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デジカメの「しくみ」
第5回 : CCDの電荷バケツリレーのしくみ
      〜携帯電話カメラに多いスミアの謎も探る〜
 
携帯電話で撮影すると白い帯が写っちゃう
CCDが光を電気信号に変換するしくみ
電荷転送の順序とスミアの発生
スミアの発生は高性能なシャッターを搭載することで防げる

2005/03/09

スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
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携帯電話のカメラ機能や1万円前後のトイカメラなどで、強い光源が入ったシチュエーションを撮影すると、明らかにその光源のものとは違った帯状の光が画面に表示されてしまうことが多くあります。
コレって何だろう?!
 
■携帯電話で撮影すると白い帯が写っちゃう
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●携帯電話のカメラ、撮像素子と画素数はデジカメ並なのに・・・
 

携帯電話のカメラ機能が充実してきましたね。
メガピクセルは当たり前。
中には、200万画素モデルも登場しているようです。
けれども、画質が悪かったり、写真の中に白い帯状の部分が表示されたりすることが多く、まだまだデジタルカメラの代わりにはできない、といった声をよく聞きます。

 携帯電話のカメラ機能は、基本的にはデジカメと同じしくみなのに、なぜこのような違いが出るのでしょうか。

 まず、画質が悪いのは、CCDのサイズが小さいことが原因。CCDが小さいと光を受ける量が小さくなってしまいます。光の照射量が小さいと画質が悪くなるのは、「第3回 : 画素数と画質の関係」で解説しましたね。また、撮影した写真によく白い帯状の部分が出てしまうことがありますが、これは携帯電話のカメラでは、スミアが発生してしまいやすいからなのです。

   
●スミアってなに?
 
【スミアってなに?】
携帯電話「J-SH53」で撮影した画像。太陽の光とは明らかに違う白い帯状の部分がある。これがスミアだ。
 さて、スミアとはなんでしょうか。
これは、撮影しようとした画像の中に太陽や電灯などの強い光源が入ってしまったときに、ビローンと白い帯状の部分が発生してしまう現象のことを云います。「光が強すぎてレンズの反射がおかしくなったのかな」と思うかもしれませんが、これはデジタルカメラ特有の現象で、しかも、撮像素子にCCDを用いたデジカメで比較的多く発生するものです。CMOSを用いたものでは発生しないと云っても過言ではない現象なのです。
 では、今回は、CCD採用デジカメ特有のスミアについて迫ってみましょう。
   
■CCDが光を電気信号に変換するしくみ
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●まず光を電荷に変換し蓄積する
 

 スミアは、CCDの原理と深い関係があります。そこで、まずはCCDの原理について解説していきましょう。

 CCDは、「Charge Coupled Devices」の略称で、「電荷結合素子」と日本語では訳されます。CCDは、光を電気信号に変えていきますが、いっぺんに、えいやっ、っと変換できるわけではありません。

 まず、第一段階は、光電効果を利用して、光を電荷という状態に変換します。光電効果とは、特定の物体に光が照射されたときに、電子が活発に動き出す現象をいいます。CCDでは、フォトダイオードというパーツを使って、光電効果を利用して電荷を取り出しています。ちなみに、CCD1つに対してフォトダイオードは1つではありません。CCDの画素数分だけ用意されています。つまり、100万画素のCCDならフォトダイオードが100万個、400万画素のCCDなら400万個のフォトダイオードが必要なわけです。光電効果は、フォトダイオードに照射された光の強さによって発生する電荷の量が異なってきます。つまり、強い光を受けると電荷は多く、弱い光だと電荷の発生は少なくなります。しかも、この電荷は取り出すまで溜めておくことが可能です。この性質を利用すれば、100万や400万に区切ったそれぞれの画素どうしの間で、明暗が区別できるようになるといった具合です。

   
●電荷をバケツリレーで転送するってどういうこと?
 

 フォトダイオードによって発生した電荷は信号として取り出さなければいけないのですが、1つの画素のフォトダイオードから得られる電荷ではエネルギーとしては微弱すぎます。そこで、アンプ(増幅装置)によって大きなエネルギーに変換し、画像処理の部分が認識できる大きさの電気信号にしなければいけません。このとき、すべてのフォトダイオードからアンプまで直接取り出せれば良いのですが、1つ1つがあまりにも小さく、そして数が多いため、すべてのフォトダイオードに配線を繋げるような回路やしくみをCCDの中に埋め込むことは困難なのです。そこで、CCDの特性を活かして、電荷をアンプまで転送していきます。この電荷の転送は、CCDの最大の特徴とも云えます。
 電荷の転送は、「土手」と「溝」、そして溝に溜まった「水」のように移動していきます。ここでは、土手の高さを「電位」に、水を「電荷」に見立てて説明していきましょう。ちなみに、溝は、一部だけ「電位を低くした場所」になります。

 まず、CCDのフォトダイオード部の電荷を低くしておきます。そして、シャッターを開けた状態にして、CCDに光を照射します。すると電荷が発生し、溜まっていきます。この状態を図にすると、下のように水(発生した電荷)は、溝(電位の低い場所)に溜まります。このとき、光の強さによって電荷の発生量は異なりますので、水位もまちまちになります。


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【CCDの電荷転送・1】
発生した電荷は、電位が低い場所に蓄積される。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 

 シャッターが閉じると光の照射が終わり、電荷の発生も終わります。そうしたら、CCDは一部の電位だけを変化させることができますから、電荷が溜まっている場所に隣接する処の電荷を低くします。すると、溝が大きくなったことになり、水位は下がります。


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【CCDの電荷転送・2】
溝が大きくなると、まんべんなく水が行き渡り、水位が下がる。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 

 そして、最初に溝になっていた部分の電荷だけ引き上げます。すると、水は、最初の位置から隣接した場所へと移動したことになります。これを繰り返していけばCCDは、電荷を移動していけるようになるのです。よく「CCDはバケツリレーのように電荷を順次転送していく」というような記述をみることがあると思いますが、それはこのようなしくみになっているからなのです。


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【CCDの電荷転送・3】
当初の位置の隣に電荷が移動したことになる。これを繰り返すことによって、バケツリレーのように電荷をアンプ部に異動させることができる。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 

 このようにして電荷をアンプ部に移動させます。アンプ部は、電荷の量に応じて電圧を変化させることができるようなしくみになっています。つまり、電気信号として扱えるデータになるのです。

   
■電荷転送の順序とスミアの発生
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●垂直に、そして水平に
 

 CCDでは、バケツリレーのように順次電荷をアンプ部に転送していくと解説しました。でも、これだけだとまだスミアの発生と結びつきませんね。スミアの発生には、この電荷の転送順序が関係してくるのです。では、この電荷転送の順序の解説もしていきましょう。

 CCDは、電荷を発生する場所が格子状に綺麗に並んでいると考えることができます。例えば、48万画素のCCDなら、横方向に800個、縦方向に600個並んでいる等です。電荷の転送はバケツリレーですから、順序よく何回も転送を繰り返さなければいけません。CCDは、まず電荷を垂直方向に転送します。この領域のことは垂直転送用CCDと呼びます。垂直方向に電荷を移動させると、一番下の電荷は追い出されてしまいますね。そこで、受け皿を作っておきます。そして、この受け皿に入った電荷は、水平方向に移動させてアンプ部に転送します。そこでこの受け皿の部分を水平転送用CCDと呼びます。水平転送用CCDに入った電荷は、空になるまで水平方向の移動を繰り返します。水平転送用CCDが空になったら、また垂直方向に1段転送して、水平転送用CCDが空になるまで水平方向の転送をして・・・、というのを繰り返していくのです。この動作は、画素の縦方向分繰り返します。先ほどの48万画素CCDなら800回の繰り返しですね。
 ちょっと冗長的な説明になってしまいましたので、分かりにくい場合は、下の図を見て整理してくださいまし。


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【電荷転送の順序】
まず、1行分の電荷を垂直方向に転送して水平転送用CCDに移動する。
続いて、水平転送用CCDの電荷をすべて水平方向に移動させ、アンプ部(増幅器)で、すべての電荷を1画素ずつ増幅する。この動作は、画素の縦方向分繰り返して、1画面分の画素の転送を終える。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 
   
●電荷蓄積の限界とスミア発生のしくみ
   さて、このときに、ある画素の場所で強い光が照射されたと考えてみましょう。この光はとても強く、溝に入りきれないほどの電荷が発生してしまいました。するとどうなるでしょう。水と同じように考えて良いということでしたから、溝に入り切れなければあふれ出してしまいますよね。では、あふれ出た電荷はどうなるかというと、垂直方向に転送する電荷分に追加されてしまうのです。そこの電荷は空ではありませんから、追加されることによって、またあふれ出てしまうことがあります。そうしたら、次の垂直方向に転送する電荷分に追加されて・・・、とどんどんあふれ出ていってしまうことになります。
 このとき、アンプ部は、電荷の量によって光の明るさを判断しています。電荷があふれるほど飽和した電荷量になってしまったら、真っ白く色飛びした状態で画像データが形成されます。それが、垂直方向に連続して繋がっていますから、写真を見たときに、縦方向に真っ白に色飛びした帯状のものが表示されてしまうのです。そして、この色飛びの帯状のものをスミアと呼んでいるのです。


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【スミア発生のしくみ】
1つの垂直転送用CCDに納まりきれずに飽和した電荷は、隣の垂直転送用CCDにあふれ出してしまう。これが連続してあふれ出してしまうと、写真には、縦に一筋の白い帯状の部分が現れてしまう。これがスミアの正体だ。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』(神崎洋治・西井美鷹:著/日経BPソフトプレス刊)より引用)
 
   
■スミアの発生は高性能なシャッターを搭載することで防げる
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   スミアは、発生した電荷が飽和する前に光を照射しないようにすれば発生を防ぐことができます。これは、高性能なメカニカル・シャッターを搭載することで解決することが可能です。ところが、携帯電話のカメラ部分はコンパクトに作らなければいけないので、なかなか高性能なメカニカル・シャッターを搭載することができませんでした。これが、携帯電話のカメラでスミアが発生しやすい理由なのです。また、トイカメラと呼ばれたりする、1万円前後の安価なデジタルカメラでスミアが発生しやすいのも同様の理由です。一方、日本製の有名メーカのデジタルカメラは、大量生産によってコストが下がってきたので、廉価版のデジカメでも比較的高性能なメカニカル・シャッターが搭載されるようになりました。それで、随分スミアの発生が少なくなったのです。
 とはいえ、最近の携帯電話のカメラ部分にも、メカニカル・シャッターを搭載したものが出てきていますので、光のギャップが大きなシチュエーションで写真を撮ることが多いという方は、使用する機種がメカニカル・シャッター搭載か調べてみるといいかもしれませんね。

Text by 西井美鷹(デジカメWEB)

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