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ハイデフ入門道

第8回 「東芝 HD DVDから撤退へ」は、消費者にとって 吉か 凶か?

2008/02/18
 

2月16日に第一報が入り、2月17日の朝刊では
「東芝 HD DVD撤退へ」というニュースが
一面に掲載されました。

突然、駆けめぐった東芝の撤退報道・・
どういった経緯でそれに至ったのでしょうか?

果たして ブルーレイの一本化で、
次世代DVDはどうなるのでしょう?

>> 新コーナー「地デジ生活 2000GT」
  読んでね。

▼図版0

突然の「東芝 撤退」報道の
なぜ? どうなる?

BDドライブのイメージ
 

■ ブルーレイ・ディスクへの一本化は良いことなの?

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 ●東芝がHD DVDから撤退?

 

早すぎるようで、良いタイミング

「東芝 HD DVD撤退へ」

22月16日に第一報が入り、2月17日の朝刊一面のニュースとして掲載され、業界は揺れました。
その日は近いとは思っていても、このタイミングは「早過ぎるな」と、多くのジャーナリストや専門家たちが思ったはずです。
きっと心のどこかで東芝の抵抗を期待していたのかもしれません。

早すぎるとは言っても、流通にとってこのタイミングで1本化というのは良い時期で、日本市場も年末商戦で次世代DVDプレーヤーが売れ、これから北京オリンピック需要に向けて販促展開していきたい、最新製品を揃えて本腰で拡販だ、という時期です。

映画会社にとってはDVD版の製品売り上げが頭打ちで、ファン層に向けたDVD-BOXの企画も底をついた時期ですから、ファン層にはハイビジョン用のBOXをもう一回買ってもらいたい、というのが本音でしょう。

今の時点では、東芝がHD DVDから撤退すると正式に発表したわけではありません(※2/19に東芝は終息を発表。コラム「東芝のブルーレイ対応レコーダーはいつ?」)し、私も東芝の関係者からそのような話は聞いていないのですが、これだけ大きく報道されたことによるイメージダウンを考えれば、撤退の方向で検討していく確率はきわめて高いことが予想できます。

消費者にとっては早いほど良い

そこで消費者が一番気になることは・・・

「ブルーレイだけになること・・それって私たちにとっていいことなの? 悪いことなの?」

ということですよね。

仮に東芝が撤退することを決定したとして、この時期にその決断をすることは、これから次世代DVD対応レコーダーを購入する消費者にとって良いニュースと言えるでしょう。

HD DVDにしろブルーレイにしろ 1本化の方向に向かうことは、これから買おう、という人は迷わずにすむわけですから、規格争いの決着は早いほど良いのです。

VHS対ベータ戦争の教訓から

 規格争いと言えば、ビデオのときのVHS対ベータを思い出しますが、あのときは規格争いにおよそ10年近く費やし、ベータのユーザが増えてから撤退となったため不利益を被った消費者も数多かったのです。それを考えれば、規格が統一されるまでは「買い控え」る人も確実にいますので、規格争いはできるだけ早期に決着することが市場が大きくなるためには良いこと、といえるでしょう。

 また、これは推測に過ぎませんが、東芝を含めてHD DVD陣営の中にも、大きなDVDやDVDレコーダー市場で時流に乗り遅れないために、じり貧で続けるよりも、ブルーレイ製品の開発や販売に早期に鞍替えしてイメージの回復をはかった方が得策だ、という考えを持つ人もいるはずです。

 しかし一方で、既にHD DVD対応のプレーヤーやレコーダー、ディスク製品を購入したユーザがいますし、マイクロソフトなどのビジネスパートナーとの関係もありますので、すぐに「撤退します」「やめます」なんて、東芝独自で簡単にホイホイと結論を出すことはできないでしょう。こうした要素が絡み合いながら、撤退の検討段階に入っているのが実際ではないでしょうか。

 私たちジャーナリストからみれば、今回の撤退報道は「早過ぎる」という気すらしますが、消費者にとっては早ければ早いほど良いことなのです。

 ちなみに、ベータを振り返ると「ソニーの失敗」とか「ソニーは雪辱を」とかいう表現がよく使われますが、東芝もベータ陣営でした。



 ●米国の映画会社や小売業界が急展開を促進

 

 本当は消費者としては、「HD DVDとブルーレイが規格争いをすることで、安くて良い製品を両陣営が次々と投入していく」ことが期待できたはずだったのです。しかし、2006年に製品発売がスタートして以降も、HD DVDは劣勢ながら規格争いをメリハリなく続け、戦略的な価格での早期の製品投入には踏み切れませんでした。つまり、当初のコンセプトほど、安く早く製品を消費者の期待通りに投入できなかったのです。

ブルーレイはなぜ支持されたのか

 一方、多くのメーカーが積極的に参加するブルーレイ陣営は、当初困難とされていたレコーダーの課題を技術開発や生産技術の改良で着実にクリアしていきました。その結果、HD DVDと同じような価格と扱いやすさで、かつ本来の大容量を活かした高画質なレコーダーのレベルまでたどりついたのです。また、国内では比較的需要の少ないプレイヤーの方では、プレイステーション3で再生できることが安心感に繋がりました。

 ご存じ、HD DVDは今あるDVDの技術や生産方式を活かした規格です。DVDを拡張した延長線上にある規格で、DVDの約3倍の情報が入るように作られたハイビジョン対応のディスクです。開発当初より、その最大の利点は「扱いやすい製品を早く商品化して、安く生産できる」ということでした。容量はDVDの約3倍です。
一方、ブルーレイはハイビジョン用に高画質と大容量を実現するため、DVDにはこだわらずに開発され、DVDと比べると約5倍の情報が記録できるディスクです。容量が大きければ画質もより良くすることができます。しかし、大容量のディスクはキズやホコリに弱く、精度の問題からも生産コストは高くつくのではと、懸念がありました。

 そのため、当初の予想では、開発が早くて価格が安いHD DVD」 に対して 「大容量/高画質のブルーレイ」 がどこまで扱いやすく、開発を早くできるか、が焦点と言われていました。また、ビジネス戦略的には、メーカーや映画会社から多くの賛同を得た陣営が勝つ、とも言われていました。

 ところが、勢力争いに奔走した末も勢力争いでは決着を見ず、規格は二分化したまま販売が始まりました。そうなれば、ビデオのときと同様にある程度の年月をかけ、どちらが良いか消費者が選ぶことで勝敗が決まる、という見方に変わりました。本来なら、映画会社も小売店も売れる規格を作って売る、というのが原則なのですから。

 しかし今回、決着を直接決めたのは消費者というよりは、米国の映画会社や小売り・流通の、「これ以上の買い控えはNO!」という意志表示でした。

映画会社やビデオレンタル、小売り・流通が動いた「買い控えNO!」

 米国の映画会社、大手ビデオレンタル業者、大手流通業者がブルーレイを支持する発表を行ったことによって、大きく情勢が動き、一気に「撤退へ」という報道に加速していきました。時間をかけてはいられない、このままでは買い控えが続く、誰も決められないのなら私たちが決める、とばかりに関連の業界が大なたを振るった、のです。

 去年までブルーレイとHD DVDの両方の製品を出していた映画配給会社の大手のワーナーブラザースが、1月4日に今後はブルーレイ対応製品だけにすると表明しました。ワーナーの発表によって、映画会社の大手6社あるうちの4社がブルーレイ製品を支持し、シェアとしては約70%がブルーレイ陣営が占めることになります。また、米国のビデオレンタルの最大手の会社や、販売店の大手ウォルマートも陳列をブルーレイ製品だけに絞ることを相次いで発表した結果、ブルーレイ勝利の機運が一気に高まったのです。

 映画会社や小売り・流通が規格争いに嫌気し、ビジネスチャンスを失う前に、優勢な方で勝敗を決めようという意思表示をしたと言われています。


 ●高まるハイビジョンへのニーズ

 

ハイビジョン製品のニーズは急速に高まっていく

 私は、スタジオグラフィックスでこのコーナーを執筆したり、書籍や連載で次世代DVDの動向を書いたりしているものの、実際には日本国内ではまだ、一般のユーザの多くは、DVDを買ったりレンタルして観るけれど、「HD DVDやブルーレイは観たことがない」「どっちを選ぶ? なんて言われてもまだ意識すらしていない」というのが実情だと思っています。永ちゃんのCMじゃないですが、それと同様「え? このDVD、ハイビジョンじゃなかったの?」って感じでしょう。

 しかし、地デジや大画面液晶テレビが売れた影響で、ハイビジョン映像の良さを感じる消費者は着々と増えているので、その結果としてハイビジョンのディスクに購買意欲がうつりはじめているのも事実です。
 それを現すのが去年の年末商戦の統計です。
DVDレコーダー市場は頭打ちですが、それでも売れたDVDレコーダーの約20%がHD DVDやブルーレイ、すなわち次世代DVD対応だったことにも現れています。今後も、販売台数の構成比で2008年は40%、2009年は70%に達すると予想する関係者もいます。どうせなら次世代DVD対応レコーダーが欲しい、と多くの人が思うでしょう。

 また、今年はオリンピックイヤーですから、買う方も売る方も意識しているに違いありません。

 しかし、2つの規格が争っている状態なら、多くの消費者が買い控えます。VHSとベータ戦争で苦い経験をした人ならなおさらです。DVDレコーダーも、映画などのDVDタイトルも販売実績は頭打ち…このまま買い控えを見過ごしておくわけにはいかない、さっさと決めよう、という市場の考えが、一気に表面化したのです。

ブルーレイ(HDD)レコーダー市場で、安くて良い製品争いを期待

 というわけで、ブルーレイへ1本化が確定したとしても、ハイビジョン用ディスク対応レコーダーをこれから買おう、と思っている人にとっては朗報、その時期は早ければ早いほど良いでしょう。映画をハイビジョンで見たいと思ったときに迷うことなくブルーレイを買えば良いわけですし、レンタルビデオ店もハイビジョンの映画を並べやすくなったわけです。意外と早くブルーレイディスクのタイトルがいつものレンタル店に陳列されはじめるかもしれません。

 しかし、前述した通り、HD DVDを支持して購入したユーザがいるわけですから、撤退することになったとしてもユーザに対するケアやサポートは、こういう事態だからこそ、東芝はしっかりやらないといけないのです。慎重かつ、しっかりやってくれることを期待しています。また、ブルーレイ支持になったとしても、大手メーカーの重要な一角であり、ファン層の厚い東芝なら、これからのブルーレイ(HDD)レコーダー競争に参加し勝負できると、1ユーザーとしては信じています。

>> 続きは「東芝 HD DVD「終息」発表!! 東芝のブルーレイレコーダー発売はいつ?
  (2008/02/19)

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