カメラマン・大村祐里子氏に聞く
~クリエイター向け27型液晶モニター
「 ASUS ProArt PA278QV 」試用インタビュー
Photo & Text : Osamu Takeishi
モデル名 | ProArt PA278QV |
直販価格(2020/9/14 現在) | 税込4万円台半ば |
サイズ | 27型 |
パネルの種類 | IPS |
表面処理 | ノングレア |
色域 | sRGBカバー率100% |
解像度 | 2,560×1,440ドット |
映像入力 | DisplayPort 1.2、Mini DisplayPort、DVI-D、HDMI (v1.4) |
TOPIX
2020年 9 月 18 日発売の ASUS製 27 型液晶モニター ”ProArt PA278QV ”を編集部で入手する機会を得た。本製品は ” ASUS Store ”にて 41,564 円 (税別) { ※ 2020年9月14日現在 当社調べ }にて予約受付をしている。写真/ ビデオ編集・グラフィックデザイナーなどクリエイター向けの 27 型液晶モニターだ。本製品を法人・芸能関係と幅広く人物撮影を生業としている大村祐里子氏に試していただき、使用感インタビューを実施した。 by 編集部 |
Index
1.大村祐里子さんの近況について
- 本日はよろしくお願いします。早速ですが、最近、仕事ではどのような撮影をしていますか?
- よろしくお願いいたします。人物撮影が多いですね。アイドルの写真やカレンダーのほか、企業役員のプロフィールなどを手がけています。タレントの宣材写真も良く撮りますね。それから広告関係ですね。ブツ撮りもありますが、商品と人物を組み合わせたカットの依頼が多いです。
- 仕事の撮影ではどんなことに気をつけていますか?
- どの仕事でもクライアント、スタッフ、私も含めてみんなが気持ちよく終われるように努力しています。そのために、クライアントや事務所が好む傾向なども前もって把握するようにしています。
それから、撮影場所についてもできるだけ調べるようにしています。ロケハンに行けるのであれば可能な限り行きますし、それが難しい場合は先方に撮影現場の写真を送ってもらったりします。 - 大村さんの考えるロケハンの重要性とはどのようなポイントでしょうか?
- ロケハンをすると撮影前に準備できることも数多くあります。室内なら壁の色でストロボをバウンスできるかできないかが決まります。色の付いた壁であれば白い布を被せるなどの対策もとれます。加えて、普段良く使っている大きなアンブレラだと、ある程度天井に高さが無いとセッティングが難しくなります。そうした情報をできるだけ集めておくのがスムーズに撮影を進める上で重要になると考えています。
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2.プライベートな作品撮りについて
- プライベートでも作品作りを行っているそうですが、どのような被写体を撮っているのですか?
- 以前からスナップの作品を良く撮っていましたが、最近はそれに加えて人物の作品撮りを良くしています。これまで、人物は仕事でたくさん撮っているのでプライベートではあえてあまり撮っていませんでした。しかし、仕事では自分の好きに撮れるわけではないので、それに対する「自由」が必要だと感じて最近は意識して撮るようになりました。
- 「 自由 」な人物撮影が必要だと感じた理由をお聞かせください。
- プライベートなら私が撮りたい人を撮れるし、自分が良いと思った作風で撮れます。仕事は良い意味で「 不自由 」なので、それだけを続けていて良いのかな?と、いう思いがありました。自分らしさを抑圧する現場が多いので、自分らしさを失わないようにプライベートの作品撮りでバランスを取ろうという感じです。
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3.撮影・編集機材について
- カメラ、レンズはどのようなものをお使いですか?
- もともとキヤノンの一眼レフユーザーだったのですが、EOS R を導入したときにレンズも一部を RF マウントで揃えました。現場には RF24-105mm F4 L IS USM と RF70-200mm F2.8 L IS USM を良く持っていきます。EF マウントレンズも残してあるので、マウントアダプター経由で使うこともあります。単焦点ではタムロンの SP 85mm F/1.8 Di VC USD がかなり気に入っていますし、シグマの 50mm F1.4 DG HSM と 135mm F1.8 DG HSMも出番は多いです。
Zeiss Otus1.4/55 もとても好きなレンズですが、マニュアルフォーカスということもあり仕事では使わず、専らプライベート用です。プライベートといえば、「 最強のスナップカメラ」が欲しくて最近 Leica Q2 を買いました。レンズ交換できませんが歪みが少なく、撮って出しで凄く綺麗な絵が出ます。
- パソコンとディスプレイは何をお使いですか?
- 自宅では少し前の Mac Pro を使っています。ディスプレイも少し前の型ですが、国内メーカー製 24 型の 4K タイプです。本当はもう少し大きなディスプレイが欲しかったのですが、予算の関係で1サイズ小さい方を導入したという経緯があります。
- 撮影現場でも単体のディスプレイは使うのでしょうか?
- 現場には 15 型の MacBook Pro を持っていき、テザー撮影で関係者が確認できるようにしています。ただ、ノートPCだとサイズが小さい上に、視野角の問題もあって正面付近からでないと正確に見えません。ですから、本来なら単体のディスプレイを用意できればベストだとは思います。
その点、ProArt PA278QV は見た目より軽いですし薄型なので、クルマ派の私としては大きめのバッグに入れれば現場にも持っていきやすそうな印象でした。スタンドの組み立てや取り外しも1人で簡単にできるんですよ。価格も安いので、現場用に用意しておくのもありだと思いました。 - 撮影後のワークフローを教えてください。
- 撮影の後のセレクトは、例えば宣材写真ならその場でマネージャーが選ぶ場合もあります。多くの仕事では私がセレクトすることは少なくて、ブレや目つぶりなどを除いて全て納品することが多いですね。
私は写真が大きく印刷されるカレンダーの仕事もしているので、細かいブレやピントのチェックをシビアにしなければなりません。その際に、やはり大きなディスプレイのほうがチェックはしやすいということはあると思います。
仕事では自分でレタッチをすることは少なく、ほとんどはレタッチャーが行います。プライベートの作品では被写体そのものを活かしたいので基本的にレタッチはできるだけしない主義で、ニキビや毛穴など最小限の修正にとどめています。 - ところで大村さんはプリントを積極的にしていますか?
- 紙になったときにどうなるのかを確認したいので、プリントは頻繁に行います。印刷したときのピントの感じなどは、プリントすると良くわかりますから。実は、ProArt PA278QV で表示した作品をプリントしてみたのですが、色の感じが合っていて、昔あった「 わ、全然違う色!」ということはありませんでした。今回はプリントプロファイルまでは作成していませんが、一般的なプリントであれば問題無い表示品質だと思います。
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4.ASUS製 ProArt PA278QV を試してみて
- 今回ProArt PA278QVを試用してもらったのですが、どんな場所に設置しましたか?
- 普段作業を行っている自宅に設置しました。使った第一印象は 27 型というサイズ以上に画面を広く感じました。フレーム(ベゼル)がほとんど無いためにそう見えたのだと思います。それから本体も薄型なので、ディスプレイにありがちなモッサリ感が無いのも良かったです。
- 現在24型をお使いとのことでしたが、27 型はどうでしたか?
- 27 型は家庭で使うなら大きすぎず一番良い大きさだと思います。やはり 24 型よりずっと見やすいですね。私は当時、27 型は高くて購入を見送りましたが、これから購入するなら 27 型はおすすめです。複数枚の写真を1度に並べて見るにしても見やすいですから。
- ProArt PA278QV は視野角の広いIPS パネルで、反射しづらいノングレア仕様です。その辺りはいかがでしたか?
- 視野角については全く問題ありませんでした。昔、グレアパネルのディスプレイを使っていたことがありましたが、反射がすごくて見づらかったです。今ではノングレア以外考えられないですね。設置した場所の近くに窓があって光が入ってくるのですが、それが当たってもさほど見にくくならないのが良いですね。
- ProArt PA278QV は4K 解像度ではありませんが、作業をしていて気になる点はございましたか?
- 4K ディスプレイの緻密さを知っている身としては、密度が少し薄い印象は受けますが微々たるものですね。値段を考えると、アマチュアカメラマンの写真用ディスプレイとしては非4Kタイプでも十分だと思います。
- キャリブレーション済みで出荷されていますが、色の再現性はどうでしょうか?
- 出荷時の状態では色やコントラストがわずかに強めに出ていましたが、不自然な色ではありませんでした。そのままでも十分使えると思います。しかし、測色器によるキャリブレーションをした後のほうがコントラストも落ち着いて階調も良く出るようになりました。なので、できればキャリブレーションはした方が良いと思います。一方で、画面における色や明るさのムラは全くわからないレベルですね。
- キャリブレーションに使った測色器はなんですか?
- 普段使っている X-Rite の i1Studio です。ディスプレイのほかにプリンターのカラープロファイルも作れる上位モデルです。キャリブレーション自体は画面に出てくる指示通りに操作すれば良いので簡単です。
- そのほか、ProArt PA278QV を使って気づいた点はありますか?
- ディスプレイの高さの調整範囲が広いのが助かります。私は座高が低いので低めにセッティングできるのが良いと思いました。
- ProArt PA278QV を総合的に見ていかがだったでしょうか?
- なんといっても、コストパフォーマンスが圧倒的ですね。この性能でこの値段{ 2020年9月18日発売開始時 ASUS Store 販売価格 41,564 円 (税別)} なら ProArt PA278QV 一択といって良いのではないでしょうか。アマチュアやハイアマチュアの方でしたらいうことは無いと思います。プロでもよほど細かいレタッチとするという場合は4Kタイプが良いでしょうが、そうでは無ければこれで問題ないでしょうね。私も現場用に購入を決めました(笑)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石 修
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