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スタグラ・特集記事
「ブルーレイ か HD DVD か」を今こそ考えてみる
第三部 東芝に聞く 「HD DVDの技術とその魅力」 2007/09/12
 


HD DVDは当初、DVDと同様に保護層0.6mmの開発からスタートしました。勿論、それと並行してブルーレイと同様の保護層0.1mmの研究も行っていました。

しかし、保護層0.1mmの精密の世界では高品質を維持/実現するのに技術的な課題が多かったことや高コストへの懸念から、DVDと共通の0.6mmで大容量メディアを開発することを決意したのです。HD DVDではなく、まだ「AOD」と呼ばれていた頃の話しです。

Reported by 神崎洋治
HD DVD VARDIA RD-A600
HD DVDの特長は「HD DVDプロモーショングループ(ジャンプすると音が出ます)」のホームページで解りやすい説明が聞ける。HD DVDは次世代スタンダードになれるか? 東芝に聞く。
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  HD DVDの開発と生産はローコスト このページのトップへ  

HD DVDはブルーレイほど容量は大きくできませんでした。しかし、生産ライン技術をほぼ共通化できたり、ドライブ構造もコストダウンが望めるなど、普及している既存メディアである「DVDとの親和性」を強調してきました。その点を中心に、株式会社東芝 HD DVD事業統括部 副統括部長 佐藤裕治氏にお話を聞きました。
佐藤氏は「図解HD DVDハンドブック」を監修している方でもあります。(取材 2007年7月)

Panasonic Blu-rayドライブ
  HD DVD事業統括部 副統括部長 佐藤裕治氏
「HD DVDの生産量が少ないのでコスト効果がまだ現れていないのが現状」

Q: HD DVDの最大の特徴はDVDとの親和性…その結果、メディア単価やドライブが安く開発、生産できるという目論みがあったと思いますが、現時点の製品(レコーダやメディアの価格)にはそれが予定通りには現れていないようです。

東芝 佐藤氏
「いろいろな取材でお答えしてきましたが、HD DVDとDVDはほとんど同じ生産ラインで製造できるというメリットがあります。例えば、DVD-ROMの生産ラインは世界で3000台くらいあると言われていますが、少し改良しただけでHD DVDが作れるラインに変えられます。実際HD DVD-ROMでは低コストでの生産が実現されています。しかし、HD DVDの生産ラインは作られてまだまもなく、生産量も少ないのでその効果が現れていないのが現状だと思っています。HD DVDディスクの生産数が増えてくると間違いなく効果が現れると思います」

Q: DVDとの共通点はドライブ開発にも利点を生みますか?

東芝 佐藤氏
「トライブ開発の優位点で一番のポイントは対物レンズです。対物レンズの開発で重要なのは、ディスクの保護層の厚さです。CDが1.2mm、DVDは0.6mmですが、DVDを開発したとき、CDとDVDの差0.6mmの両対応は実に大変でした。HD DVDはDVDと共通の0.6mmなので、今回のレンズ開発はそのときと比べて難しくはなかった。BDは0.1mmなので、BDの0.1mmとDVDの0.6mmの互換性は可能かもしれないが、CDの1.2mmまで互換性を維持するのはかなり大変なことです」

Q: ドライブの生産にも利点はありますか?

東芝 佐藤氏「もちろんです。ドライブ生産が本格化すればコストの比重は次第に光ヘッドにかかってきます。光ヘッドの生産で何が大変かと言えば最終的には対物レンズです。コストの比重がかかる対物レンズが安くできるのは重要なことです。ドライブでもメディアでも、BDだってたくさん作れば当然安くなるとは思います。ただ、BDが安くなる仕組みができるなら、HD DVDはもっと安くなるはずです。差は確実にありますので、そう確信しています」

 

  より大容量化を3層で提案 このページのトップへ  

Panasonic Blu-rayドライブ
 

「HD DVD-ROMについては三層構造にすることで、BDの容量に近いもの、あるいは超える物を出したい」

HD DVDはDVDフォーラムで策定している規格だけあって、DVDとの連携色が濃い。例えば、ツインフォーマットディスク。ツインフォーマットディスクは4.7GBのDVD-ROM層と記録容量15GBのHD DVD-ROM層を貼り合わせた1枚のディスクで、映像作品などですでに採用され、販売されている。通常、ツインフォーマットディスクの映像作品の場合、DVDプレイヤーやドライブに入れたときにはDVD-ROM層を再生し、HD DVDプレイヤーやドライブに入れたときにはハイビジョン映像のHD DVD-ROM層を再生する、という仕組みになっている。
また、HD DVD-ROMのひとつとして「3хDVD-ROM(HD DVD9)」という規格もある。これは、現行のDVD-ROMディスクに、HD DVD-Video映像やアプリケーションを収録する少し変わった規格 。

Q: DVDとの互換性という点では「3хDVD-ROM(HD DVD9)」という規格もありますね。

東芝 佐藤氏
「最初は、DVDのラインのままで生産できる3層DVD-ROMでHD DVDコンテンツを作るニーズもあるかな、と思って規格化しました。現在は、HD DVDの生産ラインが増えてきているため、HD DVDにより注力がされています。」

Q: ROMだけでなく記録型のツインフォーマットディスクは考えていますか?

東芝 佐藤氏
「理論的には考えられますが、現時点で具体化については、未定です。」

Q: BDと比較して、HD DVDは容量不足では? ユーザは地デジ放送を2時間録画したいと思うのではないでしょうか?

東芝 佐藤氏
「大容量化は今後もずっと進めていく課題です。まだ東芝の研究フェーズでの話として聞いていただきたいのですが、HD DVD-ROMについては三層構造にすることで、BDの容量に近いもの、あるいは超える物を出したいと考え、現在51GB容量のディスクをDVDフォーラムに提案しています。記録型についても同様で、もっと容量を大きくするために、HD DVD-RAM片面20GBのものを二層構造にする研究を進めています」


  ステップバイステップでより良い製品を実現していく このページのトップへ  

Panasonic Blu-rayドライブ

Q: HD DVD-RAMの話が出たので、記録型について詳しく聞きたいと思います。DVDのときは、DVD-RAMはパソコンの外部記憶装置として最適、DVD-RWはDVD-ROM互換の書き込みに適したメディアとして規格化されたと思います。HD DVDにもRAMとRWがありますが、どのような違いがありますか?

東芝 佐藤氏
「RWはグルーブ方式、RAMはランドグループ方式を採用しています。グルーブ方式は例えば、蚊取り線香のようにデータを書いていきますが、ランドグループ方式は蚊取り線香をふたつずらして合わせたように2列でデータを書き込むことができ、グルーブ方式と比べて、1.5〜2倍程度も記録密度が高くとれるのが特長です」

Q: なぜ、書き込み方式が違う2つの方式が必要なのですか?

東芝 佐藤氏
「RWは一層15GBに対してランドグルーブ方式のRAMは20GBです。しかし、ランドグルーブ方式は二層化が実現しにくい…一番の理想は高密度なランドグルーブ方式の二層がすぐに用意できれば…つまり二層で40GBのディスクを提供することができるのですが、そうもいきません。そこで、最初はグルーブ方式の一層15GBを製品化し(RW)、次がグルーブ方式の二層で30GB(RW)、近い将来、二層のランドグループで40GB(RAM)とステップアップしていく可能性が高いのではないでしょうか。技術の進歩を待って商品化するわけにもいかないので、その時々の最新技術を順を追って採用していくべきだと思っています。また、光ディスクの技術の進化を考えると、記録密度を上げるランドグルーブ方式の技術は今後も使っていった方がいいと個人的には思っています」

Q: 東芝の新製品「RD-A300」「RD-A600」には、HD DVD-RWの書き込み機能が実装されませんでした。その理由はなんですか?

Panasonic Blu-rayドライブ

東芝 佐藤氏
「規格が決まってからその規格を反映した製品が市場に出るまでには、通常1年くらいかかると思います。RWの規格化の反映が新製品には間に合いませんでした。ステップ・バイ・ステップで製品に反映していこうと思っています」

Q: パソコン用記録型HD DVDドライブ製品がなかなか出ないのも同じ理由ですか。

東芝 佐藤氏
「そうです。RWを反映した製品が少しでも早く出せるように…頑張っていますのでもう少しお待ちください」

Q: 最後に、HD DVDがハイビジョンの記録メディアとして最適な理由や読者へのメッセージをお願いします。

東芝 佐藤氏
「HD DVDは再生ディスクの中でビットコスト(容量当たりのコスト)が一番安いメディアだと思っています。雑誌などの印刷物を含めても30GBのHD DVD-ROMが一番安いメディアでしょう。安価なメディアにHD(ハイビジョン)の高品質映像を入れて、みなさんに観ていただきたい、と思っています」

ありがとうございました。
HD DVDに対する期待と不安を取材で質問させていただきましたが、HD DVDの状況を理解し、情報を整理することができました。

筆者から、まとめ
さて、読者の皆さん、取材中は少し専門用語も飛び交ってしまい、技術にそれほど関心のない方には難しかったかもしれません。取材を終えた後の所感も、第一部でまとめたように「大容量のブルーレイ」「ローコストのHD DVD(これから劇的に安くなるはず)」というポイントは変わりませんでした。また、多数の家電メーカーが商品化しているブルーレイ陣営に対して、東芝が孤軍奮闘のHD DVD、という印象もまた身近に感じました。
次世代DVDメディアを決める戦いははじまったばかり。もちろん決めるのは消費者ひとりひとりの声です。
ハイビジョン時代にふさわしい光ディスクに求めて!!

全3回 了

「ブルーレイ か HD DVD か」を今こそ考えてみる
>> 第一部 比較してみよう、ブルーレイとHD DVD
>> 第二部 ソニーに聞く 「ブルーレイの技術とその魅力」
>> 第三部 東芝に聞く 「HD DVDの技術とその魅力」

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初出:2007/09/12
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