柴田誠のフォトレポ
~ アジアのカメラショーレポート
< ソウル編 >
TOPIX
アジアのカメラショーを精力的に回る柴田誠が2015年4月16日(木)~19日( 日 )の4日間、ソウルのコンベンション&エキシビションセンターCOEXで開催されたソウルの撮影機材ショーPHOTO&IMAGING2015を取材した。日本のCP+から約2ヶ月遅れで開催される大規模なカメラショーということで注目されているイベント。日本とは雰囲気の違いはあるものの、連日活気に溢れる会場レポートを柴田誠がお届けします。 by 編集部 |
■ 騒音もなくゴミも落ちてないきれいな会場
ソウルの撮影機材ショーPHOTO&IMAGING( 通称P & I )は、コンシューマー向けの大規模なカメラショーとして、アジアの中でも注目されているものの一つ。今年で24回目を数える。ソウルではもう一つ、Korea International Broadcast & Audio Equipment Show( 通称 KOBA )という映像関係のビジネスショーが5月下旬に開催されているが、こちらは放送機材やオーディオ機器などのプロ向けの映像機材ショーだ。
実は、P&Iを訪れるのは今回が初めて。北京のカメラショーChina P&Iが同時期に開催されているというのが大きな理由で、ここ数年の取材は、中国市場の変化に注目してきたこともあって、北京を優先してきた。しかし、韓国のカメラショーの様子を全く知らないというのもマズイという思いも以前からあって、今年は両方のショーをはしごすることにした(アジア圏内とは言え、両方を取材するのはけっこうハードなのだが…)。会場のCOEXは、巨大なショッピングモールに隣接している。アクセスがいいということもあって、初日の早い時間から多くの来場者で溢れていた。来場者の多くは若い男性で、3~4人のグループが多いように感じる。手にしているカメラは上級機、大口径レンズや望遠ズームが目立つ。年配の男性の中には、ライカを手にしている人も見かけることができた。ミラーレスのシェアが日本並みという先入観があったので、女性の来場者の比率もそれなりに高いのだろうと勝手に思っていたのだが、それほど多くはない。女性の来場者は、男性のお供で来ているか、一人で見て廻るという人が多いようで、カメラよりもアクセサリーに興味があるようだった。
男性来場者のお目当ては、各ブースのコンパニオンやステージのモデル。どのブースにもスタイルのいい長髪のコリアン美人が笑顔で佇んでいて、それを取り囲むようにレンズの砲列が並んでいる。撮影機材を見に来ているというよりも撮影をしに来ている人の方が多いといった印象で、タッチ&トライコーナーはガラガラというブースも少なくなかった。出展社側もそれは分かっているらしく、ステージは主に撮影用で、セミナーやワークショップを見かけることはほとんどなかった。
出展メーカーは120社ほど。日本でよく見かけるカメラメーカーや現地の代理店、販売店などが、比較的大きなブースを構えている。ただし、どこのブースもこぢんまりとした印象で、一見すると来場者で溢れて活気があるようには見えるが、よくよく見るとコンパニオンの周りだけというところも。もっとも、会場のホールもPHOTO NEXTの半分程度と、それほど広いわけではない。 特筆すべきは、サムスンのブースがなかったこと。サムスンは、ギャラクシーカメラをワールドワイドで展開しているが( 日本を除く )、韓国を代表する企業のブースが、韓国のカメラショーに出展していないというのは、正直驚きだった。
■ 会場の約半分は作品展示と観光地の紹介
会場では展示品の即売も行われており、インクジェット用紙や三脚、カメラバッグなどのアクセサリーは値段が付けられて展示されていた。カメラメーカーのブースの一角にも販売コーナーが設けられており、気に入ったものはその場で購入が可能となっている。各ブースの品揃えはどこも豊富で、インクジェット用紙に関してはかなり選択肢が広い。
ただし、ファインアートプリントがどの程度浸透しているのかは疑問だ。と言うのは、韓国でインクジェットプリンタを購入する際には、外付けのインクタンクが加工されるのが一般的だそうで、サードーパーティ製のインクが使われることが多いのだという。A3+サイズのインクジェットプリンタを店頭で見かけることも少なく、複合機が主流だ。色再現にこだわると言うよりも、まだまだ撮影を楽しむ層が多いということらしい。
PHOTO&IMAGING2015はA、Bの2つのホールにまたがって開催されているが、奥のBホールはガラリと印象が異なる。こちらは、国内外の名所を紹介するPhoto & Travel、お苗場のように自分たち作品を個人やギャラリーが出展して展示を紹介するKOREA PHOTO FESTIVAL&SEOUL PHOTOの会場。Italian Film & Art Festivalの作品展示も行われていたが、機材を展示するブースはほとんどなく、来場者もグッと少なくなる。作品を鑑賞するのには良い環境だが、温度差がありすぎる。もう少し、一体感があっても良いのではと感じたのも事実だ。会場全体は、大きな音を出しているブースがないこともあって、かなり静かな印象。しかもゴミひとつ落ちていない。韓国のお国柄を感じるとともに、この後訪れる北京のカメラショーを思うと、ちょっと憂鬱な気分になった。
■カメラ店が意外に多いソウルの街
初めてのソウルということもあって、PHOTO&IMAGING2015の会場とホテルの往復だけで終わってしまうのは少々もったいないと思い、街のカメラ店を探してみることにした。 ソウルで家電製品を扱う店が多く入っているのが、江辺( カンビョン )駅に隣接するテクノマートというビル。携帯電話やパソコン、家電製品などを扱う小さな店が集まっており、2フロアほどにカメラ専門店が集中している。店の作りは日本のデパートのようで、店ごとに仕切る壁がなく、フロアを見渡せるようになっているのが特徴だ。どの店もショーケースを並べ、その上に三脚にカメラを載せて並べてある。そのカメラをよく見ると、最新のモデルではなく、懐かしいフィルムカメラが多い。古いカメラを並べてあるのは、歴史のある店だということをアピールするためなのだと言う。
また、南大門市場の近くにもカメラ店が集中しているほか、最近は、龍山( ヨンサン )駅近くに龍山電子商街にも多くの家電店が集まっている。しかし、カメラやレンズは最新機種を手にすることができるが、三脚やカメラバッグなどのアクセサリーを見かけることはあまりなかった。ちなみに、この辺りのショップは観光客相手ではないため、ほとんど日本語が通じないと思ったほうがいい。韓国語か英語での交渉になることは覚悟しておこう。
ソウルは地下鉄網が充実しており、地下街も多い。駅の案内板には日本語表記もあり、思っていたほど移動に苦労することがなかった。地下街を歩いていると中古カメラ屋やレコード店があるのを見かけたが、どちらかというと骨董屋の延長のようなもので、ショーウィンドウの中で埃をかぶっていたりする。ちなみに韓国と北朝鮮は、停戦中ということになっているため( つまり、いつ戦闘状態になっても不思議ではない )、地下街や地下鉄は有事の際には防空壕になるらしい。駅のホームには、当たり前のように防毒マスクが備え付けられてある。アジアのもう一つの顔を見たような気がした。