夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第2回:夜景の基礎知識(夜景学)
TOPIX
さて、多くのアクセスをいただきました第1回に続き、第2回は 「 夜景の基礎知識 ( 夜景学 ) 」の更新です。時間経過による絵の変化も交え解説しております。夜景撮影の参考としてください。by 編集部 |
読者の皆様、明けましておめでとうございます。年末年始は皆様いかがお過ごしされましたか。私は年末から年始にかけて岡山の倉敷地区で瀬戸大橋のライトアップや水島の工場夜景を撮影してました。冬の時期は空気が澄んでいるため、とても綺麗な夜景写真が撮れました。第2回では夜景撮影において夜景の基礎知識(気象条件やベストシーズンなど)をお伝えしたいと思います。
写真1 水島コンビナートの工場夜景
写真2 倉敷美観地区のライトアップ
■夜景の定義・ジャンル
私が夜景撮影を講座で教えるとき、必ず”夜景の定義”から入るようにしています。夜景の定義は人それぞれ異なるかもしれませんが、一文で表すと「太陽が沈んだ後に浮かび上がる人工的な光源による景観」という表現が相応しいと思います。
一般的には大都会の人工的な街明かりが夜景だと捉えられていますが、月明かりや夜空も夜景の一つと考えることもできますし、花火やイルミネーションなども考え方によっては夜景と言えます。夜景には様々なジャンルがあり、撮影できる被写体も季節や時間帯によって異なります。
写真3 夜空と建物のライトアップ
(1)人工的な明かり
建造物のライトアップ、工場、都会のビル、住宅街、空港、道路・橋など
(2)自然の明かり
月明かり、星空、夕日、夜明けの夜空、ほたるの光など
(3)季節を限定した明かり
夜桜のライトアップ、花火、紅葉のライトアップ、クリスマスイルミネーションなど
■夜景が綺麗に見える時期
夜景撮影は年中を通して楽しめますが、年間を通じて夜景撮影に向く時期とそうでない時期があります。結論から言うと夜景撮影は「秋から冬にかけて」が最も適しており、逆に「春から夏にかけて」は梅雨の時期でもあり、夜景撮影にはあまり適していません。
写真4 摩耶山から撮影した夜景写真の比較
2つの写真を比較してみて、冬の方が夜景撮影に適していることがわかりましたが、具体的に冬の方が夜景撮影に適している理由を以下にまとめてみたいと思います。
(1)気温と湿度が低いために空気が澄んでいる
秋~冬は降水量も少なく、気温と湿度が低いために透明感ある写真が撮りやすい。
(2)日没が早く、夜が長いために撮影に時間をかけられる
夏に比べて冬は日没が2時間30分ほど早いため、早い時間帯から夜景撮影が開始でき、一晩で多くの枚数を撮れる。
(3)夜景スポットの訪問者が少なく、滞在時間も短い
冬の寒い時期は夜景スポットに訪れる人が少なく、寒さに耐えられずすぐに立ち去ってしまう。そのため、ベストポジションを確保しやすい。
【撮影シーズンの一覧】
夜景撮影において冬のシーズンはメリットがたくさんありますが、撮影が長時間に及び、体力を消耗しやすい時期でもあります。夜景撮影は長時間露光が基本となり、長時間立ち止まっての撮影となってしまうため、防寒グッズなどもしっかり用意して撮影に挑みたいところです。また、気温が低いことからバッテリーの消耗も激しくなるため、予備のバッテリーも必ず持参するようにしましょう。
■夜景が綺麗に見える時間帯
夜景撮影に最も適した時間帯は”日没から約20分後”のトワイライトタイムと言われています。一般的には太陽が沈んで完全に真っ暗になってからの夜景撮影が主流ですが、トワイライトタイムは空の青みがわずかに残り、遠くの山々や水面のシルエットが浮かび上がり、自然の明かりと街の明かりのコラボレーションが楽しめます。逆にイルミネーションや建造物のライトアップは完全に真っ暗になってからの方が撮影に適している場合もあります。
写真5 撮影時間帯による比較
夜景撮影にはトワイライトタイムが適していることがわかりましたが、トワイライトタイムは一日のわずか15分前後のため、あっという間に時間が過ぎてしまいます。完全に日が沈んだ後の撮影でも適切な時間帯があるため、シチュエーションごとに解説したいと思います。
(1)大都会・都心の夜景
東京や大阪のような大都会は平日の夜が最も撮影に適しています。休日はビルの明かりが消えてしまうため、夏であれば平日の20時頃、冬であれば平日の18時頃が最も光量が多く、綺麗な夜景が撮れます。
(2)住宅街・郊外
住宅街の静けさを感じる夜景も魅力的ですが、夜遅い時間になると住宅の明かりがほとんど消灯してしまうため、マナーの問題も考慮し、深夜の時間帯は避けた方が賢明です。
(3)工場・埠頭
工場は基本的に年末年始や長期休暇を除き、終夜稼働していることが多く、時間帯によって光量が変化することは基本的にありません。そのため1日で都心と工場の夜景を撮る場合は、先に都心で撮影してから最後に工場を訪問すると良いでしょう。
(4)ライトアップ
建造物などのライトアップを撮る場合は、時間帯による変化はほとんどありませんが、ライトアップの点灯時間に要注意です。点灯時間や曜日が限られている場合があるため、事前に施設の情報をホームページなどで確認するように心がけましょう。
■夜景とその他の撮影ジャンルとの違い
夜景撮影は他の一般的なジャンル(風景・ポートレート・動植物・スポーツ・スナップなど)に比べて、難易度が高いように思われており、撮影人口もやや少ないように感じられます。夜景撮影を専門とする写真家・カメラマンも限られています。
理由として、夜景撮影は常にカメラのブレ対策が必要なことや撮影条件が限定的になることが考えられます。
ただ、夜景は撮影に適した条件を知ることや、三脚などカメラを固定する機材さえ揃えれば、決して難しい撮影ジャンルではありません。むしろ他のジャンルよりも簡単と言っても過言では無いほどです。第1回の記事で紹介した夜景撮影機材を揃え、気象や時期をしっかり見極め、撮影技術を磨くことで初心者でも綺麗な夜景写真が撮れることでしょう。
写真6 夜景撮影のセッティング風景
■今月のお勧め夜景スポット「鷲羽山 山頂」
今月は岡山県倉敷市にある鷲羽山の山頂を紹介。瀬戸大橋を観賞・撮影できるビューポイントは岡山県・香川県に多数点在するが、瀬戸大橋を間近に見下ろせるスポットとしては鷲羽山が最もおすすめ。特に空気の澄んでいる秋から冬がもっとも夜景が綺麗に見える。駐車場から10分以上歩く必要があり、撮影場所が岩場となるため、懐中電灯を持参の上、防寒・防風対策もしっかりしたい。途中の展望台やビジターセンターからも瀬戸大橋の夜景が楽しめる。
開放時間:終日開放(瀬戸大橋のライトアップは主に土曜日の夜)
所在地:岡山県倉敷市大畠付近
アクセス:児島ICより車で約5分
料金:無料(駐車場約400台)
URL:http://www.nightview.info/yakei/detail/wasyuzan/
写真7 瀬戸大橋のトワイライトビュー