柴田誠のフォトレポ
~ アジアのカメラショーレポート
< ホーチミン 編 >
TOPIX
2015年5月7日(金)〜9日(日)の3日間、ベトナム・ホーチミンシティのサイゴンエキシビション&コンベンション&エキシビションセンター(SECC)で開催されたVietnam Int’l Photo & Imaging 2015。今年で4回目、発展途上で活気のあるベトナムのカメラショーの様子をお伝えしよう。 by 編集部 |
■ キヤノンとニコンの出展でカメラショーらしさアップ
まだ経済的には展途上とは言え、若者の人口が多く、収入も少しずつ増えつつある東南アジア。チャイナリスクの回避を図り、中国から東南アジアに生産拠点を移転させているところも少なくないなど、様々な分野で、生産地としても消費地としても注目を集めているのが東南アジアだ。その中で、日本ともつながりの深い国のひとつがベトナム。
そんなベトナムのカメラショーVietnam Int’l Photo & Imaging (VIPI)を訪れるのは、昨年に続いて2度目となる。会場の規模はそれほど大きくなく、出展企業も少ないものの、来場者の若さと活気ある会場の雰囲気が印象的だったことを記憶している。今年はどう変わったのか、それを見るのが楽しみでもあった。
VIPIの会場は、ホーチミン市郊外のサイゴンエキシビション&コンベンション&エキシビションセンター(SECC)。バイクで溢れかえる市街地から車で15分ほど南に走った辺りで、街並みがきれいに整備された新興の住宅地、7区と呼ばれる地区にある。近くには外車のショールムやショッピングモールなどもあって、この辺りの雰囲気は、旧市街地とはまるで違う。
雨季前のこの時期のベトナムは、とにかく暑い。日なたを歩いているだけで汗が噴き出してくる。SECCに入るとその涼しさにほっと一息つけるという感じだ。受付を済ませ、会場に入るとニコンとキヤノンの見慣れたロゴが目に飛び込んできた。 昨年はキヤノンとサムスンが入り口近くに大きなブースを構えていたが、今年はサムスンの姿が見当たらない。サムスンは、韓国のカメラショーにも出展していなかったのだから、海外のイベントに出展する余裕などないのかもしれない。
ニコンは今年初参加。しかしよく見ると、それなりのスペースを確保してあるものの、ブースを構えているわけではない。ステージとその前に椅子が並べられてあるだけのセミナー形式のスペースだ。ステージ脇には、ニッコールクラブを紹介するカウンターが設けられていた。
他の出展メーカーもそうだが、ブースを作り込んでいるところはほとんどない。出展料で精一杯なのか、商品を並べることを最優先しているといった印象だ。 多くの来場者を集めていたキヤノンのブースも中央にステージが設けられ、モデルがカメラを持って登場したり、写真家やスタッフによるトークショーが開催されていた。 キヤノンブースの隣にはソニーが出展していたが、こちらはムービー機材がメインで、カメラ機材の展示はなかった。他に大きなブースを構えていたのは、ドローンとフォトブックを紹介するブース。さらにベトナムの写真協会のような存在のvnphoto.net(http://www.vnphoto.net/)。結局カメラメーカーの出展は2つだけで、あとはローカルの販売店のブースだ。
■ まだまだ発展しそうな期待があちこちに感じられる
ステージイベントをメインにしているニコンには迷惑な話だが、会場には時折、大音響が鳴り響く。と言うのも、VIPIのイベントスポンサーにヤマハのロゴが出ているように、バイクや音響機器なども展示されている。ヤマハは会場中央に大きなブースを構え、大型の液晶モニターにPVを流していた。バイクが疾走するシーンのBGMが、会話ができなくなるほどデカイのだ。
アクセサリーを展示しているブースは、基本的に販売コーナーとなっている。カメラバッグや三脚、アダプター、フィルターなど、各種揃ってはいる。ただし、サイズや種類は少なく、基本的に展示してある1点ものだけで、その商品がなくなったら終わりという感じだ。それだけに掘り出し物がありそうな気配がプンプンしている。どこのブースも常に混雑している状態だ。
SECCのホールは東京ビッグサイトの1ホール程度の広さしかないが、実はVIPIの会場はその半分程度。あとの半分は、LEDライトやディスプレイ用の照明機材ショーになっている。まだまだホール全体をカメラ機材だけでは埋められないというのが、この国のカメラ事情の実態でもある。
大きなブースではなかったが、データカラー社のブースが出ていたのにはちょっと驚いた。まだまだ撮ることが楽しく、カラーマネージメントまでは気が回らないユーザーが多そうな気がするが、今後の発展を見込んでのことなのだろうか。しかし、関心を持っている来場者は少なくないようで、ブースを訪れる人が途切れることはなく、興味深げに説明を聞いている人も多かった。
また、その隣にはベトナム唯一の写真雑誌 Trangden Photography Magazineの出版社がブースを構えていた。Trangden Photography Magazineは、アート志向の雑誌で、ローカルのカメラユーザーにとっては、ややハードルの高い内容となっている。ただ、こうした雑誌が存在することは、今後の写真文化の発展に期待が持てる。
また今回、二つの会場を仕切る位置にセミナールームが設けられていた。まだ充分に活用されていないようだったが、いずれここで様々なセミナーやワークショップが開催されるようになるに違いない。来年もまた楽しみだ。
■ ベトナムのカメラ事情
ホーチミンには、家電量販店がいくつかあって、週末は多くのお客さんで賑わう。カメラもそういった店で購入することができるが、携帯電話やテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった白物家電がメインなので、置いてある機種も非常に限られている。しかも一眼レフは高価なため、ショーケースの中に展示されていることが多い。ちなみに家電は、日本製品も置いてあるものの価格の安いLGやサムスンの人気が高いということのようだ。 市街地には、カメラ店が数多く点在しており、中古カメラ店も多い。ただし中古カメラは骨董品レベルのフィルムカメラで、埃をかぶって山積みされた状態。程度は決して良いとは言えない。金額的にもそれほど安いとは言えない額なので、ちょっと買う気にはなれなかった。
カメラ店が特に集中している地域は、ホーチミンのランドマークタワー、ビテクスコ フィナンシャルタワーの周辺。ただしこの辺りのショップは、ゲーム機やオーディオ機器、ホームビデオなどと一緒に展示していることが多く、三脚やカメラバッグなどのアクセサリーを置いているところはほとんどなかった。
ネットで検索してみると、郊外にいくつかカメラ店がありそうなので足を伸ばしてみた。ネット販売がメインなのか、大きな看板を掲げているショップはほとんどない。洋品店と兼業だったり、ビルの上階にあったりと、探すのに苦労するようなショップが多い。 また、自宅のガレージを改装したようなショップもある。住宅地にあって、普段はシャッターが閉められているため、小さな看板を見つけられないとカメラ店には見えない。また自宅のためか、在庫はほとんどなく、三脚やカメラバッグも1点ものだったりする。
社会主義国ということもあるのだろうか、気に入ったものを手に入れるのには、まだまだ苦労する国なのだ。とは言え、経済発展の著しいベトナム。1年経つと街の様子も経済状況も大きく変化する。活気溢れる街には、海外からの旅行客も多く見かけるし、あちこちでビル建設も行われていた。来年のカメラショーは、今年以上に充実したものになることを期待したい。