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デジカメの「しくみ」
第1回 : 手ぶれ補正 〜手ぶれってなに?編〜
 
手ぶれってなに? ピンぼけとの違いは?
デジタルカメラは手ぶれしやすいか?
焦点距離と手ぶれ
 最近特に、デジタルカメラの広告や宣伝では「手ぶれ補正機能」のコピーを目にします。デジカメのしくみの第一回は「手ぶれ補正」の謎を考察します。
2004/09/29
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■手ぶれってなに? ピンぼけとの違いは?
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●ぼやけた写真の原因は?
 
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手ぶれ状態で撮影した写真。
ぼやけているので、自分ではピンぼけだと思っていても、実は手ぶれによるぼけ画像だったりすることも多い。
 
  撮影した写真をあとから見直してみると、被写体がくっきりと撮影されていない、ぼやけた写真が混ざっていることがあります。これは、銀塩フィルムを使ったカメラの時代から大きな問題です。ぼやけた写真の最大の原因はピントのずれ。すなわち、「ピンぼけ」と呼ばれているものです。そこで、このピンぼけを最小にするための機構が開発されました。パンフォーカスやゾーンフォーカスなどさまざまな機構が開発されましたが、中でも、カメラが被写体との距離を計測しピントが合致するように自動的に調整する機構、いわゆる「オートフォーカス」の開発によって、ピンぼけ写真は大幅に減少した画期的な技術でした。もちろん、デジタルカメラの多くは、このオートフォーカス機能を搭載しています。
 ところが、高性能なオートフォーカスを搭載しているデジタルカメラを使っているにも関わらず、ぼやけた写真を撮影してしまうことが多くあります。それも、銀塩フィルム式のカメラに比べて、デジタルカメラの方が、このぼやけた写真が多く感じる方が多いようです。なぜでしょうか。
 実は、ぼやけた写真の原因は、ピンぼけではないこともあるのです。それが「手ぶれ」という現象です。しかも、手ぶれは、ぼやけた写真の原因としては、ピンぼけと双璧を成すほど多いものなのです。では、「手ぶれ」とはなんでしょうか。また、ピンぼけとどう違うのでしょうか。
   

●手ぶれやピンぼけの原因

 

 手ぶれやピンぼけが発生する、それぞれの原因をチェックしておきましょう。
 ピンぼけ写真とは、文字通り被写体にピントが合致していない状態で撮影した写真です。そのため、ぼやけた写真が撮影されます。最近は、銀塩フィルム式でもデジタルカメラでも、オートフォーカスが搭載されている製品ばかりなのに…、と思われるかもしれまん。実は、ピンぼけに見える写真の中でも実はピントが合致している写真もあるのです。例えば、撮影したい被写体ではないモノにピントが合っている場合。画面右隅にほんのわずかに写っている、手前に生えていた樹木にピントが合ってしまうと、人間にはピントが合わない場合もあります。他にも、被写界深度の関係でピントが合わない場合もあります。被写界深度とは、分かりやすくいうと、カメラからどの距離からどの距離までピントが合っているように見えるか、ということです。この距離はカメラの絞り値などに左右されます。すると、同じカメラを使っているのに、絞り値を変えることによって、カメラから1m〜2mまでピントが合っているように見える場合と、1m〜1.01mまでしかピントが合っているようにしか見えない場合が出てくるのです。後者の場合などは、人間の鼻の頭にピントが合っても、眼や耳のあたりはぼけてしまいます。すると、全体がピンぼけ写真のように見えてしまうというわけです。
 一方の、手ぶれ写真とは、ピントがしっかり合致しているのにも関わらず、シャッターを押すときにカメラを動かしてしまった状態で撮影した写真です。もっとも、この「カメラを動かす」というのは、撮影者は意識していない場合が多いのです。というのも、ほんのわずか数ミリ動かしても手ぶれが発生してしまうことがあるからです。したがって、三脚を使って撮影していても、レリーズやリモコン、セルフタイマーなどを使わずに、シャッターを手で押している場合は、手ぶれ撮影してしまうおそれがあるのです。

   
●手ぶれとピンぼけと絞り値とシャッタースピード
    全く異なる原因でぶれが起こる手ぶれとピンぼけですが、実は両者は密接な関係があるのです。それは、先ほど説明した被写界深度が関係してくるからです。
 被写界深度が狭く(ピントが合う範囲が短く)なると、ピンぼけするというのは先ほど説明しました。ピンぼけしないように被写界深度を深く(ピントが合う範囲が長く)するためには、絞り値を大きくします。しかし、絞り値を大きくするということは、シャッタースピードを遅くしないと適正な露出(明るさ)で写真を撮影することはできません。シャッタースピードが遅くなるということは、シャッターが開いている時間が長くなるということですから、当然、手ぶれが発生する可能性がある時間も長くなってしまいます。つまり、ピンぼけを防止するために被写界深度を深くすると、手ぶれもしやすくなってしまうのです。
 
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ピンぼけ状態で撮影した写真。
ここまでピンぼけするとシャープネスでは修正しきれないが、四方にまんべんなくぼけているのがわかる。
 
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手ぶれ状態で撮影した写真。
ピンぼけと同じように見えるが、よく見ると縦方向にだけダブった感じでぼけている。
 
  手ぶれ状態で撮影した写真も、ピンぼけ状態で撮影した写真も、同じように被写体がくっきりと撮影されていない、ぼやけた写真になるので、写真を見ただけではピンぼけなのか、手ぶれなのかは判断できない場合が多いです。しかし、発生の原因が異なるため、フォトレタッチで救える範囲がかなり違ってきてしまいます。

 例えば、ほんの少しだけピンぼけしている写真は、シャープネスなどの画像加工をおこなうことでなんとか見られるようにすることができたりします。Webページに掲載するときのように、画像のドット数を小さく場合には、かなり効果的といえます。

 しかし、手ぶれの方は、ピンぼけに比べると、修正しきれないという場合も多く見受けられます。これは、ピンぼけの画像が、ほぼまんべんなく四方に対してにじんでいるのに対して、手ぶれでは一定方向にしかぶれていないためです。例えば、少しのピンぼけで使用したシャープネスなどは、一定方向にかけることは難しいのですから、手ぶれの効果的な修復には使えません。手ぶれが原因のぶれは、ほぼ修正は困難であると考えてもよいかもしれません。テレビコマーシャルではないですが、「手ぶれしたら負け」というわけです。

  >> 関連記事
  手プレ(手ぶれ)については、スタジオグラフィックス特別企画
  「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!」の「手ぶれ補正のしくみと特長」も
  ご覧ください。
■デジタルカメラは手ぶれしやすいか?
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●デジタルカメラは手ぶれしやすい?
   ところで、冒頭でも書きましたが、今まで銀塩フィルム式のカメラを使っていたときには手ぶれによるぼやけた写真はほとんどなかったのに、デジタルカメラで撮影するようになったとたんに、ぼやけた写真を撮影してしまう確率が高くなった、と感じている方は随分いらっしゃらるようです。では、デジタルカメラというのは、銀塩フィルム式のカメラと比べて手ぶれしやすい機構が組み込まれているのでしょうか。

 結論から申し上げると、デジタルカメラならではのしくみとして、手ぶれが発生しやすい機構というのはありません。例えば、光を電気信号に変えているからとか、CCDだからとか、ということが手ぶれに影響することはないのです。しかし、デジタルカメラには、カメラとして手ぶれが目立ってしまうケースが多いのです。どのような点で、手ぶれが目立ってしまうのでしょうか。
   
●画像確認のときにぶれが目立ちやすい
   デジタルカメラでは、確認する画像が大きいということも、ぶれが多いと感じることのひとつに挙げられます。「デジタルカメラの液晶なんて2インチとか3インチじゃない」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その確認画面ではなく、加工などをするためにパソコンに取り込んで確認するときのことです。ちょっとパソコンやデジタルカメラの画像加工に力を入れているヒトなら、19インチモニタを使用しているケースも珍しくありません。また、手持ちのプリンタを使ってA4サイズで印刷することも、ごく普通に行われます。
 一方、銀塩フィルム式のカメラのときには、こんなに大きな画面で写真をみることはごくまれでした。せいぜいサービス版かそれよりひとまわり大きな程度でしょう。パネルにするために、A4サイズの現像をするなんて、カメラが趣味、というアマチュアカメラマンだって年に数枚程度だったはずです。
 したがって、今までは少しだけにじんでいるかな、といった程度のぶれでも、なんだか大きくぶれてしまっているように見えてしまうということが、デジタルカメラではありえるのです。
   
●デジタルカメラは高倍率化がしやすい
 
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焦点距離が長いほど画角が短くなるので、ほんのわずかなカメラのずれが、写真のぶれとなって残ってしまうことも多い。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』(神崎洋治・西井美鷹:著/日経BPソフトプレス刊)より引用)
 
 デジタルカメラは、銀塩フィルム式のカメラでいうフィルムにあたる、撮像面積が小さい製品が多いです。35mmフィルムに撮影できる対角線の長さは43.2mmほどありますが、コンパクトサイズのデジタルカメラの中でも比較的高画質モデルとされている1/2インチCCDの対角線は8mm程度しかありません。しかし、このことにより、デジタルカメラは小さいレンズでも望遠に特化した製品や10倍ズームのような高倍率化が可能になっています。しかし、この望遠化が手ぶれを増やしているのです。なぜなら、写真撮影をする際には、広角側よりも望遠側の方が、手ぶれによるぼやけが大きいからです。

 これは、焦点距離と画角の関係が密接に関わってきます。焦点距離が28mmの広角レンズでは、公称対角線画角は74度とされています。つまり、74度の視野の画像が撮影できるわけです。人間が普段見ているのが45〜50度くらいといわれていますから、少しくらいずれたとしてもほとんど分からないですよね。ところが、焦点距離が250mmの望遠レンズでは、公称対角線画角が10度しかありません。もし、1度ずれたとすると、1割動いてしまったことになります。1度なんて、ほんのわずかな角度ですよね。
 銀塩フィルム式のカメラからデジタルカメラに移行するとき、今まで使っていたカメラよりも、高倍率、すなわち望遠側のレンズが搭載されたデジタルカメラを購入するケースがとても多いのです。したがって、新しく買ったデジタルカメラの方が手ぶれを起こしやすい、と感じることはありえるわけです。
   
■焦点距離と手ぶれ
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●同じレンズでもデジタルカメラでは焦点距離が長くなる
 
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この交換レンズには、「28〜200mm」と書かれているが、デジ一眼に装着すると、焦点距離は「44.8〜320mm」に変わってしまう。当然、画角も変わってくるので、銀塩フィルム式のカメラのときと比べるとぶれやすくなってしまう。
 
  最近は、レンズ交換式のデジタル一眼レフカメラ、俗称「デジ一眼」が人気を集めています。デジ一眼が注目される理由の上位に挙げられるのが、すでに購入してある、銀塩フィルム式カメラ用の交換レンズが使えることです。ところが、このときにも先ほどの焦点距離と画角の関係から、手ぶれを起こすシチュエーションが多くなってしまうのです。

 現在販売されている多くのデジ一眼カメラは、撮像素子が35mmフィルムよりもかなり小さいものが採用されています。一般的なものは、APS-Cサイズと呼ばれているものです。このように、撮像面積が小さくなると、同じレンズを装着しても焦点距離が長くなっていまいますAPS-Cサイズを例にとると、35mmフィルムの焦点距離に比べて1.5〜1.6倍長くなります。このとき、当然画角も変わってしまうのです。例えば、先ほど28mmの広角レンズは、公称対角線画角が74度といいましたが、これをAPS-Cサイズの撮像面積を持つデジ一眼に装着すると、公称対角線画角は50度弱ほどまで狭くなってしまうのです。つまり、同じ角度ずれたとしても、写真に残るぶれは大きくなってしまうのです。
 この結果、同じレンズを使っているのに、35mmフィルムのカメラよりも、デジ一眼の方がぶれている写真が多くなったなぁ、と感じてしまうというわけです。

   
●機械的になんとかしよう
   このように、デジタルカメラは手ぶれが目立ってしまうシチュエーションが多くなりがち、ということなのですが、一般的なユーザーには「デジタルカメラは手ぶれが多い」という認識が広がりつつありました。この不名誉を払拭すべく、手ぶれを機械的に最小限に食い止めよう考え方が出てきました。これが「手ぶれ補正」の機構です。
 一口に手ぶれ補正といっても、1つの方法だけではなく、いくつのかの考え方や機構が登場しています。次回は、これらの中の代表的な方法を紹介していきます。
  >> 関連記事
  手プレ(手ぶれ)については、スタジオグラフィックス特別企画
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  ご覧ください。
Text by 西井美鷹(デジカメWEB)

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