スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

ポートレイトのネタ帳 第4回
清田大介のネタ< レンズワーク >

title

文・写真・編集:清田大介


Index


ポートレイトのネタ帳 第4回は、1・2回に引き続き清田大介氏に登場いただきました。今回は撮影のみならず執筆も清田氏に依頼いたしました。今回は KIPON レンズによるポートレート作例をご紹介します。実は本作品、CP+2020 のステージにてご紹介を予定しておりました作品です。残念ながら CP+ は中止となってしまいましたので、その作品をご覧いただければ幸いです。  by 編集部


● 今回のネタをご披露いただく写真家

daisuke_kiyota
清田大介氏
Portrait & Fineart Photographer。「 清田写真スタジオ 」経営。TIFA、IPA など国際的なコンテストや東京カメラ部・JPS・JPA など国内のコンテストなどに多数入賞・入選。商業撮影、雑誌、書籍への執筆、セミナー開催、展示会も多数開催。SKYLUM Ambassador。
http://blog.dream-pixels.com/

Go To Top

読者の皆様こんにちは、清田大介です。今回は新東京物産さんのご協力により KIPONレンズを試す機会を得られました。本来は CP+ のステージで披露する予定でしたポートレートのレンズワークを本連載にて公開したいと思います。

■ KIPON IBERIT( イベリット )レンズの紹介と選択理由

今回のネタはレンズワークを中心に普段心がけていることに触れていきたい。
使うレンズは各特性がわかりやすいということで単焦点縛りで最近注目されてきている KIPON IBERIT シリーズにしてみた。
KIPON IBERIT( イベリット )シリーズはミラーレスのシステムに最適化された単焦点レンズで開放は F2.4、焦点距離 24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm のラインアップがある。フルサイズと APS-C のイメージセンサー双方に対応している。
マウントはソニーEマウント、富士フイルムXマウント、ライカMマウント、ライカSLマウントの4種類で、今回は α7R II ILCE-7RM2 に 35 mm と 90 mm を使った作例をご覧いただきつつ説明をしていきたい。

KIPON IBERIT( イベリット )90 ㎜

KIPON IBERIT( イベリット )90 ㎜

今回は長野の雪山にモデルさんとともに撮影に行った。最終的な現場までは車で移動出来る場所から1時間程度登山したところにある。
※非常に厳しい現場なので、撮影においては体調や安全に配慮してガイドとともに行っている。

ロケにおいては、何が起きるかわからないので極力対応力を増やしたい反面、自分が持っていける限界量のようなものは意識している。結局自分の体力やモチベーションが保てなかったら作品に影響が出てしまう。今回、小型軽量なミラーレスのシステムを採用したのは、自分の体力の限界値をある種把握しているからだ。

IBERIT シーリズはミラーレスのシステムに合うように、レンズ自体非常に小型で軽量だ。いくら体力に自信がないとはいえ、4~5本くらい持っていっても全然ストレスにならないレベルである。さらに素材はアルマイト処理したアルミニウム、フォーカシングシステムのための真鍮などを使用したものとなっていて、耐久性にも配慮したものとなっている。

Go To Top

■ モデル撮影を始める時のレンズ選択について

さて早速現場についたところで最初の一枚は KIPON IBERIT 90 mm f/2.4 で撮ってみる。自分はその日ポートレートを撮り始める時は、基本的に慣れたモデルさんであっても必ずこの中望遠で撮影を始めることが多い。

撮影においてモデルさん含め現場のテンションは非常に重要でいつも気をつけている。90 mm という中望遠領域はバストアップなどの作品に適していて、構図上の迷いが少なく済む。失敗が少ないし、スムーズにスタートしやすい。
とにかくまずはモデルさんの顔を明るくしっかりと撮影し、今日の撮影全体がうまくいく予感のようなものを現場に作ることを意識している。

構図やポージングが難しいとされる全身や、背景をいかした作品を撮ろうとすると沢山気をつけなければいけないことがあり撮影自体が窮屈になりがちだ。( 全身が得意なカメラマンとモデルならその心配はないのかもしれないが )

また135 mm などの望遠すぎるものでスタートすると今度はコミュニケーションを初めてとる距離感にそぐわないことが多い。いきなり近すぎても遠すぎてもいけない。そういった意味で中望遠領域で、まずはコミュニケーション準備運動としてバストアップを撮る。

KIPON IBERIT 90mm f/2.4 ss 1/3000 ISO-100 f/2.4

KIPON IBERIT 90mm f/2.4
ss 1/3000 ISO-100 f/2.4

ということで作例の1つ目は逆光でオーソドックスにバストアップを撮影。顔全体に影も出来ず、オーバー目に撮ることで非常に美肌に写ってくれる。作例は開放 f2.4。このレンズはピント面は解像しつつも、柔らかく程よいコントラストの描写をる。
ボケ味が非常にスムーズに見えて綺麗である。
露出は背景が飛びすぎないように注意している。ミラーレスとの組み合わせでピントの山もつかみやすい。

KIPON IBERIT 90mm f/2.4 ss 1/3000 ISO-100 f/2.4

KIPON IBERIT 90mm f/2.4
ss 1/3000 ISO-100 f/2.4

同じ状況下でフレアをあえて作って見る。よりコントラストが浅く柔らかくなり淡く優しい感じの作品となった。

配置図1-枠

太陽との位置関係はほぼこんな感じで、場合によって太陽をレンズに入れたり外したりしてフレアの具合などを変えていく。

Go To Top

■ KIPON レンズで撮影したポートレイト作例解説

KIPON IBERIT 90mm f/2.4 ss 1/1500 ISO-100 f/2.4

KIPON IBERIT 90mm f/2.4
ss 1/1500 ISO-100 f/2.4

今度は太陽を背にして順光で寄れるだけよってみる、こちらはノートリミング。順光の影がキツい表現やモデルさんにエモーショナルな表現を求めるのはある程度準備運動を経てからにすることが多い。
このレンズはピント面の解像からの美しいボケが非常にわかりやすく、開放に見られる周辺減光も気にならず程よく作品にテイストを演出してくれる。
中望遠でシンプルな構図であればあるほど、自分のこのみのボケ味を出してくれるレンズを選択するとよい。自分はコントラストが付きづらく、色味を正確に出してくれるものを好んで使う傾向がある。

そのあたりは自分の作品意図や現像意図と折り合いをつけると良いだろう。

KIPON IBERIT 90mm f/2.4 ss 1/1500 ISO-100 f/2.4

KIPON IBERIT 90mm f/2.4
ss 1/1500 ISO-100 f/2.4

軽くレンズ作例としてこちらは撮影の合間のスナップ、雪の反射している光が淡いオーロラ色の玉ボケを作っている。細やかな雪の描写や空気感を綺麗に写し取っていて、非常に素直な写り。

KIPON IBERIT 35mm f/2.4 ss 1/90 ISO-125 f/22

KIPON IBERIT 35mm f/2.4
ss 1/90 ISO-125 f/22

こちらは作品的なカット。今度は 35 mm の広角の単焦点に変更しモデルさんと衣装全体を写すことにした。フルフィギュアの撮影であまり歪ませず綺麗に俯瞰写真を撮る時よく35 mm を使っている。
セッティング上構図を検討しなければならないので、前段の ” コミュニケーションをしていたか? ” などはこういう細かい設定をしていくときに効いてくると思う。
さて環境は夕方になりモデルさんの向かって左上より夕日が差し込んでいる。このままでは強い半逆光でシャドウが潰れてしまうので、クロスするように反対側からストロボを焚きシャドウを起こしている。

配置図2-枠

ストロボアクセサリ( ここではビューティディッシュ )を使い、あまり強く発光させすぎず、影を起こすような気持ちで光が回るように調整。
自分はアパレルの仕事も多く、またモデルさんを起用した撮影が多いので日中でも衣装の色や肌色を綺麗に出すために、こういった状況下でストロボをよく発光させてる。こういったテクニックは日中シンクロと呼ばれている。

非常に寒く厳しい状況下なので、先にモデルさん抜きの状態で露出をとりモデルさんに入ってもらって発光量を調整。マニュアルで撮影しているのとこの状況下でピントが来ていない状態を避けたいので、かなり絞り込んだ撮影をしている。

寝ているところを、斜面の高低差を利用して脚立などを利用することなく撮影している。このレンズは周辺まで含め不自然な歪曲などなく写してくれる。衣装は淡い色を中心としたものですが、トーンも損なうことなく綺麗にまた素直な色を出している。
現像などをするときに自分好みのトーンや色出しをすることが多いので、撮影時に素直に色を撮影してくれるレンズは非常に重宝する。

また開放の時でも相当の解像力があったが、絞り込むとさらに周辺まで含めきっちり解像してくれる。右下の衣装の布の質感が損なうことなく見事に再現されいる。

Go To Top

■ まとめ

photo6_R

最後に夕暮れのカットを一枚。難しめの色やグラデーションを綺麗に表現してくれている。時間が許せばもっと沢山の撮影をしたい、そう思わせてくれるレンズ。軽量かつコンパクトで撮影旅行などにうってつけと感じた。

単焦点レンズを選ぶときは、自分の得意な画角感や欲しい作品のテイストをよく理解していなければならない。一旦ズームレンズなどで撮影をしているのであれば、自分が無意識に使っている画角感などを調べるためにも一度撮影データなどを見直すと良いかもしれない。

俯瞰撮影においては色々好みもあるだろうが、最初手探りのときはズームレンズで撮っていた。何回もテストしていく中で、自分が使う好みの画角感が 35 mm 周辺に集まっているので、今回のような場合でも迷わず 35 mm を選択できる。
中望遠においても心地の良い距離感というのは人によって前後すると思うので、そのあたりを参考に自分なりの欲しい画角感覚を身に着けてもらいたい。

今回のネタをもとに是非、軽いミラーレスのシステムや小型の最新のレンズなどを用いてロケやストロボ撮影など挑んでいただきたい。

Go To Top

■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス

■ モデル ■
サユリ

■ 衣装 ■
アリスガワアリス

■ 協力 ■
新東京物産

Go To Top
著者について