武石修のレンズレビュー タムロン28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 ポートレート編
Model:羽田彩音 Photo : Osamu Takeishi
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1.人気の大口径標準ズームがリニューアル
今回は 2021 年 10 月に発売されたタムロン「 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 」( Model A063 )を紹介する。ソニーEマウントに対応する 35mmフルサイズ用レンズだ。実勢価格は税込 104,500 円前後( 2022 年 11 月現在、当社調べ )。
開放F2.8 通しの大口径標準ズームレンズで、「 大三元レンズ 」の1本だ。現在多くの大口径標準ズームレンズは 24-70mm となるなか、本レンズは望遠側に少しシフトした 28-75mm になっているのが特長だ。
この焦点距離はタムロンでは一眼レフ時代からあり、他の大口径標準ズームレンズよりも小形軽量になるほか、価格も抑えられるとあって人気が高い。とくに大口径を生かしたボケが得られることから、ポートレートファンにはおなじみとなっている。
先代の「 28-75mm F/2.8 Di III RXD 」( Model A036 )から光学系やデザインを新しくし、高画質化を図っており、ほぼ作り替えられたと言って良いリニューアルとなっている。
2.作品作りにも旅行のお供にも好適
鏡胴も同社最新のデザインに生まれ変わり高級感も増した。ズームリングは先端側、ピントリングが手前側に配置され、いずれも手の引っかかりも良く回しやすい。重量は 540g で、各社の 24-70mm F2.8 に比べるとかなり軽い。旅行などで持ち歩くのも苦にならず、高い表現力を駆使できるのがポイントだ。
フォーカスセットボタンを備えており、「 TAMRON Lens Utility 」を使ってパソコンから機能を割り当てることができる。例えば動画撮影時のフォーカス送りをする「 A-Bフォーカス 」や、あらかじめ決めた位置にピントを移動させる「フォーカスプリセット」などがある。なお、Android 端末から操作できるアプリ 「 TAMRON Lens Utility Mobile 」 も登場した。
3.作品による評価
α7 IIIに装着して撮影した作品を見ていく。写真は RAW で記録し、Adobe Lightroom Classicで現像している。歪曲収差はプロファイル補正を適用している。周辺減光は補正していない。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
望遠端でのバストアップ。やはり開放F2.8のボケの大きさは暗いF値のズームレンズでは得られない豊かなものだ。
同じく望遠端の絞り開放でボケを入れてみた。ボケの綺麗さには定評のあるタムロンらしく、前後のボケとも申し分ない美しさだ。
標準域となる 50mm でのショット。単焦点レンズよりは暗いが、絞りを開放にすれば人物を浮き立たせるだけの十分なボケ量が得られる。
スナップなどで人気のある35mmで撮影。適度に背景の状況を写し込めるので使いやすい焦点域だ。絞り開放でも全く問題無い画質で、球面収差もしっかり抑えられている。
F5.6に絞り込んだところ、わずかに解像力は上がるようだ。髪の毛や服の繊維などが鮮明に描写される。ここでは陰影を出すため、敢えてストロボを直射している。
ポートレートでも広角域は重要だ。28mmにすると、例えば空を大きく入れたダイナミックな構図を作れる。
本当に絞り開放でも安心して使えるレンズだ。もちろんカメラの瞳AFで問題無く合焦した。玉ボケはよく見るとやや年輪状の模様も見えるが、さほど目立つ感じではないようだ。
こうした広がりのある絵作りも広角域ならでは。小形軽量のレンズ1本で多くのバリエーションを作れるのがいい。
広角端でモデルに近づいて撮影したもの。独特のパース感のある写真になった。モノクロにしても映える描写力だ。
4.総評
28-75mm というズーム域は実に使いやすい焦点距離だと改めて感じた。単焦点レンズで言えば、28mm、35mm、50mm、75mmと4本分をカバーしており、広角から中望遠までポートレートでも存分に活躍する。
ポートレートの中望遠というと 85mm が有名だが、作例のボケの大きさを見てもらえれば、75mm の F2.8 というのも悪くない。85mm F1.4 などのレンズは本レンズより大きいくらいなのだから、これだけコンパクトにまとまったズームレンズの存在は高く評価したいものである。
(以上)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石修
羽田彩音