コンテンツのトップページへ 中野誠志の 海Photo! 楽Photo!
水中写真テクニック講座
中野誠志の 海Photo! 楽Photo! 水中写真テクニック講座
第二回 水中写真用機材の選び方 2009/06/10
 

みなさんこんにちは!
水中写真テクニック講座担当の中野誠志です。
前回・前々回と、作品による作例を見ていただいたところで、今回は水中写真用機材の選び方についてお話していきたいと思います。

目的に応じたカメラの選び方や、一眼レフとコンパクトデジカメの長所・短所なども解説していきます。
みなさんにとって、最適な海フォトカメラ選びの助けになれば幸いです。

Text by 中野誠志
水中写真用機材の選び方 (写真)
 

本文内の各写真はクリックして拡大表示

  デジタルカメラとフィルム式カメラ このページのトップへ  

 

Clickで拡大
写真A 水中で使用するデジタルカメラ
左から順に、キヤノン『PowerShot A720 IS』、オリンパス『C-750 UltraZoom』、オリンパス『E-410』、富士フイルム『Finepix F31』、オリンパス『μ790』

水中写真用機材と一口に言っても、スノーケリングや海水浴の定番、使い捨てカメラ『写るんです』の水中用である『水に強い写ルンです New Waterproof』から、ハウジング(防水プロテクター)と組み合わせて水中で使うデジタルカメラ、カメラ単体で3mや10mの防水機能があるコンパクトデジカメ、一眼レフ、レンズ、ポート、ストロボなどなど・・・、実にたくさんの機材があります。

できることなら、その中から自分にとって最適な海フォトカメラを選べるといいですよね。
今回はその選び方についてお話ししていきます。

海フォト用のカメラも陸フォトと同様、まず大きく分けてデジタルカメラとフィルム式カメラがあります。

水中写真の世界において、以前から使っているフィルムカメラを今でも使っている人はいるものの、新規で購入する人はほとんどいません。

フィルムカメラで水中写真を始めるとすると、デジタルに比べて下記のような制限があります。

  1. 1ダイブ36枚という少ない枚数でしか撮影できない(ダイビング中にフイルムの装填・交換ができない)
  2. フィルムの購入や現像代によるランニングコストがかかる
  3. その場で画像を確認できるデジタルに比べて、学習効率が劣る
  4. 現像所の減少による現像環境の悪化
  5. ブログやホームページに使うにはデジタルデータに変換する必要がある(変
    換の手間がかかる)
  6. バックアップが取りにくい

などが、お勧めしにくい具体的な理由です。

また、フイルム式カメラには水中写真専門の機種もあるのですが、デジタルカメラでは陸フォト用の市販のカメラを「水中ハウジング」に装着して水中に持って入ることが一般的なので、カメラ機種ごとの情報も豊富で、馴染みもあると思います。

更に、スタジオグラフィックスはデジタル画像の活用講座ですので、ここではデジタルカメラの選び方に絞ってお話ししていきます。


  水中写真を撮る目的から選ぶ このページのトップへ  

 

Clickで拡大
写真B 魚の世界
一眼レフの写真は高い解像度と美しい発色が特徴です。大きく引き伸ばす写真に向いています。
Cannon EOS 40D 魚魚目レンズ3号使用 f22 1/25 ISO400 ストロボ撮影
Clickで拡大
写真C ダイビングでの記念撮影
コンデジがあれば素敵な記念ダイブも思い出に残すことができます。
オリンパス C-750UZ f/2.8 1/125秒 ISO50 自然光撮影
Clickで拡大
写真D ハイエンドコンデジで撮影した例
マニュアル撮影のできる機種なら、水中写真に自分の表現や意図をより明確に盛り込むことができます。産卵中の2匹のオオガラスハゼを際立たせるため、シャッタースピードを上げて背景を暗く落とし、すっきりさせました。
オリンパス C-770UZ f/4 1/160秒 ISO64 マクロレンズ使用 内蔵フラッシュ撮影

自分のカメラを選ぶためにまず最初に考えるべきは、水中写真を撮る『目的』です。

「自分がどういう写真を撮りたいか?」
「撮った写真をどのように利用するか?」

自分の胸にまずこれを問いかけてみましょう。

例えば、その目的が

「A3ぐらいに大きくプリントして美しく飾りたい」
「フォトコンテストに出せるような
 とにかくきれいな写真を撮りたい」

など、水中写真に画質やクオリティを優先したいなら、高価ではありますが一眼レフを使うことを検討してみてください。

陸写と同様に、一眼レフならカメラ任せのオート撮影の他に、マニュアル撮影ができ、更に外部ストロボなど周辺機材も比較的豊富なので、練習すればきっと満足いく写真表現ができるでしょう。また、撮ることの醍醐味が感じられて、"水中写真を撮るために潜りに行きたくなる"と思います(写真B)。

また、それとは反対に、

「魚を覚えるために水中で記録したい」
「特別なダイビングの記憶を記念に残したい」
「とりあえずあると便利かな」
「プリントするサイズはL判で充分」
「お金はそんなにカメラにかけたくないな」

という感じで、便利さや使いやすさが優先なら、コンパクトデジカメ(以後コンデジ)をお勧めします。
きっとみなさんのダイビングライフをコンデジがいろんな面で楽しくしてくれると思います(写真C)。

「きれいな写真は撮りたいけど、
 一眼レフは高すぎるなぁ・・・」
「予算的には手頃なカメラだけど
 本格的に水中写真の練習をしたい」

そんな方は、マニュアル撮影もできるコンデジのハイエンド機(マニュアル機)で、写真の腕を磨きましょう。

こうしたマニュアル機はフルオートのコンデジとはひと味違い、自分の表現意図を盛り込んだ『作品』を作り上げることができます。
逆に言うと、カメラ任せのフルオート機では自分の撮りたいように撮れないことがあるのです。


さて、みなさんの水中写真の目的は何でしょうか?

海フォト的なカメラの選び方についてもっと知りたい人は、ここでちょっと休憩して、コーヒーでも飲んでから一緒にもう少し詳しく見ていきましょう。


  デジイチとコンデジの違いとは? このページのトップへ  
Clickで拡大
写真E デジタル一眼(デジイチ)
オリンパスのデジタル一眼レフ『E-410』に水中ハウジングと外部ストロボを装着したところ。
画質は一眼レフなので良好で、A3ノビにしても大丈夫。マニュアル操作も楽しい。しかし、重さは軽めのアクリルハウジングながらも約6kgとかなりゴッツイし、価格はこのマクロ撮影セットで発売当時の売価でざっと30万円。ワイド撮影用の交換ポート・レンズを含めると合計40万円なり。

デジタルカメラには、レンズ交換式の一眼レフデジカメ(以後デジイチ)とコンデジがあります。

それではそのデジイチとコンデジの違いをそれぞれ良い点・悪い点から見比べてみましょう。

〈デジイチの良い点〉

  1. 画質が素晴らしい
  2. 連写や記録スピードが速く、多くの枚数を撮影できる
  3. 豊富な交換レンズ群がある
  4. ファインダーを覗くのが楽しい
  5. シャッターを切る感覚が気持ちよい
  6. 持ってるだけで上手そうに見えるので、周りから一目置かれる(笑)

〈デジイチのネック〉

  1. コンデジに比べて初期投資金額が大きい(約5倍以上)
  2. 交換レンズごとに防水ポートが別途必要
  3. ハウジング(防水プロテクタ)が10〜25万円と、ものによってはカメラ本体よりも高価
  4. カメラがバージョンアップしても、同型機の後継機でさえハウジングの流用が利かないケースが多い(微妙にボタンやダイヤル、サイズが合わないなど)
  5. 画質が良い分だけ画像のデータサイズが大きいので、パソコン環境やハードディスクなどをそれなりに充実させる必要がある
  6. ハウジングやアームなどの撮影システムが大きいので陸上で重い(水中ではハウジング内の空間への浮力が、ある程度重さを相殺してくれる)
  7. 水中でレンズ交換ができないので、小さな被写体と大きな被写体を1本のダイビングで撮影するには2台のカメラが必要
Clickで拡大
写真F

コンパクトデジカメ(コンデジ)
左:オリンパス『C-750UZ』。マニュアル撮影もできるハイエンドのコンデジ。発売当時の売価は本体とハウジング合計で10万円ぐらい。
右:キヤノン『PowerShot A720 IS』いわゆるミドルモデルのコンデジ。でもマニ
ュアル撮影もできる優れもの。発売当時の売価で本体とハウジング合計で5万円ぐらい。

〈コンデジの良い点〉

  1. 陸上でも水中でも軽くて、コンパクトで扱いやすい
  2. カメラやハウジングの価格が比較的安価で手頃
  3. 【重要】防水機能や対ショック機能を持つ機種もあり、まさかの水没時もそれなりに安心できる
  4. クローズアップやワイドのコンバージョンレンズが比較的安価で手頃
  5. 操作が単純で簡単な機種が多い(シャッターを押すだけでそれなりに撮れる)
  6. 水中ではレンズ交換ができない一眼レフに比べて、コンデジ+クローズアップレンズ+ワイドコンバージョンレンズのシステムなら、水中でレンズの付け替えができるので1台で撮れる

〈コンデジのネック〉

  1. 画質や連写機能、ダイナミックレンジ、RAWデータ撮影などの性能は一眼レフに比べて基本的に劣る
  2. 撮影モードがオートしかない機種が多い
  3. 水中で海の色をきれいに出すには、ホワイトバランスを調節する必要がある時がある(水中モードでもある程度は対応可能)が、デフォルトのホワイトバランスが限られている機種がほとんど
  4. 一眼レフが300枚撮影しても平気なバッテリーなのに対して、液晶を常時動かしているコンデジではバッテリーの持ちが良くない
  5. 陸上と水中で温度差がある環境では、一眼レフでは起きにくいポートの結露がコンデジでは起きやすい

コンデジのオート撮影でもそれなりの写真が撮れるのですが、水中写真ではマニュアル撮影ならではの写真表現も大切です。オート撮影モードしかなくても、陸上では問題となりにくいのですが、実は水中では問題となることがあります。
この件については次回以降の作品作りのコーナーでお話していこうと思います。

さて、デジイチとコンデジの違いについてお話ししてきましたが、いかがだったでしょうか?
こうした良い点とネックのバランスの観点から、自分に合った海フォト用カメラを探してみましょう。

自分のカメラの方向性が見えてきたら、次にチェックすべきは『既製のハウジングがあるかどうか』です。


  まずは水中ハウジング、もしも、ない場合は… このページのトップへ  

メーカー純正のハウジングがある場合は、それをカメラと一緒に購入すればベストです。あるいはすでにカメラをお持ちの方は、それに対応するハウジングがあるかもしれません。

コンデジではオリンパスキヤノン富士フイルムソニーなどは、ほとんどの機種でメーカー純正のハウジングが用意されているようです。
自分の気に入ったカメラを各メーカーのホームページで見てみると、そのカメラのアクセサリーなどのページに掲載されています。

デジイチの場合は、ニコンやキヤノンなどの人気機種なら、anthisシーアンドシーなどのハウジングメーカーが、機種ごとに対応したハウジングを販売していることが多いので、こうしたメーカーの動向を見てからデジイチのボディを購入した方が良いと思います。

一方、「使い慣れたカメラを持って水中に入りたい」という場合、コンデジやデジイチのカメラに対応するハウジングが市販されていない場合もあります。(特にニコンのコンデジ製品)

そうした場合はやや割高になりますが、DIV、Proofジリオンなどのオーダーメードハウジングメーカーに、自分だけのハウジングを依頼することになります。

 

  自分の好きなダイビングスタイルと拡張性 このページのトップへ  
写真
G〜I
小さなサカナ(8cm程度のカエルアンコウ)をマクロ撮影した例
オリンパスμ750 UN社製マクロレンズ PCU-02使用
Clickで拡大
写真G マクロレンズなし
Clickで拡大
写真H マクロレンズ使用ワイド側
Clickで拡大
写真I マクロレンズ使用テレ側(ズーム)
Clickで拡大
写真J

そのままレンズをつけることができるタイプ
ハウジングのレンズの前部分にそのまま拡張レンズを付けることができます。

Clickで拡大
写真K

アタッチメントが必要なタイプ
拡張レンズを付けるには、ハウジングにアタッチメント(別売)が必要です。

Clickで拡大
写真L

コンバージョンレンズ群
外付けのコンバージョンレンズは各社とも通常は丸いので、四角状のレンズポー トでは別にアタッチメントが必要となります。

自分の希望するカメラに対応する既製のハウジングがあれば、その次にハウジングの拡張性をチェックするべきです。

きれいな写真を撮りたい人にとっては、拡張レンズの装着が可能かどうかという点もカメラ選びで重要になります。

逆に、スナップ的な記念撮影が目的だったり、こうした拡張レンズはいらないや、という方は読み飛ばして下のシャッターボタンの記事へとお進み下さい。

例えば、ウミウシが好きな『マクロ派ダイバー』の場合、「小さなウミウシをもっと大きく写したい」と思うのはごく自然なことです。小さな被写体に近づいて大きく写すにはマクロレンズが必要です。

また、『大物ドリフト派』な方が大きな魚や群れに近寄って撮影したり、洞窟やドロップオフ好きな『地形派ダイバー』が広い地形を写し込むならワイドコンバージョンレンズ、といった拡張レンズをハウジングに装着できると、カメラ単体での写真に比べて写真表現の幅が広がります。

 

写真I のように被写体を画面いっぱいに大きく写すためには、ハウジングに外付けでマクロレンズをつける必要がありますが、ハウジングによっては外付けのレンズをつけることができない場合があります。

 

 

 

 

 


  シャッターボタンの形状 このページのトップへ  
Clickで拡大
写真M

ボタン式のシャッター


Clickで拡大
写真N

レバー式のシャッター
半押しがしやすい。

大きな魚との突然の遭遇や、小さな魚をクローズアップレンズで撮影する場合に、シャッターチャンスをモノにする確率を上げるには、ハウジングの「シャッターボタンの形状」にも目を向けましょう。

シャッターボタンはレバー式のものとボタン式のものがあります。
水中写真で非常に重要になってくる『シャッターボタンの半押し』というテクニックを使う際、力の加減がよくわかるレバー式のもの方が優れています。

さて、今回は水中写真用機材の選び方についてお話ししてきました。もし、メーカーのHPやカメラのカタログを見てもまだ疑問があるようでしたら、ぜひお近くのダイビングショップや、ダイビング器材量販店などに足を運んでみてください。

きっとみなさんの疑問に丁寧に答えてくれると思いますよ。

ps:
今回の記事を作成するにあたって、カメラの背景として、土肥にあるダイビングサービス 『THE 101』さんにお世話になりました。ありがとうございました。西伊豆・土肥にある日本最大級のダイビング施設です。プール、ビーチ、ボートでもダイビングが楽しめます。

 


水中写真にお薦めのデジタルカメラは?

現時点(2009年6月)でのコンデジの一番お勧めの機種を挙げるとするならば、オリンパスの『μTOUGH-8000』を推薦します。

μTOUGH-8000

お客さんのカメラを見せていただいたのですが、今までのオリンパスに抱いていたイメージを覆されて正直かなり驚きました。格段の進歩が見られます。

中でも自分が感心したのが、画像の表示機能です。
一枚ずつゆっくり確認したいときは、画像がゆっくり画面をスライドします。
逆に何枚か先に飛ばしたいときは、連打すればぴょんぴょんと画像が素早くスライドします。
これはユーザーのことをよく考えてある機能だと思いましたね。メーカーによっては、表示がものすごく遅い機種もあるんですよ。

また、ハウジングボディを真っ黒にしたのも良かったみたいですね。
今までのコンデジのハウジングは透明なのが多かったので、ハウジング内で内蔵ストロボが乱反射し、結果として被写体の付近正面にある浮遊物をたくさん拾ってしまっていました。
今回、ハウジングを黒くしたことで、こうした浮遊物の写り込みがかなり軽減されています。透明度がぼちぼちの伊豆や本州でよく潜るダイバーにこそお勧めしたい機種ですね。

ここではこれ以上の詳しいレビューはしませんが、フォトパスや価格ドットコムなどでぜひ詳しいレビューを見てみて下さい。
画質、操作性など他の現行機と比較になりません。今年90周年を迎えるオリンパスの精髄を尽くして製作したものと思われます。本当にオリンパスを見直しました。

次回、水中写真テクニック講座は『水中写真の基本テクニック』です。
ユーザーの大多数を占めるコンデジでの撮影をメインに、どうやってきれいな楽しい写真を撮るかについてお話ししたいと思います。
それでは次回またお会いしましょう!

 

>> NEXT  「第3回 水中写真の基本とダイビングテクニック」 

メールマガジンに登録しませんか

スタジオグラフィックスの海中世界

コラム「オヤジの夏休み 〜置き去りにした夢〜
絶対にこの夏、ハンマーヘッド・シャークを見るにょ !」 
コラム「オヤジの夏休み2008 〜神子元島から沖縄の美ら海へ〜
ソニー Cyber-shot W300 で撮った沖縄の海中散歩!」 
オヤジはついにハンマーヘッドの大群遭遇へ。
そして、ダイビング初心者の娘を待っていたのはタイマイ(ウミガメ)が舞う奇跡の海。
神子元島から沖縄の美ら海へ
 
初出:2009/06/10
  このページのトップへ
 


     
 
 

     
 
Creating Supported by
トライセック
サンタ・クローチェ
リンクについて
著作権について
プライバシーポリシー