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大村祐里子(いのうえのぞみ)の
プロ写真家に聞くライティング術2
第3回 感情のおくりびと・大村祐里子氏に聞くイメージライティング

 

Photo:大村祐里子 Text & Model:いのうえのぞみ


TOPIX

クリップオンストロボを使って魅力的な作品をつくりだしているプロ写真家に、大村祐里子さんがインタビューをして、ライティング上達の極意を教えてもらっちゃおう! という連載企画。第3回目のプロ写真家は、なんといつもインタビューをしている大村祐里子さんご本人です!  じゃあ、誰がインタビューするの?  ってことでノンスタグラム連載中のわたくし、いのうえのぞみがお届けします!  ( いのうえ )

Index

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■ 写真家:大村 祐里子氏

写真家:ナカムラ ヨシノーブ氏

Yuriko Omura
 
1983 年 東京都生まれ 写真家( 有限会社ハーベストタイム所属 )  雑誌、書籍、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。「 写ガール 」にて「 読書感想写真 」、CAMERA fanにて「 SHUTTER GIRL WORLD 」連載中。http://shutter-girl.jp/

写真1 大村 祐里子 氏の作品1
大村さんの作品の中で、わたしが大好きなものの一枚

大村さんの作品の中で、わたしが大好きなものの一枚


大村祐里子さんの連載を楽しみにされているスタグラ読者のみなさん、こんにちは。いのうえのぞみです。突然ですが大村さんに代わって今回だけわたし、いのうえがインタビュアーを務めさせていただきます。というのも、今回は取材対象であるプロ写真家が、なんと! 大村祐里子さんに決まったからです。パチパチ。しかし、ご本人がご本人を取材するわけにもいかず、誰かインタビュアーを探せ! という編集部のお話しを小耳に挟んだいのうえは、それなら是非わたしに! と立候補させていただいた次第です。取材する側なんて初めてだし、憧れの大村さんだし、しかも今回のモデルまでやりますので、みなさんが満足して楽しめるような進行ができるか不安ですが、なんとか頑張りますので応援してください! それでははじまりはまり。


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■ いきなりお風呂で撮影!

写真2 大村さんとわたし
ひさしぶりの再会

ひさしぶりの再会

 
いのうえのぞみ

大村さん、こんにちは! お久しぶりです。

大村祐里子

こんにちは! ほんとに久しぶりだね~ のんちゃん。今日はインタビュアーとモデルの二役やってもらって、大変だけどよろしくね~。

いのうえのぞみ

まさか私が大村さんをインタビューする日が来るなんて夢にも思いませんでした~。そして今回の大村さんの作品モデルもチャッカリやらせてもらうわけですけど、これで大村さんに撮っていただくのは、5回目くらいですかね~。シャープなライティングでカッコイイ作品や、フィルムでほんわかお花ポートレートだったりと、毎回かなり違うイメージで撮影してくださるので今回も楽しみで仕方ないです! 本日はよろしくお願いいたします。

大村祐里子

でもなんだかわたしの連載の中でわたしが取材されるって、なんか変!(笑) でも誰かに取材されるならのんちゃんがいいなと思っていたのでよかったです。しっかし他の写真家さんを取材するときより緊張するわー。きっと受け答えがめっちゃ早口で支離滅裂になると思うけどよろしくね、のんちゃん。それでは早速、撮影の準備に入りましょうか。まずはロケーションの確認ね。

いのうえのぞみ

( ほんと早口…… )(笑)

写真3 今日の撮影場所
すごく眺めの良いバスルームが今日の撮影場所

すごく眺めの良いバスルームが今日の撮影場所

 
いのうえのぞみ

わっ! すごいお風呂ー! 縦にながーい! とっても眺めいいですねー。今日はお風呂で撮影って聞いてたけど、こんなお風呂だったんですね! もしかして夜景と一緒に撮ってもらえるのかな♥

大村祐里子

うーん(笑)眺めはとってもいいんだけど、今日はストロボを使ってのんちゃん+水で撮りたいのでブラインドを降ろして暗くしちゃいましょ。夜景まで待ってたら帰るの遅くなっちゃうし、夜景はまた今度ね。じゃぁお湯を張って……。バスタブの中にある灯りも点けて……と。

写真4 
ストロボ撮影なので暗くするために絶景はブラインドで隠しちゃいます

ストロボ撮影なので暗くするために絶景はブラインドで隠しちゃいます

 
いのうえのぞみ

え……。お風呂の中に照明が仕込まれてるし、次々に色が変わってなんか妖艶……。ちょっとドキドキする♥ で、わたしはお湯の中に入って撮ってもらうわけですね!

大村祐里子

そうそう、下着姿になってもらってね。ぐふふ(笑) さぁさぁわたしはストロボのセッティングをするので、のんちゃんには着替えてもらいましょう。

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■ ストロボのセッティング!


さぁ! ライティングするぞー! って感じでお湯を張ったお風呂に脚を入れる大村さん。今回はニッシン製ストロボ i60A を2台を用意したようです。でもストロボを2台どうやって使うんでしょ?


写真5 
お湯を張ったバスタブに入る大村さん。きゃー脚キレイ!

お湯を張ったバスタブに入る大村さん。きゃー脚キレイ!

 
いのうえのぞみ

大村さん。ストロボってカメラの上に乗せて使うものですよね? でも大村さんはストロボを2台用意しているし……。ストロボって2台もカメラの上に乗せられるんですか?

大村祐里子

えっ? あー。2台乗せるのは無理だけど……、1台ならカメラの上に乗せられるかな。でもね、今回は2台ともストロボはカメラから離して使うの。

いのうえのぞみ

へっ? カメラから離してどうやって光らせるんですか! まさか魔法とか……。

写真6 ストロボ・コマンダー Nissin Air1
NAS 対応のクリップオン・ストロボを遠隔で制御できるストロボ・コマンダー Air1

NAS 対応のクリップオン・ストロボを遠隔で制御できるストロボ・コマンダー Air1

 
大村祐里子

(笑) この Air1 というストロボ・コマンダーをカメラの上に乗せて使えば、離れたところにあるストロボを魔法でぴかーって……じゃなくて、電波でピカーっができるわけです。2台だからピカピカーって。

いのうえのぞみ

電波でピカピカーですか!

大村祐里子

まっ、2台とも一度に光るからビッカーの方がいいかな。

いのうえのぞみ

ビッカーですかっ!

大村祐里子

そんなことよりのんちゃん。はよう着替えてくださいませ。

いのうえのぞみ

あっ、はいはい。


大村さんのストロボセッティングが気になって仕方ないわたしですが、ここからしばらくはプロのモデルに専念することに。まず1カット目は、大村さん指定のキャミソールに……♥


写真7 ストロボの配置
大村さんは、クリップオン・ストロボ i60A を2台、バスタブの脇に置いて、発光部を天井に向けました

大村さんは、クリップオン・ストロボ i60A を2台、バスタブの脇に置いて、発光部を天井に向けました

大村祐里子

はい、こんな感じでストロボをセッティングしました。浴槽の左右にニッシンのストロボ i60A を2台置いてみましたよ。

いのうえのぞみ

なんで2台とも上向いてるんですか?

大村祐里子

天井が白いので、そこに光を反射させてみようかなと。いわゆる天井バウンスってやつ。直接のんちゃんに光を当てるより全体的に柔らかく当てられるのでキレイになるかなと。

いのうえのぞみ

へー。どんな画になるか楽しみです!

写真8 薔薇の花びら!
この日のために大村さんが用意した小道具は薔薇の花びら( 造花 )です

この日のために大村さんが用意した小道具は薔薇の花びら( 造花 )です

大村祐里子

そしてねー、今日の撮影のためにこんなものを用意してみましたよっと。これでさらに妖艶なのんちゃんが撮れること間違いなし!

いのうえのぞみ

薔薇の花びら!……の造花! すごいすごい、薔薇風呂ですねっ!

大村祐里子

じゃぁ、お風呂に Go!

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■ 薔薇風呂撮影開始!

大村祐里子

光はこれでいい感じ。じゃぁ花びらを投入しましょう! あっ、でも……お風呂がジェットバスじゃないからなぁ。水の動きが足りない……。

写真9 こんな感じで撮影
お湯をかき回しながら薔薇の花びらをまくS木社長

お湯をかき回しながら薔薇の花びらをまくS木社長

 
いのうえのぞみ

わたし脚でお湯をかき回しましょうか? あっ、そうだ。この際だからS木社長とY田さん、オジサンたちにお湯をかき回しながら薔薇の花びらをまいてもらいましょうよ!

写真10 撮影風景
バスタブで泳ぐわたしと仁王立ちで撮影する大村さん

バスタブで泳ぐわたしと仁王立ちで撮影する大村さん

写真11 

 


ということで、ジェットバスの代りを2人の男性陣に頼んでいよいよ撮影スタートです。わたしの表情やポーズに対する大村さんの指示も的確だし、おじさんたちが汗だくになりながらお湯をかき回してくれたおかげで、撮影は順調に進みました。


大村祐里子

うん! いい感じに撮れた。

いのうえのぞみ

見せてください!

写真12 大村さんの作品その1
Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/2.8 1/100sec ISO:400 strobe:i60A ×2

Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/2.8 1/100sec ISO:400 strobe:i60A ×2

写真13 大村さんの作品その2
Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/2.8 1/100sec ISO:400 strobe:i60A ×2

Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/2.8 1/100sec ISO:400 strobe:i60A ×2

いのうえのぞみ

わぁぁ!! すごい綺麗!! 水が止まってる~! こんなになってたんですね~!! 花びらがいい感じで、女性が間違いなく喜ぶ作品ですね。最初は、お風呂に浸かって撮影するっていっていたので「 いい湯だな~ 」みたいなビバノン写真を撮るのだと思っていました~(笑)

大村祐里子

ビバノン写真って!(笑) のんちゃん古い!(笑)

いのうえのぞみ

でもなんで水が止まって写るんですか? 暗い浴室だからぶれちゃうのかと思いましたけど。

大村祐里子

ストロボって、被写体や環境を明るくするだけじゃなくて、被写体を止めて写す効果もあるんですよ。ストロボ以外の光がほとんどない暗い場所での撮影では、ストロボが光った瞬間だけが写真に写り込むので、速く動いている被写体も止まって見えるというわけ。

いのうえのぞみ

なるほどー! ストロボ撮影って面白いですね!

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■ 今度はシャワーを使ってもう1枚

写真14 
今度はシャワーを使った撮影。S木社長にはシャワーがけ係になってもらいました

今度はシャワーを使った撮影。S木社長にはシャワーがけ係になってもらいました

 
大村祐里子

では衣装チェンジしてもらって、今度はシャワーでずぶ濡れになってもらいましょう。ストロボは i60A を1灯だけにして撮ります。あっ、S木社長! シャワールームに行ってこのガラスにシャワーをじゃんじゃんかけてもらえますか。

いのうえのぞみ

お湯かき回しオジサンが今度はシャワーかけまくりオジサンに変身ですね。社長業って大変♥ で、わたしはガラスにへばりつくと。

写真15 
今度はこんな感じでの撮影です

今度はこんな感じでの撮影です

 
大村祐里子

わたしは浴室の外へ移動して、さっきはバスタブの脇に置いたストロボのうち1台だけを、今度はライトスタンドに立ててと……。そしてガラス越しにのんちゃんにビッカーします。

いのうえのぞみ

あっ、今度はストロボ1台だけだからビッカーじゃなくてピカじゃないですか?

大村祐里子

あ、そうね、ピカね。うんうん……。


というわけで、またまた「 ゆり茶流妖艶写真 」が撮れました。


写真16 大村さんの作品その3
Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/4 1/125sec ISO:100 strobe:i60A ×1

Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/4 1/125sec ISO:100 strobe:i60A ×1

写真17 大村さんの作品その4
Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/4 1/125sec ISO:100 strobe:i60A ×1

Canon EOS 5D Mark IV forcus:50mm f/4 1/125sec ISO:100 strobe:i60A ×1

写真18 
i60A を1灯、ガラス越しで発光

i60A を1灯、ガラス越しで発光

 
いのうえのぞみ

うぉぉぉ! スゴイ! カッコイイ!! 水滴がキラキラしてて協調されてますね~。なんかわたしも大人の女って感じ~~♥ ストロボを使うと水がこんなにキラキラに写るんだぁ~。

大村祐里子

そうなのよ~。面白いでしょ~。

いのうえのぞみ

大村さんの作品を以前から拝見してますが、お水を取り入れた作品が多いですよね。

大村祐里子

水は好きですね。なんか被写体として。単純に水っていうものが好きなんです。なんで好きなのかちょっとよくわかりませんが、前から好きです。綺麗だな~って思う。だから作品も水中で撮ったものや、水フィーチャーしたものが多いですね。

大村さんの作品その5

 

いのうえのぞみ

こういうと変ですけど、好きな理由がわからないってのがなんかいい感じです。理由なく好きなものって、きっと本当に好きなんだって感じがします。ストロボを使って撮るのにも理由がないんですか?

大村祐里子

ストロボも大好きですけど、撮影に使う機材にはちゃんと理由がありますよ(笑) 今回のように波立てたり流れたりしている水を、ストロボを使って撮ると止めて写すことができるし、肉眼で見ているのとは違った画になるのが面白いから使いました。

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■ 大村祐里子が感じるストロボの魅力

 

 
いのうえのぞみ

ほんと、ストロボって面白いんですね。今日の撮影でよくわかりました。わたしも使ってみよっ。ところで大村さんにとってのクリップオン・ストロボの魅力を教えてください。

大村祐里子

まず小っちゃい! な・に・よ・りも小さくて軽いことが魅力かな。業務用の大型ストロボとか、どうしても必要なときは使うけど、やっぱり重いものは使わなくなるよね。ロケ撮の多いカメラマンにとって、重いものは車がないと無理だし、めんどくさくなる(笑) たとえば今日もそうだったんだけど、エレベーター無しの4階でインタビューの撮影があったら、デカいの下から運んでくるのめんどくさいでしょ。モノブロック2灯運ぶならクリップオン4灯くらい屁でもねーぜって(笑) そーゆーことなんですよ、重いのいらね~っていう(笑)

いのうえのぞみ

屁でもないんですねっ!(笑)

大村祐里子

それと今はクリップオン・ストロボが無線対応になって、好きなところに自由に配置できるから、ほんと便利。ボディはどんどん小さくなってるのに光量は大きくなってるし。それと、わたしたちの撮影現場ってひどい場所が多くて(笑) ごちゃごちゃしててスタンドを立てられないなんてしょっちゅうなの。それでもクリップオン・ストロボならその場にある段ボールとかの上に置けちゃうし、柱にテープで巻きつけたりもできるからね。大型ストロボだとそんなこと無理。絶対無理(笑)

いのうえのぞみ

そうですよね。今回の私の撮影でもバスタブの横の数センチのとこに置いてましたもんね! そっかー。小さいって正義ですねっ! そんな大村さんが愛用しているストロボはなんですか?

大村祐里子

普段使っているのはニッシン製の MG8000。これはクリップオン・ストロボでもハイグレードなプロ仕様なので少し大きいんだけど、今日の撮影は、これもニッシン製の超小型ストロボ i60A を使いました。この子、小さいくせに G/N 60 もあるですよ。だからちょっとした撮影ならこの子だけでも十分いけちゃう。MG8000 は連写しつづけてもオーバーヒートしないという耐熱性が高いクリップオン・ストロボなので、連写が必要なときはこいつに限りますな。

いのうえのぞみ

普段のお仕事では何台ストロボを持っていかれます?

 

大村祐里子

タレントの撮影やインタビュー撮影なんかでも、必ず3台は現場に持っていきますね。さっきも言ったけど、わたしの撮影現場って、写真を撮る環境としては最悪なところが多いんですよ(笑) ライトスタンドが立てられないほどゴチャゴチャしてるとか、電源が取れない暗い廊下とか(笑) でもクリップオン・ストロボなら現場の人に「 このストロボちょっと持ってて 」(笑)ってできるし、クリップオン・ストロボならコンセント要らないし。

いのうえのぞみ

そっかー、電池で光るんですもんね、クリップオン・ストロボって。

大村祐里子

家でするブツ撮りとかも全部ニッシンのストロボ使ってますよ。やっぱりね、ブツ撮りは定常光よりストロボの方が演色性が高いので。

いのうえのぞみ

え、遠足せい? 高い?

大村祐里子

なんで無理矢理に遠足せねばならんの(笑) 「 演色性(えんしょくせい) 」。被写体がもつ本来の色をどこまで再現できる光なのか、それを平均演色評価数 Ra で表わすの。簡単に言えば、Ra が高ければ色の再現性が高いってことになって、「 演色性が高い 」って感じで言うわけ。たとえば太陽の光が 100 とすると、ニッシンのストロボは 97 ~ 98 くらいあるの。つまりストロボはお陽様に近い光ってことね。のんちゃんは夜の屋外で撮影したことあるでしょ? ストロボを使わないで、街灯だけで撮影したときに、肌が緑に色かぶりした経験ない?

いのうえのぞみ

ありますあります! なんかアバターみたいに写っちゃって……。

大村祐里子

アバター!(笑) それって、街灯の光の演色性が低いからそうなっちゃうの。

いのうえのぞみ

あっ、白熱灯とか蛍光灯とか、家にあるライトで撮っても色かぶりしますよね!

 

大村祐里子

うん。白熱灯や蛍光灯でも演色性の高いライトはあるけど、普通の家庭のほとんどの照明は演色性が低いものが多いの。演色性が低い方が安上がりっていうのもあるけど、低い方が気持ちが安らぐとか、料理が美味しくみえるとかあるから、低いからダメな照明っていうわけじゃないんだけどね。

いのうえのぞみ

なるほどね~。ライティングって難しいけど、なんか知れば知るほど面白そうですね。

大村さんの作品その6

 

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■ ニッシンジャパンで教えられたこと

 

 
いのうえのぞみ

えーっと、この連載では登場していただいた写真家さんから、読者の方々にクリップオン・ストロボのテクニックを教えていただくんですよね。ここは本連載を続けてきた大村さんにも是非教えていただかないと!

大村祐里子

あっ、それわたしダメ(笑) いたって普通な使い方しかしてないから(笑) 本来が自然光で撮るのが好きな人だったし、ライティングするにしてもド・ノーマルなの。わたし。だからこの連載やってて、ライティングが上手な写真家さん達のお話しが聞けて、ほんと勉強になってますよ。それと、もしわたしがニッシンジャパンで働いてなかったら、今でも自然光だけで撮ってたと思う。いや、そうじゃないな。ニッシンジャパンで働いてなかったら、この今の仕事してなかったかも。

いのうえのぞみ

というと、今の大村さんがあるのもニッシンジャパンで働いたからなんですね。

 

大村祐里子

本気で写真家になりたいと思ってたとき、たまたまツイッターでニッシンジャパンの求人をみて、これだって思って応募したんですよ。我ながら英断だったと思いますね~。今の仕事のベースになっている人ってほとんどニッシンジャパン時代に出会わせてもらったんですよ。のんちゃんもそうだし、スタグラさんもだし、メーカー関係や出版社の方との繋がりもそうですし。一気にブワーって仕事が広がったんです。本当に今、すごくありがたいな~って思っています。

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■ 大村祐里子と写真の出会い

 

いのうえのぞみ

そもそも写真が好きになったきっかけは何ですか?

大村祐里子

クラシックカメラですね。楽しかったな~。

いのうえのぞみ

クラシックカメラのどんなところが楽しかったんですか?

大村祐里子

もともとね、小さいころから絵をかくことが好きだったんですよ。自分の頭の中のイメージを表現したかった。でも画を描く技術がないから(笑) だけど、わたしにとってのクラシックカメラって、画を描くことに近かったの。だから楽しかったんだと思います。絵に近いんですよ感覚としては。で、長らくクラシックカメラでしかそれができなかったから、ちょっとモヤモヤしてたんですが、最近ようやくデジタルカメラで好きな感じが撮れるようになってたんで、また楽しくなってきました。

いのうえのぞみ

そういえば、ノンスタグラムのわたしの似顔絵は大村さんに描いてもらったんだ! 絵、上手じゃないですかぁ~。

大村祐里子

いやいや(笑) でも実は子供の頃は漫画家になりたかったんですよ。私の叔父が少年ジャンプの編集者だったんですが、ドラゴンボールの担当とかもやっていて。そんな関係もあるのかな。

いのうえのぞみ

へええ~!!

大村祐里子

それと CD のジャケット写真が小さい時からすごく好きだったんですよ。正方形のね。そんなだから最初は 6x6cm のブローニーフィルムが使えるクラシックカメラが好きだったんだと思う。なんでかわからないけどスクエアが好きだった。CD ジャケットって1:1の正方形の中に世界観があるじゃないですか。その人がどんな音楽を作っているのかとかわかるように、写真家さんとデザイナーさんが意味を込めて作っている。

大村さんの作品その7

 

いのうえのぞみ

1枚の完成された世界観って感じですよね。

大村祐里子

そう~、だから私は記録としての写真って自分の中にはあまりなくて、例えばお誕生会撮るとか、誰かの今の表情を収めたいとか、そういう感覚はあまり自分にはなくて。たぶん私の写真の視点は記録じゃないんです。

いのうえのぞみ

何だと思いますか?

大村祐里子

意味を込めるというか、絵を描くことに近いんです。自分のイメージを表現したい。スナップを撮るときも、今そこにある街そのものを写しているわけじゃなくて……私の思う交差点みたいなのを撮っているつもりなんですね。

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■ 写真家とカメラマン

 

 
いのうえのぞみ

こうしてお話を聞いていると、自分の頭の中にあるイメージを表現したいって、それって写真家ってことですよね。でも大村さん、以前にカメラマンもやりたいって言ってましたよね?

大村祐里子

そう~欲張りなんですよ私。今は写真家という肩書きで仕事させてもらってますが、カメラマンでもありたい。どう違うんだって、人によって解釈はいろいろあるんでしょうけど、前にある人に「 写真家は撮れないものがあってもいい、カメラマンは撮れないものがあってはいけない 」って言われたんです、いい意味で。それを聞いてできないことがあるってのがすごく嫌で(笑) 何でもできるようになりたいなって。やっぱり私がやりたかったのはカメラマンの方だったんですよ。

 

いのうえのぞみ

それはすごく意外です。大村さんの写真って作品性というか個性が強いと思うので、作家というか写真家っていうイメージの方が強くありました。当時から、ご自身のお仕事も順調にされてるようにみえましたが、なぜ福島さんのアシスタントになろうと思ったのですか?

大村祐里子

写真の現場って独特じゃないですか。現場の立ち振る舞いだったり、流儀みたいなものを知りたかったんです。空気の読み方とか、現場のコントロールだったり。それって独学では難しいと思うんですよ。仕事の準備から撮影が終わった後のことまで、スタジオもロケも全部学べるとこに行きたかったんです。それで1番好きだった憧れの福島さんのところに行きました。大変だったけど、仕事量も密度も濃いところで学べているのは本当にありがたいことです。

大村さんの作品その8

 

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■ 大村祐里子の今後

 

いのうえのぞみ

ご自身の仕事もしつつ、アシスタントとしても学ぶ。作品も残す。ほんと凄いことだと思います。今後、特に撮っていきたいイメージってありますか? やっぱり仰っていたような、その時のご自身の気持ちとかイメージですか?

大村祐里子

そうですね、それは永遠にやり続けるんだなって思う。私にとって息してるのと一緒なんです、作ることって。ライフワークだから無理することでもないし、なんか自然なことなんですよ。ずっと自分の気持ちとかを形に残すんだろうなって。どういうものが生まれるかは自分で興味があるんですよ。2009 年からやってますけど、ずうーっと写真のこと考えてるんですよ。色んな人に出会って色んな気持ちになって、それが形になって……。でこの時こんなことがあったんだな~とか、こんな邪悪なものができたな~とか。なんかそれを楽しんでるといるところがあります。だからこれから先の人生でどんなものができるのか楽しみですね。

いのうえのぞみ

大村さんが写真を撮ることって、その時のご自身の感情を知るってことなんですね。

大村祐里子

そうそう。悪い言い方すれば、感情の墓場なんですよ。埋葬? みたいな(笑)

いのうえのぞみ

なるほどね~。大村さんって「 感情のおくりびと 」だったんですね!(笑) 私、大村さんの作品ってすごく好きなんです。天国みたいな淡く美しい光の世界だったり、人間の赤黒いドロドロした感情だったり、暗闇から抜け出せない影だったり、女の子だけのピンクなファンシー空間だったり、花・雨・蝶・鎖・空……。金魚がみんなで清々しく泳いでいたら、いつの間にか一人ぼっちになった金魚は形が変わって目が殺気に満ちていて……。そんな写真がいっぱい詰まった写真集「 DRIVE RECORDER 」、とっても良かったです。

 

 
大村祐里子

えー ありがとう~!! 嬉しいな。

いのうえのぞみ

この写真集「 DRIVE RECORDER 」は WEB ギャラリーの 100 回を記念で出版したんですよね?

大村祐里子

そうそう、今は毎週木曜日の更新なんですが、続けたときに見えるものが知りたかったんです。2年前はこういう生活してたんだとか、わかるじゃないですか。今後も 200 回、300 回と続けていきますね。

大村さんの作品その9

 

いのうえのぞみ

いやぁ、これからも大村さんの作品、楽しみにしてます。最後に、クリップオン・ストロボ初心者方にアドバイスをお願いいたします。

大村祐里子

えっ~と、まずはアクセサリーなど付けずにシンプルに使ってみることですね。壁にバウンスしてもいいですし、色々試すと面白いと思います。ニッシンジャパンの初心者セミナーはリーズナブルでわかりやすいから、気軽に参加するのもおススメです。

いのうえのぞみ

私も今日、大村さんに撮っていただいた写真をみてストロボで水を撮ってみようと思いました。本日は貴重なお話と、作品のモデルもさせていただきとっても嬉しかったです! ありがとうございました。次回からは大村さんがインタビュアーの本来の連載に戻ります。頑張ってくださいね!

 

 
大村祐里子

こちらこそ~楽しかったです。ありがとうございました。次回は誰を取材するんだろうな~。楽しみだ!

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著者について
■ いのうえ のぞみ - Nozomi Inoue - ■  1983 年 3 月 19 日 東京都出身。モデル・タレント活動の傍ら、OLYMPUS OM-D E-M5 mark II を片手に、世界を旅しながら撮影している。現在 60 カ国以上、世界一周を目指している。2015 年度バリ島観光大使。2017 年よりプロカメラマンとして活動を開始する。 https://twitter.com/nononononozomin