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大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行
第1回 四万温泉( 前編 )


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TOPIX

新連載「 大村祐里子の1万円で行く スナップ写真旅行 」の連載開始です。本企画は、撮影地の選択もすべて大村祐里子さんに委ねています。条件は東京から、「 交通費・お昼・おやつ代込みで1万円以内で行ける撮影地」です。今回は KIPON レンズを使いました。機材のみならず、スナップ撮影地選びの参考としていただければ幸いです。 by 編集部

Index

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1.連載開始にあたり

「 予算1万円でスナップ撮影の旅に出る 」という、旅好きの私にとっては願ってもいないお話をいただきました。1万円以内で行かれるところであれば場所はどこでも OK で、好きなものを撮って良い、という夢のような内容。ということで、わたしの独断と偏見で選ばせていただいた場所を選ばせていただきました。今回は KIPON 製レンズをお貸出しいただきましたので、好きなスナップ撮影を存分に楽しんでまいりました。撮影スポットガイド、そして機材選びの参考としてご覧になっていただけたら嬉しいです。( 大村 )

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2.目的地紹介

今回、目的地に選んだのは「 四万温泉( しまおんせん ) 」( 群馬県 )。古くから「 四万の病を治す 」霊泉として親しまれてきた場所です。関東近郊の観光ガイドに多く掲載されていて、透明度が高いコバルトブルー色の川や、レトロな温泉街がいつも目に留まっていました。東京から車で3時間ほど、という距離感もちょうど良かったのでここに決めました。

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3.今回の機材紹介

ボディは、購入したばかりのソニーα7R IVを使いたいと思いました。

レンズですが、私はプライベートの撮影では「 撮影している 」という実感が強く欲しい人間なので、MF レンズをよく使います。今回は、α に装着できるEマウントレンズかつ MF レンズで、さらに今までに使ったことのないものが良いなと思いました。

その条件にマッチするのが…… KIPON の「 IBERIT 」シリーズでした。

幸いKIPONの代理店( 新東京物産 )さんからレンズをお借りすることができましたので、今回の旅のお供として持っていくことにしました。KIPON は、上海伝視撮影機材有限公司が 2007 年に立ち上げたブランドです。カメラレンズ用のマウントアダプターメーカーとして有名ですが、カメラレンズも多く作っています。

「 IBERIT 」レンズは、開放 F2.4の単焦点レンズで、焦点距離は24 mm、35 mm、50 mm、75 mm、90 mm の5本がラインナップされています。ドイツで開発とテストを行い、ドイツの品質基準に沿って製造されています。鏡胴はブラックとシルバーの2色。マウントは、ソニーE、富士フイルムX、ライカM、ライカSL の4種類です。重厚感のあるクラシカルな造りが魅力的です。

KIPON IBERIT 35㎜ F2.4

KIPON IBERIT 35㎜ F2.4

KIPON IBERIT 90㎜ F2.4

KIPON IBERIT 90㎜ F2.4

今回の撮影では、広大な空間を切り取ることが多いと予想して「 IBERIT 」シリーズの24 mm と35 mm を、そして変化をつけるために90 mm、の計3本を使用しました。

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4.早速、四万温泉へ!

写真1
F11 24mm

F11 24mm

都内から車を走らせること3時間。最初に向かったのは、四万温泉の一番奥に位置する奥四万湖です。ここは、四万川ダムによりつくられたダム湖です。 聞いていた通り、なんとも不思議な色の水面!

広大な奥四万湖を写しとるために、まず 24 mmを装着し、F8 まで絞ってみました。遠くまでキリリと解像して気持ちがよい一枚になりました。色ノリはやや控え目な印象でしたが、初秋の奥四万湖の落ち着いた雰囲気をそのまま写せたように思います。

写真2
F2.4  24mm

F2.4 24mm

山間にある四万は東京よりもだいぶ涼しく、爽やかな秋の風が吹いていました。黄金色に輝くねこじゃらしが美しかったので、最短撮影距離である25 cmまで寄ってみました。IBERIT のじんわりした色のにじみが、秋の風に揺れるフワフワしたねこじゃらしの質感を際立たせてくれました。

写真3
F11  24mm

F11 24mm

周囲約4キロの湖畔は車で一周できるようになっています。ダム入口の反対側にある大きな橋までいって散策してみました。
24 mmという広い画角は、大きな建造物もまるごと写せるので楽しいです。歪みもほとんどなく、現場でみた橋の迫力をしっかりと収められました。

写真4
F11  24mm

F11 24mm

ダム入り口のちょうど反対側から、奥四万湖を望んで撮影しました。
遠くにあるダムの堤防も、湖の横にある滝も、近くを流れる川も、しっかりと描写されてしていました。24 mmは絞り込むほどに解像感が高まり、F8 〜 11あたりでキレッキレになるように感じました。

写真5
F5.6  24mm

F5.6 24mm

散策路の途中には、ときどきこういった気になる道が。このように強い逆光下で撮影をするとフレアやゴーストがハッキリ出ますが、絵になる形で出てくれるので、むしろ大歓迎です。

写真6
F2.4  24 mm

F2.4 24 mm

まだ紫陽花もところどころに咲いていました。ドライフラワーのような色合いになった花がきれいだったので、開放で最短撮影距離 25 cm まで近づいてみました。まるでオールドレンズみたいな、独特の玉ボケ。四隅は結構流れますが、個性かなと思います。

写真7
F11  24mm

F11 24mm

温泉街のほうへ移動。四万温泉の街は、四万川に沿って立ち並んでいます。「 ザーッ 」という水の流れる音を耳にしていると心が洗われていくようで、歩くほどに清々しい気分になりました。リフレッシュ、というのはこういうことなのだろうなと思いました。

写真8
F4  35mm

F4 35mm

街歩きをするので、24 mmだと広角すぎるかなと思い、レンズ35 mmにチェンジしました。温泉街では、至るところで水が湧き出しています。蛇口にピントを合わせ、F4で撮影しました。適度な立体感を感じる写りです。

写真9
F2.4  35mm

F2.4 35mm

公園の滑り台の下で、小さな秋を見つけました。コスモスの中にとまっている虫にピントを合わせ、背景の滑り台はある程度ぼかしたいと思いました。そこで、最短撮影距離 35 cm まで近づき、F2.4で撮影しました。
α のピント拡大機能と併せて使えば、MF での細かいピント合わせもまったく苦になりません。私はα の AF-ON ボタンにピント拡大機能を割り当てています。また、IBERIT シリーズはヘリコイドがやや重めなので、短時間で的確なピント合わせができます。

写真10
F5.6  35mm

F5.6 35mm

ひなびた風情が漂う温泉街。私が訪れた日は平日で、多くのお店が閉まっていたのですが( 涙 )それはそれで良い空気感でした。

写真11
F2.4  35mm

F2.4 35mm

四万の温泉街は被写体の宝庫すぎて、良きスポットを見つけては立ち止まってしまいます。昔ながらの、黄色い森永ヨーグルトの配達ボックスが可愛い、と思いました。肩肘を張らないナチュラルな描写が、現地のノスタルジックな雰囲気とマッチしているように感じました。

写真12
F5.6  35mm

F5.6 35mm

そぞろ歩きをしていると、ど・ストライクなお食事処を見つけました!私はこういう昔ながらの中華料理屋さんが大大大好きなのです……。昼食は四万温泉名物をいただこうと思っていましたが「これは絶対に美味しいお店だ……!」という自身の直感を信じ、暖簾をくぐることにしました。

写真13
F4  35mm

F4 35mm

ねじりはちまきをしたお父さんがひとりで切り盛りしている『 ゆうみん 』さん。店内は懐かしい空気でいっぱいでした。オススメだという餃子と、ラーメンを注文しました。餃子は皮がパリパリでとっても美味しかったです。最高。
柔らかく自然な描写が、郷愁漂うテーブル上の様子をしっかりと写しとってくれました。この一枚を見ると、いまだにあのときの味を思い出してしまいます。

写真14
F2.4  35mm

F2.4 35mm

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