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CP+発! のレオフォト人気三脚誕生秘話
「デジタル時代だからこそ三脚も進化する」


レオフォトインタビューカバー

TOPIX

風景写真家・林明輝氏が考案し、中国の三脚ブランド「レオフォト( Leofoto )」から10月に発売された「 LS-284CLin 」。以前にも本媒体で紹介したが、実は今年2019年のCP+をきっかけに誕生したというのはご存じだろうか。東京都写真美術館収蔵作家であり写真教室「輝望フォトグラファーズ」主宰やソニーαアカデミー講座を務めている気鋭の風景写真家・林氏と、レオフォト正規販売代理店であり、林氏とレオフォトTony Deng社長をつなげた株式会社ワイドトレードの代表取締役上田晃央氏に誕生エピソードやこだわりを聞いた。ぜひ、前回の編集部レビュー 「 気鋭の三脚ブランド レオフォトを試した 」と合わせてご覧ください。 by 編集部

Index

1.カメラもミラーレスになり、三脚のニーズも「変わってきている」

本日はよろしくお願いします。早速ですが、林先生といえば世界を股にかけて風景を撮られていますが、これまで三脚とはどういう思いで付き合ってこられたのでしょうか。

インタビューに応える林明輝氏

インタビューに応える林明輝氏

風景写真には系譜があり、何がどういう風に認められてきたかというものがあます。過去の前田真三氏もそうでしたし、竹内敏信氏、緑川洋一氏、福原信三氏もそうでしたけど、基本的に三脚を据えていらっしゃいました。私も18 歳の頃から写真を始めて今はカメラも軽く AF も早くなりましたけど、撮る時に大事なことは圧倒的に構図です。
そのためにしっかりとカメラを三脚に据えて撮る事は基本ですし、その中で光が少し変わったとか、霧が晴れて光芒が出るとか色々とあると思いますが、構図自体がきちっととれていないと良い写真とは言えません。その上で、時代の変遷と共にフィルムからデジタルになり、カメラが軽く小さくなった事で、三脚のニーズも変わってきているわけです。
風景写真において、まずは構図が大事であり、そのためには三脚は必須という事ですね。時代に応じてニーズが変わったと感じたのはどのようなところでしょうか?
昔は1本4~5キロのものを片手に山を登っていました。当時はフィルムカメラしかなかったので、フォーカルプレーンシャッターやレンズシャッターの振動はそれだけですごいものがありました。風景でよく使っていた 8 × 10( エイトバイテン )のカメラではそれ自体が長く三脚をもう一本前につけないといけませんでした。また、3番シャッターの振動を止めるのも大変な作業でした。それがどんどんカメラが軽くなり、ソニーさんがそうであるように無振動の電子先幕シャッターが普及した今、三脚も軽く” 進化するべき ” と、感じました。
カメラがデジタルになり、軽量化やシャッターの振動を気にしなくなっても良くなった事で、相対的に三脚も従来のものより軽くて済むようになった、という事ですね。
日本の風景各地を巡る中で、いろいろ三脚を使ってきましたが、「 帯に短し襷に長し 」というのは、確か感じていました。軽いと高く伸びない、大きければ軽くはならない、というのがずっと 15 年来続いていました。大井町で 18 年写真教室をやっていますが、以前は生徒さんたちに大きく伸びて軽量な GITZO の6層構造のカーボン三脚「 マウンテニア 」を勧めていました。それでも、雲台を含めない重さが 1.5 キロ以上あり、自由雲台自体も重いものでした。風景は遠くへ行って作品撮りをされる方やお年寄りが多いですよね。その時に、どういうものが求められているのかと言ったら、軽さです。1グラムでも軽いほうがいい。
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2.新モデルの誕生は、CP+ での出会いがきっかけ

林明輝氏と(株)ワイドトレード ・上田晃央代表取締役社長

林明輝氏と(株)ワイドトレード ・上田晃央代表取締役社長

そうやって時代の変化と共に三脚についても考えられていた林先生が、「 LS-284CLin 」を考案されたきっかけは何だったのでしょうか?
一昨年の CP + で上田社長と知り合い、色々とお話をする上で三脚をどういう風に使いたいかを具体的に聞いてこられました。それで、今年の CP+ でお会いした時にも「LS」シリーズは何本か購入させていただいていたので、「 LS-323C 」は長く伸びるけど飛行機に持ち込めず重く、「 LS-284C 」は軽いけど高さが足りない、その落としどころとなるものを新しく提案しました。それがドンピシャで、これは使えるだろうと早速フィールドに出ました。「 LS-284CLin 」の「 L 」は私が林( リン )というのでその型番でお願いしました。
なるほど、CP+ がきっかけだったのですね。特にこれだけは外せない、というポイントはどういう所でしたか?
飛行機に持ち込める60 ㎝以内で、伸ばした時の高さが 1,500 から 1,600 ㎜、4段は譲れない、と言ったと思います。それを一発目の試作でやってきたのがすごいと思いました。なかなかできる事ではないし、作っている人の職人技とセンスがなかったらこういう話にはならなかったと思いますし、中途半端に作ってこられたら僕は使うのを断ったと思う。
「 LS-284CLin 」を小指で持ち上げ、軽さを強調する林氏

「 LS-284CLin 」を小指で持ち上げ、軽さを強調する林氏

まさに全国を飛び回る風景写真家ならではの提案だったのですね。レオフォト側は今回、どうして林先生のリクエストに応えようと思われたのですか?
僕の印象だと風景写真家の先生方はみなさんまずGITZOを使われている印象があります。レオフォトについては「 聞いたことがない。」と言われました。でも、林先生は CP+ にふらりと来られて色々と見ていただいて、名刺をお渡しした際に「 会社にも色々とありますのでぜひ一度来て欲しい 。」という事になりました。だいたいみなさん「 行きます。 」と言いつつ実際にはなかなか来られないですけど、林先生は本当に来られて驚きました。鳩ヶ谷までですよ!
それは本気度が伝わりますね!
これは只者ではないと思いました。三脚に対して強い思いがあり、色々とお話を聞かせていただいて勉強にもなりましたし、説得力もありました。僕らも色々な人から話を聞いてメーカーにフィードバックしてもっといいもの作ろうと思いますが、なかなかメーカーは「 うん 」とは言わないです。でも、林先生のアイデアを伝えたら「 やりましょう! 」と。実際、当社のWeb ページに掲載されてから問い合わせが多かったですし、みなさんからこの寸法は一番と言っていただいていますね。
林先生の熱意に動かされたと。

林明輝さん (9)-2_R

ほかにも感心なのが(オプションで付属している)石突きです。他社さんは普通別売り 3,000 円くらいしますし、これが重いせいでよく緩むんです。それが、ネジの根元にゴムを入れて緩みにくくなってます。こういう細かいところは作り手も先生も職人同士だから生まれたわけですし、わたしはその場には立ち会っていないですけれど、レオフォトに紹介した事でこういう形になったのはとても嬉しかったです。
今は日本国内限定発売ですが、今後は世界へも展開されるのでしょうか?
日本でこれだけ広がったらほかの国にもいけるのではないかと思います。ソニーのミラーレスカメラも日本をはじめ、例えばベトナムのような国でも使われていますし、世界のカメラマンも同じような変化をしているなと。だから、私はレオフォトに固定概念は NG と言っていますす。林先生がおっしゃったように時代に合わせて新しいものを作って変えていかないと、今の世の中についていけないのではないかと思います。
逆に、数ある三脚メーカーの中で林先生がレオフォトに提案したのはどういう理由があったのですか?
今までに色々なメーカーの三脚を使ってきました。レオフォトは CP+ の参加も2年目という事もあり、プレゼンを聞いていてもこれから伸びる勢いを感じました。単に中国だから、お金があるから作ったわけではなく、品質で勝負するコンセプトを感じ、これはアドバイスしたらいいものを作ってくれるのではないかと思いました。実際、一発目で希望通りの仕様の試作機を作ってきたのですごいですよ。多分、他のメーカーにかけあっても「そんなもの作っても売れないよ」「今のままで十分」と言われるのが関の山か、作っても製品化するまでに1~2年じゃ無理かもしれないですね。
今回はやると決めるスピードが速かったですね。大抵はみなさん「持ち帰って検討します」と言われますけど、リスクは負いたくない。上の人間が決める立場だが、上の人間は現場に出ていないので決められない。私はそういう気持ちは分かるが、レオフォト社長のTony 氏は日本人のそういう所は理解できないようです。ビジネスに柔軟性は大事だと思う。現場に居ればお互い気持ちは伝わりますからね。
開発秘話を語り合う林氏と上田氏

開発秘話を語り合う林氏と上田氏

ちなみに、CP+は2月下旬開催で発売は10月とわずかな期間ですよね。
早かったよね。
今年の6月に試作にとりかかり、8月にはできました。
そんなに早くできるのは、企業の姿勢に何か特長があるのでしょうか?
普通の企業はメーカー優先、プロダクトアウトの発想ですが、レオフォト社は納得すればできるだけ応えます。マーケットインの発想で取り組んでいます。どういう製品がいいかはカメラマン( マーケット )が知っていますし、何人もの教室の先生方に聞いてもあのスペックはいいと言っていただいています。世界のカメラマンも同じだと思います。
三脚に求めている方向が正しいと思っています。世界中で機内持ち込みできるかは各国の機内持ち込み基準が分からないし、使う人の身長もバラバラなのでこれが100 パーセントじゃないかもしれない。けれども、頭に浮かぶ選択肢としては、使ってみたい理想の形に近いと思います。
「 LS-284CLin 」発売後の反響や手ごたえはいかがでしょうか?
以前、新潟に本社を置いていたころは全国に営業へ回れました。しかし、今は営業を少人数にしたので回れていません。でも、製品がいいので注文が来ています。カメラ専門店や量販店さんにも納入することができました。それは先林生のリクエストに応えて実現できたモデルだからだと思います。
あと、「 カーボン三脚の伝導性 」も、もっとアピールした方がいいと思うよ。
金属は共振性があって震えると止まらないけど、カーボンは少ないですからね。振動に強いのも特徴です。
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3.” 今 ” 感じる使用感「 カメラの進化に三脚がついてきている 」

林先生は様々な場所へ撮影に行かれていますが、「 LS-284CLin 」+「 LH-30 」の使用感はいかがですか?
脚を設置する安心感やスピーディーさが増しました。先ほど圧倒的に構図が大事だといいましたけど、構図を構えてシャッターを押すのが早くなったというか、砂利の上や水の中など地面のシチュエーションは様々でまっ平ではないところが多いので、アウトドアで状況をあまり考えずに撮影できますね。今までは目線の高さ( ※林氏の身長は約 180 cm ほど )で撮りたくでも三脚自体の高さが自分の背の高さを想定していないものが多かったので、そういう所でも4段ならではの安心感が増しました。
林氏の三脚使用シーン

林氏の三脚使用シーン

いただいたメイキング写真を見ていると、川や木道にも撮りに行かれていますが、ここではどうでしたか?

LS284C Lin 3_R

特に、川で撮る時はウェーダーという防水のつなぎを着て入りますが、水底は見えず深みもあるので、脚を伸ばしながら探ります。昔は三脚の脚は太い方から伸ばしていたと思いますが、今のカメラはも軽く無振動ですので、( 下の )細い所から伸ばし、最後に( 上の )太い所で高さを調整するように教室でも教えています。そういう時にどこまで伸ばせるかというレンジの広さは4段ならではですし、三脚としての安定性も含めて問題がなかったです。
木道では3本脚を乗せられるほど広くないので、どうしても1本は外に出る事になります。下が泥の場所もあり何センチか沈んでしまいますが、そういう時も諦める事なく自分の目線で撮れました。
他に本モデルの特長はありますか?

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あと、上記写真のようにセンターポールがないのでベタで撮影ができるのも使いやすいです。自由雲台も「 LH-30 」「 LH-36 」「 LH-40 」と大きくなると高くなりますが、「 LH-30 」はボール自体が小さいので、地上から12 ㎝くらいで撮影できるのもありがたかったです。今のカメラは( フィルム時代と違って )ボディー背面の液晶を動かせますので、自分がかがむ必要がないんですよね。なので三脚はより地面に近い方がありがたいですし、それはカメラの進化に三脚の進化がついてきている事だと思います。
センターポールで高さを稼ぐよりはべタで撮れる形を優先し、高さが足りなければ延長ポールを付けて対応する、という柔軟な対応ができるんですね。
ええ。例えば、新潟で撮影した時(右の写真)は経年変化で徐々に伸びたススキが下に入ってしまいました。なるべくススキが入らないようにハイアングルで撮りたかったので、この写真には写っていないですけど、脚を全部伸ばした上で更に延長ロッドを付けて最大 1,900 ㎜、場合によっては脚立に乗ってススキを外して撮影できたという事がありました。

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軽さではどういうメリットを感じましたか?

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上の写真は雲海を撮影していますが、この景色を1本の三脚で撮るのはもったいないですよね。後ろの滝雲はND フィルターを使って1回の撮影で5〜 10 秒とシャッタースピードを遅くして滝雲をぶらして撮影していますが、明るさも刻々と変わっていくので、1台のカメラでは間に合いません。構図を変えると一から構え直さないといけないですし、今はデジタルなので同時にシャッターを切れますので、私は三脚を2本~3本は用意していきます。1本 1.53 キロですし、三脚を2本構えられれば2倍撮影できるし、3本構えられれば3倍撮影できることになります。風景カメラマンは、いい条件であればあるほどそういう撮り方をするわけです。三脚が軽くなると撮影クオリティの自由度も広げる事になります。
三脚が軽くなると格段に機動性が向上し、作品い良い影響がでるのですね
これはソニーαアカデミー講座でも言っていますが、昔と違って今はミラーレスカメラなので、ワンレンズワンボディーの発想で撮影をこなしていかないとナンセンスな訳です。センサーが汚れるたびに、クリーニング代が嵩むことになります。過酷な環境になればなるほど埃や雪、雨など色々な弊害がありますので、レンズを外して交換する考え方はしないわけです。カーボン三脚が無振動といっても、プレート等を付けて1本の三脚にカメラを2台乗せると、風で望遠レンズが揺れると他方のレンズにも共振してしまうので、やはりセオリーは1本の三脚に1台のカメラだと思います。フィールドではね。
わずかなシャッターチャンスしかない時など、撮り逃すわけにはいかないですからね。
風景を撮影する時は状況が様々なので、今度 CP+ に出すときは平なところではなく岩場みたいなゴツゴツした足場を再現したらいいかもしれないね(笑)。
それは面白いかもしれませんね。
予測しづらい状況下( 例えば水中であっても )であればあるほど、潜在能力を発揮してくれますし、現場合わせで迅速に撮影できることで、アウトドアでは最適だと思っています。雲台を含めた全長が 60 センチ未満であることから、機内持ち込みしやすいし、軽くベタもできて高さもある、オールマイティーな三脚だと思います。
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4.三脚とは「自分の分身」

最後に、これまで風景写真家として三脚と共に歩んできた林先生にとって三脚とはどういう存在か教えてください。
自分の手となり足となるという事で、自分の分身みたいなものです。ベタで撮る時は自分の手のように、川で撮影する時には補助の足のように、そうやって手足のように三脚を使いこなせる人がいい作品撮りをできると思ってずっとやってきました。ある意味カメラよりも大事なツールかもしれませんね。あと、カメラはデジタルカメラが最盛期ですけど、三脚は完全なアナログで職人の発想がないとできないものなので、ブツとしての価値もあると思います。
本日は長時間の取材にご対応いただきありがとうございました。
取材に応えていただいた、林明輝氏と(株)ワイドトレード・社長上田晃央氏

取材に応えていただいた、林明輝氏と(株)ワイドトレード・社長上田晃央氏

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無題

5.LS-284CLin と LS-284C の仕様比較表

品番 LS-284CLin LS-284C
段数
伸長(mm) 1,495 1,190
全伸長(mm) 1,820 1,505
最低高(㎜) 75 65
収納高(mm) 535 445
重量(kg) 1.22 1.12
耐荷重量(kg) 10 10
税抜希望小売価格 45,000円 42,000円

■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス

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著者について