若子jetのスナップフォトコラム☆ VOL.6 佃編
いろいろな街を、写真家・若子jetなりの視点で取り歩く「若子jetのスナップフォトコラム☆」も、今回で6回目。今回は、あちこちに下町情緒がのこる佃(東京都中央区)を訪ねてみました。
佃島はとても歴史のある地だ。この地は、徳川家康が江戸入りする際に、隅田川下流の砂州を埋め立てて拡張し、ここに摂津国西成郡佃村(現在の大阪市西淀川区)の漁師たちを住まわせ、彼らの故郷の名前をとって「佃嶋」(現在の佃 1丁目)と名付けたのが由来だと言う。
やがて、佃島は漁師町として栄えるとともに、その後も埋め立て・拡張は続けられ、今から200年ほど前には隣り合っていた石川島(現在の佃 2丁目)と陸続きになったとされる。水戸藩によって創設された「石川島造船所」(今の豊洲に本社を置くIHIの前身の一つ)が1979年まで操業を続け、造船の町としての顔も持っていた。昭和42年には、地名が佃島から「佃」に変わったが、大阪の住吉神社の分社である「住吉神社」が、いまも厚い信仰を集め、代表的な撮影スポットとされるなど、佃島の歴史と昔ながらの面影は、高級高層マンションが建ち並ぶ現在の街並みにも、あちこちに残されている。
そんな歴史のある街をぶらり歩いていたところ、とても人懐っこさを感じる猫が挨拶に来てくれた。佃には、人の気配を感じられる景色もたくさんある。今では、釣り船も多く見られ、漁師町としての風情を残している。また、小魚や貝類、昆布などを醤油と砂糖で甘辛く煮詰めた「佃煮」は、保存食として愛され、江戸時代から続く大ヒット商品。街中には、有名な佃煮屋さんも多い。
住吉神社脇の川にかかる朱塗りの欄干が映える佃小橋を渡れば、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような雰囲気の街並みが現われ、なんともいえないほど居心地がいい。また、古い街並みの向こうに、高層マンションがそびえ建ち、過去と現在が融合した独特の景色も楽しめ、撮影するにも、お散歩をするにも、素敵な地であった。