山添太の模型撮影のススメ ~ 第3回 模型撮影のための撮影環境を整えよう
Photo & Text:山添太
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こんにちは、山添 太です。さまざまな事情でおうち時間が増えている中でも大手を振ってカメラ趣味を楽しめてしまう「模型撮影のススメ」。前回は模型撮影におけるカメラのセッティング方法を中心に解説しました。今回は被写体のセッティングについて。模型撮影を行なうにあたって、どういった撮影環境がベターなのかをご紹介。一般的な物撮り撮影と共通する内容がほとんどですが、模型撮影で陥りがちなシチュエーションについてもじっくり解説していきます。後半は、私が個人的にオススメする模型についてお届け。最後までぜひご覧ください!
Index
1.なるべく避けたほうが良い、模型撮影シチュエーション
模型に限らず一般的な物撮りにもいえることですが、基本的には被写体を邪魔する要素は限りなく省いたほうが良いです。特に模型は実物の縮尺モデルなので、身の回りの小物類はもちろん、普段の生活ではあまり気にならないレベルのゴミやホコリが映り込むだけでも見映えに多く影響してきます。ここで挙げる2つの例は模型写真でよく見かけるものですが、メインの被写体に影響を及ぼすシチュエーション。もちろんそれが意図して作り出したものであるならその限りではありません。
1-1.製作現場で撮る写真
以前は SNS などでもよく見られたカッターマットの上で撮影するというもの。完成直後であることを発信する写真としては良いと思いますが、模型をしっかり見せる写真としては微妙。使い込まれたカッティングマットは結構汚れていて見映えも良くないですし、実物の工具が一緒に映るとスケール感が引っ張られておもちゃっぽく見えてしまいます。
1-2.お部屋の壁紙で1枚
無駄な要素は排除され、製作現場での写真に比べるとかなりスッキリした印象です。ただ、小さい被写体に寄った分、壁や机の模様が大きく写ってスケール感が少々ちぐはぐに見えます。寄った物撮りではなく少し引いたお部屋の状況写真にし、インテリアの一部として模型を写り込ませたものならカッコいい写真になりそうです。
2.背景紙を使って模型が際立つ撮影環境へ整えよう
被写体以外の余計なものを排除した撮影環境を作るには、背景紙を用意するのが手っ取り早いです。画角に収まるなら画用紙やコピー用紙などでも OK。ただし、色付きのものは被写体への色かぶりが懸念されるのでなるべくなら白、黒、グレーといった色味の無いものがオススメです。
2-1.地明かり撮影なら露出に左右されにくいグレーを推奨
背景は敷くだけでなくキレイに写すことも重要。白であれば白く、黒であれば黒く写したいところですが、それにはそれ用のライティングやセットを組まないと、露出をグレーに合わせるカメラの特性上、被写体の露出にも影響が出てしまいます。グレーであれば、地明かりのみでも被写体・背景紙ともに適正露出を取りやすいです。ホワイトバランスの調整もしやすいという利点もあります。
3.実はとてもむずかしい屋外撮影
模型専門誌や SNS でも見かける屋外での模型写真はまるで実写のようで、非常に魅力的です。撮影環境を作る必要はなく、自然光のおかげで被写体もキレイに写ってくれるので、一見お手軽な感じもします。が、やってみるとかなりハードルが高いです。まず、雨の日には撮影ができないなど天候に左右されます。雨だけでなく風が強い日も難しいですね。模型はプラスチックなのであっという間に飛ばされてしまいます。電線、フェンス、民家、柵、自動車、人…注意深く観察すると邪魔なモノがかなり多いことにも気付かされます。でも、数ある悪条件をクリアできれば、屋内セッティングでは真似できないような模型写真が撮れるのも確か。幸いトライするハードルは低いので、トライ&エラーを重ねて、ベストな屋外撮影方法を模索してみてはいかがでしょうか。
4.オマケ:本日のオススメ模型「ハセガワ 1/24 いすゞ 117クーペ」
ハセガワから 2021 年 12 月にリリースされたばかりのいすゞの名車「 117クーペ 」です。カメラファンの間でもおなじみのジョルジット・ジウジアーロが手掛けた車としてもおなじみ。完全新金型キットなのでパーツの合いは良く、実車再現が細かいので、組み上がった時の満足感は高いでしょう。ちなみに「 完全新金型 」というのは、新たに金型を作り起こした最新の模型ということ。一部のパーツがそうで、大部分は数十年前のキットという商品は多数存在するのでご注意ください。基本的には新しいキットのほうが作りやすいですよ。
5.次回予告
次回は模型撮影ライティングについてお届けしていきます!
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山添太