高崎勉のネットショップのための商品撮影講座
~ 第8回 透明なボトルを撮る( 赤ワイン編 )
TOPIX
今回の高崎勉のネットショップのための商品撮影講座は前回に引き続きましてボトルを被写体にして解説をいたします。今回は「 赤ワイン 」を取り上げます。回りが映りこみ「 難しい 」と感じる赤ワイン撮影。ライティング配置・機材を具体的に記載し解説をしております。 by 編集部 |
皆さん、こんにちは。フォトグラファーの高崎勉です。 前回は透明なボトル撮影にトライ!ということで、白ワインを題材にしました。 今回は同じワインでも赤ワインの撮影に挑戦してみましょう。
■ 商品撮影に向いているレンズとは
ただその前に皆さん、レンズの焦点距離の違いってご理解いただいているでしょうか。 いわゆる、望遠とか、広角といった違いです。商品撮影にはどのようなレンズが向いているのでしょう。 チラシやウェブ上で▼写真1のような商品写真をご覧になったことはありませんか?
これはスマホやコンパクトデジカメで撮ったケースが多いのではないかと思います。 モバイル機器のカメラに使用されているレンズは広角レンズが多いようです。 そのまま撮ってしまうと、このように商品が歪んでしまい、正しい形が伝わりません。 では、次に広角レンズで撮ったものと望遠レンズで撮ったものを比較してみましょう。
いかがでしょうか?一目瞭然ですね。右の望遠レンズで撮った方が商品の正確なフォルムを表現しています。 本品と形が異なる状態でウェブやチラシに掲載すると、見る側に誤解を与えていまします。そのイメージで店頭に行ったら実際のものが見つからず、またネットで買ったら「 写真と違う! 」といったクレームの対象になりかねません。
では、レンズは何mmくらいで撮れば良いのか?というと、中望遠レンズがお勧めと言えるでしょう。 もちろん、ズームレンズでも構いません。 フルサイズのカメラの場合で70mm~135mmくらいが良いと思います。 あまり望遠になってしまうと被写体からカメラの距離が必要になりますから広いスペースが必要になりますのでご注意ください。 単焦点レンズを買う余裕がおありでしたらその辺りの焦点距離のマクロレンズが1本あると商品撮影には便利です。
■ 赤ワイン撮影のライティング
さて、では本題の赤ワインの撮影です。
白ワインと大きく異なり、ボトル自体が黒い鏡のようになってしまうという難しさがあります。
赤ワインは透過しにくいとはいえ、初心者に限らずプロにとっても難しい被写体でなのです。 ボトルに撮り手自身( もしくはカメラ )や、周囲の家具など映り込んでしまい、トレーシングペーパーなどのディフューザーで商品を囲み過ぎて質感を表現し損ねてしまいがちです。
赤ワインは黒い鏡ようになりますから、このように両サイドから光を当ててごまかしたくなります。ですがそのようにしても、▼写真3は紙のラベルの文字情報が読みづらく、ガラスに反射するライトが鈍い反射になって、商品の質感が伝わりにくくなってしまいました。
それでは、どのようにして赤ワインの質感を伝え、文字情報を読みやすくすればいいのでしょうか。その答えとして、僕が組んだセットは ▼図1です。
そして、▼図1のセットで撮影した赤ワインが下記の▼写真4となります。
▼写真4は商品の左側だけに帯状の光が当たっています。これを写真用語で「 ハイライト 」と言います。( 第4回で解説しました。 )本来「 ハイライト 」という言葉には「 その画像の中で最も明るい箇所 」という意味があります。このハイライトの輪郭がくっきり出ていることで「 この商品はツルっとなめらかな表面なのだな。 」とわかるのです。誰に教わったわけでもなく、人間には言葉でなく体感的に読み取る力があるのです。
さらに第3回目でも行ったように両脇に黒い板でエッジの処理をすると背景の光の回り込みが抑えられ、輪郭の際立った写真になります。
■ 赤ワインの色表現について
赤ワインの液体の赤に関してですが、このように濃い緑色にボトリングされた商品ではそう簡単に中身の赤は出せません。
僕らプロが広告の仕事で時々行うのは、撮影のアングルから見えない箇所( 例えばキャップ天面 )に穴を開けて、中身を薄めて赤い色を出すこともあります。ですが手にした時の印象以上に赤が出ると違和感が生じるものです。
ボトルの液体が入っていない首の部分にグリーンの瓶の色が出ていれば「 緑の瓶に濃い色の液体が入っているな 」と認識でき、ラベルがしっかりと表現されていれば、ちゃんと赤ワインと伝わるでしょう。
やはり、商品台の上に置く前に観察すること。 商品が何であれ、撮影の基本はここから始まるのです。
トレーシングペーパー
写真用品店ばかりではなく画材店でも購入できます。 本来、図面製作で下絵をトレース(敷き写し)するための紙です。 紙ではなく樹脂製の撮影用ディフューザーもあります。これは耐久性がありますがやや厚めになります。
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■ 今回の1枚
アートとしてではなく、広告の仕事のために自主作品を撮ることもあります。自分が発信したい表現を提示して、次に仕事に繋げます。少し前の作品ですが、これがきっかけで幾つかのオファーを頂きました。
■ 次回予告
次回はアクセサリーの撮り方を解説いたします。きらきら光るアクセサリーの撮影は難易度が高いです。それでは次回をお楽しみに。