをトランスルーセント( 透過 )のレフ板越しに柔らかく拡散させるセッティングが施された。ストロボを入れる理由として「 ストロボを入れる事で色が起きる 」との説明があった。
40 mm、85 mm、135 mm と3種類のレンズを使った撮影実習を終え、ここからは、これらの3種類のレンズを交換しながらの撮影実習に。「モデルさんに話しかけながら撮影を行い、それぞれのレンズの写りの違いを確認する。そして、自分好みのレンズを見つけてください 」との指示があった。モデルに寄って撮る人もいれば、中望遠を使って離れた場所から撮る人など、皆様々なアプローチでの撮影が行われた。
■ 第3部:モノクロポートレートを撮る
第3部は、白黒であるがゆえに光が作り出す陰影の使い方が重要になるモノクロポートレートにフォーカスしたセミナーだ。
時刻は 16 時過ぎ、当日の東京の日没は約1時間後。陽の光がある間にテラスでの撮影からスタート。ここからはカメラの設定をモノクロモードに変更しての撮影だ。空に露出を合わせ、モデルの左右からストロボを2灯焚いて、自然光とのバランスを確認しながら撮影を行う。
場所をスタジオに移し、陽の光が残る壁際で撮影を行うことに。撮影場所を決めるにあたって、高桑氏から「 手を差し出して、手にあたる光の様子を見てください。手をモデルさんの顔だと思い、その場所で顔に光がどのようにあたるのかを判断し、撮影場所を決めます 」との説明があった。
撮影場所が決まったら実習開始。夕刻は光の状態が刻一刻と変化するため、光の状態にあわせて撮影場所を変更しつつ、時には却って変化する光の状態を活かし、アングルを変えながら撮影を行った。
日没の時刻を迎え、ここからはストロボを使った撮影。ストロボの数を1灯から始め、続いて2灯と増やしての光の作り方を学ぶ。
モデルの斜め前方に位置するメインのストロボにはトランスルーセント( 透過 )のアンブレラを被せ、2灯目は反対側の後方斜めから直射で当てる。こうする事で「モデルさんの前面は柔らかな雰囲気を出すことができる」。
2灯での撮影を終え、続いてストロボを3灯に増やす。3灯目をモデルの背後に設置して壁に向けてバウンスさせることで、「モデルさんの前面の柔らかな印象は保ったまま背景を飛ばせる」。
こうして一連のストロボ1灯〜3灯と増やしていった場合の表現の違いが説明され、撮影実習を終えてセミナーは終了となった。
セミナーを通じて高桑氏からは「撮影前に光の状態を確認する」、「光をどう使うのか」、「モデルとのコミュニケーション」について頻繁に説明があり、意図する写真表現を具現化するには撮影テクニック以外の比重が大きく占めている事を実感できたセミナーだったのではないだろうか。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス