■早すぎるようで、良いタイミング
「東芝 HD DVD撤退へ」
22月16日に第一報が入り、2月17日の朝刊一面のニュースとして掲載され、業界は揺れました。
その日は近いとは思っていても、このタイミングは「早過ぎるな」と、多くのジャーナリストや専門家たちが思ったはずです。
きっと心のどこかで東芝の抵抗を期待していたのかもしれません。
早すぎるとは言っても、流通にとってこのタイミングで1本化というのは良い時期で、日本市場も年末商戦で次世代DVDプレーヤーが売れ、これから北京オリンピック需要に向けて販促展開していきたい、最新製品を揃えて本腰で拡販だ、という時期です。
映画会社にとってはDVD版の製品売り上げが頭打ちで、ファン層に向けたDVD-BOXの企画も底をついた時期ですから、ファン層にはハイビジョン用のBOXをもう一回買ってもらいたい、というのが本音でしょう。
今の時点では、東芝がHD DVDから撤退すると正式に発表したわけではありません(※2/19に東芝は終息を発表。コラム「東芝のブルーレイ対応レコーダーはいつ?」)し、私も東芝の関係者からそのような話は聞いていないのですが、これだけ大きく報道されたことによるイメージダウンを考えれば、撤退の方向で検討していく確率はきわめて高いことが予想できます。
■消費者にとっては早いほど良い
そこで消費者が一番気になることは・・・
「ブルーレイだけになること・・それって私たちにとっていいことなの? 悪いことなの?」
ということですよね。
仮に東芝が撤退することを決定したとして、この時期にその決断をすることは、これから次世代DVD対応レコーダーを購入する消費者にとって良いニュースと言えるでしょう。
HD DVDにしろブルーレイにしろ 1本化の方向に向かうことは、これから買おう、という人は迷わずにすむわけですから、規格争いの決着は早いほど良いのです。
■VHS対ベータ戦争の教訓から
規格争いと言えば、ビデオのときのVHS対ベータを思い出しますが、あのときは規格争いにおよそ10年近く費やし、ベータのユーザが増えてから撤退となったため不利益を被った消費者も数多かったのです。それを考えれば、規格が統一されるまでは「買い控え」る人も確実にいますので、規格争いはできるだけ早期に決着することが市場が大きくなるためには良いこと、といえるでしょう。
また、これは推測に過ぎませんが、東芝を含めてHD DVD陣営の中にも、大きなDVDやDVDレコーダー市場で時流に乗り遅れないために、じり貧で続けるよりも、ブルーレイ製品の開発や販売に早期に鞍替えしてイメージの回復をはかった方が得策だ、という考えを持つ人もいるはずです。
しかし一方で、既にHD DVD対応のプレーヤーやレコーダー、ディスク製品を購入したユーザがいますし、マイクロソフトなどのビジネスパートナーとの関係もありますので、すぐに「撤退します」「やめます」なんて、東芝独自で簡単にホイホイと結論を出すことはできないでしょう。こうした要素が絡み合いながら、撤退の検討段階に入っているのが実際ではないでしょうか。
私たちジャーナリストからみれば、今回の撤退報道は「早過ぎる」という気すらしますが、消費者にとっては早ければ早いほど良いことなのです。
ちなみに、ベータを振り返ると「ソニーの失敗」とか「ソニーは雪辱を」とかいう表現がよく使われますが、東芝もベータ陣営でした。
|