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水中写真テクニック講座
中野誠志の 海Photo! 楽Photo! 水中写真テクニック講座
第三回 水中写真の基本のダイビングテクニック 2009/06/24
 

みなさんこんにちは!
水中写真テクニック講座担当の中野誠志です。
前回の講座、『水中写真用器材の選び方』はいかがでしたか?お気に入りのmyカメラは手に入りました?

今回の水中写真テクニック講座は、
 「カメラを手に入れたばかりで、きれいな
  水中写真の撮り方がわからない」
 「現在手持ちのカメラで、もっときれいな写真を
  撮りたい」
という方のためにも、水中写真の基本テクニックについてお話ししていきます。
さぁ、今回も海フォトを楽しみましょう♪

Text by 中野誠志
水中写真の基本とダイビングテクニック (イメージ写真)
 

泳ぐタコを撮影する女性。楽しく写真を撮りましょう♪オリンパス C770UZ

  失敗写真から学ぶ このページのトップへ  

 

うまく撮れた水中写真は、言い換えれば成功した写真です。
では反対は何でしょうか?

それは、何かしらの要素が欠けた、失敗した写真ですよね。
成功写真が撮れる打率を上げるためには、その逆である失敗した写真から、失敗した原因が何かを学ぶことが重要です。

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写真A1

撮った写真を水中で確認し…
オリンパス E-410 ZUIKO DIGITAL fisheye 8mm
f値11 1/60秒

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写真A2 構図と絞りを変えてリトライ
オリンパス E-410 ZUIKO DIGITAL fisheye 8mm
f値8 1/60秒

「敵を知り、己を知れば、百戦危うからずや」

と古くから言うそうです。
成功した写真だけを眺めるのではなく、失敗写真もきちんと分析しておき、どうすれば写真がもっと良くなるのか…失敗写真から学ぶことが成功写真への近道となります。

海中でも液晶モニタで撮った写真を確認できるのがデジタルカメラの良いところです。撮った写真の結果を確認したら、海中では失敗写真を消去せずに、ダイビング終了後にパソコンで失敗写真もしっかり見てから消すようにするといいでしょう。
海中で失敗写真を消す時間を費やしたり、手間取るくらいなら、ダイビング中の限られた時間をもっと写真を撮る時間に充てたり、海を楽しむ時間に充てる方が賢明ですよね。

こうして撮影していくと、水中写真の出来映えもぐ〜んと良くなります。
自分の写真がうまくなっていくのは楽しいものです。
それでは今回の水中写真講座を見ていきましょう。

写真A1を撮影後に液晶で画像を確認すると、海の色がちょっと濃すぎるし、モデルに入ってもらった安良里ダイビングサービスタツミのメインガイド、タケさんとの距離が遠すぎると判断。

写真A2では f値を少し開放して海を明るくし、タケさんに近寄ってもらって構図も修正して撮影。臨場感を出すために空気を吐いた瞬間にシャッターを切ります。

デジタルの最大のメリットは、トライ&エラーの中でのその場でのリトライにあります。


  撮影に重要なダイビング・テクニック このページのトップへ  

 

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写真B 中性浮力をとりながら泳ぐダイバーたち
中性浮力は、ほとんど誰もが身につけることができるテクニックです。
オリンパス E-410 zuikodigital 14-42mm 自然光撮影

水中写真を撮る為に必要となる水中写真の基本テクニックは、大きく分けてダイビングのテクニックと写真撮影のテクニックの二つに分かれます。

そのうち、水中写真で特に重要なのはダイビングのテクニックです。
良い水中写真を撮るためには、しっかり身につけなくてはならないテクニックなのです。

ダイビングのテクニックとは、

  1. 被写体に近寄るアプローチ技術
  2. 体を前後・上下・左右に思いのままに動かしたり止めたりする技術
  3. 呼吸のコントロール技術

がポイントとなります。

写真撮影のテクニックとは、

  1. 被写体と背景に適切な色が出ているかどうかという、
    絞りとシャッタースピードとISO感度とストロボの調光による【露出】のコントロール
  2. 構図の構成
  3. アングル

などが主なポイントとなります。

ダイビングに慣れないうちはひとまず写真は控えめにしておいて、ダイビングの基本テクニックを身につけることに重点を置いた方が、結果的に短期間で、良い写真が撮れるようになれると思います。

それに写真ももちろん楽しいものですが、ダイビングが上手くなるのも自分が成長した実感があって楽しいですよ。

というわけで、今回の講座では、水中写真の基本となるダイビングのテクニックについてお話しすることにします。写真撮影のテクニックは次回から数回にわたってじつくり解説していこうと思います。

「どうして上手に写真が撮れないんだろう?」と感じていた人は、今回ご紹介するダイビングのテクニックを意識しながら潜るだけで、新しい発見や撮影テクニックが自然と少しずつ身に付いていくと思います。
この夏、楽しみながらたくさん潜って、ぜひ身につけて下さいね。


  アプローチ 被写体に近寄る技術 このページのトップへ  

 

1.ダイビングスキルを磨こう!被写体との信頼関係を築こう!

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写真C 深度が深くなると色がなくなる
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写真D 被写体の距離とストロボ光による発色のちがい
約2mほど離れた場所から撮影した写真Cと、約1m程度の近い距離で撮影した写真Dは、ストロボ光の届き方がこんなに変わります。
オリンパスE-410 zuiko digital fisheye 8mm
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写真E 失敗写真 後ろ姿
被写体を驚かしたり、警戒させてしまうと後ろ姿の写真に。オリンパスE-410 zuiko digital 50mm macro
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写真F 成功写真
後ろ姿の魚の写真より、こちらと向かい合った写真の方がチャーミングですよね。オリンパスμ750
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写真G 棘や毒のある生物
毒を持つ棘を生やしたウニの仲間に刺されると、そりゃあもう痛いのなんの。
Canon PowerShot A720 IS
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写真H 砂の巻き上げに注意
砂を巻き上げてしまうとこの通り。あらら、これじゃ何を撮ったんだかわかりませんね。

水中写真は、光が満足に届きにくい水中での撮影となるため、色の再現が命です。

深く潜れば潜るほど色は失われていってしまいます。

失われた色を再現するために水中ではストロボを使いますが、被写体との間に入る水も水深の問題同様にストロボの光を減殺していきます。

右の写真Cを見比べてください。
写真C上は、水深が深くなるにつれて光が届きにくくなりウミウチワの色が失われた例です。ストロボや水中ライトを使った場合でも、水中では距離が離れるにつれて、陸上よりもずっと色が失われやすくなります。 写真Cは約2mの距離、写真Dは約1mに近寄って撮った例ですが、距離の違いでストロボ光による色の違いがこんなに現れます。

ですので、水中写真で海中の色を再現したい場合、なるべく被写体とストロボ・カメラの距離を詰めることが重要です。

それではその近寄り方を見てみましょう。

 

 

2.アプローチ その1

一緒に潜ったガイドや仲間から教えてもらったり、自分で見つけた魅力的な被写体がいたとします。

「あ、きれいな魚だな」
「おっ、こりゃ珍しいぞ」

ここでそのまま被写体に突き進んでしまうとどうなるでしょう?

もちろんNGですよね。
相手にとっては襲いかかられたようなものかもしれませんから、ほとんどの場合たちまち物陰や岩の隙間に逃げ込んだり、泳いで逃げ去ってしまいます。

こうなると全く写真が撮れなかったり、かろうじて撮れても後ろ姿の失敗写真(写真D)だったりしますよね。

みなさんもそんな覚えがありませんか?
後ろ姿の写真がよく撮れてしまう人は、相手の被写体を警戒させすぎてしまっているのかもしれませんね。

そのため、被写体へのアプローチの第一歩は、まず止まることから始めましょう。

 

 

 

3.アプローチ その2

被写体の周囲の環境を確認せずに即座に撮影に入ってしまうと、手元や足下にいるサンゴなどの生物を壊してしまったり、傷つけてしまうことになります。

それに、岩陰にひそんでいるウニ(写真G)や、棘を持つ魚などに手や足を刺されることになるかもしれませんよ。

 

 

 

4.アプローチ その3

さらに、被写体だけに気を取られていると、不用意に手や足をついただけで海底の砂が巻き上がってしまい、せっかくの写真にたくさん砂粒が写り込むことにもなりかねません(写真H)。

砂を巻き上げても撮影に影響させないテクニックとして、水中に少しでも流れがあるようなら、流れの下(下流)の方からアプローチする方法があります。

それなら、自分がフィンで蹴飛ばして巻き上げた砂も後方へと流れていきますから、被写体に砂がかかることがなくなります。

 

 

 

  間合いをつめていくテクニック このページのトップへ  


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写真I 遠目の写真
ひとまず離れたところからパシャリ。
記録写真みたいな気持ちで。
オリンパス C750UZ
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写真J 寄りの写真
その1本のダイビングの目的に設定して、じっくり腰を据えて少しずつ近づいていきましょう。時間をかければマクロレンズをつけて撮れる距離まで近づけます。
オリンパス C750UZ+INON製クローズアップレンズ×1枚

1.間合い

そういうわけで、撮りたい被写体がいたら、まずそこで止まって一呼吸置きましょう。

人間もお互いに正面から向き合っていると、居心地が良くない距離というものがありますよね。これは個人差やお互いの関係にもよりますが、だいたい1mぐらいでしょうか?

魚たちにとってみても、居心地の良くない距離というものがあるようです。
そこをぶしつけにひょいっと越えてしまうと、相手は魚類ですから人間には追いつけないスピードで逃げてしまったり、巣穴や岩の隙間へと姿を隠してしまいます。

ですから、まずはその一線を越えないように、被写体の2〜3mほど手前でそっと止まりましょう。そして相手の様子をちょっと観察してみましょう。

さて、相手の様子を観察してみて、こちらへの注意が逸れて、エサを食べたり泳いだりと普段の暮らしをしているようなら、その場からひとまず撮影しましょう(写真I)。ストロボの光も届かず、魚のきれいな体色も再現できないかもしれませんが、とりあえずまずはこれでOKなのです。

相手がこちらを見つめて警戒しているようなら、一度少し距離を離すのもいいと思います。

しばらく時間をかけてみて、被写体が警戒しなくなったら、また少しずつ距離を縮めてみても良いかもしれませんね。

距離を縮めて、ストロボ光が十分に届く距離で撮れば、写真が見違えるようにきれいになると思います(写真J)。

 

2.撮影動作

「撮影動作」って聞き慣れない言葉でしょうか?
カメラを構え直したり、何枚か撮っては画像を液晶で確認したり、設定を変更したり、ストロボの角度や光量を変えたりするという行為のことです。

パソコンの前で結構ですので、ちょっと腕を前に出して、実際に水中でやるようにカメラを持っている感じでやってみてください。

・・・どうでしたか?
この時に、相手の魚の様子をうかがいながらカメラをゆ〜っくりと動かさずに、普段通りにすっと動かす人がけっこう多いように思います。

距離が遠い場合はこれも問題とはなりにくいのですが、マクロ撮影している場合は距離が近いので、撮影動作に相手が驚いて逃げてしまったり、カメラが動くことで水流も起きるので、被写体が水流に巻き込まれて揺れたり飛んでいってしまいます。

このような撮影動作に気をつけて、そ〜っとそ〜っと動くようにすると、被写体やシャッターチャンスを逃す機会が減るので良い写真を撮りやすくなります。

これらはちょっと気をつけるだけで簡単に改善できることなので、ぜひ気をつけてみてください。

 

  身体を思いのままに動かしたり止めたりする技術 このページのトップへ  

1.中性浮力と体の固定

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写真K タンクにセッティングしたBC
水面ではBCに空気を入れることで浮き輪のように体を浮かせることができるし、水中では中性浮力をとるのを手伝ってくれる優れもの。
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写真L

小笠原で見たニラミハナダイのオス
一面に広がるリュウモンサンゴの周囲で暮らしているので、サンゴに触れないギリギリの位置での中性浮力とピント合わせが求められます。多分、今までで一番シビれた撮影です(笑)
NIKON F4 micronikor105mm

ダイビングになれてくると、中性浮力という浮きも沈みもしない、ちょうど良い浮力の状態がとれるようになってきます。
空気を吸えば浮くし、吐けば沈むという状態です。

中性浮力は、手動で空気を出し入れして浮力を調整する『BC』というジャケット(写真K)と、もう一つの浮力調整機である肺の呼吸のコントロールが重要です。

陸上と違い、水中ではとりわけこの中性浮力のコントロールが大事になってきます。
これはとにかく中性浮力を意識してダイビングすることで上手になっていくものなので、ぼんやり潜っていては本当にいつまで経ってもうまくなりません。

中性浮力に慣れないうちはフィンを動かして水を蹴り続けたり、手を使っていないと水中に浮かぶことができませんよね。

中性浮力がうまくとれるようになると、苦もなく水中に浮かんでいることができるようになります。

完全に中性浮力がとれるようになると、水底に着底できないような環境で、カメラに集中した状態でも水平状態で浮かんでいることができますし、魚の微妙な動きに合わせて、フィンを使って前後してピントを拾うこともできたりします。

今回の講座で中性浮力に興味を持った方は、身近な上手い人やダイビングガイドに質問してみてください。
ダイビングショップには、中性浮力専門の講座を開催しているところもありますので、行きつけのショップさんに相談してみるのもいいと思います。
感覚を忘れないうちに潜るようにして練習してみてください。

2.呼吸のコントロール

良い水中写真を撮るための闘いは、実は海へ潜る前から始まっているのをご存じでしたか?

例えば、息が上がってはぁはぁ言ってる状態でようやく被写体の前に辿り着いたとして、はたして良い写真が撮れるでしょうか?

別にハードな訓練をする必要はないのですが(してももちろん結構ですが(笑))、
日頃から軽い運動をしておいて、ダイビングで疲れない程度の基礎体力をつけたり、水中ではスマートに泳いでなるべく息が上がらないようにするのが重要です。

それから、魚たちは大きな呼吸音を嫌がることが多いです。
巣穴を持つ魚の場合、巣穴に逃げ込んでしばらく出てこなかったりします。

魚と親密になり、シャッターチャンスをものにするためには、なるべく呼吸音は控えめな音にするようにしましょう。息を細く、ゆっくり長く吐くことで泡の音を小さくすることができます。

また、息を吸っている最中や吐いている最中にシャッターを切った場合、体が動いているためにピントが来ないことが多いです。
それに、息を吸いきってからシャッターを切ろうとすると体が浮いてしまい、ブレやすくなってしまいます。自分の肺の位置に風船やアドバルーンがあると想像してみてください。地面についた膝や足を基点にぐらぐらしそうでしょ?

ですので、シャッターを切る時には息を吐き終わってから、後述の半押しテクニックを使って静かにシャッターを切るようにするといいでしょう。

中級者向けワンポイントアドバイス

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被写体に、もっと近づくための呼吸法というか、中級向けテクニックは『息を吐いてから、進む』ことです。

巣穴に暮らしている、警戒心の強く、敏感なハゼたちを撮影する時は、近寄りながら息を吐くと驚いたり、警戒して、巣穴に逃げ込まれやすくなります。

そんなときは、距離を置いた状態でまず息を吐ききって、ひと呼吸置いてから、そっと一かき匍匐(ほふく)前進します。

この近づき方が、ハゼ撮影には一番向いているようです。

そっとゆっくりと近づけば、最短距離での等倍撮影で、右写真くらいの大きさに撮れます。ハゼ撮影は相手との、どこまで近寄らせてもらえるかの駆け引きが楽しいですね。
(NIKON F4 micronikor 105mm)


  ダイビングテクニックのまとめ このページのトップへ  

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写真M

ツバメウオ
小笠原での思い出の一枚。「みんなと一緒に遊ぼう♪」 まるでそんな風に誘っているかのように、1匹のツバメウオが呼びに来てくれました。
オリンパスE-410 zuikodigital fisheye 8mm

以上のような点に気をつけて写真を撮ると、良い水中写真が撮れるようになると思います。

できれば、撮影後は後で撮る人のために、被写体が逃げたり隠れたりしないように避けて泳いだり、水底の砂を巻き上げないようにして立ち去りたいものです。
『立つ鳥跡を濁さず』ですよね。

それから、撮らせてもらった被写体には、「ありがとう」「またね」の感謝の気持ちを忘れないようにしてもらえると、現地ガイドとしてとっても嬉しいです。

食事をしたり、恋をしたり、あくびをしたり、ケンカをしたりしている彼らの普段の暮らしを邪魔せずにそっと撮影できるようになると、あなたももう立派な水中写真家の一人だと思います。

 


第三回 水中写真テクニック講座、
『水中写真の基本とダイビングテクニック』はいかがだったでしょうか?
読んでいただきありがとうございました。

水中写真の基本であり、命であるのは、ダイビングのテクニックです。
楽しく潜りながらテクニックを身につけていってくださいね。

次回、第四回 水中写真テクニック講座は、『マクロ撮影』についてお話したいと思います。

小さな生き物を大きく写すマクロ撮影には、いくつかのコツやテクニックを覚えると、きっともっときれいな写真が撮れます。
ぜひご覧下さい。

 


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初出:2009/06/24
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