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デジカメの「しくみ」
第10回 : 魅惑のCCDの世界 その1.
      〜フルフレームCCDって何? そのしくみと特長〜
 
CCDにはいくつか種類がある
一番多いインタートランスファー方式
より多くの光が集められるフレームトランスファー方式
2005/07/27
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オリンパスのレンズ交換式デジタル一眼レフカメラ『E-1』に搭載されているCCDをカタログなどで調べてみると、「フルフレームCCD」と記載されています。さて、このCCDは、他のデジタルカメラなどで採用されているCCDとどのような違いがあるのでしょうか。
 
■CCDにはいくつかの種類がある
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●XC耐久レースに出場してきました
 

 生まれて初めて、自転車のXCレースというのを体験してきました。XCとは「クロスカントリー」の略で、舗装していない林道やハイキングコースなどを自転車で疾走するというレース。自転車が趣味な訳ではありませんで、所属しているスキークラブでの足腰を鍛える一環として参加してきました。そんなわけで、MTBと呼ばれるマウンテンバイクなんて乗るのも初めてです。副会長に「まーまー、ハイキングコースみたいなところを走るわけだから気軽に考えて。」なんていわれてましたので、まぁなんとかなるかぁ、なんて参加したのですが…。

 レースは、いわゆる耐久レース。4時間後、何周走ったかを競います。とはいっても、1人ではなく、4人までがエントリー可能。わがスキークラブは、人数が集まらずに、3人チームを2つエントリーしました。

   
●プロのカメラマンがレース風景を撮影
 

 自分の番が回ってきて、少し走り始めたとたん、「だー、どこがハイキングコースだよぉぉぉぉ!」と叫ぶはめになってしまいまして。もっとも、すでにそんな気力もなくて頭で叫んだだけだったんですが…。まんまと副会長にだまされましたなぁ。まぁ、草レースとはいえ、自動車メーカのスバルが冠に着くようなものでしたから、そんな簡単なわけがないのは少し考えればわかりそうなものだったのですが…。1時間に1回ないしは2回乗って15〜20分で1周するのですが、アップダウンの激しいこと、激しいこと。完全にグロッキーでした。

 ちなみに、このレースはプロのカメラマンさんが疾走している様子を撮影してくれていたとのこと。(http://allsports.jp/event_detail.php?ev_id=6343&class=mtbにて公開中)死に体で走りながらも、こちらにカメラを向けているカメラマンを横目で見ながら、
「デジカメ使ってんのかなぁ…。」
とか
「今日は薄曇りだから、E-1みたいにフルフレームCCDとかのほうが良い写真が撮れそうだなぁ…。」
なんて考えてました。ほとんど職業病ですね。
 あ、そういえば、フルフレームCCDの話はしていませんでしたね。撮像素子というと、CMOSとCCDの大きく2種類だけだと思われている方もいるかもしれませんが、CCDの中にもいくつかの種類があるのです。そのうちの1つに、先ほど書きましたフルフレームCCDというのがあるのです。

 では今回は、今まで紹介したCCDのしくみのおさらいと、フルフレームCCDのしくみについて紹介していきましょう。

   
■一番多いインタートランスファー方式
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●価格と画質のバランスが良い方式
 

 まず、一般的なCCDについて解説していきましょう。
 今まで解説してきたCCDは、インタートランスファー(Inter Transfer)方式といい、IT-CCDと略して記載されている方式です。IT-CCDの最大の特徴は、1つの画素領域に光を電荷に変えるフォトダイオード部分と、その電荷をアンプ部分に伝送する垂直転送用CCDが納められていることです。
 本連載の「第5回 : CCDの電荷バケツリレーのしくみ 〜携帯電話カメラに多いスミアの謎も探る〜」で、光が照射されてから、画像データを作るまでのしくみを解説しましたが、これはIT-CCDのしくみを解説したものです。もう一度、簡単におさらいしておきましょう。
 フォトダイオードに光が照射されると電荷を発生し蓄積します。シャッターがきられて光の照射が完了すると、電荷は垂直転送用CCDに渡されます。この垂直転送用CCDに渡された電荷が、「第5回 : CCDの電荷バケツリレーのしくみ 〜携帯電話カメラに多いスミアの謎も探る〜」で紹介したようにバケツリレーで運ばれていくというわけです。ちなみに、この回ではスミアについての解説もしていますが、この垂直転送用CCDは、転送している間も光の照射が行えるように遮光されているのでIT-CCDは、スミアの発生は少ないとされています。ただし、完全に遮光できる構造ではないので、とても強い光が照射されたときにはスミアが発生してしまうこともあります。
 受光面積が小さくなってしまうのがIT-CCDの最大のデメリットですが、電荷の発生・蓄積を行う部分と転送する部分が物理的に分かれているので、それぞれの特性を個別に飛躍的に向上させられるというメリットがあります。そのためCCDサイズを小さくするということや画素を細かくしていくこともしやすいCCDです。また、スミアが少ないため、カメラにあまり慣れていない撮影者でも扱いやすいCCDであるといえます。しかも、価格と画質のバランスが優れているため、現在デジタルカメラに搭載しているCCDの中では、主流となっているのです。


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【IT-CCDのしくみ】
フォトダイオード部分で発生した電荷を垂直転送用CCDや水平転送用CCDを使って、アンプ部分にバケツリレーしていきます。 (『体系的に学びぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●多くの光を集めるための工夫
   IT-CCDは、受光面積が小さくなってしまうので、照射される光が少なくなってしまいます。そのため、高性能なIT-CCDでは、より多くの光が照射されるようなくふうが施されるようになっています。
 IT-CCDでは、光はフォトダイオード部分でのみ集めることができますが、垂直転送用CCDの場所にも光は照射されてはいます。遮光されているので、電荷にならないだけです。そこで、垂直転送用CCDの場所に凸レンズを置いて光を屈折させ、狭いフォトダイオード部分に集めてしまって、照射されている光をすべて有効に活用しようという考えが発生しました。これを、「オンチップ・マイクロレンズ」といいます。これによって、多くの光を効率よく集めることができるようにしてあるのです。
 ただし、レンズになっているために、光の収差起きてしまい、写真データの中に偽色(実際にはない色)が発生してしまうこともあるので、設計や製造には高度な技術が必要です。



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【オンチップ・マイクロレンズ】
多くの光を集めるために、CCDの表面をレンズにしてあります。これを「オンチップ・マイクロレンズ」といいます。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
■より多くの光が集められるフレームトランスファー方式
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●もっとも初期のころに開発されたCCD
   では、フルフレームCCDについての解説に移っていきましょう。
 フルフレームCCDは、CCDの中でももっとも初期のころに開発されたフレームトランスファー(Frame Transfer)方式のひとつで、フレームトランスファー方式はFT-CCDと略されます。
 FT-CCDでは、電荷を発生させる撮像領域とそれをためておく蓄積領域が分かれています。ちなみに、この蓄積領域で電荷が発生しないようにアルミニウム被膜などで遮光されています。撮像領域と蓄積領域の両方ともで電荷をバケツリレーしていきますので、これらは垂直転送用CCDとして働きます。そして、水平転送用CCDを使ってアンプ部分へ電荷を送るというわけです。
 FT-CCDの最大のメリットは、電荷を発生する領域を大きく取れるという点です。大きければ多くの光を照射することができるため、ダイナミックレンジが大きいCCDを作成することが可能です。したがって、IT-CCDなどと比較すると微妙な階調を再現するのに適したCCDとなっています。


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【FT-CCDのしくみ】
撮像領域で発生した電荷は、ただちにバケツリレーで転送されて蓄積領域でためられます。これを水平転送用CCDを使って、アンプ部分にバケツリレーしていきます。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●スペースを効率よく使えるFull FT-CCD
   FT-CCDにもデメリットがあります。それは、撮像領域と同じ面積だけ蓄積領域を確保しておかなければいけないということです。すなわち、CCDサイズを小さくしたり、画素数を多くすることができにくい方式なのです。
 そこで、電荷の蓄積を撮像領域で行ってしまおうというFT-CCDも出てきました。これをフルフレームトランスファー方式、略してFull FT-CCDといいます。しかし、この方法では、蓄積が終わってバケツリレーで電荷を転送している間も光の照射を受け続けてしまいます。これでは、映像にスミアが発生してしまうことになりますね。そこで、転送していない間は、シャッターを使って遮光を行って蓄積領域が無くてもスミアの発生を抑えるようにしています。
 Full FT-CCDは、効率よくCCDに照射している光を電荷に変えられますから、ダイナミックレンジも大きく階調の表現も豊かです。もちろん、薄暗がりのシチュエーションでも、IT-CCDに比べると明るい写真を撮影することができます。しかも、撮像領域と蓄積領域が同じですから、CCDサイズを小さくしたり、画素数を多くすることも難しくありません。ただし、シャッターによってスミアの発生が左右されてしまいますから、高性能なシャッターを装備する必要があります。したがって、安価なデジタルカメラには搭載できないというのが実情です。
 また、このFull FT-CCDは、フルフレームCCD(FF-CCD)と呼ばれることもあります。これが、『E-1』に搭載されているCCDの招待なのです。


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【Full FT-CCDのしくみ】
CCDの面積を効率よく電荷に変更できる領域に割り当てることができます。しかし、高性能なシャッターを装備していなければ、スミアが発生してしまうというデメリットもあります。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 
今回は、チョット変わった種類のCCDを紹介しました。CCDといっても種類は1つではありませんから、カタログの仕様を見るときにはチョット注意をしてみてください。

Text by 西井美鷹(デジカメWEB)

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