萩原和幸の新製品レンズレビュー ~ Tokina AT-X 70-200mm F4<前編>
TOPIX
ケンコートキナーが製造・発売を発表してから2年余り。待望の望遠ズームレンズ「 AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S 」がついに発売されました。フルサイズ対応で、トキナー初の手ブレ補正機構とリング型超音波モーター AF 機能が採用されたレンズの魅力を、萩原和幸が2回にわたって紹介していきます。 by 編集部 |
<後編はこちら>
■ 外観・操作性
写真1
写真2
全長 167.5mm、最大径 82mm、フィルターサイズ 67mm、重量 980g。今回レビューしたレンズはニコンマウント。ニコンの「 AF-S NIKKOR 70-200mm F4 G ED VR 」と比較して、全長が 11mm 短く、コンパクト。ただし、重量だけを言えば 130g も重い。もっとも、望遠ズームレンズはカメラを装着してのバランスが大事なので、その点では、今回の撮影で使用した D610 とのバランスは萩原的には良く感じられる。なにより AT-X 70-200mm F4 は、手持ちカットで使える望遠ズームというコンセプトなので、そういう点を考えながら手にしてみれば、適度な重さに仕上がっていると感じるはずだ。
写真3
このレンズの「 売り 」は何と言ってもトキナー初の手ブレ補正機能と、オートフォーカスに、リング型超音波モーターを搭載した点だ。手ブレ補正機能には、トキナー独自の開発による VCM( 手ブレ補正モジュール )を搭載。ジャイロセンサーで検出した手ブレを、3つのアクチュエーターで補正するというもの。結果、シャッタースピードで約3段分(*1)の手ブレ補正効果が得られる。また、リング型超音波モーターは素早く静かな合焦を実現させ、AF で合焦後にマニュアルによるピントの微調整ができる。トキナーレンズと言えば、その操作性に定評のあるワンタッチフォーカスクラッチ機構(*2)が代名詞となっているが、それとはまた別の、デフォーカスからのピントの微調整という面ではストレスなくできる点が嬉しい。
「 段 」とは、カメラの露出設定において使われる用語で、絞りやシャッタースピードのステップのこと。絞りの場合は現在の絞り値から√2倍( 約 1.4 倍 )の絞り値にすることを( 例:f/2 → f/2.8 )1段絞ると言い、逆に絞り値を 1/√2 倍することを( 例:f/8 → f/5.6 )1段開けると言う。シャッタースピードの場合は、現在のシャッタースピードを2倍することを( 例:1/125 → 1/60 )1段遅くすると言い、逆にシャッタースピードを 1/2 倍にすることを( 例:1/15 → 1/30 )1段速くすると言う。本文の「 シャッタースピードで約3段分」とは、仮に手ブレしないシャッタースピードを 1/60 秒だとしたとき、1/8 秒で撮影しても手ブレ補正が働いてブレのない画像が得られるということ。
トキナーレンズ特有のフォーカスモード切替機能のことで、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えが、フォーカスリングをスライドさせるだけでできる。
■ 撮影に出かけてみた
ということで、AT-X 70-200mm F4 をフルサイズセンサー機( FX フォーマット )のニコン D610 に装着して、撮影に出かけてみた。まずは焦点距離の違いによる画角を確認してみよう。
写真4
70-200mm は望遠域ではとても汎用性が高い焦点域であり撮影意欲がかき立てられるのと同時に、なによりもこのレンズのコンパクトさが機動性に寄与して、レンズの重さに煩わされることなく撮影に集中できる。この点において、全域 F2.8 の大口径ズームでは、鏡筒が大きくそして重くなりすぎだ。AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S は開放値を F4 に徹することで鏡筒をコンパクト化し、機動性に富んだサイズとなっている。こうしたレンズだと、どんどんフィールドに持ち出したくなる。
写真5 ( 実画像 )
写真6 ( 実画像 )
写真7 ( 実画像 )
写真8 ( 実画像 )
実画像をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。
Nikon D610 にこのレンズ1本だけをつけてブラブラ。スナップ撮影では、AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S のコンパクト+手ブレ補正機能+超音波モーター AF は最高の組み合わせだ。
写真9 ( 実画像 )
実画像をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。
写真10 ( 実画像 )
写真11 ( 実画像 )
写真12 ( 実画像 )
望遠ズームレンズのコンパクトさとズーム全域 F4 という仕様は、撮影者の体力的な負担はもちろんのこと、とっさのシャッターチャンスにも強く、明るさの条件にも幅広い対応が可能になる。フルサイズ機ユーザーの増加、PC 上での画像の 100% 表示が当たり前となった昨今、「 ブレ 」への関心がさらに高まっており、手ブレ補正機能は、ユーザーにとって、いわば望遠系レンズの必須機能になりつつある。そのような中、トキナーの独自開発 VCM( 手ブレ補正モジュール )には大きな期待を抱いていたが、その期待は裏切られず、「 良く補正が効いているな 」という実感が持てた。
■ 本命のポートレート撮影
AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S を使って、私の専門分野であるポートレートを撮影してみた。そもそも 70-200mm で開放値 F4 というスペックは、ポートレート撮影での相性はいい。F2.8 なら大きくボケるだろうが、あまりボケすぎては人物そのものもボケてしまうので、実際の撮影の現場では開放値から少し絞ることが多い。そういうわけで、実は開放値 F4 は十分な明るさなのだ。その分レンズがコンパクトにできるわけなので、AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S は取り回しの面で大きなアドバンテージとなる。
写真17 ( 実画像 )
AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S はボケ味にこだわっているだけあって、とても自然なボケ味が印象的だ。それでいてピント面はシャープ。カリカリしたシャープさではなく、どことなく柔らかさがあり、ポートレート向きの描写だ。
■ 次回予告 ■
本命のポートレート作品をお見せしながら、描写や使い勝手について語っていきます。ポートレート撮影から見える AT-X 70-200mm F4 PRO FX VCM-S の魅力に迫ります。乞うご期待!
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
萩原 和幸