柴田誠のフォトレポ
~ アジアのカメラショーレポート
< 北京編 >
TOPIX
先日更新した、ソウルのPHOTO&IMAGING 2015と日程がダブっているため、後半からの取材となった柴田誠。2015年4月17日( 金 )~20日( 月 )の4日間、北京のナショナルコンベンションセンターで開催された2015 China P&E。中国の景気後退の影響はどの程度あるのか、週末の会場の様子をレポートします。 by 編集部 |
■ 中国最大のカメラ機材ショーなのだが…
北京で4月に開催されるChina P&Eは、中国最大のカメラ機材ショー。CP+のようなコンシューマー向けのイベントということで、地方の写真クラブがツアーで訪れるなど、中国全土から写真好き、カメラ好きが集まってくる。彼らにとっては、まさに年に一度のお祭りというわけだ。
最寄り駅の地下鉄オリンピック公園駅の構内は、昨年までの空き店舗に飲食店などが入って、多少賑やかな印象になっている。ところが駅を出ると、週末というのに会場に向かう人は思ったほど多くはない。初日じゃないし、天気がいいからだろうかと思いつつ会場に向かう。 会場のナショナルコンベンションセンター入り口には、見慣れたカメラ機材ショーの看板が掲げられている。今年は白地に赤い文字でシンプルな印象なデザインだなと感じたのだが、シンプルなのは会場周りも。昨年までは、フォトキナを思わせるかのように、カメラメーカーの大きな広告が壁面にディスプレイされていたのだが、今年はそれがない。さらに週末だとなのに、入り口周辺で記念写真を撮っている人もほとんどいなかった。
■ 会場の雰囲気も昨年と違ったものになっていた
入場受付は思いのほか空いている。会場内に入ると、ぱっと見これまでと変わった様子はない。しかし、ぐるりと会場を回ってみると、小さなブースが少ないことに気がつく。主要なカメラメーカーやアクセサリーメーカーはほとんど出展しているものの、ストロボメーカーや三脚メーカー、レンズアダプター、カメラバッグといったローカルのメーカーの出展は、明らかに少なくなっている。昨年、フォトキナの会場でも中国企業の出展は激減だった。雨後の筍のように増えたメーカーが、淘汰されてしまった結果なのだろうか。 しかしそれだけではない。目立たないようにしているものの、会場の所々に休憩所のようなスペースが意味もなく設けられていた。出展を取り止めたところがあったのだろう。カメラ業界にも、じわりと景気後退の影響が出始めているように感じられる。 実のところ、中国国内のカメラ需要は一段落したと言われ始めている。富裕層にほぼ行き渡った、スマートフォンのカメラの性能がアップしたなど、その原因はいろいろあるようだが、カメラの売れ行きが鈍化しているのは間違いない。
今年は、目玉となるような注目の新製品の登場がまだないということも、会場を寂しくさせている一因かもしれない。 来場者を見まわすと、女性比率が3割ほどと比較的多く、年齢層も全体的に高め。このあたりは昨年と大きく変わらない。来場者が手にしているカメラも上位機種が目につく。中国らしい特徴だ。そのせいもあってか、ミラーレスカメラを手にしている人はほとんど見かけなかった。 また、あちこちでモデル撮影が行われているのも例年どおりだが、ステージでセミナーやワークショップが行われ始めたのが今年の特徴の一つ。集客目的で勝手に出してい各ブースのた大音量が、怒鳴らなくても会話ができる程度にやや低く抑えられていたように感じた。
セミナーには来場者の関心もあるようで、それに応えるように中国版CAPAのブースやシグマのブースでは、セミナールームをガラス張りにして、外部の音を遮断するような対策を施していた。来場者にきちんと内容を伝えようということだろう。日本のCP+にも中国からの来場者が多く訪れるようになってきたが、日本のスタイルを参考にしているのかもしれない。
とは言え、バックヤードがないのは相変わらず。通路に山積みされたチラシの上に座ってスタッフが食事をしたり、モデルが休憩したりしている姿をあちこちで見かけることができた。 ちなみに、ソウルのカメラショーに比べると、モデルは素朴な印象で、スタイルもいまいち。ポーズはいろいろとってくれるが、笑顔を作ってくれる子は少ない。それでもモデルの周りは常に黒山の人だかりだ。
■ 新しい試みの影像文化館
昨年までなかった展示場脇に、影像文化館という名称の新しい会場が設けられていた。こちらは中国の通販サイト、JD.COM ( http://www.jd.com/ )が大きく関わっているようで、あちこちにその名前が掲げられている。会場は、もともと展示場というわけではなく、普段使っていないロビーだったところを利用しているようで、天井が低く照明も少ない。 入ってすぐのところに小さなステージが設けられており、連日、アイドルグループのステージイベントなどが開催されていた。また、Chain P&Eの展示場には出展されていないライカやカシオのカメラが展示されていたほか、セルフプリントの体験コーナーも設けられている。出版社のブースや写真の展示コーナーなどがあるところを見ると、賑やかな会場を避けているようにも思える。
今年のもう一つの大きな特徴として、ウェイシン( 微信・WeChat )のQRコードが会場のあちこちにあったことが挙げられる。ウェイシンとは中国版LINEのような無料メッセージアプリ。会場でQRコードをスキャンして登録したのを見せると、ノベルティグッズがもらえたりする。中国では、ネットによる情報交換が盛んで、口コミがマーケットを大きく動かす要因となっているだけに、メーカーもそのあたりの対応はしっかりと取っているようだ。会場内ではフリーWiFiが利用できるということもあって、スマートフォンでQRコードをスキャンし、登録している姿をそこかしこで見かけた。
会場をよくよく見渡してみると、ブースの作りもシンプルでコストを抑えているように見える。来場者にも以前のような活気が感じられない。華やかさはあるものの、昨年までのカメラショーでは感じられなかった停滞感漂っているように思えた。よくも悪くも他国並みのイベントになった印象で、やや物足りなさを感じたのは事実だ。中国の景気後退が囁かれる昨今、カメラ業界でも広告減、売上減があるのは当然のこと。問題はそれがどの程度なのかということだ。来年のChina P&Eがどんなものになるのか、それが証明してくれるにちがいない。