柴田誠のフォトレポ
上海撮影器材ショー&ブライダルショーレポート
北京のカメラショーに次ぐ、中国の写真&カメラのイベントのひとつ、第17回中国( 上海 )国際撮影器材&デジタル映像展覧会( PHOTO&IMAGING SHANGHAI2015 )が、7月2日( 木 )~5日( 日 )の4日間、上海国際展覧会場で開催された。ブライダルフォトが盛んな中国とあって、第28回中国・上海国際婚紗撮影器材展( CHINA WEDDING EXPO )と2015中国・上海国際児童撮影展覧会( CHINA BABY PHOTO EXPO 2015 )も同時開催されている。そのため、中国全土から来場者が集まる。そんな活気溢れる会場の様子を柴田誠がお届けします。 by 編集部 |
■7月恒例のカメラとブライダルの一大イベント
中国でカメラショーと言えば、4月に北京で開催されるCHINA P&E(通称P&E)がもっともメジャーなショーだが、7月に上海で開催される撮影器材ショーは、それに次ぐ一大イベントの一つ。通称P&I(PHOTO&IMAGING SHANGHAI)と呼ばれ、北京のP&Eと区別されている。 P&Iは、ブライダルショーのCHINA WEDDING EXPO、ファミリー写真のCHINA BABY PHOTO EXPOも同時開催され、エキスポ会場の全ホールを使って展示が行われている。全体の規模で言えば、P&Eよりも大きなイベントと言えるかもしれない。
しかし実際のところ、P&Iは全体の1/10程度。会場は、入場パスが1枚あればすべてのホールに出入りできるので、ブライダルフォトの大イベントの中で、その一角がカメラショー的な器材の展示といった印象だ。 カメラメーカーで出展しているのはキヤノン、ニコン、富士フイルム、ソニーといったところ。
東芝やエプソンのブースもあったが、日本で見かける用品メーカー、レンズメーカーでブースを出しているところはほとんどない。中国の三脚メーカーのベンロやシルイ、台湾のガードフォースなどの出展もなかった。事前に幾つかのメーカーの広報に問い合わせてみると、ブライダルのショーとしてビジネスショーと位置付けていることから、出展の予定がないところが多く、P&Iの日程を知らないというところもあって、関心はかなり薄い。
もっとも、この時期は新製品の発表が一段落しており、ハードメーカーとしては出展に積極的でないのも納得できる。 CHINA P&IとCHINA WEDDING EXPOの会場に入ってまず驚かされるのは、圧倒的な出展社と来場者の多さ。中国全土から押し寄せているであろう混雑ぶりに、改めて国土の広さと人口の多さを思い知らされる。同時に、ブライダルフォトに対する並々ならぬ関心の高さを感じさせられる。 ブライダルフォトのイベントということからなのか、来場者は若い女性やカップル、家族連れも少なくないが、P&Iの会場に限っては一眼レフを手にした中高年の姿が目立つ。目当てはコンパニオンの撮影らしく、モデルやコンパニオンの周りはどこも黒山の人だかり。数年前の日本のカメラショーを思わせる、そんな様子を見る限り、B to Bのビジネスショーという感じはしない。
男女を問わずザックタイプのカメラバックを背負い、高級一眼レフに大口径レンズというのが、基本の撮影スタイルのようで、クリップオンストロボやバッテリーグリップを装着した重装備のユーザーも少なくない。スマートフォンやタブレットで撮影している人も意外と多いが、ミラーレスやコンパクトカメラユーザーはほとんど見かけないというのが特徴的だった。 またP&Iの会場内は、今回は騒音感が多少薄れ、幾つかのブースではセミナーやワークショップも開催されていた。大音響とモデルで集客するこれまでのスタイルから、製品や技術の解説を聞かせるスタイルに変わってきたような印象を受けた。
ブースの壁面では、コンテストの入賞作品の展示なども行われていた。 P&Iの会場とは言え、出展はブライダルフォト、スタジオフォト関連のものが多い。今回、特に目立って多かったのはスタジオ撮影用の大型の照明機材と動画関連のアクセサリー、大判プリンターなどで、カメラバッグや交換レンズはほとんど見かけることがなかった。エプソンやキヤノン、HPが大型プリントをアピールしていたのに加え、ハネーミューレやキャンソンといったインクジェット用紙のブースがあったのも特徴の一つだろう。ファインアートやカラーマネージメントの意識ができつつあるのかもしれない。
■圧倒的な物量展示のCHINA WEDDING EXPO
規模から言えば、CHINA WEDDING EXPOがメインとも言えるだけに、こちらの会場は、見て歩くだけでもとにかく大変。ホールごとに、ウェディングフォト、ドレス、メイク用品、撮影小道具などに分かれて展示されている。撮影用の家具やブライダル用のアクセサリーまであって、まさにウェディングフォトに必要なものが、すべてここで揃う。ウェディング用のアルバムはもちろん、ウェディングドレスからティアラ、ブーケなど、最新のアイテムがその場で購入できるので、そうした商品の購入を目的に来ている人も少なくないようだ。来場者の多くは上海以外からのブライダル関連の業者なのだろうか、大きなビニール袋をいくつも抱えて歩く人をあちこちで見かけることができた。
また、重厚長大が人気の中国だけに、フォトフレームはとにかくデカい。いったいどこに飾るのかと思うような巨大なブライダルフォトのフレームを前に商談している姿をあちこちのブースで見かけることができた。今年のブライダルフォトのトレンドは、フォトに時計を組み込んだデザインのようで、多くのブースで展示されていた。こちらも日本で見掛けるような卓上タイプではなく、壁掛けタイプが主流。一方、アルバムの方はシンプルなデザインが多く、バリエーションもフォトフレームに比べれば圧倒的に少ない。中国でブライダルフォトは、アルバムにするよりも飾って見せるのが主流なのだろう。アルバムだけなら、香港や台湾の方が派手でボリューム感があるように思う。
香港や台湾のブライダルショーで見掛けるような、海外でのブライダルフォトを紹介するブースも少なく、スタジオを紹介するブースが圧倒的に多い。国民的な趣向なのか、技術的なレベルのせいなのか、よくよく見れば、表情やポーズはオーソドックスなものが多く、香港のような洗練された派手さや凝った演出のブライダルフォトはあまり見かけなかった。 ウェディングドレスのホールは、デザインのコピーを防ぐためだろうか、基本的に撮影はNG。他のホールとは雰囲気が大きく違っていて、各ブースは高い壁で仕切られ、外から覗けないようになっているところが多い。ブース内は女性ばかりで、カメラを手にした男性客は明らかに場違いな雰囲気が漂う。また北京のP&E同様、ウェイシンが重要な情報源になっていることから、あちこちのブースの壁面には、QRコードが貼り付けられていた。 ちなみにファッションの最先端を行くのは韓国のようで、ウェディングドレスやメイクアップ用品のホールは、韓国メーカーのブースを多く目にした。
また、インターナショナルなイベントという名目ではあるものの、出展者も来場者もほとんどが中国各地からの人たちなので、英語を話せないスタッフばかりというブースも少なくない。特にCHINA WEDDING EXPOの会場はそういうところが多かった。 CHINA BABY PHOTO EXPOは、その名の通り子供と家族写真のための展示。CHINA WEDDING EXPO同様、衣装や小道具、アルバムやフォトフレームなどが展示されているが、すべて子供向けのもの。ちょっと変わっているのが小道具で、自転車やブランコ、噴水といったものまである。要するに、フォトビジネスになるものなら何でもありといった感じで、商魂逞しいと思うと同時に、少子化の心配など無用の中国の懐の深さを思い知らされた。
■CHINA P&IとCHINA WEDDING EXPOの今後
まだまだ増え続けるであろう中国の人口を考えると、ウェディングフォトの需要がしばらく続くことは間違いない。そういう意味でCHINA WEDDING EXPOは、ますます活況を呈するイベントに成長していくことになりそうだ。
一方カメラショーとしてのCHINA P&Iは、ここ数年の変化を見るとビジネスショーというよりも北京のP&Eに対抗したコンシューマーショー的なイベントという位置付けになりつつあるように思えた。来場者の多くがカメラユーザーで、ステージでセミナーが開催されるなど、日本のCP+、PHOTO NEXTを意識したような変化は、こうした表れの一つなのだろう。とは言え、一部のカメラメーカーしか出展がなく、規模的にはP&Eよりもずっと小さい。どこまで出展社が増えるかが今後の動向を左右しそうだ。カメラメーカーとしては、北京のP&Eだけで広大な国土をカバーできないことはわかっているだろうから、上海のCHINA P&Iをどう位置付けるのかがマーケットのカギになりそうだ。それによって、CHINA P&Iのあり方は大きく様変わりしていくことだろう。来年のCHINA P&IとCHINA WEDDING EXPOは、2016年2月23~26日に上海新国際展覧センターで開催される。