スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

柴田誠のフォトレポ
アート溢れる香港の週末

Posted On 2015 4月 01
Comment: Off

00

TOPIX

香港芸術節/Hong Kong Art Festivalが開催された3月の香港の街は、アートに溢れていた。アートフェアや写真展、ローカルのアートイベントなど、写真に関連したさまざまなアートを堪能した香港の週末をご紹介しよう。

 

■2つのアートフェアをハシゴする

2月27日(金)〜3月29日(日)まで「第43回 香港芸術節」(Hong Kong Art Festival)が開催されていた香港。芸術節というだけあって、演劇や音楽会、ダンスなど、多彩なアートイベントが各地の劇場やホール、イベント会場で開催された。さらに3月14〜16日には「Art Central」が、15〜17日には世界規模のアートフェア「Art Basel Hong Kong」が開催され、両展が開かれた週末は、まさに街中がアートで溢れかえった。

セントラルにある香港大会堂。劇場やホールで香港芸術節のイベントが連日開催されていた。

セントラルにある香港大会堂。香港芸術節のイベントが連日開催されていた。

香港島のハーバーフロント、文化広場に特設されたArt Centralの会場。

香港島のハーバーフロント、文化広場に特設されたArt Centralの会場。

Art Centralは、香港島のハーバーフロントに特設された会場に国内外の70を超えるギャラリーが集ったアートフェア。入場料は大人200香港ドル(約3,000円)と安くはないものの、連日多くの人で賑わい、今年初めての開催ながら約3万人の来場者を集めた。子供たちを対象にしたキッズプログラムをはじめ、主要なブースを巡るツアープログラム、トークイベントなどが開催されるなど、アートに対して親しみを持ってもらえるようなイベントが数多く用意されていた。来場者はローカルの若い女性や家族連れが多いという印象で、会場内でベビーカーを見かけることも珍しくなかった。一方で、大陸や欧米からの観光客は、それほど多くはなかったようだ。展示されている作品は現代アートがメインだが、写真のギャラリーも多く出展された。またカフェやレストラン、バーなども併設されていて、1日中楽しめる。週末をゆったりと過ごすには最適なアートフェアだ。

多くの来場者で賑わっていたArt Central会場。思った以上に写真作品が多かった。

多くの来場者で賑わっていたArt Central会場。思った以上に写真作品が多かった。

会場内のアートを子供たちに解説するキッズプログラムも人気を集めていた。

会場内のアートを子供たちに解説するキッズプログラムも人気を集めていた。

 

来場者は若い女性や家族連れが多かったが、日本の作家の作品は少なかった。

来場者は若い女性や家族連れが多かったが、日本の作家の作品は少なかった。

 

Art Central の会場からは、Art Basel Hong Kongが開催されている香港コンベンション&エキシビションセンターまでシャトルバスが運行されていた。ふたつの会場は、地下鉄でわずか1駅だが、どちらも沿岸部にあるため、駅から15分ほど歩かなくてはいけない。ただでさえ会場内を歩き回ることになるので、シャトルバスはありがたい存在だ。海岸沿いにできたばかりの道を抜けて5分ほどで、Art Basel Hong Kongの会場に到着することができた。

Art Basel Hong Kongは、スイスのバーゼル(6月)、アメリカのマイアミ・ビーチ(12月)、香港の3カ所で開催されている世界規模のアートフェア。香港での開催は今年で2回目だが、中国資本を背景にして、アートマーケットを牽引しているフェアのひとつでもある。香港コンベンション&エキシビションセンターの2フロアに230を超えるギャラリーが出展、規模だけを見ればCP+の倍以上のイベントだ。ちなみに、プレスセンターでは顔写真入りのプレスバッジを作成してくれて、プレスリリースは英語、中国語(簡体字、繁体字)のほか、日本語と韓国語のものもしっかり用意されていた。

会場は、広いこともあってArt Centralよりもゆったりと落ち着いた雰囲気が感じられる。来場者は6万人ほどで、その多くが欧米人と上流階級の香港人といった印象が強く、小さな子供連れの姿はあまり見かけない。もっとも、一般の入場料がウィークデイチケット250香港ドル(約3,750円)、3デイチケット650香港ドル(約9,750円)と安くはないので、ちょっと覗きに行くという感じではない。

2フロアに展示されていたArt Basel Hong Kongのアート作品はとにかく大きい。

2フロアに展示されていたArt Basel Hong Kongのアート作品はとにかく大きい。

会場内は撮影が自由。思い思いにカメラを向けて撮影をしている姿が見られた。

会場内は撮影が自由。思い思いにカメラを向けて撮影をしている姿が見られた。

会場の各所に巨大なオブジェが展示されているのがArt Basel Hong Kongの特徴で、テントや自動車、焼却炉などを使ったオブジェも展示されていた。Art Centralもそうだが、展示作品はすべて販売を目的にしているもので、値段が付けられている。価格表示は、香港ドル、米ドル、ユーロなどが併記されているのが多かった。また会場内は基本的に撮影が自由。カメラだけでなくスマートフォンやタブレットで、気に入った作品を撮影したり、作品と一緒に“自撮り”をする姿があちこちで見かけられた。会場がとにかく広いので、全部を見ようと思ったら、朝から気合を入れて行く必要がある。ただし、写真を扱うギャラリーはそれほど多くはない。書画や彫刻、コンテンポラリーアートが多いので、写真愛好家にとってはやや物足りないイベントかもしれない。

モダンな作品が多く、床や壁面を使った展示も数多く見られた。

モダンな作品が多く、床や壁面を使った展示も数多く見られた。

 

■ローカルイベントのほうが盛り上がってる?

Art Basel Hong Kongが開催されている香港コンベンション&エキシビションセンターでは、ウェディングフェアも開催されていた。規模は小さいとはいえ、こちらはローカル向けに年に数回開催されている人気イベントのひとつ。当然のことながら、来場者は結婚を間近に控えたような若いカップルが多く、アートフェアとはまったく違ったカジュアルな雰囲気に包まれている。入場料は20香港ドル(約300円)と手頃な値段だ。同フェアは、香港のブライダルビジネスを凝縮したような催しで、ブライダルフォト関連のブースがフロアの半分以上を占める。あとの半分は宝飾品やドレス、披露宴を扱うホテルやレストランといったブース。またチケット売り場では会場で使えるクーポン券も販売されていて、引き出物用のケーキやアクセサリーなどが安く購入することができるから、それを目当てに来ている人もいたりする。

香港のブライダルフォトは、日本では見かけないアーティステックなアルバムを作るのが定番のスタイル。最近では海外でロケをして、映画のワンシーンのようなブライダルフォトを撮るのが人気となっていて、海外旅行と撮影、アルバム制作がパッケージになっているものもある。ドレスや行き先なども選ぶことができるということもあって、どこのブースも席が埋まっているような状態だ。香港の一般的な生活を垣間見ることができるのも、こうしたローカルのイベントを訪れる楽しみのひとつ。アジアのブライダルフォトに興味がある人は一度訪れてみるといいだろう。

ブライダルフェアの会場内。来場者も出展社も若い人が多く、カジュアルな雰囲気。

ブライダルフェアの会場内。来場者も出展社も若い人が多く、カジュアルな雰囲気。

映画のポスターのようなブライダルフォトを撮るのが香港スタイル。

映画のポスターのようなブライダルフォトを撮るのが香港スタイル。

香港島の東岸、柴湾では香港のプロ写真家集団 Hong Kong Institute of Professional Photographers が主催するフォトイベント「柴湾日」が3月14〜15日に開催された。会場は倉庫街の一角にある古ぼけたビル。中にはスタジオや写真家のオフィスが入っていて、そうしたスペースを利用してカメラのタッチ&トライやセミナー、ワークショップなどが終日行なわれていた。入場無料というのもあってか、不便な場所ではあるものの来場者は思いのほか多く、エレベーターホールには入場待ちの列ができるほど。来場者はカメラを携えた男性が多く、質問をする姿があちこちで見られるなど、どのフロアも熱気に包まれていた。

フォトイベント柴湾日が開催されていた柴湾のビルは、写真家の事務所やスタジオが入っている。

柴湾日が開催されていた柴湾のビルは、写真家の事務所やスタジオが入っている。

エレベーターホールに掲げられていたフォトイベント柴湾日のポスター。

エレベーターホールに掲げられていたフォトイベント柴湾日のポスター。

セットが組まれ、撮影を解説するワークショップが行われていたスタジオ。

セットが組まれ、撮影を解説するワークショップが行われていたスタジオ。

ハッセルブラッドのシューティングを紹介するスタジオ。

ハッセルブラッドのシューティングを紹介するスタジオ。

ソニー製品を紹介する部屋では、カメラとレンズのタッチ&トライができた。

ソニー製品を紹介する部屋では、カメラとレンズのタッチ&トライができた。

超満員のカラーマネージメントを紹介する部屋。もはやモニターが見えない。

超満員のカラーマネージメントを紹介する部屋。もはやモニターが見えない。

会場内には香港のプロ写真家集団HKIPPの作品も数多く展示されていた。

会場内には香港のプロ写真家集団HKIPPの作品も数多く展示されていた。

ビルに入っていたYY9 Galleryでは100人の作家を紹介する10周年記念展が開催されていた。

ビル内のYY9 Galleryでは100人の作家を紹介する10周年記念展が開催されていた。


九龍サイドでは、植田正治写真展「幻影」が觀塘のギャラリー The Salt Yardで開催されていた。こちらも自動車の修理工場などが立ち並ぶ倉庫街のビルの一角にあり、ビルの入口を探すのにもひと苦労するようなところ。しかし、ギャラリー内にはままざまな写真集も置かれており、来場者が途切れることはなかった。

また、石硤尾にあるJCCAC 藝術村の地下ギャラリー(L0 藝廊)では、香港の写真家・高志強氏の写真展「不/離」が、ギャラリー光影作坊(L2-10)では「Nancy Sheung’s Portraits of Hong Kong Women in the 1960s」が開催されていた。この藝術村は、香港競馬会(香港ジョッキークラブ)が運営しており、香港の芸術家の拠点なっている場所のひとつ。競馬会が藝術を支援するというのは、イギリス統治の名残のようで、いかにも香港らしい。

植田正治写真展「幻影」が開催されていた The Salt Yard

植田正治写真展「幻影」が開催されていた The Salt Yard

高志強写真展「不/離」はJCCAC 藝術村の地下ギャラリー(L0 藝廊)で開催。

高志強写真展「不/離」はJCCAC 藝術村の地下ギャラリー(L0 藝廊)で開催。

ギャラリー光影作坊で開催されていた「Nancy Sheung's Portraits of Hong Kong Women in the 1960s」。

ギャラリー光影作坊で開催されていた「Nancy Sheung’s Portraits of Hong Kong Women in the 1960s」。

トラムの駅で見かけたHKDIギャラリーで開催中の「Japanese Poster Artists」展のポスター。

トラムの駅で見かけたHKDIギャラリーで開催中の「Japanese Poster Artists」展のポスター。

香港芸術センターは1日無料開放されていた。

香港芸術センターは1日無料開放されていた。

毎月発行されているART MAPを手に入れて最新のアート情報を手に入れよう。

毎月発行されているART MAPを手に入れて最新のアート情報を手に入れよう。

ほかにも香港アートセンターでは3月14日(土)が無料開放とされ、15日(日)からはフォトブックフェアが開催された。また、アートに関連してサザビーズのオークションもその週末に開催されるなど、様々な場所でさまざまなかたちのアートイベントが開催されていた。まさにアート溢れる週末といったところだ。こうした情報は、香港政府観光局のサイトで入手することができるほか、観光案内所やチケットセンター、劇場などには、アートスポットと展覧会をまとめたART MAPが配布されている。とても1日では廻り切れるものではないが、会期が長いイベントも多いので、香港を訪れる際の参考にするといいだろう。

 

著者について
1964 年生まれ。2012 年春に 24 年間勤務した出版社を退社し、フリーのフォトジャーナリストとなる。その後、香港に個人事務所 CYBER DRAGON HKG LIMITED( 數碼龍珠( 香港 )有限公司 )を立ち上げ、フォトキナをはじめとする国内外のカメライベント、写真フェアなどを中心に取材活動を行い、香港をベースにして国内や海外のカメラ雑誌や ウェブマガジンに執筆している。ちなみに日本在住。出版社在籍中には、カメラ誌の製品担当者で組織する「 カメラ記者クラブ 」にも通算 16 年間在籍。編集者時代に培った幅広い人脈と豊富な経験を活かした活動をするとともに、「 日本の写真文化を海外へプロジェクト 」を主宰。業界の活性化と後進の指導にも積極的に取り組んでいる。中国のカメラ雑誌「 撮影之友 」の編集顧問も務める。日本写真家協会( JPS )会員、日本写真協会( PSJ )会員、日本香港協会( JHKS )会員。