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KANI フィルター で角形フィルター入門!
第5回 角型フィルターで天の川を撮ろう

角型フィルター活用術

Photo & Text:薮田織也


TOPIX

使ってみたい機材だけど使い方がよくわからなくて……。という読者にお送りする本短期連載「KANI フィルター で角形フィルター入門! 今回は天の川写真にチャレンジです! by 編集部

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1.南伊豆蓑掛岩で撮影

1年にわたってお届けしてきた角型フィルター入門の連載もいよいよ最終回。最後を飾るのにふさわしい作例は……これまで何度かトライしてきたけれどもなかなか撮れなかった……「 天の川 」にしようと考え、本年の2月に南伊豆は蓑掛岩に行ってきた。

■写真1 蓑掛岩
南伊豆町大瀬にある奇岩。蓑掛岩は大瀬漁港から真南に位置するため比較的に光害を気にせず星景撮影ができるポイントだ

南伊豆町大瀬にある奇岩。蓑掛岩は大瀬漁港から真南に位置するため比較的に光害を気にせず星景撮影ができるポイントだ

撮影に訪れたのは今年の2月6日と9日の2日間。天の川の中心核が水平線より上に昇る9日の早朝( 3時~4時 )を本番と考え、6日は予行演習にあてた。それでも6日の夜9時代であれば、蓑掛岩の上に天の川の尻尾が見えることは予想できていたので、良い練習になるはずだ。

蓑掛岩にはこれまでにもなんどか訪れて撮影しているが、天の川を撮るのは初めて。だから日程も余裕を持って望んだわけだが、6日の予行演習で知り得たことは本番でとても役にたった。それではまず、予行演習のつもりで撮影した「 天の川の尻尾 」の作例をご覧にいれたいと思う。

■写真2 予行演習で撮った蓑掛岩に掛かる天の川の尻尾
Nikon D850 + Tamron SP 15-30  KANI LPRF Light Pollution Reduction Filter 150x150mm  focus:15mm f/2.8 ss10sec ISO:12800

Nikon D850 + Tamron SP 15-30  KANI LPRF Light Pollution Reduction Filter 150x150mm
focus:15mm f/2.8 ss10sec ISO:12800

天の川の尻尾は中心核に比べてかなり暗い。写真2のように辛うじて天の川だと認識できる程度に撮ろうと思うと、付記した撮影データの設定で明るく撮るしかない。ノイズを最小限にしたいし星を流したくないので、できればシャッタースピードは最大5秒程度、ISO は 6400 より上にはしたくないのだが、この日はその倍の設定にしないと撮れなかった。

天の川の尻尾をもっと明瞭に撮るとなると、できる限り明るいレンズを使うにこしたことはない。今回は開放F値 f/2.8 のレンズだったが、できれば f/2.0 以下の明るいレンズを使いたいところだ。

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2.光害カットフィルターを使ってみた

■写真3 光害カットフィルター KANI LPRF
KANI 社製光害カットフィルター LPRF Light Pollution Reduction Filter。光害によるハイライトの滲みと色かぶりが無くなる

KANI 社製光害カットフィルター LPRF Light Pollution Reduction Filter。光害によるハイライトの滲みと色かぶりが無くなる
メーカーサイトで確認

写真2は KANI 社製の光害カットフィルター「 LPRF Light Pollution Reduction Filter 」( 以下 LPRF )を使っている。LPRF は名前の通り、街の灯りなどの光の害をカットするフィルターだ。南伊豆の大瀬から天の川が昇る南~南西の方向は太平洋しかなく、関東近辺では光害がもっとも少ないポイントではあるのだが、それでも光害ゼロではない。できる限り光の滲みを無くしたかったので、LPRF を使うことにした。

LPRF の有無でどれほど画に違いがでるのかを観ていただこう。

■写真4 LPRF の有無による画の違い
左が LPRF 無し、右が LPRF 有りで撮ったもの

左が LPRF 無し、右が LPRF 有りで撮ったもの

写真4で注目して欲しいのは水平線の上部にかかる薄明かりが LPRF によってほぼ無くなっていることだ。LPRF を使うと少しシアンがかるところは好みの分かれるところかと思うが、フィルター無しに比べると、LPRF を使った画の方が個々の星が持つ色が再現されているように思える。

LPRF を使う上で留意しておくことは、2/3 ~ 1段ほど暗くなることだ。その点から考えても、なるべく明るいレンズが欲しくなる。

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3.天の川の中心核を撮影してみよう

さて、次は本番撮影だ。天の川の尻尾ではなく中心核を撮るのである。中心核の明るさは尻尾の倍以上の明るさが期待できるので、シャッタースピードはより速く、ISO 感度はより低い設定ができるだろう。それにより、星の軌跡をあまり流さず、よりノイズの少ない画にできるはずだ。

スマホアプリの「 サン・サーベイヤー 」を使って、天の川の中心核が望める日時を探ってみる。

■ サン・サーベイヤー( Sun Surveyor )
● App Store
● Google Play

■写真5 サン・サーベイヤー
AR( 拡張現実 )を使って天の川が見える位置と日時を調べられるスマホアプリ。太陽や月の軌道、月の満ち欠けも表示できる

AR( 拡張現実 )を使って天の川が見える位置と日時を調べられるスマホアプリ。太陽や月の軌道、月の満ち欠けも表示できる。画面キャプチャは Google Play から借用

薮田はこの「 サン・サーベイヤー 」にかなりお世話になっている。ときどき情報が表示されなかったりしたが、★4つはつけてあげたいと思えるツールだ。スマホカメラを通して AR で天の川はもちろん、月や太陽の軌道を予測できるので、ロケ地では大変重宝する。
この日( 2月6日 )、サン・サーベイヤーで蓑掛岩付近において天の川の中心核が水平線を越える日時を調べたら、直近で2月9日の午前4時以降とわかった。

■写真6 天の川の中心核を捕らえた作例
Nikon D850 + Tamron SP 15-30  KANI LPRF Light Pollution Reduction Filter 150x150mm  focus:15mm f/2.8 ss10sec ISO:6400

Nikon D850 + Tamron SP 15-30
KANI LPRF Light Pollution Reduction Filter 150x150mm
focus:15mm f/2.8 ss10sec ISO:6400

というわけで、2月9日の早朝に撮った天の川と蓑掛岩のコラボ写真が写真6だ。蓑掛岩がライトアップされているのは、早朝に船出する漁船の灯りによるもの。もちろん、その灯りを待ってシャッターを切った。薮田お得意のストロボによるライトアップも考えはしたが、蓑掛岩までの距離がありすぎることと、漁船の邪魔になると思われたので、今回は使わなかった。

写真6は時刻にして午前4時 44 分。もう少しすると月齢 26.9 のお月様が水平線から顔を出すので、有明月と天の川の中心核のコラボが撮れるかも? ということで、それも狙って撮ってみた。

■写真7 有明月と天の川の中心核を捕らえた作例
Nikon D850 + Tamron SP 15-30  KANI LPRF Light Pollution Reduction Filter 150x150mm  focus:30mm f/2.8 ss5sec ISO:8000

Nikon D850 + Tamron SP 15-30
KANI LPRF Light Pollution Reduction Filter 150x150mm
focus:30mm f/2.8 ss5sec ISO:8000

写真7の水平線近くに見えるのが有明月。実際は三日月なのだが、天の川を撮るための露出設定では満月のようになってしまう。それでは水平線部分に KANI Premium LR MC Center GND 0.9 を使えば天の川と三日月を撮れるかも? と思っていろいろ試してみたが、そうこうしてるまに月が昇りすぎ、日の出も近づいてきたために空が明るくなってきて、残念ながら狙った画は撮れなかった。

■写真8 この日の有明月
写真7では満月に見えるが、実際の月はこんな感じ

写真7では満月に見えるが、実際の月はこんな感じ

天の川を撮るときは、月齢も念頭におくべきだ。ベストな状態で撮るなら「 新月 」の夜、つまり月が見えない夜だ。次に狙いたいのが有明月。この月は名前のとおり有明、つまり夜明けの月なので、天の川を邪魔することがない。

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4.蓑掛岩は撮影禁止??

■写真9 マナーは守ろう
打ち首はやりすぎ??(笑)

打ち首はやりすぎ??(笑)

最後になったが、撮影マナー関連について少し触れておきたいと思う。というのも、本来この記事は3月に公開する予定だったのが、スタグラ編集部経由で「 蓑掛岩は撮影禁止のはず 」という情報が入ったからだ。

蓑掛岩での撮影を終えた数日後、薮田は自身の SNS 上に蓑掛岩での作例を掲載した。それを観た人たちの間で、上記のことが問題になったそうだ。詳しく書くと、「 現在の蓑掛岩は立ち入り禁止になっていて、防波堤より海側には入ることができないはず。写真から推測すると薮田の撮影した場所は防波堤を越えた場所だと思えるので、立ち入り禁止区域で撮ったものだろう。そうした写真で記事を構成するのはよろしくないのでは? 」というのが情報提供者の言だそうだ。

結論を先に書いておくと、蓑掛岩での撮影は一切問題はないのだが、疑問に思われている方々にきちんと説明する必要を感じ、南伊豆町役場地域整備課に問い合わせする時間がかかったため、記事公開が遅れてしまったのだ。では、その調査結果をお伝えしよう。

南伊豆町役場からの回答をもとに説明する。まず、海岸線は公共の場であるため、基本的に立ち入り禁止などの指定はしない。よって撮影などの個人的な利用を禁止することはない。ただし、映画やテレビなどの大がかりな機材を持ち込んでの大勢による撮影の場合は事前に申請する必要がある。蓑掛岩付近の漁港設備に関しては、密漁を防ぐために立ち入り禁止の札などが出されることはあるが、個人の撮影者や禁止指定された魚介類以外の釣り人に関しては適用外である。

ということで、薮田の撮影に関しては何の問題もないのである。確かに漁港入り口には立ち入り禁止のバリケードがあったが、隅に寄せてあり、通行はもちろん、車での進入もできるようになっていた。撮影当日も地元漁業関係者と挨拶を交わしたりしており、立ち入りを禁じられた覚えはない。

ではなぜ立ち入り禁止のバリケードが用意されているのかというと、密漁者が後を絶たないからというのがポイントだそうだ。ひどいときは、地元漁師の釣り具を盗んだりする輩もいるそうで、一時期は一部の漁業関係者が漁港入り口を完全に塞ぐ対応をしたこともあるとのこと。蓑掛岩の撮影に関しては、役場としては観光資源でもあるので積極的に撮影して欲しいとの言もいただいた。

ただしである! 行政から了承を得たからといって、マナーを欠いた撮影をするのは御法度だ。これからのシーズン、蓑掛岩は撮影者でごったがえすことが予想できるが、他の撮影者や地元漁業関係者への配慮を忘れず、気持ちの良い撮影をしていただきたい。

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5.まとめ

さて、昨年から5回にわけてお届けしてきた角型フィルター入門もこれにて閉幕である。個人的にはわかりやすい作例を作るために四苦八苦した撮影だった(笑) でも角型フィルターを使った表現の可能性に触れることができ、とても充実した1年だったと言える。そう、角型フィルターは撮影者の表現力を広げ高めてくれるツールなのだ。使い方には多少慣れが必要であるが、慣れ親しんでくるにつれ、作画の面白さがわかってくる。特に KANI の角型フィルターは、極めてナチュラルに色再現してくれるのが嬉しい。この連載を通じ、角型フィルターの面白さに気づいていただけたら幸いである。それではまたいつの日か。

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薮田 織也
著者について
■ 薮田 織也( Oliya T. Yabuta )人物・光景写真家 ■  1961 年生まれ。テレビ番組制作会社、コンピュータ周辺機器メーカーの製品企画と広告制作担当を経て、1995 年独立、人物写真家に。2000 年よりモデルプロダクションの経営に参画し、モデル初心者へのポージング指導をしながらポージングの研究を始める。2008 年「モテ写: キレイに見せるポージング」を共著で上梓。2003年か らStudioGraphics on the Web の創設メンバーとして活動。近著に「 美しいポートレートを撮るためのポージングの教科書 」( MdN 刊 )、監修書籍に「 ちょっとしたコツで10倍かわいく見える モテ[写]の教科書。」(MdN 刊)がある。公益社団法人 日本広告写真家協会 正会員
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