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礒村浩一の探せ!デジカメ・ギア 第13回
 Godox WITSTRO AD180/AD360

Posted On 2015 3月 30
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TOPIX

デジタルカメラを使いこなすための、あったら便利、使うと楽しい、そんなアイテム「 デジカメ・ギア 」を紹介していく礒村浩一の探せ!デジカメ・ギア。パワフルでポータブルなフラッシュ、「 Godox WITSTRO AD180/AD360 」をご紹介。豊富なアクセサリと組み合わせることでどんな画が撮れるのかを、新しくオープンしたケンコー・トキナーのレンタルスタジオにて写真家・礒村浩一氏が徹底的に使い倒し、レビューします。 by 編集部

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■ 豊富なライティングアイテムと場所を選ばない機動性が頼もしい
充電式大光量クリップオンストロボ

写真1

WITSTRO AD180(左)と AD360(右)。付属のリフレクターを装着した状態での照射角は 28mm レンズの画角をカバーする。発光部は上 90° ~ 下マイナス 15°、水平 270° 回転させてバウンス撮影が可能

写真2

WITSTRO には外部電源のリチウム充電池バッテリーパック PB960 を接続して使う。フル充電で AD360 で最大 450 回( AD180 は最大 900 回 )の発光が可能

ここ最近ストロボを使用したライティング撮影がとても人気だ。以前はストロボといえばカメラの上に取り付けたクリップオンストロボで被写体を正面から直射するか、せいぜい天井に発光部を向けて反射させたバウンス光で撮影する程度が一般的であったが、最近ではカメラからストロボを取り外して、離れた位置で発光させるオフカメラライティング撮影をする人も増えてきた。それに伴いストロボと組み合わせて使うライティングアイテムの種類もとても豊富になってきている。ただライティングアイテムを使って光を拡散させると、被写体に届く光量が下がってしまうために光量不足になってしまったり、その光量を補うためにフル出力で発光させる必要があり、結果、充電時間が長くなってテンポ良く撮影できないといった悩みもでてくる。とは言え、大出力の大型ストロボを個人で用意するのはコスト的にも、また持ち運びにもなかなかハードルが高い。そこで今回はクリップオンストロボとあまり変わらぬサイズでありながら、より大きな光量を得る事ができる「 Godox WITSTRO AD180/AD360 」を紹介しよう。

「 Godox WITSTRO AD180/AD360 」は大光量でのフラッシュ撮影ができる充電式クリップオンタイプのストロボだ。発光部を備えた本体と、外部電源のリチウム充電池バッテリーパックを組み合わせて使う。光量は一般的なクリップオンストロボよりも大きい 180W/s の AD180 と 360W/s の AD360 の二種類がラインナップされている。

写真3

標準のリフレクターを取り外すと、大型ストロボで採用する発光管とおなじ構造のガラスの発光管が姿を表す。発光管は抜き挿しができるので、破損した場合や劣化による色味の変化が起こったときは、ユーザー自身で新品の発光管に交換できる

写真4

WITSTRO AD360 のコントロールパネル。WITSTRO AD180/AD360 はマニュアル調光にのみ対応。FULL ~ 1/128( 1/3 ステップ )で調光できる。TTL オート調光には対応していない。スレーブモード S1/S2( プレ発光を無視し本発光にシンクロ )、RPT モード( マルチフラッシュモード )を搭載。充電完了を音で知らせるブザーも用意されている( ON/OFF 可能 )。また MF ボタンを押す事でカメラの AF を補助するフォーカスアシストビームが点灯する

写真5

カメラのアクセサリーシューに装着してのシンクロ発光撮影も可能。ただしカメラとの情報通信はなされないので調光は WITSTRO 側で手動で調整する

写真6

リチウム充電池 PB960 の上面にはパワーパックからの給電 ON/OFF ボタンがある。電源 ON にするとインジケーターにより電池残量が表示される。給電ソケットは2個。それぞれに別の WITSTRO を接続することで同時に2台の WITSTRO が使える。なお、パワーパックと WITSTRO の接続/取り外しのときは必ずパワーパックの電源を OFF にすること

写真7

別売りアクセサリーの PB-Y アダプターを使えば、パワーパックの2個の給電ソケットから1台の WITSTRO へ給電できる。これにより充電時間が短縮できる

写真8

パワーパック PB960 は下部のバッテリーモジュールが取りはずせる。複数のバッテリーモジュールを用意しておけば、長時間の撮影における電池容量の低下や連続発光時にバッテリーパックが発熱しても、充電済みのバッテリーモジュールに交換して撮影を続行できる

写真9

WITSTRO をスタンドに取付け、カメラから離してライティング。カメラとストロボの各シンクロターミナルをシンクロケーブルで接続してシャッターとストロボを同調させる

写真10

WITSTRO の発光量はマニュアルで調整する。撮影前にストロボ光も測れる露出計で光量を調整しておくと適正な露出を素早く得られる。露出計は太陽光などの明かるさも測れるので、屋外でのポートレート撮影などにもオススメだ

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Godox WITSTRO AD360
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Godox WITSTRO AD180/AD360

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■ 豊富で本格的なライティングアイテム

WITSTRO には本格的なライティングを実現できる豊富なアイテムが用意されている。付属のリフレクターに取付けるグリッドやカラーフィルターの他に、別売のリフレクターなどに付け替えることで光の質を変化させることも簡単にできる。リフレクターの脱着もマウントのロックリングを緩めるだけとシンプルだ。このセクションでは、WITSTRO の各種アイテムと、そのアイテムを使った作例を紹介していこう。

※ 注意
以降の写真で、作例実画像の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。

写真11 リフレクター+専用ディフューザー <作例実画像

付属のリフレクター+専用ディフューザー。直射光なので光は硬く影も濃いが、カメラにストロボを取付けて真正面から発光した時のような嫌な肌の照かりは無い。色温度の偏りもなく太陽光に近い色味だ。専用ディフューザーは WITSTRO に同梱

写真12 リフレクター+ハニカムグリッド <作例実画像

付属のリフレクターに専用グリッドを装着。ハニカム状の格子にフラッシュ光を通すことで、光が必要以上に広がらないようにする効果がある。人物の胸元に光が収束されているのが判る

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写真13 リフレクター+カラーフィルター <作例実画像

付属のリフレクターに取付けるカラーフィルター。赤、青、黄、緑の4色がある。専用グリッドとのセット品。強烈なカラー効果を生む

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写真14 ディスクリフレクター <作例実画像

ディスクリフレクター。フラッシュ光をいったん中心部のディスクで反射させ、さらに大きなシルバーのディスクで反射させることで光源をより大きくできる。ビューティーディッシュとも呼ばれ、人物撮影では顔の影を和らげることで肌の肌理やシワを目立たなくする効果もある

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写真15 ディスクリフレクター+ハニカムグリッド <作例実画像

ディスクリフレクターに付属のグリッドを装着。ディスクリフレクターの効果を残しつつハニカム状の格子で光を収束させる

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写真16 スヌート

スヌート。フラッシュ光をより収束させることでスポット光の効果を生む。スヌート内の反射率が異なるシルバーとブラックの二種類がある

写真17 シルバースヌート <作例実画像

シルバースヌート。内面がシルバーなのでフラッシュ光が収束して強いスポット光となる

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写真18 ブラックスヌート <作例実画像

ブラックスヌート。内面がブラックでかつ乱反射を起こす構造なのでフラッシュ光が吸収拡散され弱めのスポット光となる

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写真19 八角形ソフトボックス

八角形のソフトボックス。内面はシルバーで表面の白い布製ディフューザーは取り外し可能

写真20 ソフトボックス+ディフューザー <作例実画像

ソフトボックス+ディフューザー。ソフトボックス内で反射拡散されたフラッシュ光がディフューザーを透過することでさらに拡散し柔らかい光となる。面光源となるので人物撮影や物撮りのメインライトとして使用することも多い

写真21 ソフトボックス( ディフューザーなし ) <作例実画像

ソフトボックス( ディフューザーなし )。ボックス内で反射拡散されたフラッシュ光をダイレクトに被写体にあてる。ディスクリフレクターに似た効果が出せるが、さらに大きな光源となるため光が回りやすい

写真22 ソフトボックス+ディフューザー+グリッド <作例実画像

ソフトボックス+ディフューザーの効果を残しつつグリッドで光を収束させて、光の中心部から外縁に向けてグラデーションを作る。ディスクリフレクター+グリッドよりは柔らかい光

写真23 アンブレラ

ストロボ光を反射する 94cm の大きなアンブレラ( 傘 )。WITSTRO に固定するステイが付属したアンブレラリフレクターを併用する。反射した光は柔らかくなり被写体を均一に照らす。白い布製なので光の一部は透過する

写真24 アンブレラ( バウンス ) <作例実画像

フラッシュ光はアンブレラで反射し大きく拡散されるので、柔らかな光となり影も薄まる。人物の全身や広い範囲の空間を均一に照らすのに最適。ストロボライティングの基本ともいえる

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写真25 アンブレラ( ディフューズ ) <作例実画像

アンプレラ越しに透過させたフラッシュ光を被写体に当てることで、柔らかい光と芯のある光を同時に作り上げる。メリハリの効いたライティングとなる

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写真26 ダイレクト( リフレクター無し ) <作例実画像

リフレクターを外して発光管のみの状態でフラッシュ光をダイレクトに被写体にあてる。強く硬い光で影もくっきりと出る。肌のハイライトもギラギラとなり夏の太陽の直射日光のようなライティングとなる。大型ストロボと同じ構造を持つ発光管を使用している WITSTRO ならではのライティングだ

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■ 応用ライティング( 多灯ライティング )

WITSTRO には他のフラッシュ光に同調する光スレーブ機構が搭載されている。これによって複数の WITSTRO やクリップオンストロボ、大型ストロボと組み合わせた多灯ライティングもできる。また TTL オート調光機能のついたストロボと組み合わせる際には、プレ発光を無視し本発光に同調する S2 スレーブモードを使うことで対応できる。

写真27 アンブレラ1灯とグリッド+リフレクター1灯 <作例実画像

フロントからアンプレラを装着した WITSTRO で人物をライティング。そこにもう1台の、専用グリッド+標準リフレクターを装着した WITSTRO を、人物の斜め後ろから人物の頭を照らすように配置した。これにより髪のエッジがハイライトとなり立体感のあるライティングとなった

写真28 アンブレラ1灯とブラックスヌート1灯 <作例実画像

アンブレラを装着した WITSTRO をフロントに配置して人物をライティングしたうえで、もう1台の WITSTRO にはブラックスヌートを装着して背景紙にめがけ強めに発光。これにより背景紙から起こる照り返しが、面光源の強い逆光となり撮影するカメラのレンズ内にフレアを発生。それを活かしてふわりとしたイメージの画像を生み出すことができた

写真29 アンブレラ1灯とカラーフィルター1灯 <作例実画像

アンブレラを装着した WITSTRO をフロントに配置して人物をライティングしたうえで、もう1台の WITSTRO に赤フィルターを装着して、フラッシュ光を人物左後ろの背景紙に当てた。フロントライトの光が背景に回らないように大きなレフ板などで余分な光をカットするのが色を出すコツ

写真30 ソフトボックス1灯とディスクリフレクター+グリッド1灯 <作例実画像

ソフトボックスを着けた WITSTRO AD360 を階段に腰掛けた人物のフロントから当て、ディスクリフレクター+グリッドを装着した WITSTRO AD180 をポールで吊り下げトップライトとし、人物と壁の両方に光を当てる。オフィスビルの地下へとつながる階段での撮影なので、AC 電源を確保しにくく撮影をするには難しい場所だが、バッテリーで駆動する WITSTRO ならば場所を選ばずに撮影できる

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■ 場所を選ばずに本格ライティングを実現

写真31 

0.5 ~ 1.6m まで伸縮する手持ち用4段式ポールに WITSTRO を装着。WITSTRO AD360 には 1/4 カメラネジ穴が付いた交換用底座が付属しており、ホットシュー付き底座と交換することで、直接ポールや三脚の雲台に取付けられる。WITSTRO AD180 は付属スタンドの 1/4 カメラネジ穴を利用して取付ける

WITSTRO の最大の強みは大光量ストロボにもかかわらず、電源を充電したバッテリーパックから得られることだ。これにより屋内であろうが屋外であろうがどこでも撮影ができる。筆者も出力 500W/s のモノブロックストロボを撮影に使っているが、AC 電源を必要とするため屋外での使用は制約があり難しい。最近ではバッテリーで駆動するモノブロックストロボや外部電源を使用するハンディストロボも登場しているが、連続発光回数が少なかったり本体サイズや質量が持ち歩くにはちょっと大きいなと思うものもある。

WITSTRO にはオート調光機能は搭載されていないが、TTL オート調光を搭載したストロボであっても、自分の場合はオフカメラライティング撮影ではマニュアルで光量を調整することの方が多い。自動的に光量を調光してくれるオート調光は便利だが、いったんライティングセットを組み上げてしまえば、そのセットでの撮影中は発光量を固定してしまうのでオート調光の必要はない。

WITSTRO は実勢価格がバッテリーパック付きの AD360 キットで7万円台、AD180 キットで6万円台と手にしやすいのも現実的だ。それでいて大型ストロボと同様のライティングアイテムが豊富に用意されているので本格的なライティング撮影にもすぐに執りかかれる。機動性を重視し、かつ一般的なクリップオンストロボの光量では物足りないというカメラマンにとって、Godox WITSTRO AD180/AD360 は十分に検討に値するストロボであるといえる。

写真32 <作例実画像

モデル:三嶋瑠璃子(http://ruriko-mishima.com)

モデル:三嶋瑠璃子(http://ruriko-mishima.com

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Godox WITSTRO AD180/AD360

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■ ケンコー・トキナースタジオ情報

今回、記事中に使用した写真の撮影はケンコー・トキナーのショールーム兼直営ショップにあらたに併設された撮影スタジオにて行いました。こちらのスタジオは2015年4月中旬より有料レンタルスタジオとして利用可能となる予定です。スタジオにはケンコープロフェショナルイメージングが取り扱う照明機器、スタンド、三脚などが備えられており、これらを実際に使用することもできます。

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著者について
■ 礒村 浩一 写真家 ■(いそむらこういち)   1967 年福岡県生まれ。東京写真専門学校( 現 東京ビジュアルアーツ )卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍や Web 誌にも数多く寄稿している。近著「 オリンパス OM-D の撮り方教室 OM-D で写真表現と仲良くなる 」( 朝日新聞出版社 )、「 マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド 」( 玄光社 )など。 2015 年 9 月よりデジタルハリウッド「 カメラの学校 」講師。Web サイトは http://isopy.jp/ Twitter ID : k_isopy