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ブツ撮りカメラマン高崎勉のつぶやき vol.3
写真学校を開校するにあたりキービジュアルを考えた


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Photo : Tsutomu Takasaki

TOPIX

今回はのコラムは高崎勉氏が 2017年に開校した Abox Photo Academy ( アボックスフォトアカデミー )。その写真学校のキービジュアルを撮影するに至る高崎氏の思考の経路をコラムとして執筆していただきました。写真教室の主催者の皆様のみならず、Web ショップのカバー画像、サービス業など、写真で顧客に訴求したい人にぜひ参考にして頂きたい内容です。ぜひご覧ください。 by 編集部

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■メインコラム:写真学校を開講するにあたりキービジュアルを考えた

写真を職業にしている人って、毎日写真を撮っている。と思われがちです。確かに写真に興味があってこの道に進んできたのですから、写真漬けの毎日に歓びを感じています。
ですが実際には、撮ること以外の仕事が多くて写真が頭から離れてしまう日があることも事実。実際に仕事といってもレタッチの立ち合いにも行かなきゃいけない、フリーランスだと事務仕事もあるし、写真展や美術展にも行きたいし、。そんな毎日な訳です。きっと、他のクリエイター( デザイナーやコピーライターなど )もそうなんじゃないかな。
一つのことだけやってちゃ、新しい発想は生まれない。でも、常に本業の写真のことが頭から離れない。っていうか、根幹にあるから離れようがない。そんなものなのでしょう。

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2017 年に僕が塾長を務める Abox Photo Academy を立ち上げるとき、スタッフから「キービジュアルが欲しい。」と相談を受けました。よくよく思い返してみると、自分がクライアントであり、クリエイターでもあるという稀有な体験。
ポートフォリオ( 作品ブック )に載せるための写真を撮り下ろすことはよくあるけど、媒体に使われるのに無償の撮影って、意外に初めてなんだって気付いた。
「まあ、自分のスクールだし代表の僕が撮るのは然るべきなんだけど、、、、」と頭では理解できるがプレッシャーになったのも事実。
僕の知人には優秀なクリエイターが沢山いるから、ディレクションなどお願いすればみんな喜んで手を貸してくれるだろう。でも、いまは外部の方々に頼らず、まずは自分たちだけでやってみるべき、なぜかそんな気がしたのです。

通常の撮影業務の間を縫ってカリキュラムやレジュメも作成しなきゃいけないし、忙しい中で何のアイデアもないまま、時間が経ちました。「 よくアイデアが降ってきた 」という天才型の発言をなさる方がいらっしゃるけど、僕は今までにそんな経験は一度もありません。アイデアというものは、打ち合わせや実験( 僕の場合はテスト撮 影)からしか生まれないものだって思っているから、とことん自問自答しました。

まさに「 私たちが何を教えていきたいのか? 」ということこそがキービジュアルのコンセプトなのだということに辿り着き、そこに気づいた時から授業内容( カリキュラム )の作成も一気に捗ったのです。
事務局や他の講師の先生を待たせてしまったけど、そうして生まれたのがこの2枚1組のポスター。

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デザイン&コピー、というほどのものではないけど、一貫して自分で制作しました。写真を教えていると、アマチュアの方からカメラ側の設定ばかり尋ねられるのですが、それよりももっと着目しなきゃいけないことがある。だからこそ敢えて「 絞り値 」と「 シャッタースピード 」だけをコピーにして「 何? 」と疑問を抱いてもらえるようなビジュアルにしました。

この2枚、似ていますが被写体以外にも大きな違いがあります。絞り、シャッタースピード、そして光源の種類、灯数も異なります。動きをブラしたいか、止めたいか、撮り手の意図に応じて取捨選択したのです。

左のコーヒーカップの写真は湯気を止めたいので、照明はストロボを使っています。高速シャッターでは同調しないので1/60に設定していますが実際は約 1/1500 秒程度の閃光で湯気を捉えています。メインライトの他に逆光気味に湯気だけにスポットライトを1灯当てています。

右の写真はメトロノームをブラすことで「揺らぎ」を演出しました。テンポを設定する重りの位置は見た目のバランスもありますが、受講生には「焦らず、歩くような速さで学んでほしい」との願いを込めて「 Andante(♩=63~76)」に決め、そのリズムで色々試した結果シャッタースピードは 1/4 秒が自分のイメージに最適と判断しました。ストロボではここまでブレないので定常光( LED )で照明しています。

今、僕たちが教えたいこと。
過度な情報やカメラの性能に振り回されず、自分が表現したいもののために道具を選び、被写体を選び、設定をコントロールできるようになって欲しい。

そんな想いを抱いて撮ったのです。おかげさまでポスターも講座自体も評判が良いようです。プレッシャーを跳ね返す事ができてよかった。まあ、仕事ってこういうことの連続なんですが。
そういえば昔、ある大物ミュージシャンが映画監督としてデビューしたとき、「 自分の楽曲が好きな箇所で好きなだけ自由に使えるって幸せな事だ。」と仰っていた事を思い出します。
気持ちのチャンネルを切り替えるだけで人は幸にも不幸にも変わるものなのですね。

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■ サブコラム:ブツ撮り質問箱

高崎勉さんによる「 ブツ撮り質問箱 」もスタートいたしました。今回も、読者の方よりご質問をいただいたので、ご回答編を作成いたしました。早速ご覧ください。……と、ご案内したいところなのですが、とても詳細な解説を高崎さんからいただきましたので、次回に掲載したいと思います。質問内容は以下です。

● ご質問内容 ●

使っていたギターをネットオークションに出したいのですが上手く撮れません。写真を見た方がなるべくわかりやすくなるよう、説明的に撮るコツを教えてください。(プロが使うような機材を買うことはできません。)

愛媛県にお住いの K・K さんからご質問をいただきました。
次週の回答編をお楽しみに!

< ブツ撮り質問箱お問い合わせフォーム >
>> https://forms.gle/2eVEJLYassBC5fmRA <<

著者について
■ 高崎 勉 - Tsutomu Takasaki - 1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1999年高崎写真事務所設立。静物写真にこだわり続け、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動する。「毎日広告デザイン賞 発言広告の部 最高賞」はじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広く雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。2017年に開講した Abox Photo Academy 塾長。商品撮影講座&アートフォト講座の講師を務める。