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スタグラ・特集記事
「ブルーレイ か HD DVD か」を今こそ考えてみる
第二部 ソニーに聞く 「ブルーレイの技術とその魅力」 2007/09/05
 


DVDの次にやって来る光メディアとして、ブルーレイとHD DVD…どっちがいいのでしょうか?

ブルーレイディスクは、波長の短い青紫色レーザーと高性能レンズを使い、ディスク1枚にDVD約5枚分の大容量データを高密度に記録します。ソニーの『BDZ-V9』は500GBのHDDを内蔵、地上デジタル放送をハイビジョン画質で約61時間も録画できます。今回は、ブルーレイ開発を牽引してきたメーカーのひとつ「ソニー」にブルーレイの技術と魅力を聞いてみました。

Reported by 神崎洋治
HD DVD VARDIA RD-A600
ブルーレイ規格に本格的に対応したSONY『HDD搭載 ブルーレイディスクレコーダー BDZ-V9』。500GBハードディスク、地上・BS・110度CSデジタル放送対応チューナ2基、ホームサーバー機能などを搭載した自信作だ。

WEB連載
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  すべては、より大容量のために このページのトップへ  

ソニーは昨年12月にデジタルハイビジョンチューナー内蔵 HDD搭載ブルーレイディスクレコーダー『BDZ-V9』を投入。現在のブルーレイ規格に準拠した自信作です。ブルーレイ規格に取り組んできたソニーに取材を依頼し、技術面とマーケティング面であれこれ聞きたいところをぶつけてみたところ、ソニー株式会社 テレビ・ビデオ事業本部 ビデオ事業部門 機構システム設計部エレクトリカルマネジャー 駒崎隆裕氏と、ホームAVマーケティング部 ホームビデオMK課 マーケティングマネージャー 中村芳彦氏が応対してくれました。
(取材は2007年7月)

Panasonic Blu-rayドライブ
  機構システム設計部エレクトリカルマネジャー 駒崎隆裕氏
「ハイビジョン放送をきちんと受けられる大容量のものを作ろうということで」

Q: ブルーレイの開発経緯やコンセプトを教えてください。

ソニー駒崎氏
「テレビ放送がハイビジョンの時代になるので、ハイビジョン放送をきちんと受けられる(保存できる)ものを作ろうということで、単純にとにかく大容量記録ができるメディアを目指して規格、開発されました」

ブルーレイのスタート地点にCDやDVDの延長という考えはなかったようです。DVDやCDで培ったノウハウを生かした上で、ハイビジョン時代に最適なメディアを作ろう、というものです。ディスクの保護層の厚さが「0.1mm」(DVDは0.6mm)という精細で精密な(あえて開発が困難な)世界を選んだのは、すべては大容量のためだったのです(編集部)。

Q: 情報を記録/読み出しする際の変調方式についてですが、DVDでは8-16変調が採用されたが、ブルーレイは1-7変調が採用されました。この理由は?

ソニー駒崎氏
「DVDの8-16変調よりも、符号効率の良い(データがいっぱい入る)1-7変調の方が大容量のデータを保存するという点では有利です。高密度のためには符号効率の高い技術が優先され、それもまた大容量のため・・です」

次世代DVDはDVDと比べてデータを書き込む点が小さい。次世代DVDとDVDの容量の違いを解りやすく表現すると、太字のペンで情報を書くDVDに対して、次世代DVDは細字で細かくびっしりと書く感じ。そのため、同じ面積のディスクでも大容量の情報が書き込めるわけです。また、デジタルデータは符号化されて書き込まれているが、それも効率よくコンパクトに凝縮されているので、実質の情報量は更に増えているのです。


 

  ブルーレイ はキズや汚れに弱い… は過去のこと このページのトップへ  

Panasonic Blu-rayドライブ
 

マーケティングマネージャー 中村芳彦氏
「BDのディスクはキズが付きにくく、拭き取りやすい…それは実感していただけると思います」

ところで、ブルーレイはHD DVDより細かくびっしりと書く仕組みを採用して大容量化を実現していますが、それがいくつかの課題も生み出したのも事実です。例えば、細かくびっしりと書いたところにキズや汚れが付けば読み取りには致命的となります。しかし、その課題を最新技術で乗り越えました。

Q: 開発当初、BDは汚れやキズに弱いのがネック、と言われていましたが、ディスクの改良によって克服したと言われていますが・・

ソニー駒崎氏
「はい。これはメディアメーカさんの努力が大きいのですが、DVDにもあった"超硬"の技術を発展させたものが採用されています。コストも下げられました」

Q: ユーザーの使用範囲内で、DVDと比べてブルーレイは汚れに強くなったと言えますか?

ソニー駒崎氏
「必ずしも強くなったとは言いきれませんが、"指紋"に対しては強くなったと言えると思います。まず、DVDより密度が高く小さなレーザービームになったため、指紋の合間をぬって信号が読めるようになっています。DVDだと大きな脂汚れの塊だったものが、BDでは指紋の線の汚れで見えると言いますか・・」

Q: なるほど。ディスク表面のハードコートの影響は?

ソニー駒崎氏
「指紋や鼻の脂をはじくので、脂がついていても丸く(球状)なっていれば、隙間から読み取りやすく、わずかでもエラー補正ができる状態なら、読み取れる確率が上がります」

ソニー中村氏
「DVDだと抜き取ると指紋が拡がったり、キズになったりするケースが多かったのですが、BDはキズになりにくく拭き取りやすい、使えばすぐに感じていただける点だと思います」



  ブルーレイお薦めのポイントは「安心感」 このページのトップへ  

Panasonic Blu-rayドライブ
Panasonic Blu-rayドライブ

Q: BD-AVの映像フォーマットには、ハイビジョン放送と同様の MPEG-2 に対応していますね。「HD DVDは容量が小さい分、高圧縮率のMPEG-4 H.264/AVCなどをサポートすることでリカバーしている、だからBDに大容量の優位性はない」と言うアナリストも中にはいます。

ソニー駒崎氏
「それは違います。光ディスクはあくまでデータの入れ物ですので、データをどのように書くのかがポイントです。DVDでもハンディカムにH.264やDVAVCの形式で映像を記録できる製品もあるように、どのような圧縮方法に対応するかは後で決められることなんです。BDがMPEG-4 H.264/AVCなど高圧縮率のものに対応できない理由はありませんので、今後ユーザの方の意見やニーズを見ながら決めていけばいいことだと思っています」

Q: ハイビジョン放送をそのまま2時間以上、録画できるので、あえて別の圧縮形式のものに対応する必要は今のところない、という見解ですね。

ソニー駒崎氏
「そうですね。BDはハイビジョンをダイレクトに受ける(直接そのままのサイズで保存する)というのが根本のコンセプトにありますので、それを実現するための大容量と圧縮形式に対応しています。今後どのよう圧縮形式に対応していくかはわかりません」

Q: DVDのときは、記録型ディスクの規格が乱立してユーザを悩ませました。同じカタチのメディアにもかかわらず、DVD-Rで書いたものが読めない、DVD-RWとDVD-RAMは似ていても全く違うもの、など、ユーザは互換性や規格の違いを少し勉強しなくてはなりませんでした。BDではこのような混乱の防止がなされていますか?

ソニー駒崎氏
「BDは、DVDのときのような規格の枝葉のようなものはなく、ひとつの流れで進んでいますので、ユーザにとって解りにくさはありません。CDやDVDは、はじめにROMありきで、記録型のDVD-R、次はDVD-RWが登場し、いろいろ作っていく段階で規格争いが出てしまい、ユーザが混乱する結果を招きました。しかし、BDの場合は記録型のREが最初です。それを大元にして規格は一度で決めてしまいましょう、と摺り合わせしました。だからメディアの規格には統一感があると思います」

ソニー中村氏
「BDにファイナライズがない、というのもそれに関連しているんでしょうね・・DVDでは、ROMがさきにあったので、ROMに合わせるために記録ディスクにも最後にファイナライズという作業が必要でした。ユーザはそれに戸惑ったと思いますが、BDにはファイナライズはありません」

ソニー駒崎氏
「そうですね。いらないものはとってしまえと」

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  「青色レーザーは究極の光ディスク技術。ブルーレイは長期間(主流として)使っていただけるメディアになると思います」

Q: BDとDVDが記録できるコンビネーションROMディスク(ハイブリッドディスク)はどう思いますか?

ソニー駒崎氏
「技術的な話は置いておいて、同じ映画作品をDVDとBDの両方買うよりは、DVDとBDで両方入っているハイブリッドディスクは必要だろうと思います。その規格も決まっています。しかし、記録メディアについては少し見解が異なります。ハイブリットにするとコストが高くなるので、記録型DVDとBDを別々に買った方が安いし、記録も安定しています。それなのにあえてハイブリッドを使いたいという声が多いのであれば対応していく必要はあるでしょう。でも、需要があるかどうかは疑問ですね。記録型ハイブリットはまだ規格化されていません」

記録型においては、DVDでも二層ディスク1枚より、一層ディスク2枚に記録した方が安定しているし安い、という見方をする人もいるようです(編集部)。

Q: 二層の話が出たので一層と二層のレイヤーの位置関係についてお伺いしたいのですが、DVDは手前が一層で奥に二層目があります。そして手前の一層から書き始めますが、BDは逆で奥に一層があり、二層目は手前に配置されています。それはなぜですか?

ソニー駒崎氏
「比較的、奥の層の方が読み書きの動作が安定しています。DVDは手前が基本で奥に二層目を追加して用意しましたが、BDは奥が基本の一層で、二層目は手前に用意するカタチを取っています。0.1mmの位置に1枚(一層)を貼る、その上にもう1枚(二層目)を貼る、という感ですね。DVDに合わせようとか、DVDとは変更したいとかという話はなかったと思います」

Q: 最後にマーケティング的な質問をいくつか。BDとHD DVDのどちらが優勢なのか、を調べると、Wikipediaなど、多くのウェブサイトではBDが圧倒的に優位、と書いています。その手応えは感じていますか?

ソニー中村氏
「(第二世代は)1号機の『BDZ-V9』等が発売されたばかり、まだはじまったところです。実際のところ、次世代DVDプレイヤーを購入した方の数はDVDプレイヤーのわずか1%程度だと思っています。ですから手応えはまだありません。しかし、購入してくれた方はオピニオンリーダの方々であり、単なる1%ではなく非常に価値ある、重い1%だと受け止めています」

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  「BDはたくさんのメーカーが関わり、積極的に製品展開しています」

Q: これだけの差が付いている理由はなんでしょうか?

ソニー中村氏
「答えにくい質問ですね(笑)。報道されているフォーマット戦争(HD DVD対BD)のような意識はありませんので…。あえていうなら、BDは当社をはじめとしてたくさんの家電メーカやコンテンツメーカさんから発売や発表がなされ、お客様には主流感が伝わっているから、かもしれません」

Q: 最後に、次世代DVDとしてBDが最適な理由や、読者の方に対してひと言ずついただけますか?

ソニー駒崎氏
「技術者の立場から言わしていただければ、BDは長い期間安心して使っていただける安心感のあるメディアだと思います。DVDは発売された当時から"次は青色レーザーだ"という先の技術がありましたが、青色レーザーは高精細、高密度を実現する光学ディスクとしては究極の(最後の)技術です。青より短い波長は紫外線ですが光ディスクでは実現できません。その意味で、BDで録っておけば安心、長い期間使っていただけるメディアです」

ソニー中村氏
「同じく"安心感"を推したいです(笑)。BDを支持し、積極的に活動している家電メーカやコンテンツ・メーカが多いことはユーザの方にもおわかりいただけていると思います。それに今年ヒットした映画タイトルの代表に・・例えば「スパイダーマン3」や「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」がありますが、これらのシリーズをハイビジョンで見られるのはBDしかありません。この影響大きいと思います。また、BDは容量が大きいので、その利点をコンテンツメーカさんがフルに利用していただければ、音も映像も高品質の作品が作れると思います。音声でも、DVDは無圧縮のリニアPCMは2chまででしたが、BDは7.1chまで対応します。実際、無圧縮のリニアPCM5.1chに対応した作品がすでに発売されていて、聴いていただければすぐに従来の5.1chとの違いの大きさを感じていただけると思います。それらの点に期待してBDを買っていただきたいと思っています」

ありがとうございました。
今回は開発メーカーに直接、話が聞けて、ブルーレイディスク製品がより身近に感じられるようになりました。

 

次回は、東芝に聞く「HD DVDの技術とその魅力」

お楽しみに!!

「ブルーレイ か HD DVD か」を今こそ考えてみる
>> 第一部 比較してみよう、ブルーレイとHD DVD
>> 第二部 ソニーに聞く 「ブルーレイの技術とその魅力」
>> 第三部 東芝に聞く 「HD DVDの技術とその魅力」

体系的に学ぶ次世代DVDのしくみ

体系的に学ぶ 次世代DVDのしくみ
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初出:2007/09/05
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