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柴田誠のフォトレポ
  動き出したアジアのカメラショー
  PICEX2015 Hong Kong

Posted On 2015 2月 07
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Photo & Text by 柴田誠


TOPIX

第2回目となる香港のカメラショー PICEX2015( Photo Imaging & Camera Expo )が、2015 年1月 30 日(金)~ 2月1日(日)の3日間、香港・湾仔にある Hong Kong Convention and Exhibition Centre で開催された。香港のカメラ事情が垣間見える会場の様子をフォトジャーナリストの柴田誠氏が取材しました。 by 編集部

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■ 会場も変わり、雰囲気も一新した PICEX2015

PICEX2015 のオープニングセレモー。主催者、来賓によるテープカットがおこなわれた


フロアマップ。黄色い部分が出展社のブース


リコーペンタックス(右)とタムロン(左)のブース


フォトブックサービスの AO。隣には Asia One の書籍販売ブースが並んでいる


賑わいを見せる Lensbaby のブース


レンズベビー コンポーザー(左)と全周魚眼レンズ(右)


レンズベビー コンポーザーのような表現ができる Sweet Spot Lens for Mobile


NEW の文字が目立つ SanDisk iXpand Flash Drive for iPhone and iPad

PICEX 2015 の出展社数は 40 社ほど。ホールの約 1/3 は使われていないという状況で、会場の広さとしては前回とさほど変わっていない。1時間もあれば見て回れる程度の規模だ。前回あった中古カメラ店やお茶を提供するお店は姿を消し、三脚やフィルター、水中ハウジングといった、香港のアクセサリー専門店がブースを出展。コンシューマー向けの写真教室の代わりに、ブライダル撮影を教える教室が出展するなど、会場の雰囲気は前回とはガラリと様変わりした印象だ。

ホール内にはメインステージの他に、各 20 席ほどの Education Theater、Live Demonstration Zone の計3つのステージが備えられていた。プログラムを見るといずれもワークショップ的なものが中心で、撮影会的なイベントの予定はない。また、作品展示コーナーは壁寄りに3カ所あって、真っ赤なジャガーも2台展示されていた。ちなみに、私もメインステージのイベントに、「 日本人ジャーナリストが大予測! これから出る新製品 」というタイトルで1コマ登壇させていただいた。

閑散とした印象はないものの、音楽も流れていないしコンパニオンもいない。唯一、ジャガーの前でモデル撮影が時々おこなわれるとカメラを手にした来場者が一気に集まるが、それも大声で話しかけることもなく、黙々とシャッターを切るといった感じで、会場内は静かだ。
ホール全体が街の喧騒をそのまま凝縮したような、他のアジアのカメラショーとはどこか趣きが違う。ブースのカウンターで、客の目を気にせず食事を始めるのは、アジアでは見慣れた光景だが、ここではそれも少ない。来場者も自慢気にカメラをぶら下げて来ているような人は少なく、真面目に商品を手にしたり、ワークショップを聞きに来ているという人が多そうだった。

アートフェア的にゆったり会場を見て周れるというのは、ありがたい反面物足りなさもある。言ってみれば、掘り出し物もなければ、目玉商品もない。CP+ 前でもあるので、新製品の発表などは期待できるはずもない。それでも、日本未発売の SanDisk iXpand Flash Drive for iPhone and iPad にお目にかかることができた。

また、日本でも注目されている Lensbaby の全周魚眼レンズ、レンズベビー サーキュラー フィッシュアイや、発売されたばかりのタムロン SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD( Model A012 )を手にしてじっくり見ている人も多く、けっこうマニアックな来場者が多いように思えた。展示商品は会場で販売されていて、気に入ったものがあればすぐに購入できる。香港の街にはカメラ店が溢れているが、アクセサリーを探すのは以外と苦労するから、こうした場で購入できるのは便利なのかもしれない。出展者から説明を聞き、実物を確認して買うあたりが、クールな香港人の気質のように思える。

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■ ソニー強し! を印象付けられた

フィルム関連の製品もまだまだ人気らしい。Camera Film Photo Limited


ロモグラフィーの商品を展示する PHOTATO のブース


Meikon のソニーα7 用のハウジングは ABS 樹脂製


おなじみのドローン。専用カメラ搭載の PHANTOM 2 VISION+


ハッセルブラッドの作品展示コーナー

特に賑わいを見せていたブースは、カメラバッグやアクセサリーを販売していた天祥撮影器材公司、PHOTATO など。日を追うごとにブースの商品が減っていくのがわかる。市場価格から見ると確かに安いのだが、今の円安のレートでは割高感があって、ちょっと買ってみようかという気にはなかなかなれない。

Lensbaby、ソニー、タムロンブースも人が途切れることがなかった。中でも Lensbaby は大繁盛で、次から次に商品が売れていくといった感じ。しかも購入者を見ていると意外と女性が多い。ストレートにレンズベビーの表現に共感しているといった印象だ。

さらに、もっともよく売れているのが、レンズベビーシステムをセットにしたコンポーザープロ マクロパックだというから驚きだ。スタッフに、どのマウントが売れているのかを尋ねると、キヤノンとソニーが圧倒的に多いという答えが返ってきた。キヤノンマウントは在庫を売り切り、取り寄せになるほどなのだという。

同じように、水中ハウジングを展示販売していた Hong Kong Meikon Digital Technology Co. Ltd., でも聞いてみたところ、最近よく売れているのはソニー α7 用やキヤノン G1X、G11/12 用なのだと言う。ちなみに、香港周辺にはダイビングスポットが少ないので、ダイバーはヨーロッパやオーストラリアに出かけるのだと言う。

香港、台湾、韓国あたりのメーカーシェアは、日本並みのように思っていたが、予想以上にソニーが健闘しているようだ。来場者が手にしているカメラを見ると、確かにソニー製品を目にすることが多い。街中の広告などを見るとオリンパスや富士フイルムもそれなりに頑張っているようなので、結局ニコンのシェアが食われているということなのだろうか。

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■ PICEX2015 を取材して

シリコン製の各種フードも人気を集めていた


メインステージのワークショップ。やはりブライダルフォトが人気


モデル撮影のレクチャーも大人気だった


家族連れで盛り上がっていた児童成長教育展。入場料は 25HKD


香港文化センターで開催されていたモノクロの写真展


第三屆傳統黑白暗房班作品展の会場風景

PICEX の会場が予想以上に小規模だったので、近くの会場も覗いてみた。会場は Hong Kong Convention and Exhibition Centre の3F で開催されていたが、5F では児童成長教育展が開催されていた。幼児教育から健康食品まで、育児のためのイベントということで、こちらの来場者の方が圧倒的に多い。子供の写真撮影のブースがないか探したところ2社ほど出展されていた。どちらも子供や家族を撮るスタジオでアルバムを制作してくれるという。

また、PICEX と同じ会期で、モノクロの写真展「 第三屆傳統黑白暗房班作品展 」がヴィクトリア湾を挟んだ対岸の香港文化センター展覧館で、PICEX と同じ会期で開催されていた。こちらは子供たちが参加したワークショップの作品も展示されていたこともあって、親子連れの来場者が多く、作品の前で記念写真を撮ったり、自慢の作品を解説したりと PICEX の会場よりも賑わっていた。モノクロ人気は、もしかしたら日本以上かもしれない。

昨年の PICEX2014 は、5月2日(金)~ 4日(日)の3日間、九龍湾国際展貿中心のスターホールで開催された。来場者は3日間で3万人超( 2月3日時点で、今回の来場者数の発表はない )。その後もサテライトイベントとして写真展やワークショップなどを重ねてきた。その甲斐あって、今回は現地の販売代理店だけでなく、ソニー、タムロン、レンズベビー、アルパといったメーカーがブースを出展していた。とは言え、主要なデジタルカメラメーカーがソニーだけという状況は、カメラショーとしては寂しい限り。前回から半年しか経っていないことや、メジャーな会場で出展料が跳ね上がったことなどの影響は少なくないようで、出展社集めには苦労があったようだ。

また、日本からの来場者も期待していたようだが、CP+ 直前というタイミングの悪さや円安の影響などもあって、思ったようにはいかなかったというのが正直なところだろう。次回は3月、CP+2016 の後に開催を予定しているという。

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■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
柴田 誠 MAKOTO SHIBATA

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著者について
1964 年生まれ。2012 年春に 24 年間勤務した出版社を退社し、フリーのフォトジャーナリストとなる。その後、香港に個人事務所 CYBER DRAGON HKG LIMITED( 數碼龍珠( 香港 )有限公司 )を立ち上げ、フォトキナをはじめとする国内外のカメライベント、写真フェアなどを中心に取材活動を行い、香港をベースにして国内や海外のカメラ雑誌や ウェブマガジンに執筆している。ちなみに日本在住。出版社在籍中には、カメラ誌の製品担当者で組織する「 カメラ記者クラブ 」にも通算 16 年間在籍。編集者時代に培った幅広い人脈と豊富な経験を活かした活動をするとともに、「 日本の写真文化を海外へプロジェクト 」を主宰。業界の活性化と後進の指導にも積極的に取り組んでいる。中国のカメラ雑誌「 撮影之友 」の編集顧問も務める。日本写真家協会( JPS )会員、日本写真協会( PSJ )会員、日本香港協会( JHKS )会員。