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水中写真テクニック講座
中野誠志の 海Photo! 楽Photo! 水中写真テクニック講座
第五回 水中写真の露出のテクニック 2009/07/22
 

みなさんこんにちは!
水中写真テクニック講座担当の中野誠志です。

毎日暑い!!
ダイビングシーズンど真ん中ですね。みなさんも楽しいダイビングライフをお過ごしでしょうか?

さて、第五回水中写真テクニック講座は、『水中写真の露出のテクニック』についてお話ししていきたいと思います。露出、とは言っても、別に変なところを出したりするわけじゃありませんよ!(笑)

みなさんも今回の講座を読み終わる頃には、青抜き(右写真上)・黒抜き(右写真上)、スローシンクロのコツを理解して、さっそく海で試してみたくてうずうずしていると思います。ぜひ読み進めていってください。

Text by 中野誠志
 

露出のコンロールで写真が変わる
明るい「青抜き」(上)と、被写体が映える「黒抜き」(下)を思い通りに撮れる

  露出ってなに? このページのトップへ  

 

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写真A

ヒストグラム
ヒストグラムの右端や左端を振り切って、色の山が左右に大きく飛び出してしまうような写真は、ハイライトが飛んでしまったりシャドウが潰れてしまっています。ハイキー・ローキーの写真を意図的に表現したい以外では、"失敗写真"でしょう。

今回の講座内容は水中写真の露出についてお話します。

ダイバーになってから初めてコンデジを購入した方や、
陸上ではいつもPやシーンモードで撮影している方たちの中には、

「???・・・露出って何?」

という方が多いのではと思います。
だって露出のことを知らなくても、シャッター押すだけでちゃんと写ってますもんね。
いや〜、デジカメのオートってホント素晴らしいです。

露出というのは、光をどのぐらい写真に写し込むか?ということで、光を取り込みすぎて白飛びしているのを露出オーバー、光が足りなくて暗くなっているのを露出アンダーと呼びます。

露出オーバーは、プレビュー時に白飛び警告表示を、露出アンダーは、プレビュー時に黒潰れ警告表示させていると、わかりやすく点滅してくれるカメラもあります。

写真のヒストグラムを見て、写真の階調が一番右のハイライトと、一番左のシャドウの間に収まっているのをご自分のカメラで確認してみて下さい。

目指すべきは、適正な露出になっている良い写真です。
露出を理解し、撮れた写真に過不足があれば、自分で再度露出を調整して、 適正な露出の印象的な写真を撮れるようになりましょう。

・・・え?

なんだか難しそうですか???

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写真B

絞って高速シャッターの写真
イバラタツ、ニコンF4 MicroNikor 105mm 被写体との距離 50cm f・16 1/100 ISO-100(Velvia100F) ストロボ:SB-105
絞って早いシャッタースピードで撮ると、バックが真黒に落ちます。印象的な写真にするテクニックの一つです。

まだカメラにあんまり慣れてない方は、Pモードにして撮影するようにしてみてください。全自動で簡単に良い感じの写真が撮れますよ。

水中写真を始めたばかりの頃は、特にピントを合わせるのが難しいと思います。露出はオートにしてカメラに任せて、第三回第四回の講座を参考に、うまくピントを合わせることに集中して、練習してください。

ピント合わせに慣れている方は、そろそろ露出について学んでみてもいい頃です。
自分も最初は露出のことなんて良くわからずにピント合わせだけで精一杯したが、露出を意識しながら撮影していくと、そのうちちゃんと理解できました。

自分の場合、露出を学ぶことのきっかけは、マクロ撮影での爽やかなネジリンボウの青抜き写真を見て、 「どうやって撮ってるんだろう?」と思ったのが露出を学ぶきっかけでした。

露出を理解する事はそんなに難しいことではありません。
露出をマスターすると、印象的な写真にするテクニックである黒抜き・青抜きも自由自在にできるようになりますよ。
ゆっくりかみくだいて説明していきますので、一緒に勉強していきましょう!

 

【関連ページ】
「ヒストグラム」と「露出」については、スタジオグラフィックスの下記のページでも解説しています。

 


  水中写真の露出の要素って何だろう? このページのトップへ  

自分が思うに、水中写真の露出は6つの要素で構成されています。

  1. 絞り
  2. シャッタースピード
  3. ISO 感度
  4. ホワイトバランス
  5. 主にストロボ(や水中ライト)などの人工光
  6. 露出補正

の6つです。

これら6つの要素は、機種にもよりますが、カメラ側の設定で自由に操作できるものです。(5のストロボは外部で調整する外部ストロボも用います)

コンデジのエントリー機ではオートしか選べず操作できないものもありますが、中級機以上のコンデジやデジイチでは、自由に操作できるマニュアル機能がついています。

普段オートで撮影していると、これらの調整はほとんど全部カメラが自動でやってくれます。

例えば、絞りを撮影者が表現意図に合わせて操作できるAモード(絞り優先モード)の場合には、絞りを絞るとその不足分の光量を補うために、カメラがシャッタースピードをそれに合わせて遅くしたり、 ISO感度を上げてくれたりしますし、必要なら内蔵ストロボまで自動で発光してくれます。

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写真C

カメラが判断した露出
オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL fisheye 8mm 被写体との距離 50cm
f・4 1/40 ISO-100 ホワイトバランス:オート(曇天6500ケルビン)

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写真D 自分で判断した露出
オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL fisheye 8mm 被写体との距離 50cm
f・11 1/30 ISO-100 ストロボ:強制発光 INON Z-240×2灯
ホワイトバランス:マニュアル(RAW現像時に4750ケルビン)

ところが撮影状況によっては、オートではこちらの意図通りの露出に撮影できないこともあります。

オートでカメラが設定してくれる「カメラが感じるちょうど良い明るさ」が、撮影者にとってはそうではない場合があるのです。

また、絞りやシャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランスについても、撮影者がそれぞれ指定することで作画意図を表現できます。

写真Cは、オートで撮影した例です。
カメラが開放絞りとスローシャッター、そしてホワイトバランスもオートにしてみると曇天を選択。
ストロボもオートでは発光せず、色の再現のない緑かぶりの写真に。

色の減衰がない陸上風景写真ではこれでも露出データ的にはいいかもしれないけど、色が失われる水中では・・・???

一方、写真Dは背景の水の色合いと被写体の色の再現のバランスを考えて撮影・現像しています。

みなさんはどちらが好みの水中写真ですか?

このように、普段はオートでもいいのですが、
オートではうまくいかない場合に1〜6の要素を自在に操作して行う撮影方法を理解すると、もっと水中写真が楽しくなります。

ぜひ読み進めていってください。


  露出の6つの要素とは? このページのトップへ  


1:絞り

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写真E

絞りを開放した写真
オキゴンベ、オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL 50mm macro 被写体との距離 50cm
f・5.6 1/100 ISO-100 ホワイトバランス:マニュアル(晴天5300ケルビン)
絞りを開放して撮ると、ごちゃごちゃした背景から被写体を浮き上がらせる効果
もあります。
特に後ろが壁の環境にいる被写体に有効です。

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写真F 絞りを絞った写真
イボガザミ、オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL 50mm macro 被写体との距離 20cm
f・11 1/100 ISO-100 ホワイトバランス:マニュアル(晴天5300ケルビン)
絞りを絞るのは、特にエビ・カニのカッコいいフォルムを強調したい時に有効です。

「f」で表わされる絞りの数値は、「どれぐらいレンズに光を通すか」と「ピントが合う幅である被写界深度」に関係してきます。

2.0や2.8などの開放絞りだと、レンズ内の羽根はかなり開いていることになります。

試しに自分の方にレンズを向けてシャッターを切ってみてください。シャッターを切った瞬間に羽根が絞りに合わせて動くのがわかりますよね?
開放絞りの場合、入口が広いので光はたくさんレンズを通過し、被写界深度は狭くなります。

反対に、16 や 22 まで f 値を絞り込んだ場合には、レンズ内の羽根は中央へ向かってせり出し、レンズの穴はほとんどピンホールのようになっているはずです。

この状態ではレンズの入り口が狭いので、お察しの様に光はほとんどレンズ内へ通っていきません。その一方で被写界深度は深くなります。

露出について、よく例えに出されるのが水道とバケツの比喩なのですが、絞りを絞ることは、水道の蛇口をわずかにしか開けないことに似ています。

蛇口を少ししか開けないと、バケツを水でいっぱいにするには時間がかかりますよね?
つまり、絞りを絞り込んで撮影すると、光の通り道が狭くなるので、光を露光するのに時間がかかってしまうわけです。

反対に絞りを開放する事は、水道の蛇口を開けることに似ています。

蛇口からたくさん水が出るならば、より短い時間でバケツをいっぱいにできます。つまり、絞りを開放していると、短い時間でより多くの光量の光を露光できるわけです。

【絞りのまとめ】

  • 写真を明るくしたい場合は、絞りを開放にし、レンズにたくさんの光を通す
  • 写真を暗くしたい場合は、絞りを絞り、光を少ししか通さない
  • ふんわりしたソフトな写真にしたい場合は、絞りを開放にする
  • しゃっきりしたシャープな写真にしたい場合は絞りを絞る

 

2:シャッタースピード

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写真G 速いシャッタースピードの写真
ハナハゼとヒメユリハゼの混泳、オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL 50mm macro 被写体との距離 70cm
f・5.6 1/100 ISO-100 ストロボ:INON Z-240×2 ホワイトバランス:マニュアル(晴天5300ケルビン)
早いシャッタースピードで撮ると、バックが黒く落ちます。
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写真H ブレを生かす
スズメダイの群れ、オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL fisheye 8mm 被写体との距離 1m
f・11 1/30 ISO-100 ホワイトバランス:マニュアル(5000ケルビン)
スローシャッターを切った瞬間にカメラを動かしていると、ブレを生かした表現
ができます。
遅いシャッタースピードを利用して被写体をぶらし、ストロボで像を写し止める
テクニックです。

シャッタースピードは、シャッター幕を開けて、どのぐらいの時間、光を露光するか?というスピードを表します。

水道とバケツの例で言うと、1枚の写真を適切な光量で露光するため、すなわちバケツをいっぱいにするために、どのぐらいの時間、蛇口から水を出しっぱなしにするか?ということと同じ意味になります。

シャッタースピード1/60秒の場合、1/60秒間光を露光するわけです。5秒や1時間などのシャッタースピードの場合、それに比して長い間光を取りこむことになります。

シャッタースピードが早ければ早いほど、高速で動くものも写し止めることができますし、手ぶれを防ぐことにもなります。

逆にシャッタースピードが遅ければ遅いほど、物体はブレて写りますし、手ぶれも起こりやすくなります。
長いシャッタースピードは、主に夜景や星空などの夜間の撮影に使われます。

【シャッタースピードのまとめ】

  • 深く暗い水深で背景の水を明るくしたい場合や、わざと被写体をぶらして写したい場合、スローシャッターにして、シャッタースピードを遅くする。
  • 背景の水を黒くしたい場合や、速く動く生き物を写し止める場合、シャッタースピードを速くする。
    ストロボと同調させる日中シンクロの場合、ストロボがシャッターに同調する限界をX接点と呼びます。機種にもよりますがだいたい1/250秒がX接点となり、ストロボ撮影の場合それ以上早いシャッタースピードを切ることはできません。

マクロ撮影では手ぶれに細心の注意を払ったとしても、1/8〜1/15秒ぐらいが限界でしょう。

「いや、オレは1/4秒でもブレない男だぜ」
「いいや、オレなんか1/2秒だぜ」

はい、そんな腕自慢な方もいらっしゃるでしょう。
そうした限界に挑戦するのも写真の秘かな醍醐味なんですよね。


3:ISO感度

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写真I 高感度の写真
FUJIFILM FinePix F31fd オート f・2.8 1/170 ISO-800
高感度で撮影された写真は、画像が荒れたりノイズが暗部に乗ったりします。
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写真J 低感度の写真
Canon PowerShot A720 IS f・2.8 1/30 ISO-80
低感度で撮影された写真はディテールまできれいです。

ISO感度は、フイルムカメラのフイルムに相当する撮像素子イメージセンサーの、光に対する感度を表します。

ISO感度を上げて撮影することを「高感度撮影」と呼び、絞りをもっと絞れたり、シャッタースピードを稼ぐことができます。

逆にISO感度を下げると、適正に露光するのにスローシャッターか開放絞りが必要となります。
陸上に比べて明るさに劣る水中では、それを補助するためにもストロボが必要となります。

一見すると便利そうなISO感度の操作ですが、一般的にはISO感度を上げれば上げるほど粒子が粗くなり、ディテールが失われます。
さらに暗部にはノイズが乗ってくるので画質が悪くなっていきます。

プロ機ではない普及機のようなカメラの場合、HPやブログなどに小さく使うぐらいなら高感度でも問題ありません。

大きく印刷したりするなら低感度で撮影する方が良いでしょう。

【ISO感度のまとめ】

  • ISO感度の数値を大きくすると写真が明るくなります。
  • ISO感度の数値を小さくすると写真が暗くなります。
  • 印刷などに使うきめ細かな写真にしたい場合、ISO感度の数値を小さくします。
  • 粒子の粗さによる荒々しさなどの迫力を出したい場合、ISO感度の数値を大きくします。

 

4:ホワイトバランス

ホワイトバランスとは色温度のことです。
太陽光は晴天時5300ケルビン程度、曇天時6000ケルビン程度と言われています。
色温度は早朝や夕方などの時間帯によっても変動しますし、電球・蛍光灯などの光源によっても変動します。
白い蛍光灯や赤みを帯びた蛍光灯ってありますよね?

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写真K

ホワイトバランスの選択(設定)
オリンパス。RAW撮影できない機種では、写真を撮る前にホワイトバランスの設定を決めておかなければならない。

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写真L RAW現像
オリンパス E-3 ZUIKODIGITAL 14‐42mm
RAW現像では、撮影した画像を見ながらホワイトバランスの調整が可能。著者が使用している現像ソフトは、市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX Marine Photography Pro 3.0」。試用期間が一か月あるのでお試しあれ。

ホワイトバランスはコンデジでも設定を変更でき、プリセットと呼ばれる『晴天』・『曇天』・『蛍光灯』・『電球』などのモードがあります。

また、ワンタッチホワイトバランスを選べる機種は、撮影の直前にその都度「白いもの」を写すことで、ホワイトバランスをその水深に合わせて適切に設定することもできます。
(めんどくさいですけど)

実はちょっと困ったことに、陸上用に作ってあるカメラにとって、水中というところは特殊な環境のようなのです。
陸上では概ね問題ないオートホワイトバランス機能ですが、水中ではうまく行かない事があります。
水中でのコンデジのホワイトバランスは、ストロボでのマクロ撮影や透明度が良い海では晴天モードを。

これでうまく行かなければ蛍光灯モード(あれば蛍光灯3)を使うと良いと思います。写真の青みが自然な感じに強調されて、違和感のない、自分で見た感じに近い海の写真が撮れると思います。

一方、デジイチや高級なコンデジでは、未加工の元データであるRAWデータで撮影しておくと、RAW現像時に好みの色温度に調整できます。

それに現在では、現場でRAWデータで撮影して、ホワイトバランスを後でパソコンで調整するのは、写真の表現方法の常識になっています。

さて、これらのホワイトバランスの調整が水中写真で生きてくるのは、基本的には背景となっている『水』の色合いについてです。

伊豆などでは海水の濁りの影響で、撮影した写真もすがすがしい青い海にはなかなかなりません。
ところが、色温度を少し操作して、写真が青みを帯びるようにすると、それなりの写真にすることができます。

と言うか、写真をより美しく仕上げるための、仕上げのブラッシュアップ、またはレタッチという点からすると、ホワイトバランスの調整はした方が良いことが多いでしょう。
ホワイトバランスの操作のテクニックは、ストロボ光で基本的に撮影するマクロ撮影よりも、自然光を生かした広角での水中撮影に必要なテクニックと言えます。

逆に、太陽光に近い色温度設定となっているストロボの光が届く被写体の色合いは、ホワイトバランスを大幅に操作すると違和感が出てしまいます。
ホワイトバランスの調整は、水中で見たままの海の色合いを再現するのが本意であるのを忘れずに・・・。

【ホワイトバランスのまとめ】

  • コンデジで撮影する場合は、透明度や深度次第でホワイトバランスを指定した方が良いことがある。『晴天』・『蛍光灯(あれば蛍光灯3)』がお勧め。
  • デジイチで撮影する場合は、RAWで撮影し、RAW現像時に調整する

5:ストロボ・水中ライトなどの人工光

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写真M 青かぶり写真
オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL fisheye 8mm f・5.6 1/30 ISO-100
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写真N ストロボ写真
オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL fisheye 8mm f・5.6 1/30 ISO-100 
ストロボ:INON Z-240×2

太陽の光がさんさんと届く、ごく浅い場所で撮影した写真は色の再現性も良いのですが、深い場所で撮影したストロボなしの写真は青かぶりした写真になってしまいます。

写真M は光が満足に届かない水深 30m での写真です。

開放絞りとスローシャッターで遠くまで地形が写ってはいますが、鮮やかな色の再現性がありません。

深度下で色を再現するために用いる5のストロボについては、カメラ内臓ストロボには自動調光が備わっていて便利ですし、外付けのストロボでもTTL(スルー・ザ・レンズ)オートやS−TTL(シンクロ・スルー・ザ・レンズ)オート機能があり、自動で適切な光量に調節してくれます。

写真N はストロボで手前のエダムチヤギの鮮やかな色を再現した写真です。

ストロボの光が届いていない写真の奥の方は、写真M と変わらず自然光のみの状態で、色の再現がないのを確認してください。

初心者のうちはよく勘違いしやすいのですが、ストロボの光では背景の遠景の地形は明るくする事ができませんし、背景の水も明るくすることはできません。

これらは絞りとシャッタースピードとISO感度のコントロールで背景を明るく・暗くします。
ストロボや水中ライトで明るくできるのは、それらの光が届く、カメラから1〜2m以内の被写体だけです。

<GN:ガイドナンバー>

ストロボがどれぐらいの露出に対応できるかについては、GNと書かれたガイドナンバーで計算することができます。GNの数字を被写体までの距離で割ることによって f 値が求められます。

例えば、筆者が使用しているストロボはINONのZ-240という機種なのですが、このストロボのガイドナンバーは24です。GN24というのは、陸上で、かつ ISO感度100での数字です。
水中換算だとこのGNは半分になるので、GN12となります。これを被写体までの距離1mで割ると f12ですよね。ということは、1m離れた被写体には f11までの絞り値で撮影することになります。
同様に、被写体まで50cmの距離だとf22までイケるということですね。

【ストロボのまとめ】

  • ストロボの届く距離はせいぜいで1〜2m (内臓ストロボは50cm〜1m)
  • コンデジの内臓ストロボでの撮影では強制発光にする
     (広角撮影の場合にハレーションがひどい場合はオフ)
  • 外部ストロボの場合はTTLやS-TTLのオート機能を有効に使う

 

6:露出補正

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写真O

海中風景
オリンパス E-410 ZUIKODIGITAL fisheye 8mm 被写体との距離 50cm〜1m
f・5.6 1/30 ISO-100 Z-240×2灯
目指せ!露出マスター!!

Aモード(絞り優先モード)やSモード(シャッタースピード優先モード)の場合に、露出補正をプラスしたりマイナスすることで、カメラが決めた露出に対して自分が良いと思える明るさの写真にすることができます。

絞り・シャッタースピードの2つを両方操作するマニュアルモードよりも、絞りだけ、またはシャッタースピードだけを操作すれば良いAモードやSモードは、適正露出を求める場合には手間が省けて便利です。
その分だけ構図やピントに集中することができます。

例えば、深い被写界深度を優先して魚の細部までキリッと写したい時や、広角レンズで地形をシャープに描きたければAモードで絞り込めば良いし、イルカや回遊魚などの動きが早い魚を写し止めたければ、Sモードで早いシャッタースピードに設定しておけば良いのです。

この時に、撮影者の好みの明るさに写すためにある機能が露出補正です。
カメラが適正だと判断した露出を、撮影者が明るく・暗く補正することができます。

露出補正がどのような仕組みで明るく・暗くしているかと言うと、Aモードの時の露出補正はシャッタースピードが前後し、Sモードの時の露出補正は絞り値が変化しています。

つまり、マニュアルモードと同じことをやっているわけですが、こちらの方が直観的に操作できる方もいるでしょう。
陸上の風景写真のプロカメラマンは、Aモードで露出補正を駆使されている方が多いようです。

陸フォトでは『ブラケット』と言う段階露出を行います。
段階露出とは、あるデータで撮影した写真に対して、プラス側の露出とマイナス側の露出で何カットか余分に撮影する方法です。
こうしておけば露出のミスがほとんどなくなり、適正な露出を得るチャンスが増えます。

この段階露出を自分で操作して撮る際に露出補正が便利なんですね。
水中写真の場合、広角撮影やマクロでの青抜き・黒抜きで段階露出をやっておくとミスが減ります。

【露出補正のまとめ】

  • 露出は一定ではなく、段階露出で撮影する (オートもマニュアルも)
  • 段階露出で被写体だけでなく、背景の色合いの変化にも注目する

 

中級者向けワンポイントアドバイス

ピントを拾うのがまずまずうまく行くようになってきたら、今度は画作りを始めてみましょう。

画作りの要素にはアングルや構図もありますが、ここではお待ちかねの青抜きと黒抜きについてお話します。

1:青抜き

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写真P 青抜き
オリンパスE-410 ZUIKODIGITAL 50mm 被写体との距離:10cm f・2.8 1/60 ISO-100
青抜きは赤と補色の関係(赤とシアン・青とオレンジ)にあるため、色の組み合
わせの相性が良いです。
柔らかなイメージの写真となります。

 

マクロ撮影でもワイド撮影でも人気の技法で、背景がブルーの爽やかな印象の写真を撮る事ができます。

具体的には

  1. 絞りとシャッタースピードと、ISO感度を適切に背景の露出に合わせて設定する
  2. 被写体に適切なストロボの光量を当てて撮影する

という手順になります。

『背景の測定→被写体の撮影』というわけですね。

普段のように、被写体に向かって構えたら、カメラを右か左のどちらかに振って(上下はダメです)、被写体を画面から外して背景となるものが何もない水に向けます。
この際、測光モードをスポット測光か中央部重点測光にしておくと便利ですよ。

そして、露出計が−0.7〜+0.7あたりの適当な数字になるように設定します。

0を中心に、−側の濃い青から+側の淡い水色まで自分の好きな色合いに設定し、被写体に向きなおり撮影します。 この時、必要ならちょっとあおり気味にしてカメラを構えると、より光を取り込めて露出が稼げたりします。

逆に、地形的に問題があって被写体に対して俯瞰気味にカメラを構えることになると、青抜きするのは難しかったりします。

マニュアル撮影モードやシャッタースピード優先モードがないコンデジ機の場合、マクロ撮影の際にシーンモードで夜景モードにするとスローシャッター効果が得られます。
手ぶれに注意してチャレンジしてみましょう。

2:黒抜き

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写真Q 黒抜き
オリンパスE-410 ZUIKODIGITAL 50mm 被写体との距離:10cm f・10 1/100 ISO-100
黒抜きは図鑑・生態写真に最適です。きりっとした写真になり、コントラストで
被写体を浮き立たせる効果があります。

被写体を強調する効果があるのが黒抜きです。
バックは真っ黒一色。
被写体が浮かび上がるようで印象的な写真になります。

深く潜ると暗くなっていく水中世界では青抜きより簡単で、意識しなくても撮った写真が黒バックになっていることもありますよね。
黒抜きにはナイトダイビングも効果的です。

方法としては、

  1. 感度は最低感度に設定
  2. 早いシャッタースピードに設定
  3. 絞りは絞り込む

1〜3のように露出を設定すると、背景の水が露出不足で真っ黒になります。
その状態で、被写体の色はストロボで出してあげると、きれいな黒抜き写真が撮れます。

 

【中野流 青抜き・黒抜きのポイント】

青抜きも黒抜きも、被写体の色を出すために用いるストロボ光は、TTLオートか
S-TTLオートに設定して、調光を任せてしまうことがポイントです。

  1. ISO感度は最高画質の感度に設定
  2. ホワイトバランスはできればRAW撮影して現像で調整。
    RAW撮影機能がない場合やコンデジ撮影の場合、晴天か蛍光灯に。
  3. 絞り値は、被写体にどのぐらいの被写界深度が必要か?
    という表現に合わせて設定。
  4. シャッタースピードは、青抜き・黒抜きに合わせて設定。
  5. 背景には水が来るように注意して、壁や水底が背景に入らないように注意する。

普段はこの1〜4をマニュアル操作して、ストロボはS-TTLオートで撮影しています。

1と2は固定で普段は動かさないので、複雑そうな露出に関しても実際は絞りと
シャッタースピードだけ操作しているわけです。

ところが、構図全体に対する水の割合が多いと、ストロボのTTLオートはうまく
作動しない場合があります。
自分も使っているINON社のストロボは調光性能が良いので、S-TTLオートで
ほとんどうまくいきますが、うまくいかない場合はストロボもマニュアルで
操作することになります。


 

第五回水中写真テクニック講座「露出のテクニック」はいかがでしたか?
今回も読んでいただきありがとうございました。

前回のマクロ講座では、身近な生物を撮る楽しさをお伝えしましたが、
今回の講座では、身近な生物や海中風景を印象的に撮る楽しさをご紹介した
つもりです。

露出を意識するようになると、また水中写真が俄然おもしろくなってきます。
がんばって身につけてみて下さい!

今回の記事を読んで、水中写真の露出のことをもっと知りたくなった方は、
ぜひお近くのダイビングショップやサービスで露出について聞いてみてください。
きっと丁寧にいろいろ教えてくれると思います。

まぁたぶん、
「ねぇねぇ〇〇さん、露出って何?」って聞くと、

「そりゃビキニだよ〜」とか、

「え!?オレの見たいの???」
って感じのくだらないギャグをまず、かまされると思いますが(笑)

さて、次回の水中写真テクニック講座の内容は「水中写真の構図」です。
構図をマスターすると、写真が作品となります。
コンデジだけの装備でも身につけることができるテクニックなので、ぜひ読んで
みて下さい。
それではまた次回お会いしましょう!

 

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初出:2009/07/22
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