大村祐里子の
プロ写真家に聞くライティング術2
第2回フォトエンターテイナー
ナカムラ ヨシノーブ氏に聞く
写真合成のためのライティング術
Text:大村祐里子
TOPIX
2017 年4月より、装いも新たに再スタートした「 大村祐里子のプロ写真家に聞くライティング術2 」。クリップオンストロボを使って魅力的な作品をつくりだしているプロ写真家に、私こと大村祐里子がよりマニアックに、ライティングや写真家の人生に切り込んでインタビューをしていく本企画の2回目に登場いただく写真家さんは、人はもちろんなんでも浮かせて撮っちゃう「 浮遊写真 」のナカムラ ヨシノーブさんです。「 一体どうなってるの〜!? 」と思ったあと、クスリと笑えるナカムラさんの写真の秘密に迫ります! ( 大村 ) |
Index
■ 写真家:ナカムラ ヨシノーブ
Yoshinoo-bu Nakamura
大学卒業後、フリーライターとして活動するかたわらドキュメンタリー映画「 アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 」をきっかけに創作写真に興味を持つ。以降、独学で写真を学びながら 2013 年より作家活動を開始、2016 年に初個展「 気持ちうわつく浮遊展 」を開催。現在は都内を拠点にイベント取材やインタビュー写真の撮影、作家活動を行なう。https://cinemadrinker2.wixsite.com/nakamu-ra
ナカムラさんの浮遊写真は以前からインターネット上でお見かけしておりました。どこかクスリと笑わせるようなコミカルさをもちながらも完成度の高い作品を見て、これを撮っている人はどんな人なんだろう? と気になっておりました。撮影に関しては、「 まさか一発撮影ではあるまい……でもどうやって撮っているんだろう 」とずっと謎に思っておりました。今回の取材が決まったとき、同時に編集部から「 実際に、ゆり茶に浮遊写真を体験してもらいます 」と言い渡され、わたしでいいんだろうかと思う反面、ようやくその謎が解ける! と嬉しく思いました。これが取材の醍醐味だと思っています。
■ ギャップ萌なヨシノーブ登場
本日の撮影場所は、ニッシンジャパン株式会社のエントランスをお借りしました! さてナカムラさん、よろしくお願いいたします。
ナカムラヨシノーブです。今日はよろしくお願いします。
ネット上だとイケイケな印象ですけど、実物は物静かな感じの方なんですよね。まさにギャップ萌です。
萌ますか?(笑) 萌はともかくギャップがあるとはよく言われます(笑)
名前の「 ヨシノーブ 」……。延ばさないとダーメなんですね。
ええ、のーばしてください。限りなく本名に近いので、延ばさないとペンネームにならないんです(笑)
なるほ~ど(笑) さ~て、今日は、ナカム~ラさんの「 浮遊写真 」の撮影現場を見せていただけるということで、ワクワ~クしながら取材にやってまいりました……が、え? この机の上にある割り箸はなんですか?
僕の浮遊写真には欠かせないものなんです。詳細はのちほどお話ししますが、あの、ナカムラは延ばさなくて結構です。
あっ、はい!
■ 浮遊のテーマは大村ドジ子!?
事前にいただいた絵コンテを拝見したんですけど……なんか……バナナの皮ですっころんでカメラ3台を放り投げている人物が描かれていたんですが……ご丁寧にその人物に矢印で「 大村 」って書いてあったんですが……どこの大村さんでしょうか?
あ~、なんとなく大村さんは「 ドジ 」なイメージがあったので、写真を撮影しようとした瞬間に「 ドジ 」な大村さんはバナナで滑って転ぶんじゃないかと。そんな画が大村さんのような「 ドジ 」には似合うと思うんですよ。あくまでもイメージですが。
かぎ括弧付けて3回言いましたね……。しかも赤文字にしたり太文字にしたりとだんだん強調していきましたね……。
あっ……。でも、やっぱり方向転換することにしました。「 取材中に大村さんが脚立に乗って僕を撮影しようとして脚立の上でふらついて転ぶ 」という設定はどうでしょうか。よりリアルなドジですよね?
バナナが脚立に方向転換しただけやないか~い!! ドジなイメージの方向転換はしないんか~い! もっとこう、あるでしょ、お花畑で天使のように浮遊してるとか、イケメンに囲まれて舞い上がってるとか! リアルなドジってなにっ!
……………………で、脚立の上で滑った大村さんが、その勢いで机を蹴飛ばしちゃったから机の上の小物が飛び散って、大村さんの脱げた靴が僕の顔に当たりそうになる……というのはどうですか? 面白いと思いませんか?
しっかり間を置いてパーフェクト無視かいっ! って、わたしってどんだけドジなイメージなの……。( 面白そうだけど…… )
■ いざ! 浮遊体験!
さて、イメージが決まったので早速撮影していきしましょう! 浮遊写真は、複数撮影した素材写真を合成して一枚の画として仕上げていきます。なのでここから先は、合成で使う「 素材 」を順番に撮っていきます。今回の素材写真は……大村さん、僕、そしてカメラ・小物類ですね。
やっぱり1枚画じゃなかったんですね。でも、それって企業秘密ですよね。そこまで明かしてしまって大丈夫ですか?
いいんですよ(笑) どうやって浮遊写真を作るのかはあくまでも方法論だし、その方法をどう応用するかがその人の表現なので。じゃぁ、まずは大村さんから撮ります。脚立に乗って、ひっくり返ったようなポーズをしていただきます。まずは僕がやってみますね。浮遊写真といえども「 安全第一 」ですから。いつも、モデルさんが怪我しないようにポーズ等は事前に自分で試してみせてるんですが……んん、ほら、こんなイメージですよ大村さんっ!
ほほ~、簡単そうじゃん! どれどれ……って……ギョエエ……!
なるべく早く撮っちゃいますので、もうちょっとだけ頑張ってください。あ、なるべくつらそうな顔で演技してくださいね~。すぐ終わりますからね~。
は、はい……( って、演技しなくてもつらいってこれ )
はいっ! 次いきましょう! 大村さんが手に持っているカメラが浮かんでいる様子も撮りたいので、恐れ入りますが、スタッフの皆様、大村さんの持っているカメラを浮かすのを手伝っていただけないでしょうか。
ここで割り箸一脚隊……もとい、スタッフのみなさん勢揃いです。
えっ、次もわたしはのけぞるんですかい……。今度は例の割り箸に囲まれながら……。
大村さんと、カメラのストラップのあいだに余裕があると、カメラが浮いているように見えるんです。小さいサイズのものはこの割り箸で挟んで浮かせます。大きなカメラは一脚で浮かせます。もうちょっとのけぞっててくださいねー。
な、なるほど……。こ、こんなふうに割り箸を使う……のね……。こうした細かい演出が……完成度を高めるのなら……わたし大村、究極ののけぞりポージングを披露しようじゃないの!
はい! このカットは終了です。お疲れ様でした。普段は少人数でやっているので、こんなにお手伝いしてくださる方がいるのはありがたいです。みなさまありがとうございます。
■ 素材の明るさを一定に保つためのライティング
ひぃふぅ……。あ、自分の演技に集中しすぎてストロボのセッティングについてお聞きするのを忘れておりました。窓の前に1灯( A )、カメラの後ろに1灯( B )ありますね。どうしてこの配置なのでしょうか?
まず、窓の前に Nissin i60A を1灯( A )配置しました。これは窓から入る自然光を補助するためのものです。i60A に標準装備されているワイドパネルだけで、他のアクセサリはつけずに床に向けて照射しています。
窓からの自然光だけではダメなのですか? 今はわりと明るいように見えますが。
何枚もの写真を切り抜いて合成する浮遊写真の作成では、すべてのカットに一定の明るさと色温度が必要なんですよ。色味や明るさがカット毎に異なっていると、それを一定に補正しなければならず、作業時間に影響しちゃうんです。
あっ、そうですね! 今回もかなり撮影に時間がかかってましたよね。お日様の光も時刻によって変わってしまうから……。
そうなんです。浮遊写真は合成用に何カットも撮るので撮影時間がどうしても長くなりがちです。なので自然光だけで撮影すると、撮影した時刻によって明るさや色温度にバラツキがどうしても出てしまうんですね。自然光は常に明るさと色が変化します。曇れば暗くなって青みがかるし、夕方になれば赤みがかります。この問題は露出のプログラムモードやオートホワイトバランスを使っても完全には安定させられません。
なるほど~~。だからストロボを使って明るさと色味を安定させているわけですね!
ストロボの光は日中の太陽光と同じ色温度ですからね。ある程度までなら撮影中に太陽光の色の変化があっても、ストロボの光でそれを抑制できます。
カメラの横に設置したストロボ( B )Di700A はどうしてここに設置したのですか?
これは素材の明るさを、自然に、かつ均一にするために、天井にバウンス( 反射 )させて照射しています。天井バウンスにすれば、柔らかい影が被写体の下に出ます。したがって、いつも我々が太陽の下で見ているような自然な雰囲気に仕上げることができます。直射だと素材の影が強く出てしまい見栄えが悪くなってしまいます。浮遊写真にとってストロボは必須アイテムですね。……さて、次は僕のパートを撮影しますね。椅子を傾けて、目の前に靴が迫っている感じで。
演技ウマッ(笑)さすが慣れていますね。
小物類も撮ってしまいましょう。ボイスレコーダーとか、ペンとか、ノートが浮いていたら取材っぽいですよね。それが終わったら、転ぶ前のシーンと、素材が入っていない、空の背景だけを撮っておきましょう。
転ぶ前? 取材を始めます、みたいな写真ですか。
ビフォーアフターの2枚で見せられたら面白いかなと(笑)……さて、これで全部撮ったかな……。浮遊写真で一番気をつけないといけないことは「 撮り忘れ 」をしないことなんです。僕のこだわりは、その場ですべての素材を撮りきること。後から、別の素材を加えるということはしたくないんです。
だから同じカットでも小道具を微妙に動かして何ショットも撮ってたんですね。なるほど~。
■ 合成方法の前に完成作品を観ちゃおう
各素材の撮影が終わったら、次の作業は各素材の合成なんですが、前後しちゃうけど先に完成形を観てもらおうかな。
おおおおおおおお!
ではここで、ナカムラさんが上記2枚の作品を創るために、どれだけのカットをどんな風に撮影したのか、読者の皆様にはタイムラプスムービーでご覧いただきましょう!
準備から完成までのタイムラプス映像。すべてナカムラさんのカメラで撮影したもので、これらの素材から完成画像ができあがります
■ 本邦初公開! 浮遊写真ができるまで
今日は浮遊写真の合成の方法までご紹介いただけるとのことで!
はい。ざっくりですが、ご紹介させていただきます。撮影した素材から使う写真を Photoshop ですべて読み込んで、レイヤー毎に重ねておきます。最下層のレイヤーには人物も小道具も何もない背景だけの写真ですね。
その背景だけの写真の上に、素材だけを切り抜いた写真を、アニメのセル画みたいな感じでレイヤーを使って重ねていくんですね。
まさにそうです。こうやってブラシで選択範囲を作って切り抜きます。ざっくり選択してから、細かいところを詰めていきます。ちょっとだけ背景を含めて切り出した方が、あとで背景と合成しやすいです。
素材の「影」はどうされているんですか?
影があった方が絵としては自然に仕上がりますね。影が素材として残っていないモノは、Photoshop で描いたりもします。
果てしない作業ですね……。気が遠くなる……。
一枚仕上げるのにどのくらいかかるのですか?
浮かせたモノが多いほど、切り抜き素材が多くなるので、合成作業に 10 時間かかる事もあります。一度作品に取りかかると休日はこもりっきりだったり、平日も時間を見つけてはコツコツ作業している感じです。
写真15 Step 2
写真16 Step 3
写真17 Step 4
写真18 合成の解説を受ける
ひええ……浮遊写真って根気がいるんですね……(汗)
だから月に1回くらいしか撮影できないんです(涙)
■ 映画と写真とナカムラ ヨシノーブ
浮遊写真の撮影から合成の過程まで、一通り見せていただいたところで、次はナカムラさんの人となりについて聞かせてください。ナカムラさんはなぜ写真を始められたのですか?
高校時代から映画が好きで、いつか映画を撮りたいと思っていました。でも、なかなか撮る機会がないまま社会人になり、そういう時に映画「 アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 」と出会ったのがきっかけで写真を撮るようになりました。アニーがセットを組んで大勢のエキストラを入れて撮影する場面を観たときに「 写真でも映画的な表現ができるんだ 」と興味を持ちました。
「 アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 」わたしも映画館で観ました! お金がめちゃめちゃかかっていそうな現場シーンは圧巻でしたね……。そうそう、ナカムラさんは映画のライターさんをされていますもんね。写真はどこで勉強されたんですか?
20 代後半の頃にフリーライターデビューして、仕事ではイベントや舞台挨拶の取材を主にやらせていただいていました。取材では、僕が写真も撮るんです。月に 40 ~ 50 件取材に行く事もあったので、写真は、そこで否応なしに体で覚えていきました(笑)
すごい本数こなされていたんですねえ。わたしも仕事で取材に行くことがありますけど、たしかに、シビアな時間の中で決まったカットを確実におさえないといけないので、鍛えられますよね。
でも、人物写真をダメ出しされることも多かったんです。そこで次第に「 もっと上手くなりたい 」と思うようになりました。そんなとき、ニッシンジャパンさんの講座をたまたま見つけて、休日に受けに行くようになりました。あとは趣味でも撮らないといけないな、と思って。その一環で「 作品撮り 」をしようと考えるようになりました。
いきなり作品撮りですか!
そうです。しかも、作品撮りをするなら最初からテーマありきでやりたいと思っていました。最初の1年くらいは色々と模索していましたけど……。
ずいぶん戦略的ですね! 驚き! そんな人、なかなかいないですよ。
ポートレートって上手い人たくさんいるじゃないですか。いまから普通に撮ってもどうせ目立てないだろうし(笑) 僕はライターの仕事で「 切り口 」を考える癖がついていたので……どうせやるなら自分の個性を出せるものがいいなと思っていたんです。
そこで「浮遊写真」にたどりついたんですか。
たまたまアンカ( ANKA ZHURAVLEVA )さんの浮遊感ある作品を見てビビっときて、自分も非現実的なものを撮ってみたいなと思うようになりました。それから CG やワイヤーアクションを使っている映画のメイキングを観たり、レタッチの本などを買い込んで浮遊写真の作り方を勉強しはじめました。
ナカムラさんの浮遊写真は、バリエーションが豊かな印象があります。このイメージは、どうやって作っているのですか?
イメージをつくるにあたって参考にしているのは、映画やドリフのコントとかです(笑) 映画ではタランティーノやジョン・ウー、ツイ・ハークが僕の世代です。子供の頃は今でいう「 ハリー・ポッター 」の感覚で「 チャイニーズ・ゴースト・ストーリー 」を繰り返し見ていました。そういう香港映画の影響もあってか次第に「 エンタメ 」をモットーにするようになったんです。
エンタメ……エンターテインメントかぁ。ナカムラさんの写真を拝見していると、ちょっと非現実的で、楽しい気持ちになります。そういうことでしょうか?
多分、僕の現実が悩みばっかりだったから、写真や映像の世界くらい非現実であって欲しいというか、楽しいものでありたいとうか(笑) ギレルモ・デル・トロ監督の「 パンス・ラビリンス 」的な作用なのかな。創作って、そういう人生の足りないものを補う作業だと思うんです。
面白いですね! ナカムラさんはご自身のことをよく把握されていますね。わたしは同じく根暗ですけど、撮る写真も暗めですね……。まだまだ闇が足りないのでしょうか(汗)
闇に貪欲ですね(笑)
創作に関わるお話は、その人の深いところを知れる気がして、していて楽しいですね。あ、それはネタ帳ですか?
そうです。秘密の(笑) いい画が浮かんだらこのネタ帳に書きとめています。話戻りますけど……画的には「 マトリックス 」みたいに作りこむ事に興味があって、それをユーモラスに表現したいなと最近は考えています。「 バナナの皮に滑って転ぶ画 」とかすごくベタで単純なものにみんなで真面目に取り組んだり。
他にもやってみたいことがありそうですね(笑)
最近は「 X-MEN:アポカリプス 」でクイックシルバーの登場するスローモーションのシーンが好きで、これを写真で表現できたら面白そうだなって何度も繰り返し観てます。あと、ターセム・シン監督の「 ザ・セル 」も映像美の面で刺激を受けました。
浮遊写真を撮影していく中で、難しいなと思うことはありますか?
リアルとフェイクのさじ加減はすごく考えます。例えばジャッキー・チェンの魅力は生身のリアルなアクションだからこそで、もし合成だったら残念に感じる人もいると思います。逆に「 マトリックス 」はワイヤーにブルーバックに CG と、フェイクのてんこ盛りですが、フェイクだと分かっていてもキアヌ・リーブスが弾を避けるシーンとか理屈抜きに楽しいですよね。写真でも一切合成なしで撮る写真家や、逆にエリック・ヨハンソンさんのようにに Photoshop を駆使する方もいて、どちらもそれぞれの魅力があると思います。僕が目指しているのは後者です。「 作っていると分かっていても楽しい 」と思ってもらえる作品を作りたいなと。
■ 愛用の機材について
ナカムラさんの使っている機材についても教えてください。
カメラボディはレタッチ耐性の事を考えて今はフルサイズの「 キヤノン EOS 6D 」を使っています。レンズは持った時のサイズ感が好きで「 EF50mm F1.8 II 」を愛用していますが、その場の環境に合わせて撮ることが多いので、ほかのレンズとも使い分けています。夢として一度は中判も使ってみたいですね。
今日使った、ニッシンの Di700A、i60A、Air1 についてはいかがでしょう?
多灯ライティングをするとき、光量を手元で調整できるのが何よりも便利ですね! いつも少人数で撮影をするので、いちいちストロボを設置した場所まで光量調節にいく余裕がないんです。このセットのおかげで、スタッフ1人分減らせます(笑)
本日は、ストロボを、明確に「 演出ではない用途 」で使われているのが印象的でした。
ストロボを演出のために使うこともありますが、僕のストロボを使う主な目的は素材の明るさを一定に保つためですね。1枚の浮遊写真の撮影で 30 分以上かかることがざらにあるので、長時間安定的に使えるストロボが必須です。
■ クリップオンストロボを使いたい方へのアドバイス
これからクリップオンストロボを使いたい方へアドバイスをいただけますか。
初心者向けのアドバイスになりますが、お守り代わりでカメラバッグに1灯入れて置くのがおススメです。最初は難しく考えすぎて壁を感じることもあるでしょうが、「 暗い所を明るく補おう 」的な簡単な気持ちで使っていくと、だんだんと慣れていくと思います。ライティングの技術は後まわしでいいんです。好きな被写体やテーマが見つかれば、それを実現するために徐々にライティング技術も身についていきますよ。
お話を伺っていて感じましたが、ナカムラさんは女性的な考え方をされる方ですね。男性女性で分けるのは好きじゃないんですけど……それでもそう思います。男性は機材・技術先行型の方が多い印象がありますが、ナカムラさんは表現したいものが先にあって、あとでそれに合った技術や機材を探す、という発想が女性的だなあと。
たしかに、ライター仲間も女性が多いかも……。でも、意識はしてないです(笑)
■ ナカムラ ヨシノーブのこれから
今後、やってみたいことはありますか?
大人数の撮影をしてみたいです! コリン・ファース主演の「 キングスマン 」というスパイ映画で、クライマックスにある教会の乱闘シーンに圧倒されちゃって。ポートレートというとモデルさんと1対1の世界になりがちですが、僕はエキストラ的な方も入れて大規模な撮影をやってみたいです。その時は自分は画作りに集中して、撮影は別のカメラマンに担当してもらってもいいなと。
ナカムラさんは、良い意味で「 引いて 」見ている人なんですね。
そうかもしれません。被写体と1対1で向き合って撮影するときは別として、浮遊写真とかは空間やシチュエーション、撮り方に集中してしまうので、アングルやカメラ位置等撮影自体は自分よりうまい人に任せられたらそれはそれでいいなと思ってます。
CD のジャケットの撮影なんかだと、それは完全にアートディレクターさんのお仕事ですね。
あと、他にもやりたいことがあるんです。「 ジョジョの奇妙な冒険 」という漫画が昔から好きなので、漫画に出てくるスタンドの世界も写真で表現してみたいです。ショートムービーもそろそろ始めようと思っていて、ミッキー・ロークの出演している「 トランス・シューター 」という映画があるんですが、西部劇のガンファイトを現代風にアレンジした内容で、それを観た時に銃をカメラに持ち替えた競技を作って、それを映像にしたら面白そうだなと思って。今映像の友達に相談してるところです。
ヨシノーブのやりたいことがとまらない!(笑)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
大村祐里子