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高﨑 勉の雲台・三脚レビュー
FLM社 CB43-FTR & CP30-M3S
~ 頼れるドイツ製の精密なギア

Posted On 2015 11月 13
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TOPIX

日本と並び多くのカメラ関連製品メーカーがあるドイツ。スタグラ初のドイツ製三脚レビューを「 ネットショップのための商品撮影講座 」を連載している写真家・高崎 勉氏にいらしました。日頃、コマーシャルフォト撮影で三脚の使用頻度が高い高崎勉氏はどのような評価を下すのでしょうか。by 編集部

こんにちは。スタジオグラフィックス on the Webで 「 ネットショップのための商品撮影講座 」を連載中の写真家・高崎勉です。2011年からはアーティストとしても作品を発表していますが、スタジオでの商品撮影を中心に活動してきました。
スタジオでは今でも大判カメラがメインで、この10年はデジタルバックを装着して撮影しています。デビュー当初から「 重くなければ三脚ではない 」とずっと考えていました。しかし、デジタル一眼レフを携えて活動のフィールドを屋外に広げるようになると同時に「 持ち運びしやすい重さ、なおかつ堅牢な三脚 」が、自分のもう一つの三脚として重要な条件となってきました。

▼写真1

写真1


2014年からは写真講座「 Takasaki Seminar 」を開講し、アマチュアからプロまで幅広い層に写真を教える立場になり、受講者から「 機材選びは三脚や雲台がわからない 」という声もよく耳にするようになりました。今回、ドイツFLM社製の雲台・三脚のレビューをする機会に恵まれたので、本レビューは商品撮影で長年生活をしてきた写真家としての目線、そしてこれから写真を学ぶ方の目線で記述したいと思います。

■ 僕が「 自由雲台 」 を嫌っていた理由とは

僕が専門とする商品撮影では、縦方向、もしくは横方向の傾きをそれぞれ微妙に動かしながら構図を決めていきます。 そのように精密なカメラワークを求められる商品撮影ですので、一つネジを緩めただけでグラグラになってしまう自由雲台を嫌ってきました。
僕がこれまで愛用してきたのはいわゆる「 3wayタイプ 」と呼ばれるものです。
下の写真のように、3wayタイプの雲台は縦、横方向、そして回転の3通りが1本ずつのレバーを緩めて操作します。

▼写真2
3way雲台

3way雲台

ですが、初心者のお話を聞くと、「 どのネジ( パーン棒 )を動かすとどちら方向に動くか、なかなか慣れずに使いにくい。 」と、自由雲台を選ぶ方が多いことを知りました。
先述の通り、商品撮影では繊細なカメラワークが求められます。
自由雲台の中でも高額な製品になれば搭載するカメラの重さに応じて圧力を調整できるものがあります。それでもレバーを緩めた途端、多方向に動くことには変わりありません。 そのために僕は自由雲台を嫌っていました。
しかしながら、今回ご紹介するFLM社の三脚 と「 TILTノブ 」機能付自由雲台との出会いは僕の今までの考えを覆すことになったのです。

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■ 「 TILTノブ 」による、これまでになかった自由雲台の動き

今回使用したFLM社の雲台( 型番: CB43-FTR )の最大の特徴は「 TILTノブ 」でしょう。

▼写真3
ロックリング付ダンピングノブ

ロックリング付ダンピングノブ

構図を決めるときにまずはダンピングノブ( 粗動ネジ )で大きな動きを利用してフレーミングします。 大まかな構図を決めたあと、商品撮影では▼写真4から▼写真5のように画面の中でほんの少しだけ縦方向に動かしたいという時があります。

▼写真4
白い缶がフレームの上部にある写真

白い缶がフレームの上部にある写真

▼写真5
白い缶がフレームのセンターに収まった写真

白い缶がフレームのセンターに収まった写真

このようなときに「 TILTノブ 」を利用して縦方向のみカメラが動かせるおかげでフレーミングの最終調整がスムーズに行うことができます。

▼写真6
左右方向への傾きを抑えるTILTノブ

左右方向への傾きを抑えるTILTノブ

商品撮影では被写体を見上げるのか、見下ろすのか、そのアングルの違いで表情が全く異なります。また、レンズの中心( 最も歪みがない部分 )を使うことで写真の品質を守ります。

▼写真7

写真7

▼写真8

写真8

▼写真9

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このように縦方向にのみ動かすことができる不思議な自由雲台なのです。 普通の自由雲台だと一つしか付いていないネジを緩めると、このように全方向にグニャリと動いてしまします。

▼写真10

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▼写真11

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その調整を微調整することができるのが「 TILTノブ 」です。僕の知る限り、この機能が装備された雲台は他にはありません。
これがFLM社「 FTRシリーズ 」の最大の特徴といってよいでしょう。
微調整に優れたFLM社の雲台ですが、大きくカメラを動かすことも可能な構造になっています。大きくカメラを動かしたい時は、メインの操作ネジとなる「 ダンピングノブ 」を操作します。動きとしては他の自由雲台のロックネジに相当しますが、FLM社の雲台の特徴として、単に「 ON/OFF 」の機構ではなく真球のボール部を緩やかに締め付けて固定します。 「 ダンピングノブ 」には同軸状にロックリングが備わっています。

▼写真12
ダンピングノブとロックリング

ダンピングノブとロックリング

このロックリングでダンピングノブの締め付けを調整できます。これによって、ボールヘッドが急に傾くことを防ぐばかりではなく、望遠レンズ装着時などの重たいカメラを雲台につけたまま、手持ちの感覚で構えることができます。
風景と飛ぶ鳥を追いかけて撮る時、また運動会のリレーなど動く被写体を撮るときに便利でしょうね。

デジタル1眼レフでの僕のメインのレンズNikkorの24~70mmは、それなりの重量があるので、華奢な雲台を使うことができません。でも、そのために大判~中判カメラ用の大きな雲台を持ち運ぶのも嫌なものです。特に自由雲台への信頼感に乏しかった僕としては充分な安心感が欲しいところです。望遠レンズをメインで使う方にとってはもう一つ大きな雲台「 CB-48/FTR 」の選択も良いと思います。

▼写真13
24~70レンズ装着時の図

24~70レンズ装着時の図

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■ 「 PRSノブ 」によるPANのクリック調整機能

FLM社自由雲台のFTRシリーズには「 TILTノブ 」だけではなく、「 PRSノブ 」も付いています。これはスムーズな動きに加え、15度間隔のクリックをつけることができますからパノラマ撮影の手助けとなります。

▼写真14
パノラマ撮影 35mmで8コマ撮影 photoshopで自動処理

パノラマ撮影 35mmで8コマ撮影 photoshopで自動処理

▼写真15

写真15


僕はこれまで住宅の仕事でパノラマ撮影を受けたことがありますが、特別な機材を所有していなかったので、ファインダーで画面の重なりを確認しながら三脚をパンさせ( 振っ )ていました。
FLM社自由雲台のFTRシリーズは「 50mmを使うときは2クリックずつ 」、「 35mmの時は3クリックずつ 」といったふうに数えて撮ることができますので便利です。( もちろんファインダーで確認することは大切です )普段の撮影は「 PRSノブ 」を緩めることでクリック感・音の調整が可能です。

■ 雲台の操作性について

▼写真16

写真16


ここまで良いことずくめで紹介してきましたが、では手にしたその時から巧く使いこなすことができるのか? それに関してはFLM社の雲台は容易ではないかもしれません。
3WAYタイプの三脚はパン棒と呼ぶレバーが突き出しているので慣れてしまえば車のハンドルを操作するように扱うことができます。
一般の自由雲台は機能が少なく、FLM社製雲台よりノブが少ないので誰でも使いこなせるでしょう。 それに対し、今回使用した「 TILTノブ 」付きの自由雲台になると「 PRSノブ 」という機能も付帯しています。

ノブが2つ増えることによって、操作に若干戸惑いを招くことがあるかもしれません。 特に「 TILTノブ 」と 「 PAN調整ノブ 」が上下に付いているので使い始めの時は僕も混同しました。
また、レバーの形状、質感が同じなので触っただけでは違いが判り辛いです。
実はこのノブの仕上げがドイツカメラ好きな僕にとって、そそられる要素の一つなのですが、手袋をして屋外で撮影するときには多少使いにくいかもしれません。
でもこういうパーツにゴムなどの劣化しやすい素材を使わないところが、ドイツ製品っぽいというか、昔から一つの道具を長く使おうとする国民性が現れているようで僕には好感が持てます。
また「 TILTノブ 」と「 PRSノブ 」が付いていない機種も選ぶことができますので、この質実剛健なFLM社の自由雲台の滑らかなボールヘッドの使い心地だけを追い求めることもできます。

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さて、次は三脚本体の話に移りましょう。

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■ シンプルな作りでしっかり止まる作りの良さ

▼写真17
FLM「 CP30-M3S 」

FLM「 CP30-M3S 」

▼写真18

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僕はこれまでブレを防ぐ「 信頼度 」と三脚の「 重さ 」は比例するものだと思ってきました。 もちろん、それは今も変わらない概念ですが、重たいことが原因で持ち運びが億劫になり、撮影旅行に三脚を持っていかなくなったならば本末転倒です。
最近はレンズには手ぶれを防ぐ機能が備わったレンズが随分増えてきました。ですが時にはじっくりと構図を決めてスローシャッターを操り撮影したいものです。
FLM社の三脚のセンターポールの下部には重りをつけられるスマートウエィトフックが付いています。そのおかげで重たい三脚を持たずとも撮影先で重りになるもの( コンビニ袋に石を入れるなど )を三脚にぶら下げることで軽い三脚の安定感を増すことができます。
ですが、ウエイトに頼りすぎると華奢な三脚ではストッパーのネジに負担がかかり痛めてしまう原因になります。また、ネジが緩むことで転倒事故も起こしかねません。 実際にFLMの三脚に 5kgのウエイトをぶら下げてみました。( ▼写真19 )伸縮部のネジはしっかりロックされ全く問題ありませんでした。( ▼写真20 )

▼写真19

写真18

▼写真20

写真20

▼写真21
CP30-M3Sのフック

CP30-M3Sのフック


この重りを引っ掛けるためのフックは他社製品ではバネが付いている機種が多いのですが、その場合は装着するときに両手を使わなければなりません。スタジオ撮影とは異なり、屋外撮影の場合、手に持っていた機材やアクセサリーを、ちょっとしたものをその辺りに置いてしまうと紛失につながります。
FLMのウエイト用フックはスプリングがなく引っ張れば止まり、片手で引っ掛けられるのは嬉しいものです。

プロさながらに様々なシーンで三脚を使い分けるというアマチュアの方もいらっしゃるでしょう。ですが、これから初めて三脚を購入する、そして将来的にも幾つも買い揃えることができないという方が大半だと思います。
そんな方に僕が購入時のアドバイスとしてお伝えしているのは

「 三脚を伸ばしきった状態で自分の身長より10cm高くなるものを選んでください。 」

ということです。
そうすると意外に大きくて重たいものになるかと思います。( 特に女性 )
最近の三脚の脚の素材の主流は2つあり、「 強度があるアルミ製 」と「 軽量であることを優先させたカーボン製 」です。多くのメーカーが足の素材を選択できるようです。 それに対して、FLM社のラインナップはカーボン製のみだそうです。軽いけれど強度を兼ね備えた自信の表れのように感じます。
これはあくまでも個人的な話ですが、僕の身の回りの品は日本製品と並んでドイツ製品がたくさんあります。カメラはもちろん、車、靴、コートなど。質実剛健なところが日本製品と共通し僕の好みなのだと思っています。今回初めて使った FLM社の三脚と雲台もやはり信頼できるギアであることは間違いないようです。

▼写真22
雲台「  CB43-FTR 」と三脚「 CP30-M3S 」を使用して撮影した作例1 Nikon D800 24~70mm ( 36mm相当使用 ) ISO640 f2.8 1/25

雲台「 CB43-FTR 」と三脚「 CP30-M3S 」を使用して撮影した作例1
Nikon D800 24~70mm ( 36mm相当使用 ) ISO640 f2.8 1/25

今回ご紹介した、この雲台「 CB43-FTR 」と三脚「 CP30-M3S 」は僕が仕事で使用している大判カメラのような重量級の使用には適さないかもしれません。
ですが、デジタル1眼レフを携えてのハイキング( もしくは軽めの登山 )から室内での撮影まで1台の三脚で賄いたいと考えの方には心強い選択肢となるでしょう。

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■ 総評

▼写真23
雲台「 CB43-FTR 」と三脚「 CP30-M3S 」の作例2 Nikon D800 24~70mm ( 48mm相当使用 ) ISO640 f2.8 1/640

雲台「 CB43-FTR 」と三脚「 CP30-M3S 」の作例2
Nikon D800 24~70mm ( 48mm相当使用 ) ISO640 f2.8 1/640


今回使用した雲台「 CB43-FTR 」と三脚「 CP30-M3S 」は新品ですので、他の製品同様に新しいうちはロックもしっかり止まるし、グラつきもありません。過去に20台以上の様々な三脚を新品から使ってきた僕が、初めてFLM社の製品を使った感触は、「 まさにドイツ製品のイメージにある『 質実剛健 』という言葉がぴったりくる 」気がしました。
ライカやリンホフといったドイツ製のカメラを好んで使い続けてきた僕には、FLMの素材感やパーツに触れた時の感触が共通しているように思えます。

商品撮影・風景撮影にと多くの撮影フィールドで三脚・雲台としての機能を十二分に発揮し、そして、その高級感は触れるごとに撮影の楽しさを増幅してくれるものになるでしょう。

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著者について
■ 高崎 勉 - Tsutomu Takasaki - 1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1999年高崎写真事務所設立。静物写真にこだわり続け、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動する。「毎日広告デザイン賞 発言広告の部 最高賞」はじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広く雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。2017年に開講した Abox Photo Academy 塾長。商品撮影講座&アートフォト講座の講師を務める。