ブロンカラーでつくる
プロフェッショナル最新ライティング
第4回 ブロンカラーを使った作品例
塚田 直寛氏 & 金澤 正人氏
TOPIX
プロフォトグラファーからの信頼を集め、全世界で愛用されているプロフェッショナル用撮影照明機材ブロンカラー。その日本における総代理店である「 アガイ商事 」の創立 25 周年を記念して、Mook 「 ブロンカラーでつくる プロフェッショナル最新ライティング 」が玄光社から発売されました。本連載は、その Mook の中から一部を抜粋して、プロのテクニックを掲載していきます。第4回目は、塚田 直寛氏と金澤 正人氏のブロンカラーを使った作品と、そのライティング方法を各2点ずつご紹介します。 |
Index
■ 被写体の形に沿ってライトを連結し光をコントロールする ■ 画面ギリギリまで狭めた背景紙の縁から漏れてくる光で水を表現 ■ パラ 133 による1灯ライティングでシンプルに陽射しを感じさせる影をつくる ■ 色温度の違うストロボ光を組み合わせて夏っぽい光の色を演出 |
■ 被写体の形に沿ってライトを連結し光をコントロールする
ドアハンドルの老舗メーカー・ユニオンのカタログ用に撮影した中の1枚。ドアハンドルを積み上げてつくったオブジェは、直線も曲線もあるので、ハイライトの入れ方と金属の質感描写が重要になってくる。
できるだけ余計な光をカットしたいので、グリッドなどを使って光の拡散を狭め、灯数を増やして撮ることが多い。広い面積の光が欲しいときも、ライトを2個、3個と連結させて使う。光がまわり過ぎるのを抑えることができるからだ。
ここでは、バックにオブジェの形に沿ってライトを山型に5灯を配し、地平線ギリギリにセット。乳白アクリル越しの光で、オブジェの輪郭とほぼ同じような形のグラデーションにすることができた。
また、手前にまわる光を抑えることで、台の手前を暗くし、背景と台が交差する地平線部分を白く際立たせている。
両サイドのアートレ越しの光は、左がアートレに直打ち、右にはグリッドLを装着してある。トップとアンダーにもグリッドMを装着し、正面からはパルソスポット4と、ほとんどのライトにグリッドを使って光を絞っている。小さなセットの中で表現を試みようとしたとき、光を狭められるグリッドやスポットは有効な手段だ。
■ 画面ギリギリまで狭めた背景紙の縁から漏れてくる光で水を表現
「美澤修と Photographers の展」( 2015 年 11 月・青山見本帖 )のためにつくった作品。水で気持ちよさを表現するのがコンセプトなので、冷水が注がれたコップを撮影することにした。
コップの表面についた水滴が、底まで滴っているのを撮りたくて、仕掛けをつくって空中に浮かせている。
乳白アクリルに丸く切った黒ウールペーパーを貼り、その後ろにベアバルブをセットした。ウールペーパーの周りから漏れてくる光によって、中が黒くてアウトラインにハイライトが入った美しい水滴ができる。
コップの波紋のハイライトは、ベアバルブを上下させることで変化する。ウールペーパーの上縁ギリギリに入ってくる光が、水面をかすめる位置を探った。ベアバルブで強い逆光になるため、レンズのハレ切りは重要だ。
コップに垂らした水滴を止めるため、閃光速度をできるだけ高速にして、きれいな波紋ができるまで撮影を繰り返した。
コップにハイライトを入れるのに、左手前からボックスライト 40 の光をあてている。ボックスライト 40 は、外枠がやわらかい素材のソフトボックスとは違って、エッジがきれいに出る。また、台に直接置いて使うこともできる。撮影によく登場するライトのひとつだ。
ちなみに、コップの底に張り付いているのは本物のカエル。
■ パラ 133 による1灯ライティングでシンプルに陽射しを感じさせる影をつくる
資生堂 HAKU のポスター。美白化粧品の撮影なので、ヌケのいい透明感のある白さと陽射しを感じさせる影の描写が必要だった。ライティングはシンプルでありながらも、影にも強さが欲しかったので、モデルを白壁の前に立たせ、カメラの右斜め上からパラ 133 の1灯でライティングした。パラは芯がありながらもやわらかい光をつくることができるのが特徴で、ビューティーの撮影で活躍するアクセサリーのひとつだ。
撮影では、光の芯をちょっとだけズラして、周辺のグラデーションを利用することが多い。このときもパラの中心をモデルの背中の辺りに向けていて、周辺のやわらかい光を活かしてモデルを捉えている。壁の白さが影響して、全体がフラットになりすぎないようにするため、モデルの左側に黒ボードを立てて、メリハリをつけた。
スタジオには 88、133、177 とサイズの違う3種類のパラを備えているが、133 を使うことがもっと多い。扱いやすい大きさであり、シンプルに1灯でうまく光がつくれてしまうからだろう。
ライティングで意識しているのは、どういう影をつくるのかということ。光を構成するのではなく、影のできる位置や角度、濃度などを考えながらライティングを組み立てている。
■ 色温度の違うストロボ光を組み合わせて夏っぽい光の色を演出
2017 年の資生堂カレンダーの夏のカット。資生堂では毎年、数種類のカレンダーを制作しているが、このカレンダーの場合は多くのタレントを起用するということもあって、1年分をまとめてスタジオで撮影している。
夏の午後の陽射しを感じさせるライティングにする必要があったので、メインライトはパルソ G ヘッドにサンライトセットを組み合わせた。サンライトセットはシャープな光でくっきりとした影をつくり出せるので、スタジオでロケのように撮りたいときによく利用するアクセサリーのひとつ。
最近は、ビューティーでもレタッチをやり過ぎない傾向にあるので、ライティングもシンプルさが求められるようになってきている。
メインライトは、できるだけ太陽光のような平行光線にするために、モデルの肩越しにやや離れた位置で発光させている。また背景には、スパンコールを散りばめた布を垂らした。きれいにボカすことで、水面の輝きのように見える効果を狙った。
このとき、背景のストロボには濃いブルーフィルターを装着し、背景の光の色を基準にホワイトバランスを取っている。そうすることで、フィルターのかかっていないメインライトは赤味が強い光になり、夏の浜辺のような光をつくり上げることができる。